您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 海野 十三 >> 正文

二、〇〇〇年戦争(にせんねんせんそう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 15:50:34  点击:  切换到繁體中文



   重大報告

 ここは、大洋をへだてたキンギン民主国であった。
「長官。では、幕僚会議の準備ができましたから、どうぞ」
「おお、そうか」
 戦争長官ラヂウム元帥げんすいは、自分の机のうえに足をあげて、動物漫画の本を読んでいたが、ここで、残念そうに、ぱたりとページを閉じた。
「一体、今は、何時かね」
「ちょうど、十三時でございます」
 声はするが、副官の姿は見えない。その声は、机の上においた水仙の花壜かびんの中から、聞えてくるのであった。花壜の高声器だ。
 十三時というと、午後一時のことであったが、ラヂウム元帥の自室はさんさんと白光があたって、春のような暖かさであった。
「うむ、あと一時間すると、わしは家内と食事をすることになっているから、それまでに、会議を片づけてしまわないと困るんだ。じゃあ、早く階上へやってくれ」
「はい、では会議のあります第十九階へ、移動いたします」
「うむ、早くやれ!」
 元帥は、椅子にふんぞりかえったまま、副官に対し、早く第十九階の会議室へやれと、いそがした。昔の人が、この会話をきいたら、元帥は気がちがっているのだと思うであろう。椅子に根のえたように腰を下ろしながら、早くやれといっても、やりようがないではないか。
 いや、そうでもない。やりようはたしかにあるのだった。なぜなればとつぜん元帥の机上にある電気時計のような形をした段数計の指針が、二十四のところから、二十三、二十二と、数のすくない方へうごきだした。
 階数が、だんだん減っていくのだ。ということは、元帥のいる部屋が、まるでエレベーターのように、上へのぼっていくのであった。もちろん、ここは地下建築なのであるから、上へいくほど、階数は減る。として、ついに第十九階へのぼった。
 すると、壁が、どしんと、下に落ちた。向うの部屋が、見とおしになった。
 向うの部屋は、まるで幅の広い階段に、人間の首を植たように、二十近い首が並んで、こっちを向いていた。そして、一せいに、目をぱちぱちとやった。それは、元帥に対する敬礼であったのだ。
「やあ」
 と、元帥は、ゆったりした言葉で、答礼をした。
「では、諸君。会議をはじめる」
 と、元帥は、開会を宣した。階段に生えたたくさんの首と会議をはじめるなんて、変な光景であった。
 そのたくさんの首は、いずれも薄眼うすめをひらいて、元帥の言葉を、しずかに待ちうけているようであった。
 そのとき、突然、また例の副官の声が、聞えた。
「長官に申上げます。只今、第四参謀が盲腸炎で入院し、直ちに開腹手術をいたしますそうです」
「なに、第四参謀が……」
「そうであります。それで、第四参謀は会議を失礼したいと、申して参りましたがどういたしましょう」
「盲腸炎なら、仕方がない。会議から退いてよろしいが、彼に、よくいって置け、盲腸などは、子供のとき取って置くものじゃ。つけて置くから、折角の重要会議に役に立たんじゃないかといっておけ」
「はい。そう申します」
「第四参謀は、下ってよろしい」
 長官ラヂウム元帥が、そういうと、がたんという音がして階段に生えていた首の一つが、その場に前に倒れた。見るとその首は、本物の首ではなく、作り首だった。それは首からうえの作り物であった。そして、一種の電話機であったのだ。
 つまり首のその本人は、元帥の前にいないのである。遠くにいるのだった。ただ、彼を代表する電話機だけが、首の形をして、ラヂウム元帥の前に並んでいたのだ。昔は、会議をするときには、方々から参謀が参集したものである。今は、勝手な場所にいて、ただ、自分が背負っている携帯無電機のスイッチを入れると、今元帥の前の作り首が、むっくり起き上る。これが(はい、電話で、お話を聞いていますよ)という信号なのである。
 ラヂウム元帥は、そういう作り首に向って、会議を宣言したのだ。
「……只今、イネ州駐在のゴールド大使より、非常警報が届いた。アカグマ国の軍隊は、続々集結している。また予備兵たちへは、動員令が発せられたそうである。彼等は、はりきって、すでに発砲している。第一岬附近は、戦場のようだ。国軍はしきりに東方へ向って、移動を開始し、イネ州の東海岸には、艦隊が出発命令を待っているそうじゃ」
 元帥は、そういって、血の通っていない首の列に、ずーっと、目を走らせた。


