| 底本: | 芥川龍之介全集6 |
| 出版社: | ちくま文庫、筑摩書房 |
| 初版発行日: | 1987(昭和62)年3月24日 |
| 入力に使用: | 1987(昭和62)年3月24日第1刷 |
| 校正に使用: | 2001(平成13)年11月20日第10刷 |
| 底本の親本: | 筑摩全集類聚版芥川龍之介全集 |
| 出版社: | 筑摩書房 |
| 初版発行日: | 1971(昭和46)年3月~1971(昭和46)年11月 |
十月のある午後、僕等三人は話し合いながら、松の中の小みちを歩いていた。小みちにはどこにも人かげはなかった。ただ時々松の
「ゴオグの死骸を
西洋から帰って来たSさんはそんなことを話して聞かせたりした。
そのうちに僕等は
「一つ中へはいって見るかな。」
僕は先に立って門の中へはいった。敷石を
「この
するとT君は考え深そうに玄関前の
「いや、去年までは来ていたんだね。去年ちゃんと刈りこまなけりゃ、この萩はこうは咲くもんじゃない。」
「しかしこの芝の上を見給え。こんなに
僕は実際震災のために取り返しのつかない打撃を受けた年少の実業家を
しかしT君は腰をかがめ、芝の上の土を拾いながら、もう一度僕の言葉に反対した。
「これは壁土の落ちたのじゃない。
僕等はいつか窓かけを
「
僕等はそんなことを話しながら、幾つかの硝子窓を
「ははあ、
Sさんは僕等をふり返って言った。
「この別荘の主人は
僕等は
「するとその肺病患者は
「これもやっぱり園芸用のものだよ。頭へ
T君の言葉はもっともだった。現にその小さい机の上には
「おや、あの机の脚の下にヴィクトリア
「あれは細君の……さあ、女中のかも知れないよ。」
Sさんは、ちょっと
「じゃこれだけは確実だね。――この別荘の主人は肺病になって、それから園芸を楽しんでいて、……」
「それから去年あたり死んだんだろう。」
僕等はまた松の中を「悠々荘」の玄関へ引き返した。
「僕等の住むには広過ぎるが、――しかしとにかく
T君は階段を
「このベルは今でも鳴るかしら。」
ベルは
「
Sさんは玄関に
「悠々荘?」
「うん、悠々荘。」
僕等三人はしばらくの
底本:「芥川龍之介全集6」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年3月24日第1刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月~1971(昭和46)年11月
初出:「サンデー毎日」
1927(昭和2)年1月
入力:j.utiyama
校正:小林繁雄
2005年1月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
●表記について
- このファイルは W3C 勧告 XHTML1.1 にそった形式で作成されています。