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若菜集(わかなしゅう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-11 9:21:08  点击:  切换到繁體中文


   二 あけぼの

くれなゐ細くたなびけたる
雲とならばやあけぼのの
       雲とならばや

やみをでては光ある
空とならばやあけぼのの
       空とならばや

春の光をいろどれる
水とならばやあけぼのの
       水とならばや

はとまれてやはらかき
草とならばやあけぼのの
       草とならばや

   三 春は来ぬ

春はきぬ
  春はきぬ
初音はつねやさしきうぐひすよ
こぞに別離わかれを告げよかし
谷間に残る白雪よ
葬りかくせ去歳こぞの冬

春はきぬ
  春はきぬ
さみしくさむくことばなく
まづしくくらくひかりなく
みにくゝおもくちからなく
かなしき冬よ行きねかし

春はきぬ
  春はきぬ
浅みどりなる新草にひぐさ
とほき野面のもせゑがけかし
さきてはあか春花はるばな
樹々きぎこずゑを染めよかし

春はきぬ
  春はきぬ
かすみよ雲よゆるぎいで
氷れる空をあたゝめよ
花のおくる春風よ
眠れる山を吹きさませ

春はきぬ
  春はきぬ
春をよせくる朝汐あさじほ
あし枯葉かれはを洗ひ去れ
霞に酔へる雛鶴ひなづる
若きあしたの空に飛べ

春はきぬ
  春はきぬ
うれひのせりの根を絶えて
氷れるなみだ今いづこ
つもれる雪の消えうせて
けふの若菜とえよかし

   四 眠れる春よ

ねむれる春ようらわかき
かたちをかくすことなかれ
たれこめてのみけふの日を
なべてのひとのすぐすまに
さめての春のすがたこそ
また夢のまの風情ふぜいなれ

ねむげの春よさめよ春
さかしきひとのみざるまに
若紫の朝霞
かすみのそでをみにまとへ
はつねうれしきうぐひすの
鳥のしらべをうたへかし

ねむげの春よさめよ春
ふゆのこほりにむすぼれし
ふるきゆめぢをさめいでて
やなぎのいとのみだれがみ
うめのはなぐしさしそへて
びんのみだれをかきあげよ

ねむげの春よさめよ春
あゆめばたにのわらびの
したもえいそぐがあしを
かたくもあげよあゆめ春
たえなるはるのいきを吹き
こぞめの梅の香ににほへ

   五 うてや鼓

うてやつづみの春の音
雪にうもるゝ冬の日の
かなしき夢はとざされて
世は春の日とかはりけり

ひけばこぞめの春霞
かすみの幕をひきとぢて
花と花とをぬふ糸は
けさもえいでしあをやなぎ

霞のまくをひきあけて
春をうかゞふことなかれ
はなさきにほふ蔭をこそ
春のうてなといふべけれ

小蝶こちょうよ花にたはぶれて
優しき夢をみては舞ひ
ふて羽袖はそでもひら/\と
はるの姿をまひねかし

緑のはねのうぐひすよ
梅の花笠ぬひそへて
ゆめしづかなるはるの日の
しらべを高く歌へかし

  小詩

くめどつきせぬ
わかみづを
きみとくまゝし
かのいづみ

かわきもしらぬ
わかみづを
きみとのまゝし
かのいづみ

かのわかみづと
みをなして
はるのこゝろに
わきいでん

かのわかみづと
みをなして
きみとながれん
