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かのように(かのように)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-11-6 18:09:59  点击:  切换到繁體中文


 この時雪の締めて置いた戸を、廊下の方からあらあらしく開けて、茶の天鵞絨びろうどの服を着た、秀麿と同年位の男が、駆け込むように這入って来て、いきなり雪の肩を、太った赤い手で押えた。「おい、雪。若檀那の顔ばかり見ていて、取次をするのを忘れては困るじゃないか。」
 雪の顔は真っ赤になった。そして逃げるように、黙って部屋を出て行った。綾小路の方は振り返ってもみなかったのである。
 秀麿の眉間みけんには、注意して見なくては見えない程のしわが寄ったが、それが又注意して見ても見えない程早く消えて、顔の表情は極真面目ごくまじめになっている。「君つまらない笑談じょうだんは、僕の所でだけはよしてくれ給え。」
劈頭へきとう第一に小言を食わせるなんぞは驚いたね。気持の好い天気だぜ。君の内の親玉なんぞは、秋晴しゅうせいとかなんとか云うのだろう。もっともセゾンはもう冬かも知れないが、過渡時代には、冬の日になったり、秋の日になったりするのだ。きょうはまだ秋だとして置くね。どこか底の方に、ぴりっとした冬の分子が潜んでいて、夕日が沈み掛かって、かっと照るような、悲哀を帯びて爽快な処がある。まあ、年増としまの美人のようなものだね。こんな日に※(「鼬」の「由」に代えて「晏」、第3水準1-94-84)もぐらもちのようになって、内に引っ込んで、本を読んでいるのは、世界は広いが、先ず君位なものだろう。それでも机の上にさっていなかっただけを、僕はめて置くね。」
 秀麿は真面目ではあるが、いやがりもしないらしい顔をして、盛んに饒舌しゃべり立てている綾小路の様子を見ている。簡単に言えば、この男には餓鬼がき大将と云う表情がある。額際ひたいぎわから顱頂ろちょうへ掛けて、少し長めに刈った髪を真っ直に背後うしろへ向けてき上げたのが、日本画にかく野猪いのししの毛のように逆立っている。細い目のちょいと下がった目尻めじりに、嘲笑ちょうしょう的な微笑を湛えて、幅広く広げた口を囲むように、左右の頬に大きい括弧かっこに似た、深い皺を寄せている。
 綾小路はまだ饒舌る。「そんなに僕の顔ばかし見給うな。心中大いに僕を軽侮しているのだろう。好いじゃないか。君がロアで、僕がブッフォンか。ドイツ語でホオフナルと云うのだ。陛下の倡優しょうゆうもって遇する所か。」
 秀麿は覚えず噴き出した。「僕がそんな侮辱的な考をするものか。」
「そんなら頭からけんつくなんぞを食わせないが好い。」
「うん。僕が悪かった。」秀麿は葉巻の箱の蓋を開けて勧めながら、独語ひとりごとのようにつぶやいた。「僕は人の空想に毒をぎ込むように感じるものだから。」
「それがサンチマンタルなのだよ」と云いながら、綾小路は葉巻を取った。秀麿はマッチをった。
「メルシイ」と云って綾小路が吸い附けた。
「暖かい所が好かろう」と云って、秀麿は椅子を一つ煖炉の前に押し遣った。
 綾小路は椅背きはいに手を掛けたが、すぐに据わらずに、あたりを見廻して、テエブルの上にゆうべから開けたままになっている、厚い、仮綴かりとじの洋書に目を着けた。かたわらには幅の広いへらのような形をした、鼈甲べっこう紙切小刀かみきりこがたなが置いてある。「又何か大きな物にかじり附いているね。」こう云って秀麿の顔を見ながら、腰を卸した。

     ――――――――――――――――

