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時計屋敷の秘密(とけいやしきのひみつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 13:01:28  点击:  切换到繁體中文


   語る怪囚人かいしゅうじん

 怪囚人は、一息いれると、八木少年のそばににじりより、気を失っている少年をよびさまそうとつとめた。
 少年は、やっと気がついた。そしてきょろきょろと、あたりを見まわした。
「あ、あなたは?」
 怪囚人は、しっかりと少年をかかえていて、はなさなかった。そして仮面をかぶった自分の顔を見られまいと、顔をそっぽに向けていた。
「もう心配ありません。きみの生命、助かりました」
 怪囚人は聞きにくいことばで、少年をなぐさめた。
「ああ、そうだった、ぼくが地下道の中で溺死できしするとき、あなたはぼくを助けてくだすったのですね。ありがとう、ありがとう」
「そうです。私、君を助けました。君はかわいそうでありました。私は自分のためにこしらえてあった、脱走だっそうの穴を利用して、きみを救いました」
「えっ、脱走ですって、あなたは誰です」
 八木少年は相手の腕をおしのけて、相手をよく見ようとした。怪囚人は、もはや自分の姿を見られることをさけようとはしなかった。
「おお、あなたは……」
 八木少年はびっくりして、うしろへとびのいた。おそろしい顔だ、太い鉄鎖てっさでつながれている囚人だ。極悪ごくあくの人間なのであろう。なんというおそろしいことだ。
 だが、次の瞬間、八木少年は前へとび出すと、死神の面をかぶった囚人の膝に、がばとすがりついた。そして涙と共に、おわびをいった。
「すみません、あなたは、ぼくの生命の恩人おんじんです。その恩人に対し、ちょっとの間でも、ぼくがおそろしそうに、後へ身をひいたことはおわびします」
「その心配、いりません。私、おそろしい仮面をつけています。私の姿、おそろしいです。君がにげようとしたこと、むりではありません。しかし、私、悪者わるものではありません。不幸にして、悪人のためにとらわれ、ここに永い間つながれているのです」
「ああ、そうでしたか、いったい、どうしてそんなことになったのですか、あなたは、どこの何という方ですか」
「くわしい話、あとでいたします」
「今、話して下さい」
「今、話すこと、よろしくありません。そのわけは、たいへん急ぐ仕事があります。そしてその仕事は、きみの力でないと、できないのです」
 怪囚人は、そういった。しかし八木少年にはのみこみかねた。急ぐ仕事というのは、いったい何のことであろうか。これをたずねると、怪囚人は、こういった。
「おどろいてはいけません。この屋敷は、このままでは、あと一時間とたたないうちに、大爆発だいばくはつをして、あとかたもなくなってしまいます」
「えっ、この時計屋敷が、あと一時間とたたないうちに大爆発をするんですって、それはたいへんだ。この屋敷には、たくさんの人たちがまよいこんでいるのです。ぼくの友だちも四人、この屋敷にはいっています。そういう人たちを助けてやらねばなりません。ああ、そうだ、その前に、ぼくはあなたを助けます」
「お待ちなさい、その人たちを助けること、なかなか困難こんなんと思います。それよりも、君に急いでしてもらいたいことは、その大爆発が起らないようにすることです」
「なんですって、この屋敷の爆発が起らないようにすることも、まだ出来るんですか。それはどうすればいいのですか」
「それは、今動いている大時計をとめることです」
「えッ、あの大時計をとめるって……あ、大時計は動いているんですね。いつ、あんなに動きだしたんだろう」
 八木少年は、どこからともなくひびいて来る大時計の時をきざむ音に、はじめて気がついて、おどろいた。
「大時計は、すこし前にかねを三つうちました。このままでは、あと一時間ばかりして、四つうつでしょう。四つうてば、この屋敷は、こなみじんになるのです」
「それはどうしたわけですか」
「わけを説明しているひまはありません。君は早く大時計をとめて来るのです」
「いったい、どうすれば、あの大時計をとめることが出来るのですか」
「子供の力では、出来ないかもしれぬ。いや今、君に行ってもらう外に、方法はないのだ。もっとこっちへよりなさい。大時計の仕掛はこうなっている……」
 と、怪囚人は、鉄の壁へ、くぎれで、大時計の図をかきだした。