   殺人電気

「元帥閣下。その情報は、もちろん、信ずべきでありましょうな」
 と、第七番の首が叫んだ。リウサン参謀の声だった。
「もちろん、信じて、さしつかえない。ゴールド大使は、優秀なる外交官であり、つスパイだ。彼女は、さっき、彼女の義眼に仕掛けてある精巧な小型無電機を用いて、こっちへ話しかけてきたが、間もなく、もう一度、諸君の前に、なにか報告をしてくるはずじゃ」
 ラヂウム元帥は、そこで言葉を切って、机の引出しをあけた。そして、箱の中から、チューインガムを引張り出すと、それを口の中に放りこんで、にちゃにちゃやりだした。
「長官、ゴールド大使からの電話です」
 副官の声だ。いよいよ、再び女史の小型無電機が、報告を伝えてくるらしい。
「よし、こっちへ線をつなげ」
 と、ラヂウム元帥は、命令した。
「はい、只今、つなぎます」
 副官の声が引込むと、入れ替りに、ゴールド大使の、鼻にかかったなまめかしい声が聞えてきた。
「ああ、もしもし。こっちは、ゴールド大使です。スターベア大総督は、ついに第一次から第十六次までの動員を完了しました。渡洋連合艦隊は、あと三時間たてば、軍港を離れるそうです……」
「一体、彼奴きゃつらは、どこの国と戦うつもりなのですかね。本当に、われわれを対手あいてにするつもりですかね」
 と、ラヂウム元帥は、問いかえした。
「それは、もちろん、そうなのです。この無電は、秘密方式のものですから、なにをいっても大丈夫でしょうから、いいますが、この前もスターベア大総督は、太青洋の彼方かなた――といいますと、わが祖国、キンギン国のことなんですが、その太青洋の彼方に、別荘を作りたい。そして、一週間はこっちで暮し、次の一週間は、そっちで暮し、太青洋を、わが植民地の湖水として、眺めたいなどと、申して居りましたわよ」
「そうですか。そいつは、聞き捨てならぬ話ですわい。太青洋の伝統を無視して、湖水にするつもりだなんて、許しておけない暴言だ。よろしい。スターベアが、そういう気なら、戦争の責任は、ことごとく彼等にあるものというべきです。そういうことなら、こっちも遠慮なく、戦うことができて、勝手がよろしい」
 と、元帥は、憤慨して、
「さあ、それではゴールド大使。キンギン国内における軍隊の動きについて、貴下の集められた情勢を、われわれに詳しく話していただきたい」
「はい、では申上げましょう。まずわが密偵の一人は……」
 と、ゴールド女史は、長々しい報告を喋りはじめた。
 元帥は、チューインガムを、くちゃくちゃみつつ、女史の報告に耳を傾けていたが、それから間もなく、彼はどうしたものか、うんといって、両手で虚空をつかむと、その場に悶絶もんぜつしてしまった。
