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物理学の応用について(ぶつりがくのおうようについて)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-4 6:23:06 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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物理学は基礎科学の一つであるからその応用の広いのは怪しむに足らぬ。生命とか精神とかいうものを除いたいわゆる物質を取扱って何事かしようという時にはすぐに物理学的の問題に 純粋な科学の各種の方面でも物理学を応用しあるいは物理学の研究方法を転用する事が盛んになる。天文、気象、地質、海洋等に関する自然科学研究に物理学応用の発達して行くのはむしろ当然の事であろうが、普通の意味における物質とはよほど縁の遠い生理学や心理学にまでもだんだん応用が開けて行くようである。 工業における応用も事新しく述べるまでもない事である。ドイツの工業が著しい長足の進歩をしたのは、その基礎となるべき物理学、化学の研究に帰因するという事は識者の認めている所である。また医学の方でも物理的療法という言葉が出来て、その方の専門家もあるくらいである。また近年目ざましい進歩をしたいわゆる航空術などもやはり応用物理学の一つと云って差支えはあるまい。 以上に述べたとは少しく異なった殖産事業の方面においても、将来非常に有望な物理学応用の新区域があるように思われる。先ず農業の方面ではつとに農芸物理学という学科が出来ているくらいであるが、今後まだどれだけ発展するか予期し難いように見える。自分の知っている狭い範囲だけでも面白い問題が 以上は自分の狭い知識の範囲内で僅少な実例を挙げたに過ぎないが、要するにこれらの産業方面でも意外な物理学応用の区域がある事は疑いのない事である。 今一般に実際上の問題に物理学を応用しようとする時に、第一着手としてしなければならぬ事は問題自身の分析的研究である。実際上に起る問題をちょっと見ると簡単なようでも通常非常に複雑なものである。同時に範囲の判然せぬ問題が多い。例えば光線が海中に入り込む深さは 実際的の問題は往々意想外に複雑であるから、一通り以上に述べたような分析をしてその結果を綜合しても事実上そう思った通りにならぬ場合がある。そういう時に世人はよく理論と実際という 複雑な実際問題を研究して先ずその真相を明らかにしようという場合には、先ずその大体を明らかにして枝葉を後にするのが肝要である。これも多くの人にとっては平凡な事であろうが、世人からは往々忘れられる事である。 眼前の小利害にのみ また物理学を修めて後各種の実務に従事する人は、物理学は単に机上の学問ではなくて、到る処に活用の途のある学問だという事を忘れず、新しい応用方面の開拓に尽力されたいものである。 (大正二年三月『理学界』) 底本:「寺田寅彦全集 第五巻」岩波書店 1997(平成9)年4月4日発行 底本の親本:「寺田寅彦全集 文学篇」岩波書店 1985(昭和60)年 初出:「理学界」 1913(大正2)年3月1日 入力:Nana ohbe 校正:松永正敏 2006年7月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ●表記について
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