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小熊秀雄全集(おぐまひでおぜんしゅう)-13

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-29 6:59:03  点击:  切换到繁體中文


板垣直子について

家庭にあつては優しい母親で
なぜ文章の上では
あのやうな毒舌家なのだらう
行つた先先で
ふところから
化粧鏡とパフをだすかはりに
マナイタと出刃庖丁をだす鬼婆だ、
刃物さへあてさへすれば
骨が離れると思つてゐるのはどうかと思ふ、
彼女は案外料理の仕方を知らないのだ、
直子さんよ、
他人の作品を批評する場合もどうか
酔つて帰つて
あなたの愛する鷹穂のズボンを
ぬいでやるときのやうに
親切にしてやつて下さい。


或る女流作家に与ふ

貴女は
なまじつか人生の外塀を
手探りでまねる
小ざかしさを知つてゐるために
軽蔑すべきことをしてゐる
軽蔑すべきことは
あゝ、小説なるものを
つくる術を知つたことだ
それから怖ろしいことが起つた
子供と亭主を捨てゝしまつたことだ
結局あなたは
階級闘争は知つてゐても
男の心を知らなかつたのさ

後悔の月はのぼつてゐるが
雲の乗物が迎へにやつてこない
真夜中の目覚めに
貴女の鼻水は
多少はすすられたにちがひない
しかし涎と鼻水とで
つなげる愛は
新婚三ヶ月位の間だけだらう
貴女がオムツの数を
千枚もとりかへて育てた子供は
今年中学の試験を受けた筈だ

----------------------
◆雑纂・補遺詩篇

散文詩 雪のなかの教会堂

 ながい時間の寒さの辛棒もほんの僅なしげきで眼をさましもう堪えられなくなつた冷たさです私はどんどんと馬橇の中で足ぶみをして足の裏に暖気のたんじようを待ちました、だがなかなか強情な冷気でつむじ曲がりの寒暖計のやうに水銀の玉は容易に動かうとはしないのでした。馬橇はあかるい舞台照明の青さの中をそれは静かにひつそりと走つてゐるのです、たくさんの電信柱の退却または都市建築物のすべてが幾何学派の絵画のやうに渦巻波の雪の道路はうねうねとうす緑の輪廓線に馳けてゆくのです。
 それからこの私の乗り物はだいぶ走つたやうです、黒い幌の窓から見える外光はだんだん日暮れになつてゆき、いまいましいほど穏かな街の景色です。ふと馬橇は速力を弱めお客さんの私にどんどんと二三度も尻餅を搗かせた手綱『乗せてくださらない』私はだまつて白眼で橇の天井裏を睨ませたほどのそれは優しい優しいたしかに女の声です
『よう御座んす……お乗んなさい』馭者台の馭者は私の歓迎の辞の代読者でなかなか話せる男です。
 私は不意にマントを頭からすつぽりかむつてうとうとしたゐねむりの真似をやりました。
 私の神経は急に鋭敏にこころだけはしかし高速度撮影器機の乾板のゆるやかさです、幌をめくつて乗つた女は白い毛糸の長い首巻をした白い女で、空つ風に頬ぺたの可愛らしく赤いことはマトン[#「マント」の誤植と思われる]のボタンの穴から覗きました。向ひあつて腰かけたおたがひは膝と膝とがすれあふほどの四畳半の情熱の室で女が隠した私の顔を知らうといふあほらしい努力です。
 ただこれ触だけの感[#「ただこれだけ感触」の誤植と思われる]にも私の心臓は臆病な医者が女の手の脈搏を感ずるやうなのに、さても大胆な若い女は黒い瞳を平にしてちらと私を見たばかりの平気さです。女よ、女は遠浅の海の水平線です広さだけはふしぎな際涯さいはてをもつてゐる偽りの去勢動物です、黄色いねば土の自画像に専念な憎らしい彫刻家です女のために馬橇は止まつてすたすたと女は小走りに駈出しました。そこの広場に建てられた雪の中の教会堂の扉の中に……


追悼詩 ひとりたび

田中社長のお子さん克行さん(四ツ)が亡くなりました、それは真丸い眼をした可愛らしいお子さんでした


お眼めを
つぶつた
克行さん
 ……
ちいちやい
あんよの
一人旅
 ……
お眼めを
つぶつた
克行さん
 ……
靄の
小路の
一人旅


聯詩の会
    広瀬氏歓迎席上

 私の家で二十七日夜来旭の広瀬操吉氏を中心に雑談をやつた、広瀬氏が聯詩をやらうといふ提議に車座になつて数枚の詩篇は、幾度となく一同をめぐり廻つて完成された。鈴木も今野もそして私も、この聯詩といふものは始めてだがこの奇怪な作業に、すつかり魅せられた。もつと当地方でもこの聯詩を流行はやらしてもいゝと思ふ。
 殊に私などは自我的で、自分の仕事に閉ぢこもつたきりである、かうして一つの主題の下に、ちがつた三人の個性が結び合ふといふことは無言のうちに傑れた感情を醗酵させ、また大きな勉強になることだと思ふ。言語構成上の収穫も多かつた(小熊生)

