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中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)15池北偶談(清)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-27 18:03:01  点击:  切换到繁體中文


   追写真

 宋茘裳そうれいしょうも国初有名の詩人である。彼は幼いときに母をうしなったので、母のおもかげをしのぶごとに涙が流れた。
 呉門ごもんのなにがしという男がみずから言うには、それには術があって、死んだ人の肖像を写生することが出来る。それを追写真ついしゃしんといい、人の歿後数十年を経ても、ありのままの形容を写すのは容易であると説いたので、茘裳は彼に依頼することになった。
 彼はきよい室内に壇をしつらえさせ、何かの符を自分で書いて供えた。それから三日の後、いよいよ絵具や紙や筆を取り揃え、茘裳に礼拝させて立ち去らせた。
 一室の戸は堅く閉じて決して騒がしくしてはならないと注意した。夜になると、たちまち家根瓦に物音がきこえた。
 夜半に至って、彼が絵筆を地になげうつ音がかちりときこえた。家根瓦にも再び物音がきこえた。彼は戸をあけて茘裳を呼び入れた。
 室内には燈火が明るく、そこらには絵具が散らかって、筆は地上に落ちていた。しかも紙は封じてあって、まだひらかれていない。早速に啓いてみると、画像はもう成就していて、その風貌はさながら生けるが如くであった。茘裳はそれを捧げてまた泣いて、その男に厚い謝礼を贈った。
「死後六十年を過ぎては、追写真も及びません」と、彼は言ったそうである。
 蘇穀言そこくげんの随筆にも、宋僉憲そうけんけんは幼にして父をうしない、その形容を識らないので、方海山人ほうかいさんじんに肖像をかいて貰って持ち帰ると、母はそれを見て、まことに生けるが如くであると、今更に嘆き悲しんだということが書いてある。してみると、世にはこういうことわりがあると思われる。

   断腸草

 康煕庚申こうきこうしんの春、徽州きしゅうの人で姓をほうという者が、郡へ商売に出た。八人の仲間が合資で、千金の代物しろものを持って行ったのである。江南へ行って、河間の南にある腰※ようてん[#「足+占」、290-8]の駅に宿った。
 仲間の八人と、騾馬らばをひく馬夫とがまず飯を食った。方は少しおくれていると、その一人が食いながら独り言をいうのである。
断腸草だんちょうそう……」
 それを三度も繰り返すので、ほうは怪しんだ。
「君は食い物のなかに断腸草があるのを知っているのか。それなら食ってはならないぜ」
「そうだ」と、その男は言った。
 見ると、馬夫はすでに中毒状態でたおれた。急に一同に注意して食事を中止させ、方は往来へ駈け出してそこらの人たちを呼びあつめた。医師を招いて診察を求めると、それは食い物の中毒であるといった。解毒げどく剤をあたえられて、一同幸いに本復したが、馬夫だけは多く食ったために生きなかった。
 方は一人の男にむかって、どうして断腸草の名を口にしたかと訊くと、彼は答えた。
「食っている時に、誰かうしろから断腸草と三度繰り返して言った者があるので、わたしもそれに連れて言っただけのことで、最初から知っていたわけではないのだ」
 断腸草を食えば、はらわたがれて死ぬということになっている。それを食い物にまぜて食わせたのは、われわれを毒殺して荷物を奪う手段に相違ないと、一行はそれを訴え出ようといきまいたのを、土地の人びとがいろいろに仲裁し、馬夫の死に対して百金を差し出すことで落着、宿の主人は罪を免かれた。
 道中では心得て置くべき事である。

   関帝現身

 順治丙申じゅんじへいしんの年、五月二十二日、広東韶州府カントンしょうしゅうふの西城の上に、関羽かんうがたちまち姿をあらわした。彼は城上の垣によりかかって、右の手に長いひげをひねっていたが、時はあたかも正午であるので、その顔かたちはありありと見られた。
 越えて二十三日と二十八日に又あらわれた。
 城中の官民はみな駈け集まって礼拝し、総督李棲鳳りせいほうはみずから関帝廟に参詣した。

   短人

 とく州の兵器庫はみん代の末から久しくとざされていたが、順治の初年、役人らが戸を明けると、奥の壁の下に小さい人間を見いだした。
 人は身のたけ僅かに一尺余、形は老翁の如くで、全身に毛が生えていた。彼は左の膝を長くひざまずいて、左の手を垂れたままで握っていた。右の足は地をふんで、右の肘を膝に付け、その手さきは頤を支えていた。髪もひげも真っ白で、悲しむが如くに眉をひそめ、眼を閉じていた。
 やがて家のまわりに電光雷鳴、その人のゆくえは知れなくなった。

   化鳥

 ※(「赤+おおざと」、第3水準1-92-70)かく某はかつて湖広の某郡の推官すいかんとなっていた。ある日、捕盗の役人を送って行って、駅舎に一宿した。
 夜半に燈下に坐して、んで仮寝うたたねをしていると、恍惚のうちに白衣の女があらわれて、はりでそのひたいを刺すと見て、おどろき醒めた。やがてほんとうに寝床にはいると、又もやその股を刺す者があった。痛みが激しいので、急に童子を呼び、しょくをともしてあらためると、果たして左の股に鍼が刺してあった。
 おそらく刺客しかく仕業しわざであろうと、燭をとって室内を見廻ったが、別に何事もなかった。家の隅の暗いところに障子代りのきぬが垂れているので、その隙間から窺うと、そこには大きい鳥のような物が人の如くに立っていた。その全身は水晶に似て、臓腑ぞうふがみな透いて見えた。
 化鳥けちょうは人を見て直ぐにつかみかかって来たので、※(「赤+おおざと」、第3水準1-92-70)も手に持っている棒をふるってかれにせまった。化鳥はとうとう壁ぎわに押し詰められて動くことが出来なくなったので、※(「赤+おおざと」、第3水準1-92-70)は大きい声で呼び立てると、従者は窓を破って飛び込んで来た。棒とやいばに攻められて、化鳥は死んだ。
 しかも、それが何の怪であるかは誰にも判らなかった。





底本:「中国怪奇小説集」光文社
   1994(平成6)年4月20日第1刷発行
※校正には、1999(平成11)年11月5日3刷を使用しました。
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2003年7月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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●表記について
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  • [#…]は、入力者による注を表す記号です。
  • 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。
  • 傍点や圏点、傍線の付いた文字は、強調表示にしました。
  • この作品には、JIS X 0213にない、以下の文字が用いられています。(数字は、底本中の出現「ページ-行」数。)これらの文字は本文内では「※[#…]」の形で示しました。

    「口+斗」    288-1、288-2
    「足+占」    290-8

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