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令狐生冥夢録(れいこせいめいむろく)
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| 作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/9/26 15:52:18 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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令狐 という儒者があった。非常な無神論者で、 の家の近くに をはじめ烏老の不義を憎んでいる者は、いい気味だと思っていると、三日目になって「わしが死んだ後に、家内の者が仏事をやって、しこたま は烏老のいうことを聞いて、馬鹿馬鹿しくもあったが、正直な男だけに、「貪官汚吏は、賄賂を取って法を曲げるので、金のある者は罪を逃れ、貧しい者は罪になる、これはこの世ばかりと思っていたのに、冥府はこれよりもえらいと見える」 そこで は詩を作った。公私随所に門を通ずべし 鬼神徳の生路を開くあり 日月光の覆盆を照すなし 貧者何に 富豪容易に天恩を受く 早く善悪 多く は面白そうにそれを朗吟した。その夜 は、自分の の頭には は何かしら誇りを感じて得意になっていた。室の中へ何者かがつかつかと入ってきた。 はふと顔をあげた。「 鬼使は に向ってきた。 は驚いて走ろうとした。「逃げようたって逃がすものか」 「こら」 鬼使の一人は の襟がみを掴み、一人はその帯際に手をかけた。 はそれを振り払って逃げようとした。彼は襟がみにかけた鬼使の手を掴んで引き放そうとしたが放れなかった。「何をする」 「騒ぐな」 の体は釣りあげられたようになって はどうすることもできなかった。鬼使は走るようにして歩いた。 の足はもう地べたに著かなかった。官省の建物のような大きな建物がきた。鬼使は を連れてその門の中へ入った。 は恐る恐る前を見た。殿上の高い処に一人の王者が鬼使は を階段の下へ連れて往って、そこへ押し据えるようにした。「ここに控えておれ」 はそこへ の傍に残り、一人は階段を登って殿上へ往った。「令狐 を捕えてまいりました」すると王が頷いて、 の方を見おろして激しい声で言った。「その方は儒書を読んでおりながら、自分の身を検束することを知らないで、みだらな その声が終るか終らないかに、三四人の鬼卒が の処へ走ってきた。 はもう両手を掴まれ、頭髪を掴まれた。 は「放せ」 「何をする」 鬼卒達は を引き放して曳きずって往こうとしたが、 は一生懸命に掻きついているのでなかなか放れない。「しぶとい奴だ」 鬼卒達は無理にその手を引き放そうとした。と、その拍子に檻楯が折れた。 はもう犁舌の獄へ下らなければならなかった。彼は大声で叫んだ。「令狐 は人間の儒士であります、罪がないのに刑を加えられようとしております、もし天がこれを見ておられるなら、どうか罪のないことを明かにしてください」王の側に 「あの男は、人の 王はその詞を用いた。 「よし、それでは供をさせよう」 吏員の一人は紙筆を の前へ置いた。「これに事実を書くがよいだろう」 は事実を書こうにも犯した罪がないから書きようがない。「私は、犯した罪がありませんから、書くことがありません」 王の声が頭の上へ落ちかかるように聞えた。 「その方は罪がないというが、あの一陌の金銭便ち魂を返す、公私随所に門を通ずべしは、何人の句だ」 ははじめて地府を嘲った詩によって罪を得たことを知った。彼は筆を執った。![]() 焼舂磨 の如き者に至りては、三生の賤士、一介の窮儒、 の供書は吏員の手から王の前へ往った。王はその供書を見てから言った。「令狐 の持論は正しい、志も王はその後で言った。 「烏老はやはり捕えてきて、獄に置かなくてはならない」 はそこで最初の鬼使の二人に送られて帰ることになった。 