 不思議な死にようだった!
 元帥の心臓は、ぱたりととまり、身体は、どんどん冷えていった。
 その頃、この室内には、さらに奇怪なことが起った。それは、元帥が、さっきから目の前に睨んでいたたくさんの将軍や参謀たちの作り首が、まるでうしろからつちなぐりつけたように、階段の上で、ごとごとばたんばたんと、しきりに前に倒れ、そして転がるのであった。そして五分とたたない間に、只一つ、リウサン参謀の作り首だけが、きちんと立って、残っているだけで、他の作り首は、悉く倒れてしまったではないか。
 一体どうしたのであろう。
 警鈴ベルが、じゃんじゃん鳴りだしたのは、それから更に、五分ほどて後のことだった。ゴールド女史のラジオがぷつんと切れた。
 暫らくして扉が、荒々しく開かれ、そこへ飛びこんで来たのは数人の陸軍将校だった。
「あっ、たいへん。長官が死んでしまわれた」
「おお、やっぱり。いけなかったか」
 将校たちは、顔色をかえて、老元帥の死体を取り巻いた。
「ひどいことをやりやがったな。かねて、こういう危険があるかもしれないと思い、は、注意を願うよう、上申しておいたのに」
「私も、たびたび長官に、申上げたんですがなあ」
 そういって、舌打ちをしたのは、長官の副官だった。
「もう、とりかえしがつかない。このうえは、弔合戦とむらいがっせんあるばかりだ。ゴールド大使には、しばらく秘密にして置け」
 暗涙をのんで、そういったのは、中で一番肩章の立派なアルゴン大将だった。彼は、数分前新任されたばかりの戦争次官だった。
「やっぱり、あれにやられたんですかなあ」
 と、別の将校が、次官を見上げながら、いった。
「そうだ。あれに違いない。つまり、アカグマ国軍の電波隊が、ゴールド女史の秘密無電を利用し、女史の電波のうえに、恐るべき殺人電気を載せたのだ。それにちがいない。だから、女史からの無電をきいていた者は、長官をはじめとし、遠方で聞いていた幕僚の悉くが、その怪電気にあたって即死してしまったのだ」
「女史からの電波に、殺人電気を載せるなんて、アカグマ国の奴等やつらは、人か鬼かですねえ」
「人か鬼かといっても、今更いまさら仕方がない。敵となれば、むを得ないことだ。とにかく、今重態のリウサン参謀が、もし一命を助かれば、何もかも分るだろう」
 ただ一人の生残者リウサン参謀の快癒かいゆを待つまでもなく、怪電気は、太青洋の空を越えて、一瞬間に、ラヂウム元帥と、十数名の優秀なる幕僚たちを、殺害してしまったのである。アカグマ国側の奇襲は大成功をおさめ、それに反してキンギン国側は、大犠牲を払ったのである。


