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猟奇歌(りょうきうた)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-11-10 10:29:57  点击:  切换到繁體中文

 

殺すくらゐ 何でもない
と思ひつゝ人ごみの中を
濶歩して行く

ある名をば 叮嚀ていねいに書き
ていねいに 抹殺をして
焼きすてる心

ある女の写真の眼玉にペン先の
赤いインキを
注射して見る

この夫人をくびり殺して
捕はれてみたし
と思ふ応接間かな

わが胸に邪悪の森あり
時折りに
啄木鳥の来てたゝきやまずも

  *     *     *

此の夕べ
可愛き小鳥やは/\と
締め殺し度く腕のうづくも

よく切れる剃刀を見て
鏡をみて
狂人のごとほゝゑみてみる

高く/\煙突にのぼり行く人を
落ちればいゝがと
街路から祈る

殺すぞ!
と云へばどうぞとほゝゑみぬ
其時フツと殺す気になりぬ

人の来て
世間話をする事が
何か腹立たしく殺し度くなりぬ

今のわが恐ろしき心知るごとく
ストーブの焔
くづれ落つるも

ピストルのバネの手ざはり
やるせなや
街のあかりに霧のふるとき

ぬす人の心を抱きて
大なる煉瓦の家に
宿直をする

かゝる時
人を殺して酒飲みて女からかふ
偉人をうらやむ

人体のいづくに針を刺したらば
即死せむかと
医師に問ひてみる

春の夜の電柱に
身を寄せて思ふ
人を殺した人のまごゝろ

殺しておいて瞼をそつと閉ぢて遣る
そんな心恋し
こがらしの音

ピストルの煙の
にほひばかりでは何か物足らず
手品を見てゐる

ペンナイフ
何時までもびず失くならず
その死にがほの思ひ出と共に

  *     *     *

一番に線香を立てに来た奴が
 俺を…………
………と云うて息を引き取る

若い医者が
 俺の生命を預つたと云うて
ニヤリと笑ひ腐つた

だしぬけに
 血みどろの俺にぶつかつた
あの横路地のくら暗の中で

頭の中でピチンと何か割れた音
 イヒヽヽヽヽ
……と……俺が笑ふ声

白い乳を出させようとて
 タンポヽを引き切る気持ち
彼女の腕を見る

棺の中で
 死人がそつと欠伸あくびした
その時和尚が咳払ひした

抱きしめる
 その瞬間にいつも思ふ
あの泥沼の底の白骨

ニセ物のパスで
 電車に乗つてみる
超人らしいステキな気持ち

青空の隅から
 ジツト眼をあけて
俺の所業を睨んでゐる奴

自転車の死骸が
 空地に積んである
乗つてゐた奴の死骸も共に

闇の中から血まみれの猿が
 ヨロ/\とよろめきかゝる
俺の良心

監獄に
 はいらぬ前も出た後も
同じ青空に同じ日が照つてゐる

白い蝶が線路を遠く横切つて
 汽車がゴーと過ぎて
血まみれの恋が残る

見てはならぬものを見てゐる
 吾が姿をニヤリと笑つて
ふり向いて見る

真夜中に
 心臓が一寸休止する
その時にこはい夢を見るのだ

枕元の花に薬をそゝぎかけて
 ほゝゑむでねむる
肺病の娘

倉の壁の木の葉が
 幽霊の形になつて
生血がしたゝる心臓が
切り出されたまゝ

  *     *     *

けふも沖が
 あんなに青く透いてゐる
  誰か溺れて死んだだんべ

水の底で
 胎児は生きて動いてゐる
  母体は魚に喰はれてゐるのに

日が暮れかゝると
 わが首を斬る刃に見えて
  生血がしたゝる監房の窓

あの娘を空屋で殺して置いたのを
 誰も知るまい
  藍色の空

地平線になめくぢのやうな雲が出て
 見まいとしても
  何だか気になる

血だらけの顔が
 沼から這ひ上る
  俺の先祖に斬られた顔が

唖の女が
 口から赤ん坊生んだゲナ
  その子の父の袖をとらへて

ドラツグの蝋人形の
 全身を想像してみて
  冷汗ながす

自分が轢いた無数の人を
 ウツトリと行く手にゑがく
  停電の運転手 動いてゐる
 さても得意気にたつた一人で

暗の中で
 俺と俺とが真黒く睨み合つた儘
  動くことが出来ぬ

すれちがつた今の女が
 眼の前で血まみれになる
  白昼の幻想

自惚うぬぼれの錯覚すなはち恋だから
 子供は要らない
  ザマア見やがれ

ピストルが俺の眉間を睨みつけて
 ズドンと云つた
  アハハのハツハ

毎日毎日
 向家の屋根のペンペン草を
  見てゐた男が狂人であつた

夏木立ヒツソリとして
 ぬす人の心の色に
  月の傾むく

カルモチンを紙屑籠に投げ入れて
 又取り出して
  ジツと見つめる

色の白い美しい子を
 何となくイヂメて見たさに
  仲よしになる

  *     *     *

森中の枯れ木は
ひとり芽を吹かず
一心こめた毒茸を生やす

狼が人間の骨を
ふり返り/\去り
冬の日しづむ

妖怪に似た生あたゝかい
我が腹を撫でまはしてみる
春の夜のつれ/″\

自殺やめて
壁をみつめてゐるうちに
フツと出て来た生あくび一つ

交番の巡査が
一つ咳をした
霜の夜更けに俺が通つたら

伯父さんへ
此の剃刀を磨いでよと
継子が使ひに来る雪の夕

死に度い心と死なれぬ心と
互ひちがひに
落ち葉踏みゆく/\

埋められた死骸はつひに見付からず
砂山をかし
青空をかし

知らぬ存ぜぬ一点張りで
行くうちに可笑しくつて
空笑ひが出た

海にもぐつて
赤と緑の岩かげに吾が心臓の
音をきいてゐる

此の顔はよも
犯人に見えまいと
鏡のぞいてたしかめてみる

毒茸がひとり
茶色の粉を吹く
何事もよく暮るゝ秋の日

彼女の胸に
此の短剣が刺さる時
ふさはしい色に春の陽しづめ

美しく毛虫がもだえて
這ひまはる硝子ガラスの瓶の
夏の夕ぐれ

  *     *     *

何者か殺し度い気持ち
たゞひとり
アハ/\/\と高笑ひする

屠殺所に
暗く音なく血が垂れる
真昼のやうな満月の下

風の音が高まれば
又思ひ出す
溝に棄てゝ来た短刀と髪毛

殺しても/\まだ飽き足らぬ
憎い彼女の
横頬のほくろ

日が照れば
子供等は歌を唄ひ出す
俺は腕を組んで
反逆を思ふ

わるいもの見たと思うて
立ち帰る 彼女の室の
※(「てへん+劣」、第3水準1-84-77)むしられた蝶

わが心狂ひ得ぬこそ悲しけれ
狂へと責むる
鞭をながめて

  *     *     *

うつゝなく人を仏になし給へ
佩刀はかせ近く
のみまゐらする

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