トムちやんのお母さまが学校に勤めるやうになつてから、それを作曲して学校の
村のお祭に八幡様の森で児童達が合奏するこの歌は、どんなに村人の心を和げ又慰めたことでせう。
娘姿で 駒鳥は
糸紡 き車で
糸紡いた
糸
糸紡いた
シヤラシヤラ ビンビン
糸紡いた
糸紡いた
糸は何糸 愛の糸
愛の糸より
糸はない
愛の糸より
糸はない
シヤラシヤラ ビンビン
糸はない
糸はない
森の少女 も 駒鳥の
糸紡き車で
糸紡いた
糸紡き車で
糸紡いた
シヤラシヤラ ビンビン
糸紡いた
糸紡いた
歌を唄ひば 愛の歌
愛の歌より
歌はない
愛の歌より
歌はない
シヤラシヤラ ビンビン
歌はない
歌はない
村祭の日が近づいてまゐりました。子供達はお宮の森の、とある広ツぱへ集つて、いろいろとお祭のお
「女王はどうしたの、遅いなア」
「やつぱり先生が悪いんだツか」
そんな話が子供達の間に交されると、皆が
「
「病気、悪いのかなア」
「悪いんさ。でなきやトムちやんと
「みんなで行つてみよか」
「ウム、それ好いや。女王が居んぢや、ちつとも面白く無え」
「花輪が出来たんか」
「まだ野菊が足りねえ……トムちやん処へ行く前にみんなで野原へ
「ああ、それがいいや。行こ、行かう」
村の
「女王」といふのは
「女王」に贈る花輪は、
花輪が出来上ると、トムちやんと仲よしのしげのさんがそれを持つ、そしてそれを取り巻く皆が「愛の歌」を
トムちやんが、
「あ、
トムちやんはさう言つて、静かにお母さまの枕許を抜足しました。トムちやんは、村の少年少女が、花輪を持つて自分を迎へに来たことが解つたのでした。で、子供達の
トムちやんが茅葺屋根の
「やア、女王、女王」
皆は皆熱心にトムちやんの顔を
「トムちやん、これ
とまづしげのさんが口を開きました。
「しげのさん、有りがたう。みなさん有りがたう……」
トムちやんはさう
「先生悪い?」
「ええ。……」
「トムちやん、「女王」になれない?」
皆は心配げに尋ねました。
「……え、今年の「女王」はしげのさんにして頂戴、私はお母さんとこ離せないの……」
「そんなに悪い? 困るなア」
「……」
折から「夕べの祈りをせよ」と
「ゴオーン……」
と、重く沈んだその
皆が顔を上げると、夕陽の輝きが野を
底本:「日本の名随筆50 歌」作品社
1986(昭和61)年12月25日第1刷発行
1991(平成3)年9月1日第8刷発行
底本の親本:「定本 野口雨情 第六巻」未来社
1986(昭和61)年9月発行
入力:加藤恭子
校正:今井忠夫
2000年10月27日公開
2005年6月28日修正
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