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大利根八十里を遡る(おおとねはちじゅうりをさかのぼる)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-23 9:00:22  点击:  切换到繁體中文


 

   ◇
モダン・ガール やい
ゐないか やい

ゐたら縞蛇
おつかけるぞ

縞蛇 やい
モダン・ガール やい

ゐないか やい
モダン・ガール やい

ゐたら縞蛇
おつかけるぞ

   毒消売りの娘子軍

 やがて中之条町についた。吾妻川はここで本流支流の二つにわかれてゐる。私は吾妻川の支流に沿ふて、四万街道を上つて行つた。四万街道は四里の間渓谷の中を川に沿ふてつくられた四万温泉への通路である。途中、越後から来た毒消売りの娘子軍と道連れになつた。娘子軍は世間ずれはしてゐるが、さすがは女である。
『越後出るときやヨー、涙も出たがヨー』なぞと懐郷の念にたへないといふやうな面持ちで歌ひながら歩いてゐる。民謡一篇。
   ◇
山にや霧立つ
雉子の子さへ
越後恋しか
ほろたたく

   四万温泉の一夜

 四万は渓谷の中のさびしい温泉場であるが、相当な設備の温泉旅館が数軒ある。私は田村旅館の三階から四万の全景を一眸の下に眺めてみた。吾妻川の支流は狭い谷川となつて旅館の前を流れてゐる。小さいながら川上には、小倉の滝、大泉の滝、日南見の滝等の名所がある。
 夕霧は山をめぐつて、いつしか日は霧の中に暮れてしまつた。
 丁度、その夜の丑満うしみつ頃である。やみをつんざいてけたたましいときの声が聞えた。ハテナと思ふ瞬間に、階上階下の廊側らうがはに右往左往するおびただしい足音も聞えて来た。私は『山賊の襲来』と直感して、すぐはね起きたのである。

   四万温泉の丑の刻

 丑満ごろに、闇をつんざいて聞えたときの声、ただならぬ廊側の足音、てつきり『山賊襲来』と思つたのは、丑の刻を知らせる田村旅館の番頭達の怒鳴り声であつた。童謡一篇。
   ◇
四万の田村の
番頭さん達は
 ヨイヨイヨイサ

鬨の声あげて
丑の刻知らす
 ヨイヨイヨイサ

夜の夜中だ
番頭さんも眠い
 ヨイヨイヨイサ

眠い顔して
鬨の声あげた
 ヨイヨイヨイサ

 丁度この日は土用の丑の日である。丑の日の丑の刻に温泉に浸ると万病に特効があるといふしきたりから浴客に時刻を知らせたのである。親切な番頭さん達だ。童謡一篇。
   ◇
起きなお客さん
丑の刻ア来たよ

はやく起きぬと
丑の刻ア帰る

一度帰れば
今年は来ない

寝ぼはきらひだ
お寝ぼはいやだ

帰ろ帰ろと
風呂場を見てる

起きなお客さん
丑の刻ア来たよ

 次の日、中之条まで戻つて、長野街道を再び吾妻川の本流にそふて出かけた。四万温泉の眺望は変化に乏しかつた。民謡一篇。
   ◇
四万でわく湯も
大利根川の

末にや流れの
水となる

   関東の耶馬渓

 中之条から原町、原町から郷原さとはらまでの吾妻川にそふた街道は、麻畑の多い平和な農村である。民謡二篇。
   ◇
畑たたきたたき
土用かと聞けば
土用だ土用だと
麻がいふた
   ◇
麻の下葉が
落ちよと枯りよと
土用に刈らりよか
麻の木を

 岩島からは対岸の山がせまつて来て、吾妻川は次第次第に急流となつて来る。岩島から川原湯までおよそ二里の間は、関東の耶馬渓と称されてゐるこの街道一の絶景であるが、吾妻川の水がすさまじい音を立てながら水煙を吹いて流れてゐるのを見ると、むしろ物すごい感じがする。民謡一篇。
   ◇
ここと銚子とは
五十里もあろに
水は寝ないで
流れてく

   川底から湧く温泉

 やがて長野県についた。吾妻川はここでも本流支流の二つにわかれる。私は支流の須川にそふて上つていつた。およそ二里の川上に湯の平温泉がある。更に二里の川上に花敷温泉がある。二つともこの温泉が川底からわき出してゐるのは奇観である。童謡一篇。
   ◇
わいたわいたわいた
川からわいた

わいてこぼれて
須川へ流る

流れ流れて
吾妻川へ

もまれもまれて
大利根川へ

ごんぼごんぼごんぼ
こぼれてわいた

   草津温泉の名物

 湯の平温泉から山を一つ越えると『お医者さんでも草津の湯でも……』の草津温泉である。草津温泉には名物の『湯もみ』がある。名所の『賽の河原』もある。不思議な『氷谷』もある。この三つは全く他では見ることの出来ない草津温泉のほこりである。民謡三篇。
   ◇
湯揉みやはじまる
湯長ゆちやうさんの音頭
音頭はづまにや
湯が揉めぬ
   ◇
賽の河原で
すまぬと思たが
石の地蔵さま
撫ぜてみた
   ◇
氷谷かよ
夏でも寒い
岩の中から
風がわく

 私は草津温泉を立つて、吾妻川本流の水源地、上信国境の鳥居峠にむかつた。
 長野街道はどこまでも吾妻川の本流にそふてゐる。落葉松の林や白樺の交つた雑木林を見ても、如何にこの辺が高原であるかが思はれる。民謡一篇。
   ◇
雑木林で
白布さらす

可愛や白樺
布さらす

 やがて嬬恋をすぎて鹿沢温泉についた。吾妻川の本流は渓流となつてしまつた。これ以上水源の探勝は探勝家にゆだねたい。私の目的であつた大利根の支流吾妻川にそふて、童謡を歌ひ民謡を歌ひながらの旅はこれで終つた。鹿沢温泉は上州唯一の高原温泉で四囲の眺望は雄大である。民謡一篇。
   ◇
浅間裾野の
六里が原も
通へ通へと
風が吹く





底本:「定本 野口雨情 第六巻」未來社
   1986(昭和61)年9月25日第1版第1刷発行
初出:「東京朝日新聞」
   1926(大正15)年7月29日、8月3日、8月4日
入力:林 幸雄
校正:今井忠夫
2003年11月24日作成
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