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中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)03

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-27 17:40:38  点击:  切换到繁體中文


   盤瓠

 高辛氏こうしんしの時代に、王宮にいる老婦人が久しく耳のやまいにかかって医師の治療を受けると、医師はその耳から大きなまゆのごとき虫を取り出した。老婦人が去った後、ひさごかきでかこってふたをかぶせて置くと、虫は俄かに変じて犬となった。犬の毛皮には五色ごしきあやがあるので、これを宮中に養うこととし、瓠と盤とにちなんで盤瓠ばんこと名づけていた。
 その当時、戎呉じゅうごというえびすの勢力が盛んで、しばしば国境を犯すので、諸将をつかわして征討を試みても、容易に打ち勝つことが出来ない。そこで、天下に触れを廻して、もし戎呉の将軍の首を取って来る者があれば、千きんの金をあたえ、万戸ばんこむらをあたえ、さらに王の少女を賜わるということになった。
 やがて盤瓠は一人の首をくわえて王宮に来た。それはかの戎呉の首であったので、王はその処分に迷っていると、家来たちはみな言った。
「たとい敵の首を取って来たにしても、盤瓠は畜類であるから、これに官禄を与えることも出来ず、姫君を賜わることも出来ず、どうにも致し方はありますまい」
 それを聞いて少女は王に申し上げた。
「戎呉の首を取った者にはわたくしを与えるということをすでに天下に公約されたのです。盤瓠がその首を取って来て、国のために害を除いたのは、天の命ずるところで、犬の知恵ばかりではありますまい。王者はげんを重んじ、伯者は信を重んずと申します。女ひとりの身を惜しんで、天下に対する公約を破るのは、国家のわざわいでありましょう」
 王もおそれて、その言葉に従うことになった。約束の通りに少女をあたえると、犬は彼女を伴って南山にのぼった。山は草木そうもくおい茂って、人の行くべき所ではなかった。少女は今までの衣裳を解き捨てて、いやしい奴僕ぬぼくの服を着け、犬の導くままに山を登り、谷に下って石室いしむろのなかにとどまった。王は悲しんで、ときどきその様子を見せにやると、いつでも俄かに雨風が起って、山は震い、雲はくらく、無事にその石室まで行き着くものはなかった。
 それから三年ほどのあいだに、少女は六人の男と六人の女を生んだ。かれらは木の皮をもって衣服を織り、草の実をもって五色に染めたが、その衣服の裁ち方には尾の形が残っていた。盤瓠が死んだ後、少女は王城へ帰ってそれを語ったので、王は使いをやってその子ども達を迎い取らせたが、その時には雨風のたたりもなかった。
 しかし子供たちの服装は異様であり、言葉は通ぜず、行儀は悪く、山に棲むことを好んで都を嫌うので、王はその意にまかせて、かれらにい山や広い沢地をあたえて自由に棲ませた。かれらを呼んで蛮夷といった。

   金龍池

 しん懐帝かいてい永嘉えいか年中に、韓媼かんおんという老女が野なかでおおきい卵をみつけた。拾って帰って育てると、やがて男の児が生まれて、そのあざな※児けつじ[#「てへん+厥」、47-12]といった。
 ※[#「てへん+厥」、47-13]児が四歳のとき、劉淵りゅうえん平陽へいようの城を築いたが、どうしても出来ない。そこで、賞をかけて築城術の達者を募ると、※[#「てへん+厥」、47-14]児はその募集に応じた。彼は変じて蛇となって、韓媼に灰を用意しろと教えた。
「わたしの這って行くあとに灰をまいて来れば、自然に城の縄張りが出来る」
 韓媼はそのいう通りにした。劉淵は怪しんで※[#「てへん+厥」、47-17]児をとらえようとすると、蛇は山の穴に隠れた。しかもその尾の端が五、六寸ばかりあらわれていたので、追っ手は剣をぬいて尾を斬ると、そこから忽ちに泉がき出して池となった。金龍池の名はこれから起ったのである。