花のかげ

  明星

浮べる雲と身をなして
あしたのそらに出でざれば
などしるらめや明星の
光の色のくれなゐを

朝のうしほと身をなして
流れて海に出でざれば
などしるらめや明星の
みてかなしききらめきを

なにかこひしき暁星あかぼし
むなしきあまの戸を出でて
深くも遠きほとりより
人の世近くきたるとは

うしほの朝のあさみどり
水底みなそこ深き白石を
星の光にかし見て
朝のよはひを数ふべし

野の鳥ぞ山河やまかは
ゆふべの夢をさめいでて
細く棚引たなびくしのゝめの
姿をうつす朝ぼらけ

小夜さよには小夜のしらべあり
朝には朝のもあれど
星の光の糸の
あしたのことしづかなり

まだうら若き朝の空
きらめきわたる星のうち
いと/\若き光をば
なづけましかば明星と

  潮音

わきてながるゝ
やほじほの
そこにいざよふ
うみの琴
しらべもふかし
もゝかはの
よろづのなみを
よびあつめ
ときみちくれば
うらゝかに
とほくきこゆる
はるのしほのね

  酔歌

旅と旅との君や我
君と我とのなかなれば
酔ふてたもと歌草うたぐさ
めての君に見せばやな

若き命も過ぎぬ
楽しき春は老いやすし
が身にもてるたからぞや
君くれなゐのかほばせは

君がまなこに涙あり
君が眉には憂愁うれひあり
かたく結べるその口に
それ声も無きなげきあり

名もなき道をくなかれ
名もなき旅を行くなかれ
甲斐かひなきことをなげくより
きたりてうまき酒に泣け

光もあらぬ春の日の
独りさみしきものぐるひ
悲しき味の世の智恵に
老いにけらしな旅人よ

心の春の燭火ともしび
若き命を照らし見よ
さくまを待たで花散らば
かなしからずや君が身は

わきめもふらで急ぎ行く
君の行衛ゆくへはいづこぞや
琴花酒ことはなさけのあるものを
とゞまりたまへ旅人よ

  二つの声

   朝

たれか聞くらん朝の声
ねむりと夢を破りいで
あやなす雲にうちのりて
よろづの鳥に歌はれつ
天のかなたにあらはれて
東の空に光あり
そこにときありはじめあり
そこに道あり力あり
そこに色ありことばあり
そこに声あり命あり
そこに名ありとうたひつゝ
みそらにあがり地にかけり
のこんの星ともろともに
光のうちに朝ぞ隠るゝ

   暮

たれか聞くらん暮の声
霞のつばさ雲の帯
煙のころも露のそで
つかれてなやむあらそひを
闇のかなたに投げ入れて
夜の使つかひ蝙蝠かはほり
飛ぶ間も声のをやみなく
こゝに影ありまよひあり
こゝに夢ありねむりあり
こゝに闇あり休息やすみあり
こゝにながきあり遠きあり
こゝに死ありとうたひつゝ
草木にいこひ野にあゆみ
かなたに落つる日とともに
色なき闇に暮ぞ隠るゝ

  哀歌

    中野逍遙をいたむ
『秀才香骨幾人憐、秋入長安夢愴然、琴台旧譜※(「土へん+盧」、第3水準1-15-68)前柳、風流銷尽二千年』、これ中野逍遙が秋怨十絶しゅうえんじゅうぜつの一なり。逍遙字は威卿、小字重太郎、予州宇和島の人なりといふ。文科大学の異材なりしが年わづかに二十七にしてうせぬ。逍遙遺稿正外二篇、みな紅心の余唾にあらざるはなし。左に掲ぐるはかれの清怨を写せしもの、『寄語残月休長嘆、我輩亦是艶生涯』、合せかゝげてこの秀才を追慕するのこゝろをとゞむ。

