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中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)17閲微草堂筆記(清)

作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-8-27 18:07:01 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语

底本: 中国怪奇小説集
出版社: 光文社文庫、光文社
初版発行日: 1994(平成6)年4月20日
入力に使用: 1994(平成6)年4月20日初版1刷

 

中国怪奇小説集

閲微草堂筆記(清)

岡本綺堂




 第十五の男は語る。
「わたくしは最後に『閲微草堂筆記』を受持つことになりましたが、これは前の『子不語』にまさる大物で、作者は観奕道人かんえきどうじんと署名してありますが、実はしん※(「日+均のつくり」、第3水準1-85-12)きいんであります。紀※(「日+均のつくり」、第3水準1-85-12)は号を暁嵐ぎょうらんといい、乾隆けんりゅう時代の進士しんしで、協弁大学士に進み、官選の四庫全書を作る時には編集総裁に挙げられ、学者として、詩人として知られて居ります。死して文達公とおくりなされましたので、普通に紀文達とも申します。
 この著作は一度に脱稿したものではなく、最初に『※(「さんずい+欒」、第3水準1-87-35)陽鎖夏録らんようしょうかろく』六巻を編み、次に『如是我聞にょぜがもん』四巻、次に『槐西雑誌かいせいざっし』四巻、次に『姑妄聴之こもうちょうし』四巻、次に『※(「さんずい+欒」、第3水準1-87-35)陽続録らんようぞくろく』六巻を編み、あわせて二十四巻に及んだものを集成して、『閲微草堂筆記』の名をかぶらせたのでありまして、実に一千二百八十二種の奇事異聞を蒐録しゅうろくしてあるのですから、とても一朝一せきに説き尽くされるわけのものではありません。もしその全貌を知ろうとおぼしめす方は、どうぞ原本に就いてゆるゆる御閲読をねがいます」

   落雷裁判

 しん雍正ようせい十年六月の夜に大雷雨がおこって、けん県の県城の西にある某村では、村民なにがしが落雷に撃たれて死んだ。
 めいという県令が出張して、その死体を検視したが、それから半月の後、突然ある者を捕えて訊問した。
「おまえは何のために火薬を買ったのだ」
「鳥を捕るためでございます」
「雀ぐらいを撃つ弾薬たまぐすりならば幾らもいる筈はない。おまえは何で二、三十きんの火薬を買ったのだ」
「一度に買い込んで、貯えて置こうと思ったのでございます」
「おまえは火薬を買ってから、まだひと月にもならない。多く費したとしても、一斤か二斤に過ぎない筈だが、残りの薬はどこに貯えてある」
 これには彼も行き詰まって、とうとう白状した。彼はかの村民の妻と姦通していて、妻と共謀の末にその夫を爆殺し、あたかも落雷で震死したようによそおったのであった。その裁判落着の後、ある人が県令に訊いた。
「あなたはどうしてあの男に眼を着けられたのですか」
「火薬を爆発させてらいと見せるには、どうしても数十斤を要する。殊に合薬ごうやくとして硫黄いおうを用いなければならない。今は暑中で爆竹などを放つ時節でないから、硫黄のたぐいを買う人間は極めてすくない。わたしはひそかに人をやって、この町でたくさんの硫黄を買った者を調べさせると、その買い手はすぐに判った。更にその買い手を調べさせると、村民のなにがしに売ったという。それで彼が犯人であると判ったのだ」
「それにしても、当夜の雷がこしらえ物であるということがどうして判りました」
「雷が人を撃つ場合は、言うまでもなく上から下へ落ちる。家屋を撃ちこわす場合は、家根やねを打ち破るばかりで、地を傷めないのが普通である。然るに今度の落雷の現場を取調べると、草葺き家根が上にむかって飛んでいるばかりか、土間の地面が引きめくったようにがれている。それが不審の第一である。又その現場は城をること僅か五、六里で、雷電もほぼ同じかるべき筈であるが、当夜の雷はかなり迅烈であったとはいえ、みな空中をとどろき渡っているばかりで、落雷した様子はなかった。それらを綜合して、わたしはそれを地上の偽雷と認めたのである」
 人は県令の明察に服した。

   鄭成功と異僧

 鄭成功ていせいこうが台湾にるとき、粤東えつとうの地方から一人の異僧が海を渡って来た。かれは剣術と拳法に精達しているばかりか、肌をぬいで端坐していると、刃で撃っても切ることが出来ず、堅きこと鉄石の如くであった。彼はまた軍法にも通じていて、兵を談ずることすこぶるその要を得ていた。
 鄭成功はつとめて四方の豪傑を招いている際であったので、礼を厚うして彼を※(「疑のへん+欠」、第3水準1-86-31)かんたいしたが、日を経るにしたがって彼はだんだんに増長して、傲慢無礼ごうまんぶれいの振舞いがたびかさなるので、鄭成功もしまいには堪えられなくなって来た。かつかれは清国の間牒かんちょうであるという疑いも生じて来たので、いっそ彼を殺してしまおうと思ったが、前にもいう通り、彼は武芸に達している上に、一種の不死身ふじみのような妖僧であるので、迂闊に手を出すことを躊躇ちゅうちょしていると、その大将の劉国軒りゅうこくけんが言った。
「よろしい。その役目はわたくしが勤めましょう」
 劉はかの僧をたずねて、冗談のように話しかけた。
「あなたのような生き仏は、色情のことはなんにもお考えになりますまいな」
「久しく修業を積んでいますから、心は地に落ちたるわたの如くでござる」と、僧は答えた。
 劉はいよいよたわむれるように言った。
「それでは、ここであなたの道心を試みて、いよいよ諸人の信仰を高めさせて見たいものです」
 そこで美しい遊女や、男色なんしょくを売る少年や、十人あまりをりあつめて、僧のまわりにしとねをしき、枕をならべさせて、その淫楽をほしいままにさせると、僧は眉をも動かさず、かたわらに人なきがごとくに談笑自若としていたが、時を経るにつれて眼をそむけて、遂にその眼をまったくじた。
 そのすきをみて、劉は剣をぬいたかと思うと、僧の首はころりと床に落ちた。



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