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鳥料理(とりりょうり)
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作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006-10-25 16:02:35 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 |
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前口上 昔タルティーニと云う作曲家が Trillo del Diavolo[#「Trillo del Diavolo」は斜体]と云うソナータを 夢の中で作曲したと云う話は 大層有名な話である 読者諸君も大方御存知だろうが、 何でもタルティーニは 自分の霊魂を悪魔に売った夢を見たそうな。 その時悪魔がヴァイオリンを手にとって いとも巧に弾奏し出したのは 到底彼の企て及ばざりし 「余は前後を忘れて驚嘆したり。 余の呼吸は奪われたり。 しかして余は夢より目覚めぬ。 余は余のヴァイオリンを取り 余が聞きたる音調をそれに されどそは その時余が作りたる楽曲、 余が夢中聞きたるものと比較せば、 その及ばざること これは晩年大作曲家自らが 彼の友人の天文学者ラランドに さて、左様なタルティーニが感慨はさることながら、 微々たる群小詩人の一人に過ぎぬ私も 夢の中で二三の詩の構想を得たばかりに、 何んとかしてそれに形体を与えようと随分苦しみ しかし夢中ではあんなに 海岸に打ち揚げられる漂流物のように 「ああ、夢の中の詩人の何んと幸福なことよ。 ああ、それに比べて現実を前にした詩人の何んと そんな 実は雑誌記者が夕方私の所にやって来て どうでも明日までに原稿を書いて 私は徹夜をしてもきっと間に合わせると約束をして それからすぐ 居るよりか、ひとつ夢でも見て詩の良導体になってやろう。」 そう考えながら寝床に這入り、私はそのまま他愛もなく眠ってしまった。 それから何やらごたごたと沢山夢は見たけれど、 勝手にしやがれ、と私は 「 鳥の骨ばかりになった奴にソオスをぶっかけて そいつを己に食わせやあがったが、 あれはあれでちょっと 己もひとつその流儀で行こうかしらん。 己のやくざな夢の 何とかそれなりに よし、それで行こう……」 1 奇妙な店 私の見る夢には大概色彩がある。そういう夢を見るのは神経衰弱のせいだと教えてくれる人が居る。そんなことはどうだっていい。 私が真先に書こうと思っている「奇妙な店」の方は、その第一の種類に属している。 突然、夢の場面が一変する。――が、それは場面が連続的に移動するのではない。それは不連続的に移動する。つまり、二つの場面の間にはぽかんと大きな 向うの町角の方が急に騒がしくなる
なんだか人が大勢集っている 私は見上げていた木の 何か珍らしい行列が向うの町から あんまり皆が夢中になって見ているので私も人々のうしろから背伸びをして見ている とうとうその行列が近づいて来たようだ 象だ! 象だ! 象だ! 大きな象が たった一人で、 象の皮膚はなんだか横文字の新聞を丸めたのをもう一度引き伸ばして その背中には真紅な その毛氈の上には小さな それから一すじ細ぼそと白い 何かの広告であるらしいがそれが誰にも分らないらしい 隣りの人に聞いてもそれは分らないのが当り前だと云うような顔をしている しかしその香炉の烟りは好い 象が (そうしてその象の残像と、そのとだけが私のなかに残って いつか次の場面になってしまっている) 私の向うに温室のようなものが見え出す それはすっかりガラス張りだ 私がそれを見て温室かしらと思ったのはそのガラス越しに 見知らない熱帯植物のような しかしそれは普通の温室ではないらしい 中にはマホガニイ製の小さな そしてその上に一つずつその熱帯植物のようなものが飾られてあるに過ぎない 何処かにこんな奇妙な しかしその中には誰もいない 全く ちょっと そんな ままよ、それまでだ……と思って私は 私がガラス戸を押し開けるや否や、ぷんと好いがする それがさっき象のさせていた好いとそっくりだ さっきのが私の鼻に 何ともかとも云いようのないほど好いだ 矢張り誰もいない 私はこわごわ一つの そのを捜す……私はそのとき始めて 熱帯植物の鉢植のかげに一つの灰皿があって それに それから一すじの白い烟りが細ぼそと立ち昇っているのである どうやらそれから私をすっかり魅しているが発せられているらしい 私はまた象のことを思い浮べる そして漸っといまあの象が 「ははあ、それだから誰にも分らなかったんだな なあんだ
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