は鬼使に向って言った。「僕は人間界にあって、儒を業としておる者だから、地獄のことを聞いても、今までこれを信じなかったが、今日、ここへ来たから、一度見たいと思うが、見えるだろうか」 鬼使は言った。 「見えることは見えるが、ただ 鬼使は を一つの庁堂があって、帳簿を山のように積んで吏員の一人が坐っていた。それが刑曹録事であった。鬼使の一人はその前へ往った。 「この者が地獄を見たいと申しますから、お許しを願います」 録事は頷いて朱筆を持ち、一つの帖に何か書いて渡してくれた。それは 一行はそこから府門を出て北に向って往った。七八町も往ったところで大きな城がきた。それは鉄板を張り詰めたような黒い 城門の口には見るからに恐ろしい守衛がたくさんいた。皆牛の頭のように角のある顔の恐ろしい、それで体の青い紺色の髪の毛の、頭にも手足にももじゃもじゃと生えた者で、それがそれぞれ 二人の鬼使は そこで一行は門の中へ入った。中からは はもう足が物凄い叫喚の場処はすぐきた。黒い霧とも壁とも判らない物に は眼前が暗んだようになった。「さあ、もうすこし前へ往こう」 鬼使の一人がそう言って前の方へ歩くので、 は逃げ走るようにそれに随いて往った。 の眼の前に、銅のような横倒しにしてある二つの柱があって、その上に裸体の男と女が一人ずつ縛られているのが見えた。 はいくらか心にゆとりができていた。門口にいた守衛のような角のある体の青い 女の方はそれを見て叫びながら縛られている手足を動かしだした。夜叉はそんなことには頓着なく、男の腹を裂いて血みどろになった刀を持って往ってまたその腹に突き刺した。女の声はばったり絶えた。その傷口からも血といっしょに臓腑が流れ出た。 そこへ他の夜叉が湯気の立っている湯を盛った大きな はあの湯をどうするだろうと思って見ていた。夜叉は男の傍へ往って裂かれた腹の上へ杓を持って往き、それを傷口へ注いだ。するとまた他の夜叉がやはり同じような湯の杓を持ってきて、それを女の腹の傷口へ注いだ。「あれはどうするところだろう」 は不思議に思って鬼使の一人に聞いた。「あれは汚れた腹の中を洗っているところだよ」 鬼使はむぞうさに答えた。 「何故洗うだろうね」 「あの男は医者だよ、あの女の夫の病気を癒してやってるうちに、あの女と姦通したが、そのうちに夫が死んでしまった、べつに手をおろして殺したというではないが、そんなことで病人を大事にしなかったから、殺したも同じことだ、だからああして腹を洗ってるよ」 「そうかなあ」 一行はまた歩いた。 僧侶や尼僧達がたくさん裸になって立っている処があった。そこは夜叉達が牛や馬の皮を持ってきて、それを尼僧の頭から 「ここで畜類にせられているのは、どういう訳だろう」 はまた聞いた。「あの僧尼達は、自分が手を動かさずして世を渡り、そのうえ 三人はまた次の処へ往った。そこには入口に 「あの男を見るがいい」 鬼使の一人は罪人の一人へ指をさした。 「あれは は聞いてみた。「あれは宋の はもう家へ還りたくなった。「もういい、家へ還りたい」 鬼使は を送ってそこを出た。そしてすこし歩くともう の家であった。 はもう送って貰わなくてもよかった。「もういい、ここでたくさんだ、還って貰おう、しかし、何もお礼をするものがなくて気の毒だ」 すると鬼使が笑った。 「お礼はいらない、それよりか、また詩を作って、世話をかけないようにして貰おう」 も声を立てて笑った。そのはずみに夢が覚めて朝になって は夢のことを考えて、烏老の家へ往ってみた。烏老は前夜の三更の頃に底本:「中国の怪談(一)」河出文庫、河出書房新社 1987(昭和62)年5月6日初版発行 底本の親本:「支那怪談全集」桃源社 1970(昭和45)年発行 入力:Hiroshi_O 校正:noriko saito 2004年12月14日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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