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小熊秀雄全集(おぐまひでおぜんしゅう)-02

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-29 0:29:20  点击:  切换到繁體中文

 

散文詩 泥酔者と犬



酔ひしれた足取りは螺旋階段を廻るやうななかば快感と不安の平地を私はよろよろと泳ぎ出した、街は真夜中の沈思でろくでもない情念のトランプの真最中だらう、どこの屋根屋根の角度を仰いでも妙に糞落つきに沈着な冷たい陰影の中に三角の眼をぐるぐると廻転さしてゐるし電信柱の行列が手ぢかな所に立つてゐるのから順々に雪の地上にばたんばたんと恐ろしい音響を立てて横に倒れて了ふし、それは静かなうちに賑やかな街の風景であつた、私はまづこのとろんこの眼をして寝静まつた大通の中からなにかしら動物の相棒を探してやらうといふ考へから道路の真中に震へた感情の両足の安定をたもつために少からず脳神経をなやましぐつと反り身になつて辺りをぎろぎろと嗅ぎ歩いたが私の瞳孔は散大して了つて愛する友人の一人も発見することが出来なかつたのです、地球壊滅の日に生存した人間のやうに生物をひた恋しく私はさびしい気持であてもなく探しあるいたがひつそりとした深夜の空が明るいばかり月は北国の月の青さで丸さで照り返してもみんな青い白さである街はあんえつの湯たんぽの上気でもうろうとねむつて居るのです、ちやうど其時ですつひ足もとの大地の上にひろびろと青い冬の明るい雪にいつぴきの黒くくまどられた犬が足のみぢかい犬がアンリー、ルーソーの犬がひよつこりと突立つてゐたのです、私はこの善良なる友人を得た喜びにじつと上から犬を見下ろしてゐたのです、すると遠くから「おうおうおうおう」と犬の遠吠えが聞えると私の友人の犬も「おうおうおうおう」とどうやら涙をながして吠えるやうです、するとあつちこつちの暗がりから「ぞろぞろぞろぞろ」と色々の服装をした犬の仲間の奴が出てきて五匹も十匹も出てきてべらべらの長い耳を動かし前肢をきちんと揃へてみんなで揃つて空に向つて吠えるのです、じつと見てゐた私はいつの間にか犬の感情の中に「おうおうおうおう」とみんなといつしよになつて吠えてゐたのです私の犬は急に月光が怖ろしくなつて尻尾をまるめてしまひ空と大地の限りなくひろびろとした不可思議さにまたは人間の呪詛する「おうおうおうおう」といふ遠吠にけんめいな犬の一匹となつて平穏に熟睡した月光の街にぽかんと突立つて居たのでした―一九二四、一、二〇―


散文詩 白痴アンリー・ルーソー



誰がこの幅広い道路を真直に歩行する馬鹿者が居るか、恐らくは皆なよなよとした感情の通行で路傍のハモニカにも耳を傾けるロマンティストの幌馬車に乗つた青白い紳士の群ではないかあの愚鈍なる馬鹿者、仏蘭西(フランス)の税関吏アンリ、ルーソーの足つきの真似が出来るか灰色の純情を押しとほした歩行の匂ひでも嗅いで見ようとする悪人が一人でも居るか。評価された人間の相場は、装飾された花電燈の青と赤のイルミネイションのうすぺらな燐光に眩惑されて墓場に生えたぺんぺん草の僅な一片より価値もない安物の陶器ぢやないか、誰も彼(か)もみんな新しい洋服を脱ぎ捨て素ッ裸で街の炎天に立つて見ろ、ルーソーのやうな真剣な歩行を続けてみろ俺達も君等も硝子屑を踏んだ足の裏から真赤な鮮血も流れ出ない不純に枯れきつた肉体ではないかもう取り返しの出来ない出産ではないか、まことに彼は真剣な馬鹿者であり愚鈍なる白痴であらうが私は彼の芸術に奥深き真夜中の凝視と原始林のトヲメイなる思索または静かなる冥想の現実を発見しまたなく共鳴と思慕の讃辞を惜しまない、雨の如く閑寂に暴風雨(あらし)のごとく静止に描き出されたルーソーの芸術こそは我等変態なる人間、ぺらぺらの畸形児にはあまりにも激しき鉄槌の肝銘であり、恐怖であるのだ。彼を現実と幻影をしらない記憶と現在との差別を忘れた白痴と思ふのは間違ひだ、彼は赤裸(あかはだか)に生長した精虫のやうにあまりに痛々しく人生を知りあまりにも可憐に現実の姿を見る苦労人でこのかくれたる敏感な表現はいたましいほどの弱々しい人間、ただ鈍重は[#「は」に「ママ」の注記]真直な通路を歩みつゞける偉大なる感情の忍苦者である。我等はこの地上に讃歌を捧げ大いなる白痴者の足跡に礼拝しルーソーの広き自画像の額に接吻しいづこか自然の一角を凝視する鈍重に澄める瞳の洗礼をうけよ、苦悩は路傍の樹木に発生したる雑草の芽にはぐくまれ黒き冬空の単色(たんしき)にみいだすやうに、思索はルーソーの愚鈍に白痴に、またアンリー、マティスの単純に潜まれてゐるのだこの我等現実の華やかになやましい管絃楽の思索を拾ふよりも何処か手近な場末の幽暗の中から聞えてくる笛の音を拾ひ給へ。
あゝ我々若き思索者よこの水底にひそまれる青銅の壺はさんとして光輝を放つ愛人、我等が救ひ手を待つ思慕者、ともすれば忘れがちなる霧のやうなる対照のなかにこそ我等がのぞむ思索がありアンリー、ルーソーのなまぬるき白痴のごとき冥想のなかにこそ蒼白な激情に燃える火のごとき苦悩のひそまれることを。 一九二四・二


歩き出す情慾



きみらは共同便所の
しろい壁に描かれた奇態な楽[#「楽」に「ママ」の注記]書
きいろい象形文字を愛読したか
あれが歩き出す情慾の手記だ
情念は風のやうにすばやく
こんやもそつと
寝床にしのびこんだが
私の情慾はぎあまんに盛られた
冷酒のやうに
しみじみと視つめて楽しむ観賞物心臓病者の
まつ青なよつぱらひである
   ◇
私は冒[#「冒」に「ママ」の注記]険な情慾が大好きだ
いつかも
あるき出す情慾の群にまぢつて
人ごみの中で
若い女の懐中の
財布をねらつたが……
   ◇
すつた財布の中はからつぽで
私と女は笑つて別れた


煙草の感情手品



女よ
私のこれからはじめる
感情手品を
じつと遠くから見物してゐ給へ
これを貴女への
返事にかへませう
   ×
さあ…これは一本の煙草です
つぎに口にくわへて
その煙草に
情熱のマッチを
摺つたのは貴女なのです
   ×
たしかに貴女は火をつけた
種も仕掛けもない奇術でした
   ×
まづ私の太夫さんは
ゆつくりと煙草を吸つて
ゆつくりと鼻から煙を出して
もう、もうと靄のやうに
たちこめる、けむりの中で
にやにやと
笑ひながら吸つたことか
ちどんな貴女の感づかない
それはあざやかな手際です
   ×
女よ
貴女は煙草の吸ひ殻を
拾つてお帰りなさい


春情――三人集――



春だ四月だ……
煙草のけむり輪にふいて
橋のたもとで空をながめた
   ×
濃霧(がす)の街を
げらげら笑つて直白な
女が通つた……春だ四月だ


 

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