 綾小路は学習院を秀麿と同期で通過した男である。秀麿は大学に行くのに、綾小路は画かきになると云って、溜池ためいけの洋画研究所へ通い始めた。それから秀麿がまだ文科にいるうちに、綾小路は先へ洋行して、パリイにいた。秀麿がマルセイユから上陸して、ベルリンへ行く途中で、二三日パリイに滞在していた時には、親切に世話を焼いて、シャン・ゼリゼェの散歩やら、テアアトル・フランセェとジムナアズ・ドラマチックとの芝居見物やら、時間をおしまずに案内をして歩いて、ベルリンへ行ってからる服まであつらえさせてくれた。
 綾小路は目と耳とばかりで生活しているような男で、芸術をさえ余り真面目には取り扱っていないが、明敏な頭脳がいつも何物にかえている。それで故郷へ帰って以来引き籠り勝にしている秀麿の方からは、尋ねても行かぬのに、折々遊びに来て、秀麿の読んでいる本の話を、口ではちゃかしながら、真面目に聞いて考えても見るのである。
 綾小路は卓の所へ歩いて行って、開けてある本の表紙を引っ繰り返して見た。「ジイ・フィロゾフィイ・デス・アルス・オップか。妙な標題だなあ。」
 そこへ雪が橢円形だえんけいのニッケル盆に香茶こうちゃの道具を載せて持って来た。そして小さい卓を煖炉の前へ運んで、その上に盆を置いて、綾小路の方を見ぬようにしてちょいと見て、そっと部屋を出て行った。何か言われはしないだろうか。言えば又恥かしいような事を言うだろう。どんな事を言うだろう。言わせて聞いても見たいと云うような心持で雪はいたが、こん度は綾小路が黙っていた。
 秀麿は伏せてあるタッスを起して茶を注いだ。そして「牛乳を入れるのだろうな」と云って、綾小路を顧みた。
「こないだのように沢山入れないでくれ給え。一体アルス・オップとはなんだい。」こう云いながら、綾小路は煖炉の前の椅子に掛けた。
「コム・シィさ。かのようにとでも云ったら好いのだろう。妙な所を押さえて、考を押し広めて行ったものだが、不思議に僕の立場そのままを説明してくれるようで、愉快でたまらないから、とうとうゆうべは三時まで読んでいた。」
「三時まで。」綾小路は目を※(「目+爭」、第3水準1-88-85)みはった。「どうして、どこが君の立場そのままなのだ。」
「そう」と云って、秀麿は暫く考えていた。千ペエジ近い本を六七分通り読んだのだから、どんな風に要点をつまんで話したものかと考えたのである。「先ず本当だと云うことばからして考えて掛からなくてはならないね。裁判所で証拠立てをしてこしらえた判決文を事実だと云って、それを本当だとするのが、普通の意味の本当だろう。ところが、そう云う意味の事実と云うものは存在しない。事実だと云っても、人間の写象を通過した以上は、物質論者のランゲの湊合そうごうが加わっている。意識せずに詩にしている。嘘になっている。そこで今一つの意味の本当と云うものを立てなくてはならなくなる。小説は事実を本当とする意味にいては嘘だ。しかしこれは最初から事実がらないで、嘘と意識して作って、通用させている。そしてそのうちに性命がある。価値がある。尊い神話も同じように出来て、通用して来たのだが、あれは最初事実がっただけ違う。君のかく画も、どれ程写生したところで、実物ではない。嘘の積りでかいている。人生の性命あり、価値あるものは、皆この意識した嘘だ。第二の意味の本当はこれより外には求められない。こう云う風に本当を二つに見ることは、カントが元祖で、近頃プラグマチスムなんぞで、余程卑俗にして繰り返しているのも同じ事だ。これだけの事は一寸ちょっと云って置かなくては、話が出来ないのだがね。」
よろしい。詞はどうでも好い。その位な事は僕にも分かっている。僕のかく画だって、実物ではないが、今年も展覧会で一枚売れたから、たしかに多少の価値がある。だから僕の画を本当だとするには、異議はない。そこでコム・シィはどうなるのだ。」
