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河童(かっぱ)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/8/15 15:24:50 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语

底本: 河童・或る阿呆の一生
出版社: 旺文社文庫、旺文社
初版発行日: 1966(昭和41)年10月20日
入力に使用: 1984(昭和59)年重版

 

 序

 これはある精神病院の患者、――第二十三号がだれにでもしゃべる話である。彼はもう三十を越しているであろう。が、一見したところはいかにも若々しい狂人である。彼の半生の経験は、――いや、そんなことはどうでもよい。彼はただじっと両膝(りょうひざ)をかかえ、時々窓の外へ目をやりながら、(鉄格子(てつごうし)をはめた窓の外には枯れ葉さえ見えない樫(かし)の木が一本、雪曇りの空に枝を張っていた。)院長のS博士や僕を相手に長々とこの話をしゃべりつづけた。もっとも身ぶりはしなかったわけではない。彼はたとえば「驚いた」と言う時には急に顔をのけぞらせたりした。……
 僕はこういう彼の話をかなり正確に写したつもりである。もしまただれか僕の筆記に飽き足りない人があるとすれば、東京市外××村のS精神病院を尋ねてみるがよい。年よりも若い第二十三号はまず丁寧(ていねい)に頭を下げ、蒲団(ふとん)のない椅子(いす)を指さすであろう。それから憂鬱(ゆううつ)な微笑を浮かべ、静かにこの話を繰り返すであろう。最後に、――僕はこの話を終わった時の彼の顔色を覚えている。彼は最後に身を起こすが早いか、たちまち拳骨(げんこつ)をふりまわしながら、だれにでもこう怒鳴(どな)りつけるであろう。――「出て行け! この悪党めが! 貴様も莫迦(ばか)な、嫉妬(しっと)深い、猥褻(わいせつ)な、ずうずうしい、うぬぼれきった、残酷な、虫のいい動物なんだろう。出ていけ! この悪党めが!」

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