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オシャベリ姫(オシャベリひめ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-11-8 14:15:44  点击:  切换到繁體中文


 若い人はこう尋ねられると顔を真赤にしましたが、やがて悲しそうにこう答えました。
 王子はその大きな眼に涙を一パイ溜めながら、
「この国中の人間が皆口が無いのに、私一人口があるのについては、それはそれは悲しいお話があります。あなたはあの山梔子くちなしという花を御存じですか」
 と不意に王子は尋ねました。
「ええ、よく知っています。あの晩方に大きな花を咲かせる木で、大変にいいにおいがします。花が真白なのとにおいがいいので夜でもよくわかります」
 と答えました。
 王子はうなずきました。
「その山梔子の樹は名前を『口なし』と書くので、昔からこの国の人々が大好きでした。ですから先祖の王様は国中にありたけの道ばたに、どんな小径にも植えさせました。そうすればどんな暗い夜でも、そのにおいと白花を目あてにして道を迷わずに行かれるからです。
 ……さて……私の母の妃は名をクチナシ姫とつけられました位で、まだ小さい時からこの口なしの花が何よりも好きでした。そうしてある月の夜、クチナシの白い花を次から次へ嗅ぎながらいつの間にかお城を出て、西へ西へとだんだん遠くあるいて来ました……。
 ところがお城を離れれば離れるほど山梔子の花が少なくなって、しまいにはどちらを向いてもにおいもしなければ、白い花も無いようになりました……。そうして夜が明けますと、とうとう迷子まよいごになって、知らない国へ来てしまいました」
「まあ……ちょうど妾のようですこと……」
 と姫は思わず云いました。
「それからお母様のクチナシ姫はどうなさいましたか」
 王子はやはり悲しそうにして、次のようにお話をつづけました。
「クチナシ姫は、何の気もなしにその国へズンズン這入って行きますと、その国の人がだれもかれも面白そうにお話をしているのにビックリしました。
 クチナシ姫はそのお話をしているようすと、そのことばをおもしろがって、次から次へときいて行くうちに、すっかりおぼえてしまいました。そうして自分も話してみたくなりましたが、口が利けないのでどうも出来ません。
 それから歌に合わせて踊ったり音楽をやったりしているのを見て、もうたまらないほど歌がうたいたくなりましたけれども、やっぱり口を利くことが出来ません。
 そのうちに大勢の子供がクチナシ姫を見つけますと、
『ヤア、口なしの女の子がいる』
 というので大勢押しかけて来て、しまいには、
『片輪だ片輪だ。口なしだ口なしだ』
 と云いながら、石や木のきれをなげつけたり、ぶったり、蹴ったりしはじめました。
 クチナシ姫はこの国の人の乱暴なのに驚いて一生懸命逃げましたが、やがてとある山の中に逃げこみますと、子供は一人減り二人減りしてとうとう見えなくなりまして、姫はたった一人大きな池のふちへ来ました。
 その池の水に姫は何気なく顔をうつして見ると、どうでしょう。
 せっかくお母様に書いていただいた可愛らしい口が、いつの間にか消えて無くなっています。
 口なし姫はお池の水にうつった自分の顔を見て泣き出しました。
『ああ、あたしにはどうして口が無いのでしょう。ほかの国の人間はどうしてあんなに口を授かって、歌ったり舞ったりすることが出来るのであろう。ああ……口が欲しい、口が欲しい』
 とひとりで涙を流しておりますと、そのうちにどこからともなくクチナシの花のにおいがして来ました。
 口なし姫はそのにおいを便りにだんだんやって来ますと、とうとう自分の国へ帰ることが出来ました。そうして大騒ぎをして探していた両親や家来に迎えられて無事にお城へ帰って来ました。
 けれどもそれからのち、口なし姫はクチナシの花を見ると涙を流しました。クチナシのにおいを嗅ぐと、いつも悲しそうにため息をしました。
『ああ。あの花さえ無ければ、私はあんなにほかの国へ行かなくともよかったのに。そうしてこんなに恥かしい、口惜くちおしい思いをせずともよかったのに』
 と思いますと、もうクチナシの花やそのにおいがいやでしようがありませんでした。
『ああ。あの花がなくなったらどんなにかいいだろう』
 と思うようになりました。けれども国中のクチナシはなかなか枯れません。
 そのうちにクチナシ姫は大きくなって、王様のお妃様になりましたが、そのころからこの国中のクチナシの花は一つも咲かなくなってしまいました。これはどうしたことと云っているうちに、お妃様は玉のような一人の王子をお生みになりました。
 それが私なのです」
 と王子は云われました。
 オシャベリ姫は、あんまり不思議なお話なのでオシャベリどころでなく、王子の顔を一心にみつめてお話をきいておりました。王子はお話をつづけました。
「私は不思議にも生まれた時から口がありまして、オギャアオギャアと泣きましたそうで、そのために赤ン坊の泣き声を聞いたことのないこの国の人々は『王様のお城に化け物が生まれた』と大騒ぎを初めました」
「まあ、何と馬鹿でしょうね。当り前のことなのに」
 と姫はやっと口を利きました。