広瀬操吉
今野紫藻
鈴木政輝
小熊秀雄


    風船
空はこばると(今野)
昆虫学者は網を持ちて野原を馳ける(鈴木)
あゝ秋の風船の快よき(広瀬)
学者はしばし昆虫をとる(小熊)
ことを忘れて空を見上げた
空には何もなくなつた(今野)
ヱアシップの哀れなるかな(広瀬)
ちぎれ雲ひとつ(小熊)
へう/\吾魂を流しゆきぬ(鈴木)

出題  小熊秀雄


    夜の花
浮浪人は徳利を抱いて畳に寝ころび(鈴木)
つく/″\と阿母が恋しくなつた(小熊)
しかと花を抱いて眠りぬ(広瀬)
あゝこの男に昨日があるのだ(今野)
真昼は陽気に夜は陰気に(小熊)
幸福と不幸を織り交ぜて(広瀬)
あゝいつか男の息は絶えてゐる(今野)
されどあけぼのゝ雀は障子にながむ(鈴木)

出題  広瀬操吉


    豚
豚が欠伸あくびする真昼時(広瀬)
はらんだ牧女があらはれた(今野)
彼女は豚に餌をやりながら胎児のことを考へた(小熊)
胎動を感じつゝ群がる仔豚を愛撫する(鈴木)
あはれ秋風よつれなき男に(広瀬)
情ある男に(今野)
吾養豚所のをみなの心を伝へてよ(鈴木)
かくて重き妊婦は空を仰いだ(小熊)

出題  鈴木政輝


    夜の陶器
この壺はうれひなくふくらみ(小熊)
夜の光線は照らされて(広瀬)
蒼白い叔母のマスクが写された(今野)
この壺はうれひなくふくらみ(鈴木)
遠き秋風の音を聴きつゝ(広瀬)
ふるさとの唐土を追憶し(小熊)
殺人事件を審判する(今野)
あゝこの壺はうれひなくふくらみ(鈴木)

出題  今野紫藻



日中往復はがき詩集

    作品第一番    八月二十六日夜
小熊(1)さあ始めよう

私は日本の
雑種的な
バスで
君は広東語の
悠揚せまらざる
アクセントで
ふたりは心の料理場の
材料をあるだけ
出し合はう


(2) よろしい!

ぢや、やらう!
北海道から来た
君は『飛ぶ橇』に乗つて、
広東から来た
私は『沙漠』をぬけて、
東京にふたりで
料理屋になる。
胸にしつかりと積んでる
この島のと
その大陸のとの
お土産を
世界の釜で
料理しよう!
わが無数の餓鬼は
私達のこしらへる物が
まづくても
おいしさうに
がつ/″\食べて呉れるだらう。


小熊(3)空腹な人生

かう我々はこの人生を
呼ぶ必要がある、
完全な空腹ぢやないね、
ことは我々ロマンチストは
理想の入る余地と
詩をつくる余地と
詩が大衆に愛される
余地は充分あるね
料理方も
喰ひ方も
かうして親密に
心や胃の腑に入れるものを
熱心につくり
熱心に待つてゐる

    
(4) 礼儀がなく

しかし礼儀以上の
敬愛と自重を持つ我々は
きたない大地に
立派な種を播き込まうとする
その種の萌え上がる実は
黄金だらうか
丸弾ママだらうかと
いづれもかまはぬ
いづれでも飢餓の糧を
取換へる武器になる
我々はまた高い理想を
その種の中に孕ませる
――全く自由を戦取する人間の口
――彼らの強い呼吸に
陽気さの口笛を吹かせると。


小熊(5)けふ嵐の中で

我々の種子はとび交つた、
炸烈する胚子は――、
地上への自由の蒔き手を
自任しよう、
二つの民族は
コルホーズ(共同農場)に
でかけてゆく
しかも我々の住んでゐるところの
コルホーズは
暁ではない、夜だ、
まつくらなんだ、
まるで手探りで種蒔いてゐる、


(6) 飛砂走石たる野原に

我々はトラクターを進ませて
時代の最後の嵐を追ひ消さう
野獣の血肉と骸骨を、
肥料として土の中へ打ち込む
暁になると我々の
蒔いた胚子が
まるで一瞬間の間に
むら/\と空へ伸び上がる
そしていづれの端末にも
輝く花の弁が
勝利の微笑をして
招いてるだらう
その時、地球のどこにも
平和な空気が
あざやかに漂ふ

 

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