「まあ待ち給え。そこで人間のあらゆる智識、あらゆる学問の根本を調べてみるのだね。一番正確だとしてある数学方面で、点だの線だのと云うものがある。どんなに細かくぽつんと打ったって点にはならない。どんなに細くすうっと引いたって線にはならない。どんなに好く削った板のふちも線にはなっていない。かども点にはなっていない。点と線は存在しない。例の意識した嘘だ。しかし点と線があるかのように考えなくては、幾何学は成り立たない。あるかのようにだね。コム・シィだね。自然科学はどうだ。物質と云うものでからが存在はしない。物質が元子から組み立てられていると云う。その元子も存在はしない。しかし物質があって、元子から組み立ててあるかのように考えなくては、元子量の勘定が出来ないから、化学は成り立たない。精神学の方面はどうだ。自由だの、霊魂不滅だの、義務だのは存在しない。その無いものを有るかのように考えなくては、倫理は成り立たない。理想と云っているものはそれだ。法律の自由意志と云うものの存在しないのも、っくに分かっている。しかし自由意志があるかのように考えなくては、刑法が全部無意味になる。どんな哲学者も、近世になっては大低世界を相待そうたいに見て、絶待ぜったいの存在しないことを認めてはいるが、それでも絶待があるかのように考えている。宗教でも、もうだいぶ古くシュライエルマッヘルが神を父であるかのように考えると云っている。孔子こうしもずっと古く祭るにいますが如くすと云っている。先祖の霊があるかのように祭るのだ。そうして見ると、人間の智識、学問はさて置き、宗教でもなんでも、その根本を調べて見ると、事実として証拠立てられない或る物を建立こんりゅうしている。即ちかのようにが土台によこたわっているのだね。」
「まあ一寸待ってくれ給え。君は僕の事を饒舌しゃべる饒舌ると云うが、君が饒舌り出して来ると、駆足になるから、附いて行かれない。その、かのようにと云う怪物の正体も、少し見え掛っては来たが、まあ、茶でももう一杯飲んで考えて見なくては、はっきりしないね。」
「もうぬるくなっただろう。」
「なに。好いよ。雪と云う、証拠立てられる事実が間へ這入はいって来ると、考えがこんがらかって来るからね。そうすると、つまり事実と事実がごろごろ転がっていてもしようがない。それを結び附けて考えようとすると、いやでも或る物を土台にしなくてはならない。その土台が例のかのようにだと云うのだね。宜しい。ところが、僕はそんな怪物の事は考えずに置く。考えても言わずに置く。」綾小路は生温なまぬるい香茶をぐっと飲んで、決然と言い放った。
 秀麿は顔をしかめた。「それは僕も言わずにいる。しかし君は画だけかいて、言わずにいられようが、僕は言う為めに学問をしたのだ。考えずには無論いられない。考えてそれを真直ぐに言わずにいるには、黙ってしまうか、別に嘘をこしらえて言わなくてはならない。それでは僕の立場がなくなってしまうのだ。」
「しかしね、君、その君が言う為めに学問したと云うのは、歴史を書くことだろう。僕が画をかくように、怪物が土台になっていても好いから、構わずにずんずん書けば好いじゃないか。」
「そうはいかないよ。書き始めるには、どうしても神話を別にしなくてはならないのだ。別にすると、なぜ別にする、なぜごちゃごちゃにして置かないかと云う疑問が起る。どうしても歴史は、画のように一刹那をとらえて遣っているわけにはいかないのだ。」
「それでは僕のかく画には怪物が隠れているから好い。君の書く歴史には怪物が現れて来るからいけないと云うのだね。」
「まあ、そうだ。」
「意気地がないねえ。現れたら、どうなるのだ。」
「危険思想だと云われる。それも世間がかれこれ云うだけなら、奮闘もしよう。第一父が承知しないだろうと思うのだ。」