   快速潜水艦隊

 キンギン国では、ラヂウム元帥に代り、アルゴン大将が、戦争次官のままで、アカグマ国攻略軍を指揮することとなった。彼は、まだ白面の青年だった。
 このアルゴン大将は、どっちかといえば、幸運児でもあった。彼は、軍人であるうえに、科学者でもあった。彼は、当時大尉であったが、ロケットを試作し、大胆にもそれに乗り込むと月世界をめがけて地球を飛び出し、ついに、月のまわりを一周して、帰還したという大冒険の成功者だった。しかも彼は、独特の設計によって、その往復に五ヶ月を費したばかりであった。キンギン国の大統領は、彼アルゴン大尉を招き、その成功を絶讃ぜっさんすると共に一躍大将に昇任させた。「実力ある者は、どんな高い官職にものぼることが出来る。年齢や経歴などを問うものではない」というのが、キンギン国の歴代の大統領の信念であった。こうした例は、この国内にたいへん多く、そういういずれも若々しい能力者によって、この国の国防力や文化はこの二十年間に急速な発展を遂げ[#不自然な途切れと1行アキは、ママ]

 アルゴン大将は、月世界からの帰還後、しばらく空軍研究所長についていたが、ごく最近、戦争次官に新補されたのであった。とたんに、アカグマ国との間に捲き起ったこの大危機事件であった。彼は、たいへんなはりきり様で、大動員を下令するとともに、一夜のうちに、新しい作戦計画一千一号を書き上げてしまったのである。
 作戦計画一千一号!
 アルゴン大将は、即戦即決主義だった。彼は、これまでのいくつかの戦争において、いつも敗戦の原因となった漸進ぜんしん主義や打診主義を排し、全国軍の重攻撃兵器を一つに集めて、猛烈なる大攻撃にうって出る主義だった。戦争に勝つこと以外のことを考えてはならないと、彼は思っていた。いささかでも、敗れる恐れのある戦争は、決してしない主義だった。敵が十の力を出すときには、こっちは少くとも五十の力を向けて、絶対的に圧倒するのだ。そのために百の力を持っていながらも、後の機会のことを思って、九十の力をたくわえ、十の力を出すようなやり方を極端に排撃するのだ。百の力があるものなら、百の力のすべてを一度に用いるのであった。そして一度で、敵を再び立つことの出来ないほどに蹂躙じゅうりんしてしまう。そうする方が、味方の損害は、極めて微々たる程度に喰い留ることが出来る。戦争を行って、しかも戦後に兵力のうえで依然として世界を睨みつけるためには、この戦法に勝るものはない。
 そのような信念の下に、アルゴン大将は、およそ太青洋を進攻できる軍団と兵器との全部を動員し、それを集結させ、そしてアカグマ国のイネ州に向けることにした。
 大空には、飛行軍団を六、海上には、一千三百隻の艦艇を、更に水中には、キンギン国とっておきの快速潜水艦隊を配置し、一挙にアカグマ国をぶっ壊す作戦であった。文字どおり、空中、海上、海底の三方よりの立体戦であった。
「全軍、出動用意!」
 アルゴン大将は、官邸のマイクを通じ、すべての根拠地に対して、号令した。
 やがて、用意よしの返事が大将のところへきた。そこで大将は、
「全軍、進め!」
 と、出発を命じた。それこそ、キンギン国建国以来の歴史的な瞬間だった。なぜなれば、そのようなキンギン国の戦闘部隊の豪華さは、このときを境として、再び見られなかったからである。
 全軍は、直線的に、真西へ向けて、進発した。それは丁度ちょうど洋上に夕闇が下りたばかりの頃だった。太青洋踏破は、正二日半で完了する予定だった。
 アルゴン大将の、特に信頼をおいていたのは、二百隻から成る快速潜水艦隊であった。大将は、艦隊最高司令官スイギン提督から刻々報告をこっちへ送らせていた。
「只今、二十時。わが潜水艦隊は、○○地区を潜航中。全艦隊、異常なし」
 そういう報告が入ると、アルゴン大尉は、ふうッと、鯨のような息をついて、にっこりと微笑するのだった。アカグマ国を海底から攻撃する日は、刻々として近づきつつあるのであった。この潜水艦隊は、ただの潜水艦ではなく、陸岸に行き当ると、するすると岸をいのぼって、たちまち重戦車に早変りをするという怪物なのだ。アルゴン大将が、期待をかけるのも、無理はなかった。
「只今、全航程の三分の二を踏破せり。あと二時間にて、あかつきを迎える筈。艦隊の全将兵の士気旺盛おうせいなり」
 スイギン提督からの報告は、一報ごとに、戦争次官アルゴン大将の顔に、明るい色を増させるばかりだった。
 ところが、その暁の直前において、アルゴン大将は、たいへん気にかかる無電に接した。
「スイギン潜水艦隊最高司令官発。只今、十三時四十五分、わが艦隊は、海面下において、不慮の衝突事件を惹起じゃっきせり。若干の爆発音を耳にする。海水は甚だしく混濁し、咫尺しせきを弁ぜず。余はすぐに――」
 電文は、そこで、ぷつりと切れている。通信隊員の懸命の努力にもかかわらずスイギン提督からの無電の後半は、ついに、受信することができなかった。
 一体、なにごとが起ったのであろうか。アカグマ国の陸岸まで、あと四分の一航程を残すばかりだというのに!

上一页  [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]  ... 下一页  >>  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告