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双子の星(ふたごのほし)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-29 16:45:16  点击:  切换到繁體中文

  双子の星 一

 あまがわの西の岸にすぎなの胞子ほうしほどの小さな二つの星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精すいしょうのお宮です。
 このすきとおる二つのお宮は、まっすぐに向い合っています。夜は二人とも、きっとお宮に帰って、きちんとすわり、空の星めぐりの歌に合せて、一晩銀笛ぎんてきくのです。それがこの双子のお星様の役目でした。
 ある朝、お日様がカツカツカツとおごそかにお身体からだをゆすぶって、東からのぼっておいでになった時、チュンセ童子は銀笛を下に置いてポウセ童子に申しました。
「ポウセさん。もういいでしょう。お日様もお昇りになったし、雲もまっ白に光っています。今日は西の野原の泉へ行きませんか。」
 ポウセ童子が、まだ夢中むちゅうで、半分をつぶったまま、銀笛を吹いていますので、チュンセ童子はお宮から下りて、くつをはいて、ポウセ童子のお宮の段にのぼって、もう一度いました。
「ポウセさん。もういいでしょう。東の空はまるで白く燃えているようですし、下では小さな鳥なんかもう目をさましている様子です。今日は西の野原の泉へ行きませんか。そして、風車かざぐるまきりをこしらえて、小さなにじを飛ばして遊ぼうではありませんか。」
 ポウセ童子はやっと気がついて、びっくりして笛を置いて云いました。
「あ、チュンセさん。失礼いたしました。もうすっかり明るくなったんですね。ぼく今すぐ沓をはきますから。」
 そしてポウセ童子は、白い貝殻かいがらの沓をはき、二人は連れだって空の銀の芝原しばはらを仲よく歌いながら行きました。

「お日さまの、
 お通りみちを はききよめ、
 ひかりをちらせ あまの白雲。
 お日さまの、
 お通りみちの 石かけを
 深くうずめよ、あまの青雲。」
 そしてもういつか空の泉に来ました。
 この泉はれた晩には、下からはっきり見えます。天の川の西の岸から、よほどはなれたところに、青い小さな星で円くかこまれてあります。底は青い小さなつぶ石でたいらにうずめられ、石の間から奇麗きれいな水が、ころころころころき出して泉の一方のふちから天の川へ小さな流れになって走って行きます。私共の世界がひでりの時、せてしまった夜鷹よだかやほととぎすなどが、それをだまって見上げて、残念そうに咽喉のどくびくびさせているのを時々見ることがあるではありませんか。どんな鳥でもとてもあそこまでは行けません。けれども、てん大烏おおがらすの星やさそりの星やうさぎの星ならもちろんすぐ行けます。
「ポウセさんまずここへたきをこしらえましょうか。」
「ええ、こしらえましょう。僕石を運びますから。」
 チュンセ童子が沓をぬいで小流れの中に入り、ポウセ童子は岸から手ごろの石を集めはじめました。
 今は、空は、りんごのいいにおいいで一杯いっぱいです。西の空に消え残った銀色のお月様がいたのです。
 ふと野原の向うから大きな声で歌うのが聞えます。
「あまのがわの にしのきしを、
 すこしはなれたそらの井戸。
 みずはころろ、そこもきらら、
 まわりをかこむあおいほし。
 夜鷹ふくろう、ちどり、かけす、
 来よとすれども、できもせぬ。」
「あ、大烏の星だ。」童子たちは一緒いっしょに云いました。
 もう空のすすきをざわざわと分けて大烏が向うからかたをふって、のっしのっしと大股おおまたにやって参りました。まっくろなびろうどのマントを着て、まっくろなびろうどの股引ももひきをはいてります。
 大烏は二人を見て立ちどまって丁寧ていねいにお辞儀じぎしました。
「いや、今日は。チュンセ童子とポウセ童子。よく晴れて結構ですな。しかしどうも晴れると咽喉がかわいていけません。それに昨夜ゆうべは少し高く歌い過ぎましてな。ご免下さい。」と云いながら大烏は泉に頭をつきみました。
「どうか構わないで沢山たくさんんで下さい。」とポウセ童子が云いました。
 大烏は息もつかずに三分ばかり咽喉を鳴らして呑んでからやっと顔をあげて一寸ちょっと眼をパチパチ云わせてそれからブルルッと頭をふって水をはらいました。
 その時向うからあらい声の歌がまた聞えて参りました。大烏は見る見る顔色を変えて身体からだはげしくふるわせました。
「みなみのそらの、赤眼のさそり
 毒あるかぎと 大きなはさみを
 知らない者は 阿呆鳥あほうどり。」

