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話の種(はなしのたね)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-4 5:59:49  点击:  切换到繁體中文


         七十三

      露国政府と前世界の巨獣

 近頃シベリアの東北部ヤクーツク地方で、前世界の巨象マンモスの遺骸が発見せられたので、露国政府ではその研究のために学者を同地方に派遣することとなり、同国学士院の動物学博士等数名が出張を命ぜられたそうである。約一年余の時日を費やす予定で、その費用として一万六千ルーブル(約一万三千円)を国庫より支出することとなったそうである。露国政府が純粋な科学の方面にも冷淡でない一つの例として御紹介するのである。

(明治四十一年四月八日『東京朝日新聞』)
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         七十四

      温泉中のヘリウム瓦斯

 前条にヘリウムの事を述べたついでにもう一つこの瓦斯に関する話をする。近頃鉱泉中にこの瓦斯が含まれている事が知られた。仏国で調べた結果によると〇・一ないし五・三プロセントくらいの割合で含まれている。これを採取するには液化した空気で冷却し木炭に吸収させるそうである。この瓦斯はもと太陽中に存する事は日光の分析から知られていてそのためにヘリウム(太陽素)と名づけられたが、しかし地球上の空気中にも存するという事はわずかに数年前発見せられたのである。最も軽いそして他元素と化合し難いものである。近年ラジウムの研究が進むにつれ、ヘリウムはラジウムより変化して出来るものだという事が知れ、元素というものは変化せぬ物だという従来の考えを打破ったので科学者の注目をひいている。
(明治四十一年四月九日『東京朝日新聞』)
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         七十五

      唖に言語を教うる法

 電話や蓄音機の発明に依って有名なグラハム・ベル氏はまた唖者に言語の発音を教うる法に関する著者として知られている。近頃その著書の再版が出た。この法はもと著者の父メルザル・ベル氏の考案したものである。一種の記号で文字の代用をさせ、またその記号の形によってその音を発するには舌や口腔を如何なる位置形状にすべきかという事を明らかに示したものである。この方法によって言語を発するようになった唖者は沢山あるそうな。
(明治四十一年五月一日『東京朝日新聞』)
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         七十六

      空中の巡査

 近刊の某地学雑誌に上のような表題を掲げて鳥類の保護を論じている人がある。その人の説によれば、鳥類が農作物の害虫を駆除する功は非常なもので、もし鳥類濫殺の結果有益な鳥が絶滅に近づく暁には、地上の植物は大半滅亡するに至るであろうというている。

      植物標本の保存

 植物を保存する時に一番物足らず思う事は美しい緑がめてしまうことである。この緑色をそのままに保存する法については色々試験をした人がある中に、数年前トレール博士は次の法を発表した。すなわち醋酸銅さくさんどうを醋酸に溶かしたものに植物を浸せば、葉緑素と銅との化合で不変の緑色素が出来るというのである。近頃更に発表したところによれば、この溶液を熱して沸騰しつつある時に用いる方がよいそうである。
(明治四十一年五月六日『東京朝日新聞』)
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         七十七

      人を載せる紙鳶たこ

 昔鎮西八郎が大紙鳶にその子を縛して伊豆の島から空に放ったというのは馬琴の才筆によって面白く描かれているが、ここに述べるのは昨年の暮北米での話である。大きな紙鳶に中尉某を載せて地上百六十八フィートの処まで上げたそうである。この紙鳶は蝶の羽根を立てたような形の小さい紙鳶を三千四百個ほど組合せて風を受ける表面を多くしたものである。

      回々教フイフイきょうと新月形

 回教では新月形を記章とする事あたかも基督キリスト教の十字架のごとくである。これは無論三日月にかたどったものだろうと思われていたが、だんだん調べてみるとそうでない。動物の爪あるいは牙で作った護身符から起った形だという事が知れた。始めは二つの爪あるいは牙の根元を糸や金具で縛ったものを用いていたが、後には一片の彫刻物で代用するようになり、後には真中の継目の痕も略されて新月形になってしまったという事がわかった。
(明治四十一年五月十一日『東京朝日新聞』)
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         七十八

      写真測量

 経緯機けいいきなどを用いて測量すれば無論精密な結果を得られるが、そのかわり時間をつぶし、人を沢山に使わねばならぬ。しかるに近頃はごく軽便な誰にも一人で出来る測量法がだんだん使われるようになった。すなわち写真機一つで山河の配置なり建物の形状大小なり大体の事を知る事が出来るのである。少し精密な測量をするには特別な写真機が出来ていて、これを持出して数葉の写真を撮ればあとは机の上の仕事で立派な地図でも何でも出来る。一日野外で馳けまわる必要はない。最近の米国雑誌によれば、この種の測量にパノラマ写真機を用うれば最も簡便だという事である。
(明治四十一年五月十五日『東京朝日新聞』)
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         七十九

