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若菜集(わかなしゅう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-11 9:21:08  点击:  切换到繁體中文


  おくめ

こひしきまゝに家を
こゝの岸よりかの岸へ
越えましものと来て見れば
千鳥鳴くなり夕まぐれ

こひには親も捨てはてて
やむよしもなき胸の火や
びんの毛を吹く河風よ
せめてあはれと思へかし

河波かはなみ暗く瀬を早み
流れていはくだくるも
君を思へば絶間なき
恋の火炎ほのほかわくべし

きのふの雨の小休をやみなく
水嵩みかさや高くまさるとも
よひ/\になくわがこひの
涙の滝におよばじな

しりたまはずやわがこひは
花鳥はなとりの絵にあらじかし
空鏡かがみ印象かたち砂の文字
梢の風の音にあらじ

しりたまはずやわがこひは
雄々ををしき君の手に触れて
嗚呼ああ口紅くちべにをその口に
君にうつさでやむべきや

恋は吾身のやしろにて
君は社の神なれば
君の祭壇つくゑの上ならで
なににいのちをささげまし

くだかば砕け河波かはなみ
われに命はあるものを
河波高く泳ぎ行き
ひとりの神にこがれなん

心のみかは手も足も
吾身はすべて火炎ほのほなり
思ひ乱れて嗚呼恋の
千筋ちすぢの髪の波に流るゝ

  おつた

ほの見ゆる春の夜の
すがたに似たる吾命わがいのち
朧々おぼろおぼろ父母ちちはは
二つの影と消えうせて
世に孤児みなしごの吾身こそ
影より出でし影なれや
たすけもあらぬ今は身は
若きひじりに救はれて
人なつかしき前髪まへがみ
処女をとめとこそはなりにけれ

若きひじりののたまはく
時をし待たむ君ならば
かの柿の実をとるなかれ
かくいひたまふうれしさに
ことしの秋もはや深し
まづその秋を見よやとて
聖に柿をすゝむれば
その口唇くちびるにふれたまひ
かくも色よき柿ならば
などかは早くわれに告げこぬ

若き聖ののたまはく
人の命のしからば
嗚呼ああかの酒を飲むなかれ
かくいひたまふうれしさに
酒なぐさめの一つなり
まづその春を見よやとて
聖に酒をすゝむれば
夢の心地に酔ひたまひ
かくも楽しき酒ならば
などかは早くわれに告げこぬ

若き聖ののたまはく
道行き急ぐ君ならば
迷ひの歌をきくなかれ
かくいひたまふうれしさに
歌も心の姿なり
まづその声をきけやとて
一ふしうたひいでければ
聖はたまも酔ひたまひ
かくも楽しき歌ならば
などかは早くわれに告げこぬ

若き聖ののたまはく
まことをさぐる吾身なり
道のまよひとなるなかれ
かくいひたまふうれしさに
なさけも道の一つなり
かゝるおもひを見よやとて
わがこの胸に指ざせば
聖は早く恋ひわたり
かくも楽しき恋ならば
などかは早くわれに告げこぬ

それ秋の日の夕まぐれ
そゞろあるきのこゝろなく
ふと目に入るを手にとれば
雪より白き小石なり
若き聖ののたまはく
智恵の石とやこれぞこの
あまりに惜しき色なれば
人に隠して今もはなたじ

  おきく

くろかみながく
    やはらかき
をんなごころを
    たれかしる

をとこのかたる
    ことのはを
まこととおもふ
    ことなかれ

をとめごころの
    あさくのみ
いひもつたふる
    をかしさや

みだれてながき
    びんの毛を
黄楊つげ小櫛をぐし
    かきあげよ

あゝつきぐさの
    きえぬべき
こひもするとは
    たがことば

こひて死なんと
    よみいでし
あつきなさけは
    がうたぞ

みちのためには
    ちをながし
くにには死ぬる
    をとこあり

治兵衛はいづれ
    恋か名か
忠兵衛も名の
    ために

あゝむかしより
    こひ死にし
をとこのありと
    しるや君

をんなごころは
    いやさらに
ふかきなさけの
    こもるかな

小春はこひに
    ちをながし
梅川こひの
    ために死ぬ

お七はこひの
    ために焼け
高尾はこひの
    ために果つ

かなしからずや
    清姫は
へびとなれるも
    こひゆゑに

やさしからずや
    佐容姫さよひめ
石となれるも
    こひゆゑに

をとこのこひの
    たはぶれは
たびにすてゆく
    なさけのみ

こひするなかれ
    をとめごよ
かなしむなかれ
    わがともよ

こひするときと
    かなしみと
いづれかながき
    いづれみじかき
[#改段]

