「どうだい。今日は気分がいいかい。」
「はい、ありがとうございます。」
「いいのかい。大へん結構だ。たべ物は
「ありがとうございます。大へんに結構でございます。」
「そうかい。それはいいね、ところで実は今日はお前と、内内相談に来たのだがね、どうだ頭ははっきりかい。」
「はあ。」豚は声がかすれてしまう。
「実はね、この世界に生きてるものは、みんな死ななけぁいかんのだ。実際もうどんなもんでも死ぬんだよ。人間の中の貴族でも、金持でも、又私のような、中産階級でも、それからごくつまらない
「はあ、」豚は声が咽喉につまって、はっきり返事ができなかった。
「また人間でない動物でもね、たとえば馬でも、牛でも、
「はあ。」豚は声がかすれて、返事もなにもできなかった。
「そこで実は相談だがね、私たちの学校では、お前を今日まで養って来た。大したこともなかったが、学校としては出来るだけ、ずいぶん大事にしたはずだ。お前たちの仲間もあちこちに、ずいぶんあるし又私も、まあよく知っているのだが、でそう云っちゃ
「はあ。」豚は返事しようと思ったが、その前にたべたものが、みんな咽喉へつかえててどうしても声が出て来なかった。
「でね、実は相談だがね、お前がもしも少しでも、そんなようなことが、ありがたいと云う気がしたら、ほんの小さなたのみだが承知をしては
「はあ。」豚は声がかすれて、返事がどうしてもできなかった。
「それはほんの小さなことだ。ここに
「つまりお前はどうせ死ななけぁいかないからその死ぬときはもう
豚は
「何時にてもということは、今日でもということですか。」
校長はぎくっとしたが気をとりなおしてこう云った。
「まあそうだ。けれども今日だなんて、そんなことは決してないよ。」
「でも明日でもというんでしょう。」
「さあ、明日なんていうよう、そんな急でもないだろう。いつでも、いつかというような、ごくあいまいなことなんだ。」
「死亡をするということは私が一人で死ぬのですか。」豚は
「うん、すっかりそうでもないな。」
「いやです、いやです、そんならいやです。どうしてもいやです。」豚は泣いて
「いやかい。それでは仕方ない。お前もあんまり恩知らずだ。犬
「どうせ犬猫なんかには、はじめから劣っていますよう。わあ」豚はあんまり
ところがその次の日のことだ。あの畜産の担任が、助手を連れて又やって来た。そして例のたまらない、目付きで豚をながめてから、大へん
「どうしたんだい。すてきに肉が落ちたじゃないか。これじゃまるきり話にならん。
助手は
「さあ、昨日の
畜産の教師は飛び上る。
「校長? そうかい。校長だ。きっと承諾書を取ろうとして、すてきなぶまをやったんだ。おじけさせちゃったんだな。それでこいつはぐるぐるして昨夜一晩寝ないんだな。まずいことになったなあ。おまけにきっと承諾書も、取り
教師は実に口惜しそうに、しばらくキリキリ歯を鳴らし
「えい、仕方ない。窓をすっかり明けて
「承知いたしました。」
教師は教員室へ帰り豚はもうすっかり気落ちして、ぼんやりと向うの
「少しご散歩はいかがです。今日は大へんよく晴れて、風もしずかでございます。それではお供いたしましょう、」ピシッと鞭がせなかに来る、全くこいつはたまらない、ヨークシャイヤは仕方なくのそのそ畜舎を出たけれど胸は悲しさでいっぱいで、歩けば
全体何がチッペラリーだ。こんなにわたしはかなしいのにと豚は
「ええもう少し左の方を、お歩きなさいましては、いかがでございますか。」なんて、口ばかりうまいことを云いながら、ピシッと鞭を呉れたのだ。(この世はほんとうにつらいつらい、本当に苦の世界なのだ。)こてっとぶたれて散歩しながら豚はつくづく考えた。
「さあいかがです、そろそろお休みなさいませ。」助手は又一つピシッとやる。ウルトラ大学生諸君、こんな散歩が何で
豚は仕方なく又畜舎に
こんな
四日目に又畜産の、教師が助手とやって来た。ちらっと豚を一眼見て、手を
「いけないいけない。君はなぜ、僕の云った通りしなかった。」
「いいえ、窓もすっかり明けましたし、キャベジのいいのもやりました。運動も毎日叮寧に、十五分ずつやらしています。」
「そうかね、そんなにまでもしてやって、やっぱりうまくいかないかね、じゃもうこいつは
「はい、ございます。」
「こいつは
畜産の教師は大急ぎで、教舎の方へ走って行き、助手もあとから出て行った。
間もなく農学校長が、大へんあわててやって来た。豚は
「おおい、いよいよ急がなきゃならないよ。
「いやですいやです。」豚は泣く。
「
なるほど
「つきます。つきます。」と、かすれた声で云ったのだ。
「よろしい、では。」と校長は、やっとのことに
「どこへつけばいいんですか。」豚は泣きながら
「ここへ。おまえの名前の下へ。」校長はじっと
「うはん。よろしい。これでいい。」校長は紙を引っぱって、よくその判を調べてから、機嫌を直してこう云った。戸口で待っていたらしくあの意地わるい畜産の教師がいきなりやって来た。
「いかがです。うまく行きましたか。」
「うん。まあできた。ではこれは、あなたにあげて置きますから。ええ、肥育は何日ぐらいかね、」
「さあいずれ模様を見まして、鶏やあひるなどですと、きっと間違いなく
「そうか。なるほど。とにかくしっかりやり給え。」
そして校長は帰って行った。今度は助手が変てこな、ねじのついたズックの管と、何かのバケツを持って来た。畜産の教師は云いながら、そのバケツの中のものを、
「そいじゃ豚を縛って呉れ。」助手はマニラロープを持って、囲いの中に飛び込んだ。豚はばたばた暴れたがとうとう囲いの
「よろしい、それではこの
フランドン農学校の豚(フランドンのうがっこうのぶた)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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