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明治文学管見(めいじぶんがくかんけん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-31 11:04:43  点击:  切换到繁體中文


     四、政治上の変遷

 族長制度の真相は蛛網ちゆまうなり。その中心に於て、その制度に適する、すべての精神をあつむるなり。而して数百数千の細流は其中心より出でゝ金環を周綴しうていし、而して又た再び其の金環より中心に帰注するものなり。
 斯の如き真相は吾人、之を我が封建制度の上にも同じく認むるなり。欧洲各国の歴史が一度経過したる封建制度と我が封建制度との根本の相違は、蓋し此点に於て存するなり。然れども尤も多く族長制度的封建を完成したるは、之を徳川氏に見るのみ。足利氏は終始事多くして、制度としては何の見るべきところもなし、北条氏は実権は之を保有せしにせよ、其状態は恰も番頭の主家を摂理するが如くなりしなり。源家に至りては極めて規模なく、極めて経綸なきものにして、藤原氏の如きは暫らく主家を横領したる手代のみ。藤原氏の時代には政権の一部分なほ皇室に属したり。源氏北条氏の時代に於ては、政権は既に大方武門に帰したりと雖、なほ文学宗教等は王室の周辺にあつまれり。くだつて徳川氏に至りては、雄大なる規模を以て、政治をも、宗教をも、文学をも、悉くその統一権の下に集めたり。徳川氏は封建制度を完成したり、その「完成」とは即ち悉皆しつかい日本社会に当篏あてはめたるものにして、再言すれば日本種族の精神が其制度に於て「満足」を見出すほどに完備したるなり。
 徳川氏は封建としては、斯の如く完備したる制度を建設したり。故に徳川氏の衰亡は、即ち封建制度の衰亡ならざるべからず。日本民権は、徳川氏に於て、すべての封建制度の経験を積みたり、而して徳川氏の失敗に於て、すべての封建政府の失敗を見たり、天皇御親政は即ち其の結果なり。
 徳川氏の失敗は封建制度の墜落となれり。明治の革命は二側面を有す、其一は御親政にして、其二は聯合躰の治者是なり。更に細説すれば、一方に於ては、武将の統御に打勝ちたる王室の権力あり。他方に於ては、一団躰の統治乱れて聯合したる勢力の勝利あり。征服者として天下を治めたる武断的政府は徳川氏を以て終りを告げ、広き意味に於て国民の輿論の第一の勝利を見たり。而して之を促がしたるものは外交問題なりしことを忘るべからず。
 およそ外交問題ほど国民の元気を煥発するものはあらざる也。之なければ放縦懶惰安逸虚礼等に流れて、覚束おぼつかなき運命に陥るものなり。徳川氏の天下に臨むや、法制厳密にして注意極めて精到、之を以て三百年の政権はほとんど王室の尊厳をさへ奪はんとするばかりなりし、然るに彼の如くもろくたふれたるものは、し腐敗の大に中に生じたるものあるにもせよ、吾人は主として之を外交の事に帰せざるを得ず。而して外交の事に就きても、蓋し国民の元気の之に対してぼつとして興起したることを以て、徳川氏の根蔕を抜きたる第一因とせざるべからず。
 国民の精神は外交の事によつて覚醒したり。其結果として尊王攘夷論を天下に瀰漫びまんせしめたり、多数の浪人をして孤剣三尺東西に漂遊せしめたり。幕府衰亡の顛末てんまつは、桜痴あうち居士の精細なる叙事にて其実況を知悉ちしつするに足れり。吾人は之を詳論するの暇なし、唯だ吾人が読者に確かめ置きたき事は、斯の如く覚醒したる国民の精神は、たゞに徳川氏を仆したるのみならず、従来の組織を砕折し、従来の制度を撃破し尽くすにあらざれば、満足すること能はざること之なり。
 明治政府は国民の精神の相手として立てり。国民の精神は明治政府に於て其の満足を遂げたり、爰に至つて外交の問題も一ト先づ其の局を結びたり、明治六七年迄は聯合したる勢力の結托鞏固きようこにして、専ら破壊的の事業に力を注ぎたり、然れども明治政府の最初の聯合躰は、寧ろ破壊的の聯合組織にして、破壊すべき目的の狭まくなりゆくと共に、建設すべき事業に於て、相撞着どうちやくするところなき能はず。爰に於て征韓論の大破綻あり、佐賀の変、十年の役等は蓋し其の結果なるべし。之よりして政府部内にあるすべての競争は、聯合躰より単一躰に趣かんとする傾向に基けり、凡ての専制政躰に於て此事あり、吾人は独り明治政府を怪しまざるなり。
 吾人の眼球を一転して、吾国の歴史に於て空前絶後なる一主義の萌芽を観察せしめよ。
 即ち民権といふ名を以て起りたる個人的精神、是なり。この精神を尋ぬる時は、吾人くしくも其発源を革命の主因たりし精神の発動に帰せざるべからざる数多の理由を見出すなり。かれは革命の成功と共に、一たびは沈静したり、然れども此は沈静にあらずして潜伏なりき。革命の成るまでは、皇室に対し国家に対して起りたる精神の動作なりき。既に此目的を達したる後は、如何なる形にて、其動作をあらはすべきや。
 国民は既に政治上に於ては、旧制を打破して、万民ともに国民たるの権利と義務をになへり。この「権利」と「義務」は、自からに発達し来れり、権義の発達は即ち個人的精神の発達なり。材能あるものは登用して政府の機務を処理することゝなれり。而して材能なきものと雖も、一村一邑いちいふに独立したる権義の舞台となりて、個人的の自由を享有するものとなれり。富の勢力はにはかに上騰したり。アビリチーの栄光漸くあらはれ来れり。必要は政府を促がして、法律の輸入をなさしめたり。之を要するに個人的精神は長大足の進歩を以て、狭き意味に於ける国家的の精神の領地をかすめ去れり。国民の自由を保護すべき武器として、言論集会出版等の勢力漸くにして世に顕はれたり。政府未だ如何にして是等の新傾向に当るべきかを知らざりしなり。明治政府はひたすら聯合より単一に趣かんことに意を鋭くしたり。十年の役はいさゝか其目的を達したりと雖、なほ各種の異分子のあひ疾悪しつをするもの政府部内に蟠拠はんきよするあれば、表面は堅固なる組織の如くなれど、其実極めて不安心なる国躰なりと云はざるを得ず。

(明治二十六年四月)




 



底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房
   1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行
   1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行
初出:「評論 一號~四號」女學雜誌社
   1893(明治26)年4月8日、4月22日、5月6日、5月20日
入力:kamille
校正:鈴木厚司
2005年1月27日作成
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