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正雪の遺書(しょうせつのかきおき)
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| 作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/9/2 7:40:39 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 | ||||||||||
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1 この夜しかも同じ時刻に、旗本近藤 彼等の巨魁由井正雪は、既に駿府へ発した後で、牛込榎町の留守宅には佐原重兵衛が籠もっていたが、ここへ取り詰めたのは堀 こうして正雪一味の徒はほとんど一網打尽の 「さすがは智慧伊豆。至極の働き」 容易のことでは人を褒めない水府お館さえこういって信綱の遣り口を認めたのであった。 しかるにここに不思議な事には、反徒の頭目由井正雪を駿府の旅宿で 不思議といえば不思議のことで、当時にあっても問題とされたが、しかし正雪は自殺したし、その他随身一同の者もあるいは捕らえられ又は殺され、そうでない者は自殺して、取り逃がした者は一人も無かったので、事はうやむやの間に葬られてしまった。 駿府から発した早打が、江戸柳営に届いたのは、ちょうど暮六つの頃であった。 折から松平伊豆守は、老中部屋に詰めていたが、正雪自殺の 「それは 彼にはそれが信じられなかったらしい。引き続いて 「天下のおため、お目出度うござる」 伊豆守はそれを確かめると、同席の人達へこう挨拶して、その儘役宅へ帰って来た。 屋敷へ帰っても伊豆守は、支度を取ろうともしなかった。端座したまま考えている。腑に落ちないことでもあるのだろう。 夜は深々と更けて行く。夜番の鳴らす拍子木の音が、屋敷を巡って聞こえるのさえ、今夜は その時人の 「何じゃ?」と、伊豆守は物憂そうに訊く。 「は」と志摩は恐る恐る、 「只今、僧形の怪しい男、是非とも御前にお目通り致し申し上げたき事ござる由にて御門口迄罷り出でましたる故、きっと叱り懲らしましたる所……」 「 「その者庭前に差し廻すよう」 「は」と志摩は額を摺り付け、襖を閉じると立ち去って行った。 間もなく一人の大入道が、 伊豆守は 虫の鳴く音が雨のように、草叢の中から聞こえてくる。音らしいものと云えばそれだけである。 と、その僧は手を上げて法衣の襟をほころばせたが、そこから紙片を取り出した。そして無言で手を延ばして、その紙片を縁の上へそっと大事そうに置いたのである。 2 その紙片こそは由井正雪が臨終に際して書きのこしたところの世にも珍らしい 私がそれを手に入れたのはほんの偶然のことからであって、意識して求めた結果ではない。しかし私がその遺書のある肝心の部分だけを解り易い現代語に書き直して発表するということには多少の意味がある とはいえ私は説明はしまい。意味を汲み取るのは読者の領分で私は記載するばかりである。 ――以下正雪の遺書―― (前略)……老中松平伊豆守様。 「なに正雪が自殺したと? そうしてそれは ――そうです、それは真実なのです。私はこれから自殺いたします。私の首を討ち落とそうと、覚善坊はもう 私の心は今静かです。実に限りなく静かです。 「 町奉行落合小平太殿、 そうして私は 先程奉行所から、手付与力の田中万右衛門殿と小林三八郎殿とが、 「当家宿泊の由井正雪殿に少しく尋ねたき仔細ござれば奉行所まで同道致すように」 と、旅宿の門まで参られましたが、私は「病気」の故を以って堅くお断わり致しました。貴郎はこれをお聞きになったらさぞ御不審に思われましょう。 「それが最初からの手筈ではなかったか。何故正雪は断わったのであろう?」 こう仰せられるに相違ありません。いかにもそれは貴郎と私との二人の間に取り決められた手筈であったことは確かです。 二人の与力に守られて、私は奉行所へ罷り越す。と直ぐ貴郎のご保護の下に、多分のお手当てを頂戴した上、ある方面へ身を隠す。しかし私の一味徒党だけは、一人残らず召捕られる。 ――というのが段取りでございました。 しかるにそういう手筈を狂わせ、そういう段取りに背いたばかりか、死なずともよい自分の身を自分から刄で突裂くとは何という愚かな仕打ちであろう。こう貴郎の仰せられることも十分私には解って居ります。 解っていながら愚かな行為を敢えて行なうという以上は、行なうだけの何等かの理由が、そこになければならない話です。それで私はその理由を、ここで披瀝いたしまして、貴意を得る次第でございます。 さて、私の追想は、江戸牛込榎町に道場を開いたその時分に、立ち返らなければなりません。山気の多い私にとっては万事万端浮世の事は大風呂敷を拡げるに限る、これが最良の処世法だと、この様に思われたものですから、道場に掛けた看板も、 こういったようなものでした。果たして私の思惑通り、この大風呂敷が図に当たり、予想にも
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