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独本土上陸作戦(どくほんどじょうりくさくせん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 13:00:20  点击:  切换到繁體中文

底本: 海野十三全集 第10巻 宇宙戦隊
出版社: 三一書房
初版発行日: 1991(平成3)年5月31日
入力に使用: 1991(平成3)年5月31日第1版第1刷
校正に使用: 1991(平成3)年5月31日第1版第1刷

 

   1


 およそ新兵器の発明にかけては、今日世界に及ぶものなしと称せられる金博士きんはかせが、とつぜん謎の失踪しっそうをとげた。
 おどろいたのは、ここ上海シャンハイ市の地下二百メートルにある博士の実験室に日参していた世界各国の兵器スパイたちだった。
 実験室は、きちんと取片づけられ、そして五分置きに、どこからともなくオルゴールががくを響かせ、それについで、
当分とうぶん失踪する。これは遺書いしょである。ドクトル金”
 と、姿は見えないが、特徴のある博士の声で、この文句がくりかえし響くのであった。
 録音による遺書が、オートマティックに反復はんぷく放送されているのだった。
 あの新兵器発明王金博士のとつぜんの失踪!
 博士を監視していた五十七ヶ国のスパイは、いずれも各自の胸部きょうぶに、貫通かんつうせざる死刑銃弾の疼痛とうつうにわかに感じたことであった。
 一体、博士はどこへ行ってしまったのであろうか。
 人騒がせな博士の失踪は、精神錯乱さくらんの結果でもなく、いわんや海を越えて和平勧告わへいかんこくに行ったものでもなかった。しかし金博士の上陸したところは、スコットランドであって、グラスゴー市の西寄りにある秘港ひこうグリーノックであった。
 金博士は、上陸に際し、右足のかかと微傷びしょうを負ったが、それは折柄おりから丁度ちょうど、英軍の高射砲が襲来独機しゅうらいどくきを射撃中であって、その高射砲弾の破片はへんが、この碩学泰斗せきがくたいとの右足に当り、呪いにみちた傷を負わしめたのであった。が、まあ大したことはなかった。
「上陸第一歩に際し、イギリス官憲のみならず、イギリス高射砲隊からもこの鄭重ていちょうなる挨拶あいさつをうけようとは、余の予期せざりしところである」
 と博士は、折から空襲実況中継放送中のBBCのマイクを通じて、訪問の初挨拶をしたのであった。
 接伴せっぱん委員長のカーボンきょうは、金博士が、あまりにも空爆下くうばくかに無神経でありすぎるのにおどろき、周章あわてて持薬じやくのジキタリスの丸薬がんやくをおのが口中こうちゅうに放りこむと、金博士を桟橋さんばしの上に積んだ偽装火薬樽ぎそうかやくだるのかげに引張りこんだ。
「ああカーボン卿、ドイツ空軍のために、こんなにわたって爆撃されたのでは、借間しゃくまが高くなって、さぞかし市民はたいへんであろう」
「おお金博士。仰有おっしゃるとおりです。借間の払底ふっていをはじめ、そのほかわれわれイギリス国民を困らせることが実におびただしいのです。このときわれわれは、はるばる東洋から博士を迎え得て、千万トンのジャガいもを得たような気がいたしまする」
「ジャガ芋とは失礼なことをいう、この玉蜀黍とうもろこしめ」
 と、博士は中国語でいって、
「この空爆の惨害さんがいを、余にどうしろというのかね」
「いやいや、余は何とも申したわけではない。博士どの。イギリス上陸のとたんに、ぜひとも御注意ねがわねばならぬことが二つありまする」
「二つ? 何と何とかね」
「一つは、さっき申し遅れましたが、味方の撃ちだす高射砲弾の害。もう一つは、おそろしきスパイの害。――とにかく街上でもホテルでも寝床の中でも、おそるべきスパイが耳を澄して聞かんとしていると思召おぼしめして、一切語りたもうなよ」
「本当かね。まるでわが上海シャンハイそっくりじゃ」
ゆえに、物事を、スパイや敵国人のため妨害されないで、うまくはこぼうと欲すれば、それ、決して何人にも機密をらすことなく、自分おひとりの胸にたたんで、黙々として実行なさることである」
「お前さんのいうことは、むずかしくて、余には分らんよ」
「いや、つい騎士倶楽部風きしクラブふうの言葉になりましたが、要するに、自分の思ったとおり仕事をやりとげるためには、機密事項は一切おしゃべりなさるなという忠言です」
「なるほど、壁に耳あり、後にスパイありというわけじゃね。よろしい。今日只今より、大いに気をつける。もっとも、わしはスパイをさけることなら、上海でもって、相当修業して来ておりますわい」
「それをうかがって、安心しましたわい」
 折から高射砲は、かたやめとなり、往来はようやく安心できる状態となった。そこで瘠躯鶴そうくつるの如きカーボン卿は、樽のかげから外に出て、一応頭上を見上げたうえで、樽のかげの金博士の手を取って、引張り出したのであった。
「さあ、今のうちに急いで参りましょう」
「はて、余はどこへ連れていかれるのじゃな」
「行先は、今も申したように、スパイを警戒いたして申せませぬ。しかし、向うへ到着すれば、そこが何処だかお分りになりましょう。グローブ・リーダーの巻三には、『ロンドン見物』という標題ひょうだいもとに、写真入りでちゃんとくわしく出て居ります場所です」
「ありゃ、行先はロンドンですかい」
「ロンドン? あっ、それをどうして御存知ごぞんじですか。博士は、読心術どくしんじゅつを心得て居らるるか、それともスパイ学校を卒業せられたかの、どっちかですなあ」
「あほらしい。お前さんが今、ロンドン見物の標題で云々うんぬんといったじゃないか。お前さんがたのここんところは、連日連夜のドイツ軍の空爆で、だいぶん焼きが廻っていると見える」
 そういって、金博士は、自分の頭を、防毒マスクの上から、こつこつと叩いてみせた。

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