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爬虫館事件(はちゅうかんじけん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-26 6:18:21  点击:  切换到繁體中文



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 園長邸を訪ねた帆村は心痛しんつうしている夫人をなぐさめ、遺留いりゅうの上衣を丹念に調べてから何か手帖に書き止めると、ほかに園長の写真を一葉借り、園長の指紋を一通り探し出した上で地続じつづきの動物園の裏門をくぐったのだった。
 西郷という副園長は、すぐ帆村に会ってくれた。あの西郷隆盛の銅像ほどえている人ではなかったが、随分ずいぶんと身体の大きい人だった。
「園長さんが失踪しっそうされたそうで御心配でしょう」
 と帆村は挨拶あいさつをした。「一体いつ頃お気がつかれたのですか」
「全く困ったことになりましたよ」巨漢きょかんの理学士は顔を曇らせて云った。「いつ気がついたということはありませんが、不審をいだいたのは、あの日の正午過ひるすぎでしょう。園長が一向いっこう食事に帰ってこられませんでしたのでね」
「園長は午前中なにをしていられたのです」
「八時半に出勤せられると、直ぐに園内を一巡いちじゅんせられますが、先ず一時間かかります。それから十一時前ぐらい迄は事務をって、それから再び園内を廻られますが、そのときは何処ということなしに、朝のうちに気がつかれたおりへ行って、動物の面倒をごらんになります。失踪しっそうされたあの日も、このプログラムに別に大した変化は無かったようです」
「その日は、どの動物の面倒を見られるか、それについてお話はありませんでしたか」
「ありませんでしたね」
「園長を最後に見たという人は、誰でした」
「さあ、それは先刻さっき警察の方が来られて調べてゆかれたので、私も聞いていましたが、一人は爬虫館はちゅうかんの研究員の鴨田兎三夫かもだとみおという理学士医学士、もう一人は小禽暖室しょうきんだんしつ畜養ちくよう主任の椋島二郎むくじまじろうという者、この二人です。ところが両人が園長を見掛けたという時刻が、殆んど同じことで、いずれも十一時二十分頃だというのです。どっちも、園長は入って来られて二三分、注意を与えて行かれたそうですが、まま出てゆかれたそうです」
「その爬虫館と小禽暖室との距離は?」
「あとで御案内いたしますが、二十間ほどへだたった隣り同士です。もっとも其の間にはさまってずっと奥に引込んだところに、調餌室ちょうじしつという建物がありますが、これは動物に与える食物を調理したりしまって置いたりするところなんです。鳥渡ちょっと図面を描いてみますと、こんな工合です」
 そういって西郷理学士は、鉛筆をとりあげると、爬虫館附近の見取図を描いてみせた。
「この二十間の空地あきちには何もありませんか」
「いえ、きりの木が十二本ほどうわっています」
「その調理室へ園長は顔を出されなかったんでしょうか」
「今朝の調べのときには、園長は入って来られなかったと云っていました」
「それは誰方どなたが云ったんです」
畜養員ちくよういん北外星吉きたとせいきちという主任です」
「園長がいよいよ行方不明ゆくえふめいと判った前後のことを話していただけませんか」
「よろしゅうございます。閉園へいえん近い時刻になっても園長は帰って来られません。見ると帽子と上衣は其儘そのままで、お自宅から届いたお弁当もそっくり其儘です。黙って帰るわけにも行きませんので、畜養員と園丁えんていとを総動員して園内の隅から隅まで探させました。私は園丁の比留間ひるまというのをつれて、猛獣のおりくわしく調べて廻りましたが異状なしです」
素人しろうと考えですがね、例えば河馬かばの居る水槽すいそうの底深く死体が隠れていないかおしらべになりましたか」
「なる程ごもっともです」と西郷副園長はうなずいた。「そういう個所は、多少の準備をしなければしらべられませんので直ぐには参りませんでしたが、今日の午後には一つ一つっているのです」
「そりゃ好都合です」と帆村探偵が叫んだ。「すぐに、私を参加させていただきたいのですが」
 西郷理学士は承諾して、卓上電話機を方々へかけていたが、やっとのことで、捜索隊そうさくたいがこれから爬虫館の方へ移ろうというところだと解ったので、その方へ帆村を案内してれることになった。
 白い砂利の上に歩を運んでゆくと、どこからともなく風に落葉が送られ、カサコソと音をたてて転がっていった。もう十一月になったのだ。杜蔭もりかげ一本ひともとあざやかな紅葉もみじが、水のように静かな空気の中に、なにかしらそそのかすような熱情をかしこんでいるようだった。帆村は、ちょっと辛い質問を決心した。
「園長のお嬢さんは、まだお独身ひとりなんですかねエ」
「え?」西郷氏は我が耳を疑うもののように聞きかえした。
「お嬢さんはまだ独身です。探偵さんは、いろんなことが気にかかるらしいですね」
「私も若い人間として気になりますのでね」
「こりゃ驚いた」西郷理学士は大きな身体をくねらせて可笑おかしがった。「僕の前でそんなことを云ったってかまいませんが、鴨田君の前で云おうものなら、うわばみしかけられますぜ」
「鴨田さんていうと、爬虫館の方ですね」
「そうです」と返事をしたが、西郷氏はすこし冗談を云いすぎたことを後悔した。「ありゃ学校時代の同級生なので、有名な真面目な男だから、からかっちゃ駄目ですよ」
 帆村は何も応えなかったが、先に園長令嬢のトシ子と語ったときのことと、いま西郷副園長が冗談にまぎらせて云ったこととをあわせて頭脳あたまの中で整理していた。この上は、鴨田という爬虫館の研究員に会うことが楽しみとなった。
「鴨田さんは、主任では無いのですか」
「主任は病気で永いこと休んでいるのです。鴨田君はもともと研究の方ばかりだったのが、気の毒にもそんなことで主任の仕事も見ていますよ」
「研究といいますと――」
爬虫類はちゅうるいの大家です。医学士と理学士との肩書をもっていますが、理学の方は近々学位論文を出すことになっているので、間もなく博士でしょう」
「変った人ですね」
「いやえらい人ですよ。スマトラに三年も居てうわばみ交際つきあいをしていたんです。資産もあるので、あの爬虫館を建てたとき半分は自分の金を出したんです。今も表に出ているニシキヘビは二頭ですが、あの裏手には大きな奴が六七頭も飼ってあるのです」
「ほほう」と帆村は目をまるくした。「その非公開の蛇もしらべたんですか」
「そりゃ勿論ですよ。研究用のものだからお客さんにこそ見せませんが、検べることは一般と同じに検べますよ。別に園長さんを呑んでいるような贅沢ぜいたくなのは居ませんでした」
 帆村は副園長の保証の言葉を、そう簡単に受入れることはできなかった。園長を最後に見掛けたというところが、此の爬虫館と小禽暖室の辺であってみれば、入念に検べてみなければならないと思った。
「さあ、ここが爬虫館はちゅうかんです」
 副園長の声に、はッと目をあげると、そこにはいかにも暖室だんしつらしい感じのする肉色の丈夫な建物が、魅惑的みわくてきな秘密を包んで二人の前に突立っていた。

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