您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 寺田 寅彦 >> 正文

話の種(はなしのたね)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-4 5:59:49  点击:  切换到繁體中文


         四十七

      英国の軍用軽気球

 先月初、ロンドン附近で軍用軽気球の試乗があった。アルダーショットからロンドンまで一時間二十四マイルの速度で飛行し、セントポールの寺院を一まわりして今度は風に逆らって進んだが、あまり風が強かったから水晶宮の辺で地上に下った。飛行した全距離五十マイル、地面より平均七百五十フィートの高さを航したそうである。

      狂人の眼と髪

 これはスコットランドの話で我邦には応用し難いかも知れぬが、同地の瘋癲ふうてん病院で調査した処によれば、統計上狂者には普通の人よりも眼の色が薄く髪の色が濃いのが多いという事である。

(明治四十年十一月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         四十八

      寒さと尿量

 寒い時に三時間運動せずにいると尿酸の排出量が平日の五割増す。しかし筋肉を運動させていれば一割強くらいしか増さぬ。これに反して暖かに着物を着て盛んに運動すれば却って三割くらい減ずる。それで尿酸の分泌の幾分は体熱の損失に対する反応として起るものだろうという。

      新発明の耳喇叭みみらっぱ

 スウェーデン政府の電話局で近頃発明された耳喇叭は交換手の耳にさし込んで通話をするためのものであるが、これはまた耳の遠い人のためにも重宝なものであるそうな。この器械の電線は耳の背後などに隠せば少しも目に立たぬそうである。
(明治四十年十二月一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         四十九

      宝石の人造法

 近頃仏国のポルダという人が鋼玉石こうぎょくせきの粉を変じて種々の宝石とする方法を発見した。すなわちこの鉱石の砕片をラジウムと一緒に一ケ月も管に入れておけば、あるいは黄色なトッパズになり、あるいはルビー、サッファヤ等種々の宝石に変るそうである。この法で作った宝石をその道の目利きに見せたら真贋の区別が出来なかったという。従来各種の鉱物または硝子ガラスなどがラジウムのために変色する事はよく知られていたが、今度の発見が確かなればよほど著しい事と云わねばならぬ。
(明治四十年十二月十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十

      濃霧を消散する新案

 ロンドンは霧の名所であるそうなが、近頃マジョラという人がこの霧を消す新案をして気象台でこれに関する研究をしているそうな。その法はと聞いてみるとずいぶん大仕掛けなものである。直径六フィート、高さ六十フィートの鋼鉄製の大砲を作り、その中でアセチリンその他の瓦斯ガスを爆発させ空気に劇動を起させる趣向だという。遠からずこの研究に関する報告が出るはずになっている。
(明治四十年十二月十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十一

      坑夫に賞牌

 英皇エドワード陛下は今度新たに二種の賞牌を制定せられた。これは鉱山の坑夫などで多数の人の生命を救い危険を除くために自分の生命を賭した者に授与するはずだという。そのリボンは青に黄のふちを取ったもので一等二等に区別されてあるそうな。

      結核病研究の万国会議

 来年九月二十一日より十月十二日まで米国ワシントン府で表題の会議が開かれる。全体七部門に分れて、結核に関する病理、療法、予防その他一切の会議をするはずで、また開会中は該病に関する展覧会を開いて公衆に観せるそうである。
(明治四十年十二月十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十二

      ペストと蚤

 ペストと云えば鼠を聯想するが、鼠族の間にこの病毒を拡めるものは蚤だという事がだんだんに確かめられるらしい。ある人が天竺鼠てんじくねずみについて試験したところによれば、たとえ健全なのと病にかかっているのとを接近させぬようにしておいても蚤が移ると感染する。また健全な方を籠に入れて吊しておいても、蚤が飛び上がる事の出来るくらいの高さに吊したのではやはり感ずるが、それ以上高くするか、また細かい網に入れて蚤の出入りせぬようにしておけば伝染せぬという。もし鼠が人間なら捕蚤ほそうの懸賞でもするところだろう。ついでにペストの本家本元たるインドでは宗教上の迷信から殺生を絶対的に忌むので、鼠狩りの実行が甚だ困難なようである。
(明治四十年十二月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十三