「いよいよ意気地がないねえ。そんな葛藤かっとうなら、僕はもうっくに解決してしまっている。僕は画かきになる時、親爺おやじが見限ってしまって、現に高等遊民として取扱っているのだ。君は歴史家になると云うのをお父うさんが喜んで承知した。そこで大学も卒業した。洋行も僕のように無理をしないで、気楽にした。君は今まで葛藤の繰延くりのべをしていたのだ。僕の五六年前に解決した事を、君は今解決して、好きなように歴史を書くが好いじゃないか。むを得んじゃないか。」
「しかし僕はそんな葛藤を起さずに遣っていかれる筈だと思っている。平和な解決がつい目の前に見えている。手に取られるように見えている。それを下手へたに手に取ろうとして失敗をすることなんぞは、避けたいと思っている。それでぐずぐずしていて、君にまで意気地がないと云われるのだ。」秀麿は溜息ためいきを衝いた。
「ふん、どうしてお父うさんを納得させようと云うのだ。」
「僕の思想が危険思想でもなんでもないと云うことを言って聞せさえすれば好いのだが。」
「どう言って聞せるね。僕がお父うさんだと思って、そこで一つ言って見給え。」
「困るなあ」と云って、秀麿は立って、室内をあちこち歩き出した。
 ※(「日/(「咎」の「人」に代えて「卜」)」、第3水準1-85-32)ひかげはもうヴェランダののきを越して、屋根の上に移ってしまった。さおに澄み切った、まだ秋らしい空の色がヴェランダの硝子戸を青玉せいぎょくのように染めたのが、窓越しに少しかすんで見えている。山の手の日曜日の寂しさが、だいぶ広いこのやしきの庭に、田舎の別荘めいた感じを与える。突然自動車が一台煉瓦塀れんがべいの外をけたたましく過ぎて、跡は又元の寂しさに戻った。
 秀麿は語をいだ。「まあ、こうだ。君がさっきから怪物々々と云っている、その、かのようにだがね。あれは決して怪物ではない。かのようにがなくては、学問もなければ、芸術もない、宗教もない。人生のあらゆる価値のあるものは、かのようにを中心にしている。昔の人が人格のある単数の神や、複数の神の存在を信じて、その前に頭をかがめたように、僕はかのようにの前に敬虔けいけんに頭を屈める。その尊敬の情は熱烈ではないが、澄み切った、純潔な感情なのだ。道徳だってそうだ。義務が事実として証拠立てられるものでないと云うことだけ分かって、怪物扱い、幽霊扱いにするイブセンの芝居なんぞを見る度に、僕は憤懣ふんまんに堪えない。破壊は免るべからざる破壊かも知れない。しかしその跡には果してなんにもないのか。手に取られない、かすかなような外観のものではあるが、底にはかのようにが儼乎げんことして存立している。人間は飽くまでも義務があるかのように行わなくてはならない。僕はそう行って行く積りだ。人間が猿から出来たと云うのは、あれは事実問題で、事実として証明しようと掛かっているのだから、ヒポテジスであって、かのようにではないが、進化の根本思想はやはりかのようにだ。生類は進化するかのようにしか考えられない。僕は人間の前途に光明を見て進んで行く。祖先の霊があるかのように背後うしろを顧みて、祖先崇拝をして、義務があるかのように、徳義の道を踏んで、前途に光明を見て進んで行く。そうして見れば、僕は事実上極蒙昧ごくもうまいなな、極従順な、山の中の百姓と、なんのえらぶ所もない。只頭がぼんやりしていないだけだ。極頑固な、極篤実な、敬神家や道学先生と、なんの択ぶところもない。只頭がごつごつしていないだけだ。ねえ、君、この位安全な、危険でない思想はないじゃないか。神が事実でない。義務が事実でない。これはどうしても今日になって認めずにはいられないが、それを認めたのを手柄にして、神をけがす。義務を蹂躙じゅうりんする。そこに危険は始て生じる。行為は勿論もちろん、思想まで、そう云う危険な事は十分撲滅しようとするが好い。しかしそんな奴の出て来たのを見て、天国を信ずる昔に戻そう、地球が動かずにいて、太陽が巡回していると思う昔に戻そうとしたって、それは不可能だ。そうするには大学も何もつぶしてしまって、世間をくら闇にしなくてはならない。黔首けんしゅにしなくてはならない。それは不可能だ。どうしても、かのようにを尊敬する、僕の立場より外に、立場はない。」
