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植物医師(しょくぶついし) 
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| 作者:未知 文章来源:青空文库 点击数 更新时间:2006/10/29 16:02:59 文章录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语 | 
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時  一九二〇年代 
処 盛岡市郊外 人物 ペンキ屋 
農民 一 農民 二 農民 三 農民 四 農民 五 農民 六 幕あく。 
粗末なバラック室、卓子二、一は顕微鏡を 「今日はあ。」 
「はぁい。」(爾薩待忙しく身づくろいする) (ペンキ屋徒弟登場 看板を 
爾薩待「ああ、君か、出来たね。」 
ペンキ屋(汗を拭きながら渡す)「あの、五円三十銭でございます。」 
爾薩待「ああ、そうか。ずいぶん急がして済まなかったね。何せ今日から開業で、新聞にも広告したもんだからね。」 
ペンキ屋「はあ、それでようございましょうか。」 
爾薩待「ああ、いいとも、立派にできた。あのね、お金は月末まで待って 
ペンキ屋「あのう、実はどちらさまにも現金に願ってございますので。」 
爾薩待「いや、それはそうだろう。けれどもね、ぼくも 
ペンキ屋「ええ、ですけれど、そう言いつかって来たんですから。」 
爾薩待「まあ、いいさ。僕だって、とにかくこうやって病院をはじめれば、まあ、院長じゃないか。五円いくらぐらいきっと払うよ。そうしてくれ給え。」 
ペンキ屋「だって、病院だって、人の病院でもないんでしょう。」 
爾薩待「 
ペンキ屋「だって現金でないと私帰って 
(すばやく看板を奪う) 
爾薩待「君、君、そう頑固なこと言うんじゃないよ。実は僕も困ってるんだ。先月まではぼくは県庁の耕地整理の方へ出てたんだ。ところが部長と 
ペンキ屋「だって、そんな先月まで交通整理だかやっていて 
爾薩待「交通整理じゃないよ。耕地整理だよ。けれどもそりぁ、医者とはちがわぁね。しかしね、百姓のことなんざ何とでもごまかせるもんだよ。ぼく、きっとうまくやるから、まあ置いとけよ。置いとけよ。」 
(また取り返す) 
ペンキ屋「そうですか。そいじゃ月末にはどうか間ちがいなく。困っちまうなあ。」 
爾薩待「大丈夫さ。君を困らしぁしないよ。ありがとう、じゃ、さよなら。」 
ペンキ屋徒弟退場。 
「申し。」 
爾薩待( 
農民一(登場 枯れた 
爾薩待「はあ、そうです。」 
農民一「陸稲のごとでもわがるべすか。」 
爾薩待「ああ、わかります。私は植物一切の医者ですから。」 
農民一「はあ、おりゃの陸稲ぁ、さっぱりおがらなぃです。この位になって、だんだん枯れはじめです、なじょにしたらいが、教えてくな※[#小書き平仮名ん、228-12]せ。」(出す) 
爾薩待(手にとって見る)「ははあ、あんまり乾き過ぎたな。」 
農民一「いいえ、おりゃのあそごぁひでえ 
爾薩待「ははあ、あんまり水のはけないためだ。」 
農民一(考える)「すた、去年なも、ずいぶん雨降りだたんとも、ずいぶんゆぐ 
爾薩待「ははあ、あんまり厚く 
農民一「厚ぐ蒔ぐて全体陸稲づもな、 
爾薩待「さうですな。品種や 
農民一「はあ、その塩水撰したのです。」 
爾薩待「ははあ、塩水撰した陸稲の 
農民一「まんつ、あだり前のどごで、あだり前の肥料してす。」 
爾薩待「そうですなあ、それは、ええと、あなたのあたりではなんぼぐらい 
農民一「まず一反歩四升だなす。おらもその位に播いだんす。」 
爾薩待「ははあ、一反歩四升と。少し厚いようですなあ、三升八合ぐらいでしょうな。然し、あなたのとこのは厚蒔のためでもないですなあ。そうすると、やっぱり肥料ですな。肥料があんまり少かったのでしょう。」 
農民一「はあ、まぁんつ、人並よりは、やったます。百刈りでば、まずおらあだり一反四 
爾薩待「あ、その硫安だ。硫安を濃くして掛けたでしょう。」 
農民一「はあ、別段濃いど思わなぃがったが、全体なんぼ位に薄めたらいがべす。」 