      人造藍と天然藍

 あいを人工的に合成する法が出来て以来、人造藍の需要が増すにつれて天然藍の産額が減ずる傾向をもっているのは著しい現象である。例えば天然藍の産地たるインドではこの二、三年の間に藍の栽培面積が半分以下に減少してしまった。また英国では一昨年と昨年との比較統計によると人造藍の輸入高が二割ほど増し、これに反して天然藍の方は七分くらいの減額を示している。しかしまだまだ天然のが人造のに圧倒されるところまでには月日がある。栽培法や製法の改良を加えて行けば、天然藍も当分市場に立ちゆかれる見込みだという。
(明治四十年十二月二十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十四

      水晶の鋳物

 水晶は硝子ガラスとちがって容易に火熱のために融けぬから、これで種々の器物を製するは困難であった。しかるに先年来は酸水素吹管で水晶の小片を熔かして細い棒とし、これを沢山に熔かし合せて管やフラスコを作る事が出来るようになった。近頃また電気の熱で勝手な形の瓶などを作る法が発明されたそうである。その法は先ず鋳型の中へ水晶の粉を詰め、その中に炭の棒を挿し込んでこれに強い電流を送り、粉が熔けた時に型の口から空気を吹き込めばよいという事である。いったん熔かした水晶製の器物は耐火力が強く、また熱のために破れる憂いがない。真赤になるほど焼いたのを冷水中に投じても何の異状もないというのが特長である。
(明治四十年十二月二十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十五

      巨船モーレタニア

 先日ルシタニア号の話を掲げたが、その姉妹船モーレタニア号に関する概略の数字だけ比較のために挙ぐれば、船の長さ七百六十フィート、幅が八十八フィート、トン数三万二千。乗客の数は一等五百六十三人、二等四百六十一人、三等千百三十八人、試運転の平均速度二十六浬かいり三である。

      女優と無線電信

 有名な仏の女優サラ・ベルナールは近頃北米と欧洲との間に開通された無線電信について次のような事を云っている。「このようにヨーロッパとアメリカとが虚空をへだてて睦まじく接吻するようになったのは科学の力の最も詩的な表現である」と。
(明治四十年十二月二十八日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十六

      天然色写真

 先日本紙に載せてあった天然色写真の新法よりなお一層新しい法が見出された。それはウワーナー・ポオリーの法と云うので、去る十月ロンドンで開かれた天然色写真会で展覧に供した。先日のリュミエール会社のオートクローム板は三色の澱粉を混合して作ったものだが、今度のは種板の上に三色の細い線を並べたもので大体の理窟は前のと変りはない。色のついた線を作るには細い格子のようなものと護謨ゴム写真と同じ法で板に写しこれを染めるのである。この種の写真では色はよく出ても一体に暗くなるのが欠点であるが、ポオリー氏は特別な仕掛けでこれを照らし一体を明るく見せるようにしたという事である。前のと今度のとの優劣は現物を較べてみねばわからぬ。
(明治四十年十二月二十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十七

      婦人と動物学者

 テキサス大学のモントゴメリー教授は、衣服その他の粧飾に鳥類の羽毛を使用する事を絶対的に禁じたいと論じている。単に米国で鳥の濫殺を禁ずるのみならず、輸入もやめなければ無効である。鳥の捕獲が盛んになればますます羽毛が安くなり使用高が次第に増して結局は鳥の種類が絶えるようになるだろうと云っている。
(明治四十年十二月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十八

      蜂にされた時

 アンモニア水が蜂の針の毒を消す事はよく人の知る処であるが、ある人の経験では、それよりも幾那キニーネをアンモニア水に溶かした丁幾チンキが一層有効だそうである。

      火山の変形

 昨年四月イタリアのヴェスヴィアス山がやや烈しい噴火をやったが、その後同国陸軍地理局で測量を行った結果によると、噴火前における最高点の高さ海抜千三百三十五メートルあったのが千二百二十三メートルに減じている。その代りに地獄谷ウアルレデルインフェルノなどという窪みは五メートルないし五十メートルの高さに埋められたそうである。
(明治四十一年一月一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五十九

