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国際殺人団の崩壊(こくさいさつじんだんのほうかい)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/8/24 16:16:03 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 | ||||||
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作者(わたくし)は、此(こ)の一篇を公(おおやけ)にするのに、幾分の躊躇(ちゅうちょ)を感じないわけには行かないのだ。それというのも、実(じつ)は此の一篇の本筋は作者が空想の上から捏(こ)ねあげたものではなく、作者の親しい亡友(ぼうゆう)Mが、其の死後に語ってきかせて呉(く)れたものなのである。亡友(ぼうゆう)Mについては、いずれ此の物語を読んでゆかれるうちに諸君は、それがどのような人物で、どのような死に方をしたのであるか、おいおいとお判りになってくれることであろう。それにしても「死後に語ってきかせたもの」などと言うのは大変可笑(おか)しいことに聞えるかも知れないが、これも事情を申して置かねばならないことであるが、諸君もかねてお聞きおよびかと思う例の心霊(しんれい)研究会で、有名なるN女史という霊媒(れいばい)を通じて、作者がその亡友から聞いた告白なのである。その告白は、実に容易ならざる国際的怪事件を語っているので、命中率九十パーセントと称せられる霊媒(れいばい)N女史の取扱ったものだから充分事実に近いものだとすると、この怪事件は公表するには余りに重大な事柄で、或いは公表を見合わせた方が当(あた)り障(さわ)りがなくてよいかも知れないくらいなのである。しかし一方に於(おい)て、N女史の招霊術(しょうれいじゅつ)は、単なる読心術(どくしんじゅつ)にすぎないという識者(しきしゃ)もあるようだから、それなれば、N女史の前に坐った作者の心中(しんちゅう)にかくされていた妄想(もうそう)が反映したのに過ぎないとも云えないこともないのである。兎(と)も角(かく)、そこのところは諸君の御判断におまかせするとして、怪事件の物語をはじめようと思うが、一種の実話であるだけに、筋ばかりで、描写が充分でないのは我慢していただきたい。
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