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話の種(はなしのたね)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-4 5:59:49  点击:  切换到繁體中文


         七

      アフリカの杜鵑ほととぎす

 アフリカに、杜鵑の一種で俗名を「蜂蜜の案内者」と称する鳥が居る。蜜蜂の巣の所在を人に知らせるからこういう名が付いているのだそうな。しかるに近頃ある動物学者が調べた処によれば、この鳥は普通の杜鵑のように、他の鳥の巣へ自分の卵を産んで孵化させるのみならず、一層性の悪い事をする。すなわち巣の中にある他鳥の卵、云わば我子の乳兄弟をくちばしで突き破って殺してしまうそうである。それが万一僥倖ぎょうこうに助かって孵化しても、親に似て性の悪い杜鵑の雛鳥に鋭い嘴でつつき出されてしまうという。

      家の貧富と子供の体格

 近頃スコットランドの文部省でグラスゴー府の小学児童の体格検査をした結果を発表した。この報告によれば親が貧しくてただ一室だけに住まっているものは、体量も身長も最劣等であるが、二室持っている者の子はこれよりは少し良く、三室、四室と増すに従ってだんだん良くなる。例えば男児だけについて見ても、二室のものの子は四室の者の子に比べて平均十一ボンド七分軽く、四・七インチ丈が低い。女の児の方はこれよりも一層この差が大きいようである。つまり貧家の子供は自然に栄養その他の欠乏から体格が悪くなるのだろう。

(明治四十年九月二十八日『東京朝日新聞』)
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         八

      煙の中で呼吸する器械 

 仏国のチソーという人が、煙や硫気その他の毒瓦斯どくガスの中で仕事をする人のために呼吸器を作って発表した。背嚢はいのうのような箱から管が二本出て口と鼻とに連絡し、巧みに弁の作用で、一方から新しい空気を送り、他方に呼気いきを出すようになっている。いったん吸うて出した汚れた空気は、背嚢に帰って苛性加里かせいカリで清浄にされ、再び用いられる。なお不足な空気は箱の一部に圧搾した酸素が必要に応じて少しずつ補われる仕掛けになっている。この器を用うれば五時間くらい毒瓦斯の中で働いても差支えがないという事である。
(明治四十年九月二十九日『東京朝日新聞』)
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         九

      心臓の鼓動

 こうしから取った血清を水に浸しておくとその中の塩分がだんだんに脱けて来る。遂に〇・六プロセントくらいになったのを蛙あるいは亀の心臓に注入すると、その心臓の鼓動が全く止まって一時間くらいは動かないでいる。この鼓動の休止中何か他から刺戟を与えると、一回あるいは数回強く鼓動してまた静止する。これらの試験の結果から考えると心臓の鼓動するのは塩のごとき化学的の刺戟物が心臓の神経に作用するためで、この種の刺戟がなければ自ずから鼓動する事は出来ぬだろうという。これはある学者の新説である。
(明治四十年九月三十日『東京朝日新聞』)
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         十

      新奇な風見鴉かざみがらす

 これは倶楽部クラブあるいは宿屋の室内に粧飾用を兼ねて据え置き、時々刻々の風の方向を知らせる器械である。一見置時計のような形をしているが、その前面の円盤には羅針盤と同じように方角をしるし、その周囲には小さい豆電灯が一列に輪をなして並んでいる。もし北風ならば盤の北と誌した針のさきのランプが光っている。南ならば南、西北なら西北といつでも風向に応じて盤の豆ランプがともるのである。内部の仕掛けは簡単なものでただ屋根の上に備えた風見鴉から針金を引き電池一個を接続すればよい。店先きに備え付けて人寄せの広告などに使ったら妙だろう。
(明治四十年十月一日『東京朝日新聞』)
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         十一

      磁力起重機

 強い電磁石を使って重い鉄片などを吸い付けて吊し上げ、汽車や汽船の荷上げや荷積みをする器械が近来処々しょしょで用いられる。今度米国の某鉄道会社で試験した結果によれば、人夫が六人掛かりで半日にやっとする仕事を、この器械でやれば四人でわずか一時間に片付けてしまうそうである。