   大発見

 話は、四人の少年たちの方へうつる。
 地震のあとで、ほうりこまれた部屋の一方の壁がするすると上にあがって、そのむこうにあらわれたのは、ほこりの積った古風な実験室みたいな部屋であり、そこに一つ額縁がくぶちが曲ってかかっていたが、その中の油絵はまん中が切りとられていて、なかったこと、そしてそれはどうやら人物画らしいことなど、すでに諸君の知っているところである。
「おどろいたね。どこへいっても、からくり仕掛ばかりの屋敷だ」
 あまり物事におどろかない五井少年も、こんどはおどろいた様子。
「なんだろう、この部屋は。錬金術師れんきんじゅつしの部屋みたいだが、おい、四本君。これは君のお得意とくいの科目だぜ」
 六条が、四本の背中をつっつく。
「ふん。たいへん興味がわいてくるね。でも、ぼくには、これがなにをする部屋だか、さっぱり分らないよ。どこから調べたらいいのかなあ」
 四本は、部屋の中を歩きまわる。
 もう一人の二宮少年は、あいつづいて起るおどろきの事件に、すっかり心臓を疲らせたと見え、ふだんのおしゃべりがすっかり無口になって、青ざめた顔で、みんなのそばを離れまいとして、ふうふういいながらついてくる。
「ははあ、こんなものがあったぞ」
 四本が、とつぜん頓狂とんきょうな声をあげたので、のこりの少年たちは、彼の方へ寄っていった。
「これは何だか分るかい」
 と、四本が、棚に並んでいたガラスびんの一つをとりあげて、みんなに見せた。中には、黄いろ味をおびた、やや光沢こうたくのある結晶している石がはいっていた。
「知らないね。いったい、それは何だ」
「これは、昔から日本にもあるといわれてたが、そのありかはなかなか知れていない水鉛鉛鉱すいえんえんこうだよ」
「すいえんえんこう、だって。それは何だ」
 こうなると四本の話をだまって聞くより手がない。
「これは昔たいへん貴重なものとして扱われた鉱石なんだ。つまりこの中には、モリプデン――水鉛ともいったことがあるね――そのモリプデンが含有がんゆうされているんだ。ここまでいえばもう分ったろう。モリプデンの微量びりょうはがねにまぜると、普通の鋼よりもずっと硬いものが出来るんだ」
「ああ、モリプデン鋼のことか」
「大昔は、刀鍛冶かたなかじたちが、行先を知らせず、ひとりで山の中へはいりこみ、一ヶ月も二ヶ月も家へかえらないことがあった。それは刀鍛冶が、この水鉛[#「水鉛」は底本では「水」]の鉱石を探すために山の中へ深くはいりこむのだ。そしてその場所を見つけても誰にも知らせないで、自分だけの用に使っていた。しかしその刀鍛冶が年をとって死にそうになると、ひそかに自分のあとつぎの者におしえたこともあったそうだ。とにかく、この水鉛鉛鉱が、この部屋には、あっちにもこっちにもおいてあるんだ。この謎を君たちはどう解くかね」
 問う少年のひとみも、聞かれる少年たちの瞳も、共に輝いて、水鉛鉛鉱の上に集まる。
「ふん、分った。この屋敷を建てた混血児こんけつじのヤリウスは、水鉛鉛鉱を売ってもうけたんだろう。貿易もしたのだろう」
「そうだろうねえ」と四本も相づちをうち「なにしろ水鉛鉛鉱というものは、世界においてもめずらしい鉱石なんだから。……それからもっと謎を解けないかしら」
「そのヤリウスが、うまい商売を捨てて、なぜどこかへ行ってしまったんだろう」
「そのことなんだ。ぼくの想像では、ヤリウスは、水鉛鉛鉱がかなりたくさん出る場所を知っていたんだと思う。その証拠には、この部屋だけにでも、あっちにもこっちにも、たくさん標本や見本の鉱石が、無造作においてあるからね。ほら、そこの隅には、樽にいっぱいはいっている」
 なるほど、小さい酒樽さかだるであったが、その中にいっぱいはいっていた。
 少年たちが、感心して樽の中をのぞきこんでいるとき、大時計の音が、ゆっくり、かちかち聞えてきた。
 ところが、あと五分足らずで、この屋敷は大爆発を起すことになっていた。四少年の中には、それに気がついている者は一人もない。あと、たった五分だ。
 大危険は迫っている。
 それなのに、その大危険の時刻を知っている八木少年はどうしたのであろう。

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