      結核病と食物

 結核菌を接種した動物に種々の食物を与えて病の経過を試験した結果によると、脂肪分を主に与えたものは四十日くらいで死し、含水炭素殊に砂糖を多く与えたものは八十七日くらいで死んだ。これに反して含窒素食物を主に食わせた動物は三百七十一日生きていたそうである。
(明治四十一年一月二十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十

      灯台の光色

 海上で遠い灯台を見出した時その光の色が赤だか青だか分りにくい事がある。その時は双眼鏡か何かで見て肉眼で見たのと比較し、もし肉眼で見る方がよく見えればその灯色は赤光で、そうでなければ青か白だという。

      屍体とX光線

 生きている人体の腹部をX光線で照らし写真を撮っても胃や腸を識別する事が出来ぬが、死後間もなく写して見ると明らかにこれらの臓腑の所在ありかがわかる。そして死後時間が経つに従っていよいよ明白になる。生きているうちは内臓が絶えず動いているから写らぬのだろうという説になっているらしい。
(明治四十一年一月二十六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十一

      猿と蛇

 いろいろの動物について試験してみると、蛇を怖れるは猿猴えんこうの類に限る、但しその中で狐猿きつねざるという一種のみは蛇をしかけても平気だという。

      窒扶斯チフス菌の寿命

 北米シカゴ市ではミシガン湖から用水を取っているので市中の下水を湖水に流し込む訳に行かぬ。それで下水溝渠こうきょはすべてこれをミスシッピイ河に放流してしまうようになっている。ところでその下流なるセントルイ市で窒扶斯が蔓延し、これはシカゴの病菌が下水とともに河を下って来るためだろうというところからやかましくなり、その結果、窒扶斯菌が水中で幾日間生きているものかという問題を研究せねばならぬ事になった。そこで色々試験をしてみた結果だというのを聞いてみるに、普通下水溝渠のごとき汚水中では精々四日間くらいしか生きていぬが、水が清浄なほど永く生きているそうである。しかし日光がよく当ればそれだけ早く死ぬる。いずれにしてもシカゴからセントルイまで三百二十二マイルの流れを下るには十一日くらいかかるから、この間には病菌は大抵死滅するだろうという事に帰着したようである。ついでに人体や湿土中における該菌の寿命は数週ないし数月にもわたるという。
(明治四十一年一月二十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十二

      迅速なるX線写真

 従来X線で人体の内部などを写真するに当って一つの欠点は照射時間の長い事である。つまり早撮りが出来ぬから運動している臓腑を写す事が出来ぬ。もしこの早撮りが成効すれば体中の活動写真が撮れる事になるのである。しかるに近頃ローゼンタールは特別な感応コイルを発明し、これによってX線を生ずれば喉頭の写真をわずか二秒間で撮る事が出来るという事を発表した。もう一息早くなれば遂には内臓の活動写真も出来るだろうと思われる。
(明治四十一年一月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十三

      マホメットの墳墓

 トルコ皇帝陛下は近頃メジナにある回々教祖フイフイきょうそマホメットの墓に電灯をつけて神聖な墓地の闇を照らそうという事をおぼし立たれて英国の某会社に右の工事一切を御下命になったと伝えられている。

      女皇陛下の電話

 昨年の暮ポルトガルの女皇アメリー陛下がパリに御滞在中の出来事である。一日パリ・ロンドン間の長距離電話に故障があってただ一線しか通じないので、電話申込人は何十人もつかえて順番の来るのを待ち兼ねている有様であった。その時ブリストル旅館から英京のバッキンガム宮へ通話を申込んだものがある。交換手は「七十五番ですからも少し御待ちなさい」とやると失望の嘆声が聞えてやがて「アメリー女皇から英皇へ御話しがしたいのだが」と云った。そこで交換局ではかしこまって早速接続すると女皇陛下は御満足で、ものの小半時間もゆるゆる後対話があった。他の電話申込人等はそんな事とは知らず、待てども待てども順番が来ぬ、殊にパリの銀行家など一刻を争う経済上の交渉をひかえているので気は気でない。時の立つうちにどんな事が起ろうかと青くなり赤くなったという話である。
(明治四十一年二月四日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十四

