双子の星 一
このすきとおる二つのお宮は、まっすぐに向い合っています。夜は二人とも、きっとお宮に帰って、きちんと
ある朝、お日様がカツカツカツと
「ポウセさん。もういいでしょう。お日様もお昇りになったし、雲もまっ白に光っています。今日は西の野原の泉へ行きませんか。」
ポウセ童子が、まだ
「ポウセさん。もういいでしょう。東の空はまるで白く燃えているようですし、下では小さな鳥なんかもう目をさましている様子です。今日は西の野原の泉へ行きませんか。そして、
ポウセ童子はやっと気がついて、びっくりして笛を置いて云いました。
「あ、チュンセさん。失礼いたしました。もうすっかり明るくなったんですね。
そしてポウセ童子は、白い
お通りみちを はき
ひかりをちらせ あまの白雲。
お日さまの、
お通りみちの 石かけを
深くうずめよ、あまの青雲。」
そしてもういつか空の泉に来ました。
「ポウセさんまずここへ
「ええ、こしらえましょう。僕石を運びますから。」
チュンセ童子が沓をぬいで小流れの中に入り、ポウセ童子は岸から手ごろの石を集めはじめました。
今は、空は、りんごのいい
ふと野原の向うから大きな声で歌うのが聞えます。
すこしはなれたそらの井戸。
みずはころろ、そこもきらら、
まわりをかこむあおいほし。
夜鷹ふくろう、ちどり、かけす、
来よとすれども、できもせぬ。」
もう空のすすきをざわざわと分けて大烏が向うから
大烏は二人を見て立ちどまって
「いや、今日は。チュンセ童子とポウセ童子。よく晴れて結構ですな。しかしどうも晴れると咽喉が
「どうか構わないで
大烏は息もつかずに三分ばかり咽喉を鳴らして呑んでからやっと顔をあげて
その時向うから
毒ある
知らない者は
そこで大烏が怒って云いました。
「
チュンセ童子が
「大烏さん。それはいけないでしょう。王様がご存じですよ。」という間もなくもう赤い眼の蠍星が向うから二つの大きな
大烏はもう怒ってぶるぶる
蠍は大烏を
「ああ、どうも
そして蠍は十分ばかりごくりごくりと水を呑みました。その間も、いかにも大烏を馬鹿にする様に、毒の鉤のついた尾をそちらにパタパタ動かすのです。
とうとう大烏は、我慢し兼ねて羽をパッと開いて
「こら蠍。貴様はさっきから阿呆鳥だの何だのと
蠍がやっと水から頭をはなして、赤い眼をまるで火が燃えるように動かしました。
「へん。
大烏はかっとして思わず飛びあがって叫びました。
「何を。生意気な。空の向う側へまっさかさまに落してやるぞ。」
蠍も怒って大きなからだをすばやくひねって尾の鉤を空に
チュンセ童子もポウセ童子もとめるすきがありません。蠍は頭に深い傷を受け、大烏は胸を毒の鉤でさされて、両方ともウンとうなったまま重なり合って気絶してしまいました。
蠍の血がどくどく空に流れて、いやな赤い雲になりました。
チュンセ童子が急いで
「さあ大変だ。大烏には毒がはいったのだ。早く吸いとってやらないといけない。ポウセさん。大烏をしっかり押えていて下さいませんか。」
ポウセ童子も沓をはいてしまっていそいで大烏のうしろにまわってしっかり押えました。チュンセ童子が大烏の胸の傷口に口をあてました。ポウセ童子が申しました。
「チュンセさん。毒を呑んではいけませんよ。すぐ吐き出してしまわないといけませんよ。」
チュンセ童子が
「あ、どうも済みません。私はどうしたのですかな。たしか野郎をし止めたのだが。」
チュンセ童子が申しました。
「早く流れでその傷口をお洗いなさい。歩けますか。」
大烏はよろよろ立ちあがって蠍を見て又
「畜生。空の毒虫め。空で死んだのを有り
二人は大烏を急いで流れへ連れて行きました。そして
「さあ、ゆるゆる歩いて明るいうちに早くおうちへお帰りなさい。これからこんな事をしてはいけません。王様はみんなご存じですよ。」
大烏はすっかり
「ありがとうございます。ありがとうございます。これからは気をつけます。」と云いながら
二人は蠍を調べて見ました。頭の傷はかなり深かったのですがもう血がとまっています。二人は泉の水をすくって、傷口にかけて奇麗に洗いました。そして
お日様が丁度空のまん中においでになった
ポウセ童子が汗をふきながら申しました。
「どうですか気分は。」
蠍がゆるく
「大烏めは死にましたか。」
チュンセ童子が少し怒って云いました。
「まだそんな事を云うんですか。あなたこそ死ぬ所でした。さあ早くうちへ帰る様に元気をお出しなさい。明るいうちに帰らなかったら大変ですよ。」
蠍が目を変に光らして云いました。
「双子さん。どうか私を送って下さいませんか。お世話の
ポウセ童子が云いました。
「送ってあげましょう。さあおつかまりなさい。」
チュンセ童子も申しました。
「そら、僕にもおつかまりなさい。早くしないと明るいうちに家に行けません。そうすると今夜の星めぐりが出来なくなります。」
けれども二人は顔をまっ赤にしてこらえて一足ずつ歩きました。
蠍は尾をギーギーと石ころの上に引きずっていやな息をはあはあ吐いてよろりよろりとあるくのです。一時間に十町とも進みません。
もう童子たちは余り重い上に蠍の手がひどく食い
空の野原はきらきら白く光っています。七つの小流れと十の
童子たちは頭がぐるぐるしてもう自分が歩いているのか立っているのかわかりませんでした。それでも二人は黙ってやはり一足ずつ進みました。
さっきから六時間もたっています。蠍の家まではまだ一時間半はかかりましょう。もうお日様が西の山にお入りになる所です。
「もう少し急げませんか。私らも、もう一時間半のうちにおうちへ帰らないといけないんだから。けれども苦しいんですか。大変痛みますか。」とポウセ童子が申しました。