三 生のあけぼの


  草枕

夕波くらくく千鳥
われは千鳥にあらねども
心のはねをうちふりて
さみしきかたに飛べるかな

若き心の一筋ひとすぢ
なぐさめもなくなげきわび
胸の氷のむすぼれて
とけて涙となりにけり

蘆葉あしはを洗ふ白波の
流れていはを出づるごと
思ひあまりて草枕
まくらのかずの今いくつ

かなしいかなや人の身の
なきなぐさめをたづ
道なき森に分け入りて
などなき道をもとむらん

われもそれかやうれひかや
野末のずゑに山に谷蔭たにかげ
見るよしもなき朝夕の
光もなくて秋暮れぬ

おもひも薄く身も暗く
残れる秋の花を見て
行くへもしらず流れ行く
水に涙の落つるかな

身を朝雲あさぐもにたとふれば
ゆふべの雲の雨となり
身を夕雨ゆふあめにたとふれば
あしたの雨の風となる

されば落葉と身をなして
風に吹かれてひるがへ
朝の黄雲きぐもにともなはれ
よる白河を越えてけり

道なき今の身なればか
われは道なき野を慕ひ
思ひ乱れてみちのくの
宮城野みやぎのにまで迷ひきぬ

心の宿やどの宮城野よ
乱れて熱きわが身には
日影も薄く草枯れて
荒れたる野こそうれしけれ

ひとりさみしき吾耳は
吹く北風をこと
悲み深き吾目には
色彩いろなき石も花と見き

あゝ孤独ひとりみ悲痛かなしさ
味ひ知れる人ならで
たれにかたらん冬の日の
かくもわびしき野のけしき

都のかたをながむれば
空冬雲におほはれて
身にふりかゝる玉霰たまあられ
そでの氷と閉ぢあへり

みぞれまじりの風つよ
小川の水の薄氷
氷のしたに音するは
流れて海に行く水か

いて羽風はかぜもたのもしく
雲に隠るゝかさゝぎよ
光もうすき寒空さむぞら
なれも荒れたる野にむせぶ

涙も凍る冬の日の
光もなくて暮れ行けば
人めも草も枯れはてて
ひとりさまよふ吾身かな

かなしや酔ふて行く人の
踏めばくづるゝ霜柱
なにを酔ひ泣く忍び
声もあはれのその歌は

うれしや物のきて
野末をかよふ人の子よ
声調しらべひく手も凍りはて
なにかどづけの身のはて

やさしや年もうら若く
まだ初恋のまじりなく
手に手をとりて行く人よ
なにを隠るゝその姿

野のさみしさに堪へかねて
霜と霜との枯草の
道なき道をふみわけて
きたれば寒し冬の海

朝は海辺うみべの石の
こしうちかけてふるさとの
都のかたを望めども
おとなふものはなみばかり

暮はさみしき荒磯あらいそ
うしほを染めし砂に伏し
日の入るかたをながむれど
きくるものは涙のみ

さみしいかなや荒波の
岩にくだけて散れるとき
かなしいかなや冬の日の
うしほとともに帰るとき

たれか波路を望み見て
そのふるさとを慕はざる
誰か潮の行くを見て
この人の世ををしまざる

こよみもあらぬ荒磯の
砂路にひとりさまよへば
みぞれまじりの雨雲の
落ちて潮となりにけり

遠く湧きくる海の音
慣れてさみしき吾耳に
怪しやもるゝものの
まだうらわかき野路の鳥

嗚呼ああめづらしのしらべぞと
声のゆくへをたづぬれば
緑のはねもまだ弱き
それも初音はつねうぐひす

春きにけらし春よ春
まだ白雪の積れども
若菜のえて色青き
こゝちこそすれ砂の

春きにけらし春よ春
うれしや風に送られて
きたるらしとや思へばか
梅がぞする海の

磯辺に高き大巌おほいは
うへにのぼりてながむれば
春やきぬらん東雲しののめ
しほ遠き朝ぼらけ

  春


   一 たれかおもはむ

たれかおもはむうぐひす
涙もこほる冬の日に
若き命は春の夜の
花にうつろふ夢の
あゝよしさらば美酒うまざけ
うたひあかさん春の夜を

梅のにほひにめぐりあふ
春を思へばひとしれず
からくれなゐのかほばせに
流れてあつきなみだかな
あゝよしさらば花影に
うたひあかさん春の夜を

わがみひとつもわすられて
おもひわづらふこゝろだに
春のすがたをとめくれば
たもとににほふ梅の花
あゝよしさらばこと
うたひあかさん春の夜を

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