    思君九首     中野逍遙

思君我心傷    思君我容瘁
中夜坐松蔭    露華多似涙

思君我心悄    思君我腸裂
昨夜涕涙流    今朝尽成血

示君錦字詩    寄君鴻文冊
忽覚筆端香    ※(「窗/心」、第3水準1-89-54)外梅花白

為君調綺羅    為君築金屋
中有鴛鴦図    長春夢百禄

贈君名香篋    応記韓寿恩
休将秋扇掩    明月照眉痕

贈君双臂環    宝玉価千金
一鐫不乖約    一題勿変心

訪君過台下    清宵琴響揺
佇門不敢入    恐乱月前調

千里囀金鶯    春風吹緑野
忽発頭屋桃    似君三両朶

嬌影三分月    芳花一朶梅
渾把花月秀    作君玉膚堆


かなしいかなや流れ行く
水になき名をしるすとて
今はた残る歌反古うたほご
ながきうれひをいかにせむ

かなしいかなやするすみ
いろに染めてし花の木の
君がしらべの歌の音に
薄き命のひゞきあり

かなしいかなやさきの世は
みそらにかゝる星の身の
人の命のあさぼらけ
光も見せでうせにしよ

かなしいかなや同じ世に
生れいでたる身を持ちて
友のちぎりも結ばずに
君は早くもゆけるかな

すゞしきまなこつゆを帯び
葡萄ぶどうのたまとまがふまで
その面影をつたへては
あまりにねたき姿かな

同じ時世ときよに生れきて
同じいのちのあさぼらけ
君からくれなゐの花は散り
われ命あり八重葎やへむぐら

かなしいかなやうるはしく
さきそめにける花を見よ
いかなればかくとゞまらで
待たで散るらんさける

かなしいかなやうるはしき
なさけもこひの花を見よ
いと/\清きそのこひは
消ゆとこそ聞けいと早く

君し花とにあらねども
いな花よりもさらに花
君しこひとにあらねども
いなこひよりもさらにこひ

かなしいかなや人の世に
あまりに惜しきざえなれば
やまひちりかなしみ
死にまでそしりねたまるゝ

かなしいかなやはたとせの
ことばの海のみなれざを
磯にくだくる高潮たかじほ
うれひの花とちりにけり

かなしいかなや人の世の
きづなも捨てていななけば
つきせぬ草に秋は来て
声も悲しき天の馬

かなしいかなやを遠み
流るゝ水の岸にさく
ひとつの花に照らされて
ひるがへり行く一葉舟ひとはぶね
[#改段]

四 深林の逍遙しょうよう、其他


  深林の逍遙

力をきざ木匠こだくみ
うちふる斧のあとを絶え
春の草花くさばな彫刻ほりもの
のみにほひもとゞめじな
いろさま/″\の春の葉に
青一筆あをひとふであともなく
千枝ちえにわかるゝ赤樟あかくす
おのづからなるすがたのみ
ひのきは荒し杉直し
五葉は黒ししひの木の
枝をまじゆる白樫しらかし
あふちは茎をよこたへて
枝と枝とにもゆる火の
なかにやさしき若楓わかかへで

  山精やまびこ

ひとにしられぬ
たのしみの
ふかきはやしを
たれかしる

ひとにしられぬ
はるのひの
かすみのおくを
たれかしる

  木精こだま

はなのむらさき
はのみどり
うらわかぐさの
のべのいと

たくみをつくす
大機おほはた
をさのはやしに
きたれかし

  山精

かのもえいづる
くさをふみ
かのわきいづる
みづをのみ

かのあたらしき
はなにゑひ
はるのおもひの
なからずや

  木精

ふるきころもを
ぬぎすてて
はるのかすみを
まとへかし

なくうぐひすの
ねにいでて
ふかきはやしに
うたへかし


あゆめばらんの花を踏み
ゆけば楊梅やまもも袖に散り
たもとにまとふ山葛やまくづ
葛のうら葉をかへしては
女蘿ひかげの蔭のやまいちご
色よき実こそ落ちにけれ
岡やまつゞき隈々くまぐま
いとなだらかに行きびて
ふかきはやしの谷あひに
乱れてにほふふぢばかま
谷に花さき谷にちり
人にしられずつるめり
せまりて暗きはざまより
やゝひらけたる深山木みやまぎ
春は小枝こえだのたゝずまひ
しげりて広き熊笹の
葉末をふかくかきわけて
谷のかなたにきて見れば
いづくに行くか滝川よ
声もさびしや白糸の
青きいはほに流れ落ち
若きましらのためにだに
おとをとゞむる時ぞなき

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