   発塚異事はつちょういじ

 三国さんごく孫休そんきゅうのときに、一人の戍将じゅしょう広陵こうりょうを守っていたが、城の修繕をするために付近の古い塚を掘りかえして石の板をあつめた。見あたり次第にたくさんの塚をぶちこわしているうちに、一つの大きい塚をあばくことになった。
 塚のうちには幾重いくちょうかくがあって、そのとびらはみな回転して開閉自在に作られていた。四方には車道が通じていて、その高さは騎馬の人も往来が出来るほどである。ほかに高さ五しゃくほどの銅人どうじんが数十も立っていて、いずれも朱衣、大冠、剣を執って整列し、そのうしろの石壁には殿中将軍とか、侍郎常侍とか彫刻してある。それらの護衛から想像すると、定めて由緒ある公侯の塚であるらしく思われた。
 さらに正面の棺を破ってみると、棺中の人は髪がすでに斑白はんぱくで、衣冠鮮明、その相貌は生けるが如くである。棺のうちには厚さ一尺ほどに雲母きららを敷き、白い玉三十個を死骸の下に置きならべてあった。兵卒らがその死人をき出して、うしろの壁にもたせかけると、冬瓜とうがのような大きい玉がその懐中から転げ出したので、驚いて更に検査すると、死人の耳にも鼻にもなつめの実ほどの黄金が詰め込んであった。
 次も墓あらしの話。
 漢の広川王こうせんおうも墓あらしを好んだ。あるとき欒書らんしょの塚をあばくと、棺も祭具もみな朽ち破れて、何物も余されていなかったが、ただ一匹の白い狐が棲んでいて、人を見ておどろき走ったので、王の左右にある者が追いかけたが、わずかにほこをもってその左足を傷つけただけで、遂にその姿を見失った。
 その夜、王の枕もとに、ひげも眉もことごとく白い一個の丈夫じょうふがあらわれて、お前はなぜおれの左の足を傷つけたかと責めた上に、持ったる杖をあげて王の左足を撃ったかと思うと、夢は醒めた。
 王は撃たれた足に痛みをおぼえて一種の悪瘡あくそうを生じ、いかに治療しても一生を終るまで平癒しなかった。

   徐光の瓜

 三国ののとき、徐光じょこうという者があって、市中へ出て種々の術をおこなっていた。
 ある日、ある家へ行ってうりをくれというと、その主人が与えなかった。それでは瓜の花を貰いたいと言って、地面に杖を立てて花を植えると、忽ちにつるが伸び、花が開いて実を結んだので、徐は自分も取って食い、見物人にも分けてやった。瓜あきんどがそのあとに残った瓜を取って売りに出ると、中身はみなからになっていた。
 徐は天候をうらない、出水やひでりのことを予言すると、みな適中した。かつて大将軍※(「糸+林」、第4水準2-84-35)そんりんの門前を通ると、彼は着物のすそをかかげて、左右につばしながら走りぬけた。ある人がその子細をたずねると、彼は答えた。
「一面に血が流れていて、そのにおいがたまらない」
 将軍はそれを聞いて大いに憎んで、遂に彼を殺すことになった。徐は首を斬られても、血が出なかった。
 将軍は後に幼帝を廃して、さらに景帝けいていを擁立し、それを先帝のみささぎに奉告しようとして、門を出て車に乗ると、俄かに大風が吹いて来て、その車をゆり動かしたので、車はあやうく傾きかかった。
 この時、かの徐光が松の樹の上に立って、笑いながら指図しているのを見たが、それは将軍の眼に映っただけで、そばにいる者にはなんにも見えなかった。
 将軍は景帝を立てたのであるが、その景帝のためにたちまちちゅうせられた。





底本:「中国怪奇小説集」光文社
   1994(平成6)年4月20日第1刷発行
入力:tatsuki
校正:もりみつじゅんじ
2003年7月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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    「けものへん+矍」    23-4、23-7
    「てへん+厥」    47-12、47-13、47-14、47-17

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