 そこで大烏が怒って云いました。
蠍星さそりぼしです。畜生ちくしょう。阿呆鳥だなんて人をあてつけてやがる。見ろ。ここへ来たらその赤眼をいてやるぞ。」
 チュンセ童子が
「大烏さん。それはいけないでしょう。王様がご存じですよ。」という間もなくもう赤い眼の蠍星が向うから二つの大きなはさみをゆらゆら動かし長い尾をカラカラ引いてやって来るのです。その音はしずかな天の野原中にひびきました。
 大烏はもう怒ってぶるぶるふるえて今にも飛びかかりそうです。双子の星は一生けん命手まねでそれをおさえました。
 蠍は大烏を尻眼しりめにかけてもう泉のふちまでって来て云いました。
「ああ、どうも咽喉のどが乾いてしまった。やあ双子さん。今日は。ご免なさい。少し水を呑んでやろうかな。はてな、どうもこの水は変に土臭つちくさいぞ。どこかのまっ黒な馬鹿ァが頭をつっ込んだと見える。えい。仕方ない。我慢がまんしてやれ。」
 そして蠍は十分ばかりごくりごくりと水を呑みました。その間も、いかにも大烏を馬鹿にする様に、毒の鉤のついた尾をそちらにパタパタ動かすのです。
 とうとう大烏は、我慢し兼ねて羽をパッと開いてさけびました。
「こら蠍。貴様はさっきから阿呆鳥だの何だのとおれの悪口を云ったな。早くあやまったらどうだ。」
 蠍がやっと水から頭をはなして、赤い眼をまるで火が燃えるように動かしました。
「へん。たれか何か云ってるぜ。赤いお方だろうか。鼠色ねずみいろのお方だろうか。一つ鉤をお見舞みまいしますかな。」
 大烏はかっとして思わず飛びあがって叫びました。
「何を。生意気な。空の向う側へまっさかさまに落してやるぞ。」
 蠍も怒って大きなからだをすばやくひねって尾の鉤を空にき上げました。大烏は飛びあがってそれをけ今度はくちばしをやりのようにしてまっすぐに蠍の頭をめがけて落ちて来ました。
 チュンセ童子もポウセ童子もとめるすきがありません。蠍は頭に深い傷を受け、大烏は胸を毒の鉤でさされて、両方ともウンとうなったまま重なり合って気絶してしまいました。
 蠍の血がどくどく空に流れて、いやな赤い雲になりました。
 チュンセ童子が急いでくつをはいて、申しました。
「さあ大変だ。大烏には毒がはいったのだ。早く吸いとってやらないといけない。ポウセさん。大烏をしっかり押えていて下さいませんか。」
 ポウセ童子も沓をはいてしまっていそいで大烏のうしろにまわってしっかり押えました。チュンセ童子が大烏の胸の傷口に口をあてました。ポウセ童子が申しました。
「チュンセさん。毒を呑んではいけませんよ。すぐ吐き出してしまわないといけませんよ。」
 チュンセ童子がだまって傷口から六ぺんほど毒のある血を吸ってはき出しました。すると大烏がやっと気がついて、うすく目を開いて申しました。
「あ、どうも済みません。私はどうしたのですかな。たしか野郎をし止めたのだが。」
 チュンセ童子が申しました。
「早く流れでその傷口をお洗いなさい。歩けますか。」
 大烏はよろよろ立ちあがって蠍を見て又身体からだをふるわせて云いました。
「畜生。空の毒虫め。空で死んだのを有りがたいと思え。」
 二人は大烏を急いで流れへ連れて行きました。そして奇麗きれいに傷口を洗ってやって、その上、傷口へ二三度かぐわしい息を吹きかけてやって云いました。
「さあ、ゆるゆる歩いて明るいうちに早くおうちへお帰りなさい。これからこんな事をしてはいけません。王様はみんなご存じですよ。」
 大烏はすっかり悄気しょげつばさを力なく垂れ、何遍もお辞儀をして
「ありがとうございます。ありがとうございます。これからは気をつけます。」と云いながらあしを引きずって銀のすすきの野原を向うへ行ってしまいました。
 二人は蠍を調べて見ました。頭の傷はかなり深かったのですがもう血がとまっています。二人は泉の水をすくって、傷口にかけて奇麗に洗いました。そしてかわがわるふっふっと息をそこへ吹き込みました。
 お日様が丁度空のまん中においでになったころ蠍はかすかに目を開きました。
 ポウセ童子が汗をふきながら申しました。
「どうですか気分は。」
 蠍がゆるくつぶやきました。
「大烏めは死にましたか。」
 チュンセ童子が少し怒って云いました。
「まだそんな事を云うんですか。あなたこそ死ぬ所でした。さあ早くうちへ帰る様に元気をお出しなさい。明るいうちに帰らなかったら大変ですよ。」
 蠍が目を変に光らして云いました。
「双子さん。どうか私を送って下さいませんか。お世話のついでです。」
 ポウセ童子が云いました。
「送ってあげましょう。さあおつかまりなさい。」
 チュンセ童子も申しました。
「そら、僕にもおつかまりなさい。早くしないと明るいうちに家に行けません。そうすると今夜の星めぐりが出来なくなります。」
 さそりは二人につかまってよろよろ歩き出しました。二人のかたの骨は曲りそうになりました。実に蠍のからだは重いのです。大きさから云っても童子たちの十倍位はあるのです。
 けれども二人は顔をまっ赤にしてこらえて一足ずつ歩きました。
 蠍は尾をギーギーと石ころの上に引きずっていやな息をはあはあ吐いてよろりよろりとあるくのです。一時間に十町とも進みません。
 もう童子たちは余り重い上に蠍の手がひどく食いんで痛いので、肩や胸が自分のものかどうかもわからなくなりました。
 空の野原はきらきら白く光っています。七つの小流れと十の芝原しばはらとを過ぎました。
 童子たちは頭がぐるぐるしてもう自分が歩いているのか立っているのかわかりませんでした。それでも二人は黙ってやはり一足ずつ進みました。
 さっきから六時間もたっています。蠍の家まではまだ一時間半はかかりましょう。もうお日様が西の山にお入りになる所です。
「もう少し急げませんか。私らも、もう一時間半のうちにおうちへ帰らないといけないんだから。けれども苦しいんですか。大変痛みますか。」とポウセ童子が申しました。

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