      変った製氷法

 ドイツの南部で冬期人造氷を作る法というのを聞いてみると、ちょっと変っている。先ず長さ二丈くらいの大きな櫓を作り、その天井と中段とに横木を並べて置く、そして天井の上に水道を引いてその口から噴き出す水を天井一面に散乱させる。すると小さい飛沫になって落ちる水は寒い空気に触れ、皆氷柱つららの形になって天井および中段の横木から垂れ遂には地上に達する。かくして出来た大きな氷柱を片端から折り取って氷蔵へ収め、夏まで貯蔵するのである。この法でやれば一夜に九尺四方くらいな氷塊が出来るそうな。但し気温が摂氏零度以下数度に降らねば駄目な事は勿論である。
(明治四十一年五月十八日『東京朝日新聞』)
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         八十

      水の消毒

 空気中に電気の火花を通ずる時一種の臭気を帯びたるいわゆるオゾン瓦斯ガスが出来る。この瓦斯は酸素の変形したもので非常に酸化力が強く、黴菌類はこれに遇えば皆死んでしまう。この性質を利用して飲料水等の殺菌消毒をする法が近年欧洲諸国で行われている。オゾンを作るには交番電流を特別な変圧器に通じ、この器内に生じた瓦斯を給水管中に吸い込ませるようにしてある。この法で消毒すればどんなバクテリアでも残らず死んでしまう、そして蒸餾水などとはちがって水の固有の味が少しも変らぬという利益がある。尤も汲み出した時にはオゾンの臭気がするが、これはすぐに消失するという事である。
(明治四十一年五月十九日『東京朝日新聞』)
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         八十一

      パリの高塔

 有名なパリのエイフェル塔は近年しばしば無線電信の発信所に用いられたが、近頃仏国学士院のブーケ・ド・ラグリー氏はこの塔を利用して遠近おちこちの海岸を航海しつつある船舶に正確な時刻を電報し、航海に最も必要な時辰儀じしんぎの調整をさせたらよかろうという事を建議した。仏国政府はこれを容れ、先ず手始めとして大西洋および地中海を航行する自国の船について試験をする事になったという。パリの夜の正零時に信号を発すると、海上の船は一斉に時計を験して幾何いくばくの遅速があるかを知る事が出来る。夜中を選んだのは畢竟ひっきょう無線電信には夜間の方が故障が少ないためだという。

      金剛石と炭

 金剛石はほとんど純粋な炭素から出来たもので、これを空気中で高熱すれば燃えて炭酸瓦斯に変る事は人のよく知るところである。近頃ある人が金剛石を真空管内に封入し、これに強い陰極線を当ててみたところが、金剛石は摂氏二千度近く熱せられ真黒な骸炭コークスに変化したそうである。
(明治四十一年五月二十日『東京朝日新聞』)
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         八十二

      学者の犠牲

 英国のホールエドワードという学者はX線のために左の手全体と右の手の指とを失った。その犠牲の報酬として年金千二百円ほどと一時金八千円くらいとを貰う事になったと伝えられる。

      メキシコ人の飲料

 メキシコや中央アメリカ辺で一般に飲料として賞味するパルクというものがある。これは竜舌蘭りゅうぜつらんの厚い葉の汁から製するそうで、近刊の某誌によれば次のような方法によるという。先ず適当の時期に大きな葉の皮を剥いて髄を露出しておく。それから一年後に、この髄を切断し根元に穴を穿うがっておくと切口から澄み切った汁が出て穴にたまる。この汁は丁度椰子やしの汁のような味がするそうな。これを集めて革袋に貯えておくと、一種の発酵を起していわゆるパルクが出来上がる。一種の腐敗したような臭味があるが、飲んでみると存外好いものだという話である。
(明治四十一年五月二十五日『東京朝日新聞』)
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         八十三

      六千年前の肉塊

 近頃エジプトの医学校で木乃伊ミイラの解剖分析に従事している学者がある。その研究の材料中には優に六千年を経たものもあるが、これらの肉塊を分析してみると驚くべき事には蛋白質脂酸のごとき有機成分が歴然と分解せずに存している。しかし血球などは全く痕跡もなくなっているそうである。木乃伊を作るには始め塩水に死体を漬け種々の樹脂の類を塗って固めたものらしい。これが六千年後の今日まで存しているのは、全くエジプトの空気が非常に乾燥しているためである。
(明治四十一年六月二日『東京朝日新聞』)
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         八十四

      柔能く剛を制す

 比較的に柔らかい鋼鉄の円板を急速度に廻転させ、その縁にごく硬い鋼鉄を当てると硬い方の鉄が容易に截断せつだんされる。この不思議な事実を研究した学者の説によれば、鉄と鉄との触れる処は摩擦のために高熱を生じ鋼鉄が熔けて行くためであるという。

      蜂の智恵

 仏国学士院の報告中にボンニエーという人が次のような実験の結果を述べている。一日庭に角砂糖をいくつか出しておいたら、やがて一群の蜜蜂がこれにとまってしきりに骨折っていたが、堅くて喰い欠く事が出来ぬと見えて一時飛び去ってしもうた。少時しばらくして後、今度は泉水のある処から水を含んで来てそれで砂糖を溶かしその汁を吸うて巣に帰った。
(明治四十一年六月十九日『東京朝日新聞』)

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