爾薩待「そうですな。硫安の薄め方となるとずいぶん色々ですがなあ、天気にもよりますしね。」 
農民一「曇ってまず、土のさっと湿けだずぎだら、なんぼこりゃにすたらいがべす。」 
爾薩待「そうですな。またあんまり薄くてもいかんですな。あなたの処ではどれ位にします。」 
農民一「まず 
爾薩待「ええ、まあそうですね、けれども、これ位では少し多いかも知れませんね。まあ、こんなんでしょうな。」(掌を少し小さくする) 
農民一「はあ、せどなはおれぁは、もっと入れだます。」 
爾薩待「そうですか。そうすればまあ病気ですな。」 
農民一「何病だべす。」 
爾薩待( 
農民一「はでな、病気よりも何が虫だなぃがべすか。」 
爾薩待「虫もいますか。葉にですか。」 
農民一「いいえ、根にす、小せぁ虫こぁ居るようだます。」 
爾薩待「ああなるほど虫だ。ちゃんと根を食ったあとがある。これは病気と虫と両方です。主に虫の方です。」 
農民一「はあ、私もそうだと思ってあんすた。」 
爾薩待(汗を 
農民一「はあ、それで、その根切虫、無ぐするになじょにすたらいがべす。」 
爾薩待「さうですなあ、虫を殺すとすればやっぱり 
農民一「はあ、どこで売ってるべす。」 
爾薩待「いや、それは私のとこが病院ですからな。私のとこにあります。いま上げます。」 
農民一「はあ。」 
爾薩待(立って 
農民一「五畝歩でごあんす。」 
爾薩待「五畝歩とするとどれ位でいいかなあ。(しばらく考えてなあにくそという風)これ位でいいな。」(瓶のまま渡す) 
農民一「あの虫のいなぃどごさも掛げるのすか。」 
爾薩待(あわてる)「いや、それは、いたとこへだけかけるのです。」 
農民一「枯れだどごぁ半分ごりゃだんす。」 
爾薩待「ああ、丁度その位へかけるだけです。」 
農民一「水さなんぼごりゃ入れるのす。」 
爾薩待「肥桶一つへまずこれ位ですなあ。」 
農民一「はあ、そうせば、よっぽど叮ねいに掛げなぃやなぃな。まんつお有難うごあんすな。すぐ行って掛げで見ら※[#小書き平仮名ん、232-7]す。なんぼ上げだらいがべす。」 
爾薩待「そうですな。診察料一円に薬価一円と、二円いただきます。」 
農民一「はあ。」(財布から二円出す) 
爾薩待(受取る)「やあ、ありがとう。」 
農民一「どうもお有難うごあんした。これがらもどうがよろしぐお願いいだしあんす。」 
爾薩待「いや、さよなら。」(農民一 退場) 
爾薩待(ほくほくして室の中を往来する)「ふん。亜砒酸は五十銭で一円五十銭もうけだ。これなら一向訳ないな。向こうから聞いた上でこっちは解決をつけてやる丈だから。」(硫安を入れるときの手付をする) 
「もうし。」 
爾薩待「はい。」(農民二 登場) 
農民二「植物医者づのぁお前さんだべすか。」 
爾薩待「ええ、そうです。」 
農民二「 
爾薩待「ああわかります。私は植物一切の医者ですから。」 
農民二「はあ、おりゃの陸稲ぁ、さっぱりおがらなぃです。この位になってだんだん枯れはじめです。」 
爾薩待「ああ、そうですか。まあお掛けなさい。ええと、陸稲が枯れるんですか。」 
農民二「はあ、 
爾薩待「ああ、なるほど、これはね、こいつはね、あんまり乾き過ぎたという訳でもない、また水はけの悪いためでもない。」 
農民二「はあ、全ぐその通りだんす。」 
爾薩待「そうでしょう。またあんまり厚く蒔き過ぎたというのでもない。まあ一反歩四升位 
農民二「そうでごあんす、そうでごあんす、丁度それ位蒔ぎあんすた。」 
爾薩待「そうでしょう。また肥料があんまり少ないのでもない。また硫安を 
農民二「はあ、そうでごあんす、そうでごあんす。」 
爾薩待「そうでしょう、またこれは病気でもない。ぼく考えるに、どうです、これ位ぐらいのこんな虫が根についちゃいませんか。」 
農民二「はあ、おりあんす、おりあんす。」 
爾薩待「なるほど、そうでしょう。そいつがいかんのです。」 
農民二「なじょにすたらいがべす。」 
爾薩待「それはね、 
農民二「どごで売ってべす。」 
      
 
 
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