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赤耀館事件の真相(せきようかんじけんのしんそう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 5:53:42  点击:  切换到繁體中文


 午後八時六十分――つまり午後九時になって、三曲線は再び折れたような変化を示しています。ことに面白いと思う点は、今度の変化は、先に起った五十八分における変化とは大分趣きを異にしていることです。気圧の変化は、同じ様ですが湿度の激しい増大ぶりと、室内温度が前とは反対に下り始めていることは著しい特徴だと言わなければなりません。これは一体、何を物語っているのでありましょうか。……私の考えによると、丁度九時になって一人の人間が全身ずぶれになって此の室に飛びこんで来たのです。そのために濡れた水分が室内に蒸発をはじめて急に湿度が高くなりました。蒸発作用の潜熱によって室内の熱量は奪われ、さてこそ室内温度の下降を導くに至ったのです。それから三分ほど経って、湿度と温度の曲線は、常識では考えられぬほどの異常な変動を生じています。すなわち、湿度は九十五パーセント近くに昇り、温度は華氏で十五度も急降しているではありませんか。これは濡れた衣服を着た人間が、この計器にふれんばかりの近くにすすみよったことを示すものなのです。恐らく湿度計は乾湿かんしつハイグロメーターの湿球のような状態におかれ、水銀は急に熱を奪われて萎縮いしゅくしたことでしょうし、湿度計の方は、その傍に居る人の衣服がポッポッと湯気ゆげを出して乾燥中であるために殆んど飽和状態に近い湿度を記録したのでありましょう。三分以後は三曲線とも元のように帰ろうとしていますが、九時五分に至って、最後の階段的変化を示しています。この変化は割合に緩慢な動きをとり、ことに気圧の如きは点線で示すような当夜中央気象台でとった気圧変化と、九時十分頃には完全に一致しているところから観察して、これは多分、実験室の扉が午後九時五分すぎに開放された儘、放置されたため、室内の三計器は屋外の気温、気圧、湿度と一致するに至ったものだろうと思います。誰かあわてて室外に逃げ出した者のある証拠です。

湿度・気温・気圧曲線

 ところが只今、X線を壁に当てて見ました結果、気圧計などのすぐ近くに、異形のものを発見しました。これはまだ新しい壁の上に水分をたっぷり含んだ物体がおしつけられたため、水を吸収した部分と物質だけが極くこまかい結晶をつくり、それがためにX線を当ててみると他の部分とはまるで違った表面になっていることが判ったのです。その結果は、壁の上に鉛筆で記したとおりで、しかもそれが綾子夫人以外の誰でもないことが明白になりました」赤星探偵はこう言って、ホッと吐息といきもらしたのです。
「では姉が……」百合子はおどろきのために目を大きくみはって叫ぶように申しました。「姉が兄を殺したのでございますか」
「お嬢様、私たちの失敗は、そこにあるのです。ごらんなさい。綾子夫人の像から二寸ばかり離れた場所に、大きな手の跡がX線によって発見されています。これは丈太郎氏の右手なのです。綾子夫人を壁ぎわに押しつけたとき丈太郎氏の手は夫人の濡れた衣服をつかんでいたのでした。そのとき丈太郎氏は中毒のために力を失い、この壁の上にぬれた手をつくなり、バッタリ下にたおれてしまったのです。丈太郎氏の臨終はまさに午後九時三分であると断言することが出来ます。周囲の状況から考えますと、綾子夫人は丈太郎氏のところへ、レモナーデを搬んで来たのです。丈太郎氏は九時二分過ぎに時報受信の実験をやり、やさしい夫人の捧げるレモナーデを手にとって一口に飲んだのでした。ところが丈太郎氏は忽ち身体に異常を覚え、これはてっきり綾子夫人が毒を仕掛しかけたレモナーデを飲ませたせいであると思い、忽ち夫人に飛びかかって壁際に押しつけはしたものの、其の時、中毒作用は丈太郎氏の心臓を止めてしまったのです。私どもの実験は綾子夫人を犯人として画き出すほか、何の効果もありませんでした。しかし私は夫人を犯人とするに忍びないのです。いやまだまだ此の室には、私達の未だ発見していないような参考資料がある筈です。第一に探し出さねばならぬことは、丈太郎氏は如何なる手段によって青酸を口にせられたかということです。コップの中に青酸加里があったとすると、綾子夫人も青酸瓦斯を吸いこんで命を其の場に喪った筈なのです。お嬢さんにお伺いいたしますが、丈太郎氏は、何かものを口にくわえるといった風な癖をお持ちではありませんでしたでしょうか」
「まあ、よく御存知でいらっしゃいますこと――私もウッカリ忘れて居ました。兄は不思議な癖のもち主でございました。こういう風に左手の親指と、人差指と中指とをピッとひねり、そのあとで人差指と中指とを一緒に並べたまま、下唇の内側をこんな風に……」
「ま、待って下さい、お嬢さん、そんな悪い真似は本当におやりにならぬように。しかしそれはいいことを伺いました。第三の発見ができるかも知れません。尾形さん、そこにある受信機をそのままそっと窓の方へ一緒に担いで呉れ給え。なるべく静かに、そして端の方をもって……」
 赤星探偵は六尺もあろうと思われる受信機の目盛盤ダイヤルを左の方から一つ一つ点検して行きました。点検すると言っても指でクルクルと廻してみるわけでもなく、二尺も離れた遠方から恐る恐るうかがっているという風に見えました。それから急に一つ首をたてに振ると一つの小さい目盛盤ダイヤルをとりはずし、他のものと綿密めんみつに比較研究をしているようでした。それが済むと、室の一隅に置かれた無線の送受信装置やX線の発生装置がゴチャゴチャ並んでいる方をジロジロと見廻していましたが、配電盤の開閉器を全部きってしまうと、機械という機械の間をいまわり、変圧器の下に手をさし入れて掌を油だらけにしたり、丹念にボールトをはずして電動機を解体したりなぞやっていました。それでも彼が探し求めるものはないらしい様子で、遂には機械の中に棒立ちとなったまま、当惑顔とうわくがおにうちしずんで見えました。

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