      煤煙問題

 ロンドン地下電鉄会社の発電所でく石炭の煙がウェストミンスターの町へ掛かって損害を与えるというので、同市会から会社を相手取って訴訟を起した。が審理の結果、同会社の煙突から出る煤煙は十分な設備によって清められたものであって、そんなに害毒を生ずるような悪い煙でないという事になり、この訴訟は却下になったそうである。

      面白い電灯

 近頃室内に取りつけまたは卓上に置く電灯に面白い自働装置を附したものが工夫された。例えば人形が電灯を持って立っているのならば灯が点ると同時に電灯を高く振りあげる。また柱などに竜や鬼の頭をつけ、夕方が来るとこれが口を開けて電灯を吐き出すような仕掛けになっている。
(明治四十一年三月六日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十五

      過失より起る火災

 放火や悪戯いたずらより起る火災は人の不注意から起る火災に比すればほとんど云うに足らぬ少数であるそうな。米国での統計に拠れば、過去二十一年間に過失から起った火災の損害は金高にして二億六千六百三十四万〇五十八ドルになる勘定だという。電線、落雷、地震、おまけに野火を加えても過失から起るものの数には足らぬそうである。

      新しい白熱電灯

 近頃トムソン・ボーストン会社で専売特許となった白熱灯の炭素線は純粋な石墨だという。これを作るには、油煙を電炉の中で摂氏三千度に熱したものに或る糊を混じて線状とし、これを四百度に熱して糊を炭化させるのだそうである。
(明治四十一年三月七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十六

      黄金の産額

 昨年中の世界各地で採掘された黄金の総額は六百七十四トンで、もしこれを集めて一塊とすればザット一丈四方に高さ九尺くらいになる勘定である。この内ほとんど三分の一はアフリカの南部から、また四分の一は北米合衆国およびアラスカから出たのだそうな。ついでにアメリカ発見以来去る明治三十三年までに該地で採った金の価額を見積ってみると二百五十億円ほどになるという。

      樹木と遺伝

 もみなどの種子をいてその生長の遅速を試験してみると、低い土地から取って来た種子の方が高地から取ったのに比してよほど生長が早いという事がスイスやオーストリー辺で確かめられた。なお一般に種子の重さや生長期の長短あるいは病にかかりやすい度などもその種子を採った母樹の土地によほど関係するそうである。それでこういう樹の種子を選ぶには播種はしゅすべき土地に応じて適当な処の産を用いねばなるまいという事を論じている人がある。但し樅の外の樹木にも同様の事があるかどうかは、まだよくわからぬようである。
(明治四十一年三月十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十七

      新しい魔睡剤

 塩化エチールを魔睡剤に使用せんと試みた人がある。その近頃に発表した論文によると、この薬剤に酸素を混じて試験用の動物に吸入させてみたが一時間ほどごく安静に魔睡し、睡りからさめる時も速やかにめ切って、エーテルやクロロホルムのようにさめぎわの悪いようなことがなかったそうである。しかしまだ人間には試みてみぬが多分同様の好結果を得る見込みだとの事である。

      写真の無線電送

 近頃写真電送という事が大分評判になったが、従来の法はみな電線によって電流を伝えるのである。ところが、昨年の暮に仏国で試験したペルジョンノオ式というのは、長い導線を引かずに無線で写真を電送するのだそうな。パリとマルセーユ間で試験の結果、好成績を得たと伝えられている。
(明治四十一年三月二十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十八