      米国の電話

 北米合衆国の電話に関する最近の統計を見ると、国柄だけに盛んな勢いを示している。千九百〇三年におけると三年後の千九百〇六年すなわち昨年の暮におけると、電話機の数も電線の延長もザット倍になっている。すなわち個数の三百八十万弱が七百十万余になり、電線の三百万マイル足らずが六百万余になっている。加入者の数は全人口に割り当てると二十八人に一人となる。一日中の通話の回数が驚くなかれ千六百九十四万とある。
(明治四十年十月二日『東京朝日新聞』)
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         十二

      風車かざぐるまの利用

 風の力の大きい事は云うまでもない。この力を原動力に利用して各種の作業をすれば利益があるだろうという事はよく人の考える事だが、ただ一つ困る事は、風は至って気まぐれ者で、思う時に思うように吹いてくれぬので、始終きまった馬力を要する器械にはちょっと使いにくい。しかしこれには蓄電池という都合のよいものがあって、風の力を電気の力に変じて蓄え、必要に応じて勝手に使う事が出来るのである。現に英国バーミンガムでは十一年前から風車で電灯を点じている人がある。その風車は直径三十五フィートでこれを五十フィートの櫓の上に据え付け、十六燭の電灯二百個を点ずる外に、なお五馬力のモートル三個を運転しているが、未だかつて停電などを起さぬという事である。石炭や水力を得難い土地では風車を用いた方が石油機関よりは利益だという。
(明治四十年十月三日『東京朝日新聞』)
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         十三

      霧中の汽車信号

 鉄道線路の傍に巨人のごとく直立しあるいは片手あるいは両手を拡げて線路の安否を知らせる普通の信号標は、通常の天気ならば昼夜の別なく有効であるが、ただ霧が掛かって数歩の外は見え分かぬような日には何の役にも立たぬ。この不便と危険を防ぐため、近頃米国大西鉄道で採用する発音信号機というのは簡単な仕掛けであるが数ケ月間の試験によって有効な事が確かめられた。危険の時には汽笛、安全の場合には鐘を鳴らす事になっている。
(明治四十年十月四日『東京朝日新聞』)
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         十四

      馬鈴薯じゃがいもの皮をく器械

 大樽に一杯の馬鈴薯の皮をわずかに数分間で綺麗に剥いてしまうという器械が近頃米国で発明された。器械の桶の中に馬鈴薯を詰め込んで半馬力のモートルを運転させると、見る間に外皮は剥け落ち清浄に洗われて直ちに料理の出来るようになる。米国の海軍ではこの器械を四十台使っているが、水夫二、三人掛りで十五分間も運転させると一日の食糧くらいは楽に出来るという事である。馬鈴薯のみならずかぶ人参にんじんにも応用が出来るそうだから、我邦でも軍隊の炊事などに使えば便利かと思われる。如何にも米国人のこしらえそうな器械である。記者がこの器械の事を近着の科学雑誌で読んだ後、場末の町を散歩していたら、とある米屋の店先で小僧がズックの袋に豆かなにか入れたのを一生懸命汗を垂らして振っていた。ずいぶんな対照コントラストだとその時にちょっとおかしかった。
(明治四十年十月八日『東京朝日新聞』)
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         十五

      奇妙な病気

 始終X光線を使っている人は往々不思議な恐ろしい病気にかかるそうである。この病のために死んだ人は米国だけで既に四人ある。第一にたおれたのが有名なエジソンの助手某。次にはボストンの医師某。第三がサンフランシスコの一婦人。第四に近頃やられたのはロチェスターの外科医ウィーゲル博士だという。この人は始めにその右手と左の指三本を切断したがなお駄目で、次には右肩より胸にかけて肉を取り去ったが、それでも遂に無効であったという。この恐ろしい病気は原因も全く分らず治療の方法も知れぬとの事である。
(明治四十年十月九日『東京朝日新聞』)
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         十六