 これまで例の口のはた括弧かっこ二重三重ふたえみえにして、妙な微笑を顔にたたえて、葉巻のけむりを吹きながら聞いていた綾小路は、煙草の灰を灰皿に叩き落して、身を起しながら、「駄目だ」と、簡単に一言云って、煖炉を背にして立った。そしてめまぐろしく歩き廻りながら饒舌っている秀麿を、冷やかに見ている。
 秀麿は綾小路の正面に立ち止まって相手の顔を見詰めた。蒼い顔の目の縁がぽっと赤くなって、その目の奥にはファナチスムの火に似た、一種の光がある。「なぜ。なぜ駄目だ。」
「なぜって知れているじゃないか。人に君のような考になれと云ったって、誰がなるものか。百姓はシの字を書いた三角の物を額へ当てて、先祖の幽霊が盆にのこのこ歩いて来ると思っている。道学先生は義務の発電所のようなものが、天の上かどこかにあって、自分のおすわった師匠がその電気を取りいで、自分に掛けてくれて、そのおかげで自分が生涯ぴりぴりと動いているように思っている。みんな手応てごたえのあるものを向うに見ているから、崇拝も出来れば、遵奉じゅんぽうも出来るのだ。人に僕のかいた裸体画を一枚遣って、女房を持たずにいろ、けしからん所へかずにいろ、これを生きた女であるかのように思えと云ったって、聴くものか。君のかのようにはそれだ。」
「そんなら君はどうしている。幽霊がのこのこ歩いて来ると思うのか。電気を掛けられていると思うのか。」
「そんな事はない。」
「そんならどう思う。」
「どうも思わずにいる。」
「思わずにいられるか。」
「そうさね。まるで思わない事もない。しかしなるたけ思わないようにしている。めずに置く。画をかくには極めなくても好いからね。」
「そんなら君が仮に僕の地位に立って、歴史を書かなくてはならないとなったら、どうする。」
「僕は歴史を書かなくてはならないような地位には立たない。御免をこうむる。」綾小路の顔からは微笑の影がいつか消えて、平気な、ほとんど不愛想な表情になっている。
 秀麿は気抜けがしたように、両手を力なく垂れて、こん度は自分が寂しく微笑ほほえんだ。「そうだね。てんでに自分の職業を遣って、そんな問題はそっとして置くのだろう。僕は職業の選びようが悪かった。ぼんやりして遣ったり、嘘を衝いてやれば造做ぞうさはないが、正直に、真面目に遣ろうとすると、八方ふさがりになる職業を、僕は不幸にして選んだのだ。」
 綾小路の目は一刹那せつな鋼鉄の様に光った。「八方塞がりになったら、突貫して行く積りで、なぜ遣らない。」
 秀麿は又目の縁を赤くした。そして殆ど大人の前に出た子供のような口吻こうふんで、声低く云った。「所詮しょせん父と妥協して遣る望はあるまいかね。」
「駄目、駄目」と綾小路は云った。
 綾小路は背をあぶるように、煖炉に太った体を近づけて、両手を腰のうしろに廻して、少し前屈みになって立ち、秀麿はその二三歩前に、痩せた、しなやかな体を、まだこれから延びようとする今年竹ことしだけのように、真っ直にして立ち、二人は目と目を見合わせて、やや久しく黙っている。山の手の日曜日の寂しさが、二人の周囲を依然支配している。





底本:「阿部一族・舞姫」新潮文庫、新潮社
   1968(昭和43)年4月20日発行
   1985(昭和60)年5月20日36刷改版
入力:高橋真也
校正:湯地光弘
1999年9月23日公開
2006年4月27日修正
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