      真珠の採取にX光線の応用

 世界中の真珠産地で年々に採る母貝の数はおびただしいものであるが、その中で真珠を含んでいるのは比較的に少ない、それで母貝の多数はつまり無駄に殺されてしまう事になる。もし貝を開かずに真珠の有無を験する事が出来れば非常に無駄が省ける訳である。ところが今から七年前にジュボアという人がX線で真珠貝の写真を撮り珠を験する事を考え出したが、なにしろ沢山な貝の写真を撮るのはかなりに手数でもあり費用もかかるところから、実業社会の注意をくに至らなかった。しかるにまた近来ニューヨークのソロモンという人が同じ考えを起して大仕掛けに資本をかけてこの法を用いる事になったそうである。かますのような物に母貝を沢山に並べたのを一度に写真にとる。そして真珠のあるのはすぐに採り出し、ないのは養殖場へかえすそうである。この法が果して収支相償って利益があるかどうかは他日を待たねば分らぬが、とにかく米国人が科学の応用に熱心な一例と見る事が出来る。
(明治四十一年三月二十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         六十九

      光線と眼

 薄暗がりで読書などすると、じきに眼が疲れて来る。永く続けると非常に眼を害するのは誰も知る通りであるが、またあまり強い光も眼に害がある。例えば太陽などを長く見つめるのは恐ろしい病の基である。インドでは宗教上の迷信から太陽を強いて直視するために内障眼ないしょうがんを起す者が沢山ある。またロシアのある地方で牧牛が白皚々はくがいがいたる雪の強い光のため眼病を起すのを防ぐとて一種の眼鏡をかけさせた話がある。それほどに強くない光でも永い間には案外の害を及ぼすから、灯光などでもなるべく裸火を廃して磨硝子すりガラスの玉ボヤのようなものをかけた方がよい。近頃の話だが、米国のある夜学校で強い電灯を点じてやっていたが学生中に眼病が非常に出来て困った。そこで電灯の下に反射鏡を取り付け光を天井から反射させるように改良したら、その後は眼を病む者がサッパリなくなったという事である。
(明治四十一年三月二十九日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         七十

      料理に音楽     

 近頃シカゴ市で電気応用諸器械の展覧会があったが、これに関する同地の新聞の記事中に次のような奇抜な意匠が述べてある。すなわち料理番が肉なり野菜なりをかまどに仕かけて煮えるのを待っていると丁度よい時分には電気仕掛けのピアノが鳴り出す、その煮物に相応したような曲を奏するというのである。あまり面白過ぎたような考案ではあるが、如何ほどまで電気が万能な勢力エネルギーであるかという一例として御紹介するのである。但し考案だけで器械が出来たのではない。
(明治四十一年三月三十日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         七十一

      土星の輪

 太陽系に属する諸遊星の中で土星を取巻いている輪ほど不思議な面白いものはない。ガリレオ以来幾多の星学者、物理学者の脳を苦しませた代物である。それでその形状なども充分に研究されていた訳であるが、この頃仏国のある高山の天文台で観測していたら従来人の知っている輪の外側にもう一つボンヤリした輪のある事を発見した。この輪がこれまで発見せられなかったのは、従来の観測は皆低地でするのみであったため、下層の濁った空気にさえぎられて見えなかったのだろうという事である。

      科学の通俗講義集

 近頃コロンビヤ大学で最近の科学の進歩を通俗的に講義した小冊子二十二篇を出版した。なるべく専門的な術語などを使わずにごくわかりやすく説いたものである。代価は一冊五十銭くらいで同大学の刊行になっている。この種の通俗講義の必要は何処でも感ぜられていたが、今率先してこれに着手したのは同大学の美挙といわねばならぬ。
(明治四十一年三月三十一日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         七十二

      瓦斯ガスの液化

 水蒸気を冷せば水になる事は日常目撃するところだが、すべての瓦斯体も適当の寒冷と圧力を加えれば皆液体になってしまうはずである。炭酸瓦斯などは通常の温度でも圧縮すれば液化するが、空気のごときは摂氏零度以下百四十度という極寒に会わぬといくら圧縮しても液体にならぬ。近来瓦斯を液体にする事が大変に進歩して大抵の瓦斯は皆液化されるようになったが、独り空気中に混ぜるヘリウムのみはどうしても液体にならなかった。しかるに今年三月初めに至って和蘭オランダライデンの大学教授オンネス氏はついにこれをも液化し得たと伝えられる。
(明治四十一年四月五日『東京朝日新聞』)

[#改ページ]

上一页  [1] [2] [3] [4] [5] [6] 下一页  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告