      脳髄の保存法

 解剖学や人類学の参考品として脳を保存する方法を詳しく研究した学者の説に従えば、普通大の脳を漬けておく液にはフォルマリンを三、蒸餾水を四五ないし二五、酒精アルコールを五二ないし七五の割合に交ぜたものたい、そして脳の大きいほど水を少なく酒精の方を割合に多くするがよいという事である。
(明治四十年十月十一日『東京朝日新聞』)
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         十七

      船内の消毒

 船中で鼠をり、また消毒をするために亜硫酸瓦斯を用うる事があるが、その効験に関する詳細な調査の結果に拠れば、鼠や害虫の類はわずかに〇・五プロセントの亜硫酸を含む空気で二時間もいぶせば絶滅する事が出来る。しかし積荷の奥底まで行き渡らせるためには約三プロセントくらいにしなければならぬ、これならば大抵の病菌も死ぬるという事である。織物類、金属器具等はこの瓦斯には害せられぬが、硫黄を燃やして亜硫酸を発生せしめる際硫酸の瓦斯も伴って出るからこれが少々損害を及ぼす。肉類、果物、蔬菜の類もまた多少の損害を免れぬという。
(明治四十年十月十三日『東京朝日新聞』)
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         十八

      優しい返答

 シカゴ市のある青年紳士が一日電話をかけようとしたが、どういう都合であったか接続が大変手間が取れるので紳士は癇癪かんしゃくを起して交換手を怒鳴りつけた。その相手の交換手はイリノイ州出の女であったが、非常に優しい声で可憐な返答をしたその声が妙に紳士の心を動かし、それが縁となってとうとう目出度く結婚する事となった。これは嘘のような話だが事実である。

      長さ一マイルの手紙

 米国のある水兵が電信用の紐紙ひもがみ細々こまごまと書いた手紙をその友に送った。その長さ一マイル余でこれを書き上げるのに二週間かかったという。おそらく開闢かいびゃく以来の長い手紙であろう。こんな手紙を貰うた人こそ災難だったろう。
(明治四十年十月十四日『東京朝日新聞』)
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         十九

      植物の生長

 ロンドンの王立植物園で植物の生長に有効あるいは必要な諸種の条件について調査した結果の報告書によれば、第一に強烈な弧灯アークとうより出ずる紫外光線、第二には根より幹に不断に通う電気、第三には華氏七十ないし八十度において適当の湿度と炭酸瓦斯の供給、第四には理想的の窒素肥料、第五には根に充分なる水の供給、この五つの条件が揃えば植物は理想的に成長するとの事である。そして面白い事にはこれらの条件はただ石炭さえあればほとんどすべて充たされる。すなわち石炭を燃やして発電機も動かされる。熱も炭酸も湿気も出来る。窒素肥料の硫酸アンモニアもまた石炭から採ることが出来るという話である。その石炭なるものは太古の植物から生じたものだという事を考えるとなおさら面白い。
(明治四十年十月十五日『東京朝日新聞』)
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         二十

      ボートレースに無線電話

 今年の七月、北米の大湖エリーの水上で端艇競漕ボートレースのあった時、その時々刻々の景況を陸上に報ずるためテルマと名づくる小蒸気船に無線電話機を載せて現場に臨ませた。これがおそらく無線電話の実用された最初の例であろう。その成績は予想外に良かった。話し声を聞いて相手が誰だかという事さえ知れたそうである。船は十八トンでアンテナを張った帆柱が低かったにもかかわらず四マイルの距離で通話自在であったという。
(明治四十年十月十六日『東京朝日新聞』)
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         二十一

      日本の舞い鼠

 子供の楽しみに飼うはつか鼠にちょっと歩いてはクルクルまわりまた歩いては舞ういわゆる舞い鼠というのがある。あの舞うのは何故かと調べてみると、内耳の一部をなしている三半規管の構造が不完全なため、始終に眩惑めまいを起すからだという事である。そう聞けば可哀相で飼うのは厭になる。人間でも内耳の病患で三半規管に故障が起るとグラグラして直立歩行が出来なくなる。鼓膜の破れた人が耳を洗う時眩暈めまいを感じたり、また健全な者でも少時間グルグル舞うた後には平均を失うて倒れたりするのは皆この三半規管を刺戟するためだという。船に酔うのもやはり同様な原因に帰する事が出来る。
(明治四十年十月十七日『東京朝日新聞』)
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         二十二

