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蛇性の婬(じゃせいのいん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-25 9:17:48  点击:  切换到繁體中文


「ほんとうに蛇なら、宜い人がある、白馬廟はくばびょうの前に、蛇捉へびとりたいと云う先生がいる、この人に頼もうじゃないか」
 李幕事はさきに立って許宣を伴れて白馬廟の前へ往った。戴先生は折好く家の前に立っていた。
「お二方とも何か私に御用ですか」
 李幕事はいそがしそうに云った。
「私の家におおきな白蛇しろへびが来て、わざわいをしようとしております、どうかってください」
 李幕事はそう云って腰から一両のかねを出して、戴先生のに載せた。
「今これだけさしあげておきます、もし捉ってくだすったら、後でまたべつにお礼をいたします」
 戴先生は喜んで銀を収めた。
「では、すぐ後から準備したくをしてあがります、お二方は一足おさきへ」
 李幕事と許宣はすぐ帰った。戴先生は間もなく後からやって来たが、手には雄黄いおうを入れたびん薬水やくすいを入れた瓶を持っていた。
「どこに白蛇がおります」
 李幕事は白娘子のいるへやを教えた。戴先生は教えられたとおりその室へ往ったが、室の扉は締っていた。戴先生は何かぶつぶつ云いながらその扉を開けようとしていると、扉は内から開いた。戴先生は内へ入って往った。内にはおけの胴のような白い蠎蛇うわばみがいて、それが燃盞かわらけのような両眼を光らし、炎のような舌を出して、戴先生を一呑ひとのみにしようとするように口を持って来た。戴先生は手にした瓶の落ちるのも知らずに逃げだした。
 李幕事と許宣は戴先生の結果を見に来たところであった。戴先生は二人に往きあたりそうになって気が注いた。李幕事が云った。
「先生、捉れたでしょうか」
 戴先生は呼吸いきをはずましていた。
「蛇なら捉れるが、あれは妖怪です、私はすんでのことに命をられるところでした。あの銀はお返しします」
 こう云って戴先生は逃げるように出て往った。李幕事と許宣は顔を見合わして困っていた。
「あなた、ここへいらしてください」
 室の中から白娘子の声がした。許宣は体がぶるぶると顫えた。しかし、往かずにいてはどんなことをするかも判らないと思ったので、恐る恐る入って往った。中には白娘子が平生いつもと同じような姿で小婢と二人で坐っていた。
「あなたはほんとに薄情な方ですわ、あんな蛇捉の男なんか伴れて来て、あなたがそんなにわたしをいじめるなら、私にも考えがありますよ、この杭州一城の人達の命にかかわりますよ」
 許宣は恐ろしくてじっとして聞いてはいられなかった。彼はそのまま外へ出たが、足を止めるのが恐ろしいので足の向くままに歩いた。彼は清波門せいはもんの外へ往っていた。彼はそこへ往ってから気が注いて、これからどうしたものだろうかと考えた。しかし、それからどうしていいか、どう云う手段を採っていいかと云う考えはちょっと浮ばなかった。と、金山寺の法海禅師の云った偈の句が浮んで来た。それと同時に再び※(「薛/子」、第3水準1-47-55)ちくしょうまとわれたなら、湖南の浄慈寺にわしを尋ねて来いと云った法海禅師のことばが浮んで来た。彼はそれに力を得て浄慈寺の方へ往った。
 浄慈寺には監寺かんじの僧がいた。許宣は監寺に法海禅師のことを訊いた。
「法海禅師にお眼にかかりたいのですが」
「法海禅師は、一度もこの寺へいらしたことはないです」
 許宣は力を落して帰った。そして長橋ちょうきょうの下まで来た。許宣はこれからどうしていいか判らなかった。彼は湖水の水に眼をけた。俺が一人死んでしまえば、何人たれにも迷惑をかけないですむと思いだした。彼の眼の前には暗いさびしい世界があった。彼はいきなり欄干に足をかけて飛びこもうとした。と、後から声をかける者があった。
「堂々たる男子が、何故なにゆえ生を軽んじる、事情があるなら商量しょうだんにあずかろうじゃないか」
 そこには法海禅師が背に衣鉢えはちを負い手に禅杖を提げて立っていた。許宣はその傍へ飛んで往った。
「どうか私の一命を救うてくださいまし」
「では、また※(「薛/子」、第3水準1-47-55)ちくしょうが纏わって来たとみえるな、どこにおる」
「姐の夫の李幕事の家に来ております」
「よし、では、この鉢盂はちをあげるから、これを知らさずに持っていって、いきなりその女の頭へかぶせて、力一ぱいに押しつけるが宜い、どんなことがあっても、手をゆるめてはならない、わしは、今、あとから往く」
 許宣は禅師から鉢盂をもらって李幕事の家へ帰った。李幕事の家の一室では、白娘子が何か云ってののしっていた。許宣はしおしおとしたふうをしてその室へ往った。白娘子は許宣を見るとしとやかな女になって、許宣に何か云いかけようとした。すきを見て許宣は袖の中に隠していた鉢盂を出して、不意に女の頭にかぶせて力まかせに押しつけた。女は叫んでそれをけようとしたが、除けられなかった。女の形はだんだんに小さくなっていった。そして、許宣がなおも力を入れて押しつけていると、女の形はとうとう無くなって鉢盂ばかりとなった。
「苦しい、苦しい、どうか今まで夫婦となっていたよしみに、すこし除けてください、私は死にそうだ」
 鉢盂の中からそうした声が聞えて来た。と、その時李幕事が来て云った。
「和尚さんが、怪しい者を捉りに来たと云って見えたよ」
「それは法海禅師です、早くお通ししてください」
 李幕事は急いで出て往ったが、やがて法海禅師を伴れて入って来た。
妖蛇ようじゃはこの下に伏せてあります」
 禅師はそこで口の中で唱えていたが、それが終ると鉢盂を開けた。七八寸ぐらいある傀儡にんぎょうのようなものがぐったりとなっていた。禅師はその傀儡に向って云った。
「その方は、何故なにゆえに人にまつわるのじゃ」
「私は風雨のときに、西湖に来た蠎蛇うわばみです、青魚せいぎょといっしょになっておりましたところで、許宣を見て心が動いたので、こんなことになりました、それでも、かつて物の命をそこのうたことがございませんから、どうか許してください」
淫罪いんざいがもっとも大きいからいけない、それでも千年間修練するなら命は助かる、とにかくもとの形を現すが宜い」
 と、傀儡にんぎょうは白い蛇となって、その傍に青い魚の姿も見えて来た。
 禅師はその蛇と魚を鉢盂はちに入れて、それに褊衫けさせて封をし、それを雷峰寺らいほうじの前へ持って往ってうずめ、その上に一つの塔をこしらえさして、白蛇と青魚を世に出られないようにした。禅師はそれに四句の偈をとどめた。

雷峰塔倒れ、西湖水れ、江潮たず、白蛇世に
 許宣は法海禅師の弟子となって雷峰塔の下におり、その塔を七層の大塔にしたが、のち、業を積んでやまいがないのに坐化ざげしてしまった。朋輩ほうばいの僧達はがんうてその骨を焼き、骨塔を雷峰の下に造ったのであった。





底本:「怪奇・伝奇時代小説選集14 累物語 他10篇」春陽文庫、春陽堂書店
   2000(平成12)年11月20日第1刷発行
底本の親本:「怪談全集 歴史篇」改造社
   1928(昭和3)年発行
入力:Hiroshi_O
校正:noriko saito
2006年6月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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