      護謨ゴムの新原料

 近頃葡国ポルトガル領西部アフリカで発見された一種の植物の球根は丁度蕪菁かぶらのような格好をしているが、その液汁中には護謨を含み、これを圧搾して酒精アルコールかたまらせると二分の一プロセントくらいのゴムが取れる。栽培後二年たてば一エーカーの地面につき百八十斤くらいの収穫がある見込みだという。
(明治四十年十月十九日『東京朝日新聞』)
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         二十三

      章魚たこ烏賊いかとの研究

 (一)章魚の生殖作用
 今年の英国科学会ブリティッシュアソシエーションの総会でホイルという動物学者が講演した章魚や烏賊の類に関する研究の結果中で吾々素人しろうとにも面白く思われる二、三の事実を夜長の話柄わへいにもと受け売りをしてみよう。
 俗に章魚船と名づけられ、水面に浮んで風のまにまに帆かけて走る章魚の一種がある。その雌の体内で外套膜腔がいとうまくこうの中に奇妙な細長い虫のようなものが見出された事があるので、昔は一種の寄生虫だろうと考えられていた。ところがだんだん研究してみると、驚くべし、これは生殖作用を遂げるため、雄の足の一部が子種を運ぶために脱離し、雌の体内に侵入したものだという事がわかった。それ以来次第に研究を進めてみると、章魚船には限らず一般に頭足類の動物中にはこの種の生殖法が特有なものだという事が知れて来た。尤も種類によっては雄の足を脱離しなくってその代り雄は六本の足で相手を押さえ二本の足を外套膜の中に挿し込む、その時雌は呼吸を止められるから必死になって逃げ出そうと藻掻もがくそうである。けだし一奇観であろうと想像される。足の脱離する方の種類では、雄が自身に落ちた足を持って行くか、あるいはまた足が自働的に動いて行くか、そこまではまだ研究が届かぬそうである。
(明治四十年十月二十日『東京朝日新聞』)

 (二)光を放つ烏賊
 次に面白いのは海底で光を放つ烏賊の話である。一体頭足類の動物中で多少の光を放つものが三十種以上もある。中にも非常に深海底から発見されたソーマトランパスと名づけるもののごときは、その光彩の美実に宝石をはめたようだという。例えば眼の辺には紺青色と真珠色の光を放ち、腹部にはルビー色、雪白色および空色の光斑を具えている。こういう怪物が真暗な深海の底を照らして游泳する処もまた一奇観であろうと思われる。そこでこの種の動物の発光器はどんな仕掛けで出来ているものだろうと色々研究した結果、二種の区別が知れた。すなわち一種のものでは光を放つ液体を分泌する腺を備え、他の種類では動物の組織の一部が発光するのだそうである。後者に属する発光器にはこれに附属したレンズや反射鏡のごときものを備えた極めて精巧なものもあるという話で、また発光器の中には体の内腔にあって透明な肉を通して光を放つものもあるそうである。前に述べたソーマトランパスなどでは総計二十二個の発光器を分類するとおよそ十種類のおのおのかわった仕掛けで出来ているそうな。そしてこれらの発光器は大抵みな腹の方ばかりにあるので、深海の底を照らしながら食餌えさを捜し歩くには都合のよい探海灯の用をするのだろうと思われる。
(明治四十年十月二十一日『東京朝日新聞』)

 (三)熱の無い光線
 如何なる作用で光を発するかという事はまだよく分らぬ。しかし一つ注意すべき事は、この種の発光器は大抵光線を出すばかりで熱を出さぬ。これに反して人工的の光ではいつも熱が伴うて起る。六かしく云えば機械力なり電気なりまた化学作用なり如何なる方法によるも熱くない光を作る事は出来ぬ。つまり使ったエネルギーの一部は必ず熱に変じて消費される、すなわちそれだけ余計な勢力を損している。しかるに造物者の手製の深海のランプはかくのごとく理想的に経済的にしかも美術的に出来ているのである。
(明治四十年十月二十二日『東京朝日新聞』)

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