「けれどもこの国では不思議がるのが当り前なのです。それで私の父の王は私の母の妃に、その口を針と糸で縫いふさいでしまえと云いましたが、私の母の妃は生れ付き情深い女ですから、どうしてそんな無慈悲なことが出来ましょう。仕方がありませんから私の口に綿を一パイに詰めて、上から繃帯ほうたいをしまして、針で縫うた傷がいつまでも治らないように見せました。そうして父の王が狩猟に行きますと、その留守に母の妃は私をつれて、地の下のあなぐらに連れて行って、口の繃帯を解いてやりまして、私の口に手をあてていろいろ物の云い方を教えてくれましたので、私は十歳ばかりの時にはもう立派にお話が出来るようになっていました」
「ほんとにお母様は教えることがお上手なのですね」
「けれどもある日の事、とうとう私のオシャベリのお稽古が父の王に見つけられてしまいました。父の王が狩に行きますと、いつも七日位帰って来ませんのに、或る時あんまり鳥やけものが沢山に獲れまして家来が持ち切れぬようになりましたので、三日目に帰って来ました。ところが母の妃も私もおりませんので、方々を探しますと、窖の中でお話をしている母の妃と私とを見つけました」
「まあ、大変……」
「父の王は大変に母の妃を叱りまして、すぐに私を殺そうとしました」
「まあ、こわいお父様ですこと」
「けれどもその時、私の母の妃は一生懸命で私をかばいまして、やっと私の命を助けてもらいました。その代り私を一生涯この塔の上に上げて、番人の代りに大きな蜘蛛に網を張らせて、入り口を守らせることにしました。そうして毎晩一度ずつ、たべ物と水とを蜘蛛の網のすき間から入れてもらうのですが、もしちょっとでも口を利いたり歌を唄ったりすると、その晩は食べ物が貰えないのです」
「まあ、お可哀相な」
「それで私も我慢して、それからちっとも口を利かずにいましたが、ちょうど日の暮れ方のことでした。お月様が東の山からあがると間もなく、この塔の上から見まわしますと、向うの崖の途中に蔦葛につかまって一人のお嬢さんが降りて来ます」
「まあ……それじゃ、あの時私を助けて下すったのはあなたでしたか」
「いいえ、私ではありませんが、ただ何というあぶないことだろうと思いました。ちょうどその時、私は御飯を貰いに降りて行く時間でしたから、塔の入り口に降りて来まして、御飯を持って来た兵隊に母の妃を呼んでくれるように頼みました。そうして母の妃にソッと、あなたを助けてくれるように願いましたのです。それからあなたがこの城へお着きになると間もなく、あんな恐ろしい目に合ってこの塔の入り口までお出でになって……」
「まあ……それじゃ、私があの蜘蛛に喰べられないようにして下すったのもあなたですね」
「ええ。あの蜘蛛は馬鹿ですから、あなたを糸でグルグル巻きにして塔の中へ隠したのです。それを私がここまでかついで来て解いて上げたのです……サアこれで私のお話はおしまいです。今度はあなたがお話しをなさる番です」
「え……私がお話をする番ですって?……」
「そうです。いったいあなたはどうしてこの国へお出でになったのですか? あなたはいったいどこの国のおかたですか?」
 姫はこう尋ねられますと、急に恥かしくなって顔を真赤にしましたけれども、自分の生命いのちを助けられた人に隠してはいけないと思いましたから、初めから何もかもすっかりお話をしました。

……自分がオシャベリ姫と云われたわけ……
……短刀と蜘蛛の夢を見たこと……
……それを二人のお付の女中に話したら「それは今によいことがある夢だ」と云ったこと……
……それをお父様の王様とお母様のお妃にお話しをしたけれども、二人の女中が後でそんなお話はきかぬと嘘をついたこと……
……そのためにお父様の王様がおおこりになって、姫は石の牢屋に入れられたこと……
……それから猫の案内で雲雀の国から蛙の国をまわって、どこでもオシャベリのために非道い目に合って、やっとこの国まで逃げて来たこと……
……それから王様とお妃様に会った話……御馳走をたべているうちにオシャベリをして殺されようとした話……それから逃げまわってこの鉄の塔のところまで来た話……
 と、次から次へすっかりお話し申して聞かせました。
 聴いていた王子はビックリしたり、感心したり、笑ったりして夢中になって喜んでききました。そうしておしまいに、
「ああ……ああ、何という面白いお話でしょう。私は生れて初めて本当に面白いお話をききました。そうして生れて初めて本当にこんなに思うさま人間同士に声を出してお話をしました。けれども、あなたのお話の中にたった一つわからないことがあります」
「まあ、それは何ですか」
「それはその二人の女中さんです。あなたの国の人はお話はするでしょうけれども、嘘は云わないでしょう」
「ええ、嘘を云うものは一人もおりません」
「それに何だってあなたのお付の女中は嘘を云ったのでしょう。あなたから短刀と蜘蛛のお話をきいていながら、なぜそれをきかないなぞ云って、あなたのお父様を怒らして、あなたを石の牢屋へ入れさせたのでしょう」
「そうですわねえ。私は今でもそれを不思議と思っているのですよ。私の二人の女中は、今までそれはそれは忠義ないい女中で、そんな意地のわるいことをしたことは一度もありませんでしたのに……」
「不思議ですね」
「どうしたのでしょうね」
 と二人は顔を見合わせました。
 そのときにはるか下の方でバタンバタンという音につれて、
「ウーン、ウーン」
 という声がきこえました。
 二人はビックリしましたが、すぐに上り口からはるか下の方をのぞいて見ますと、長い長い梯子段の下のところで、例の大きな蜘蛛と、白い衣服きものを着た女の人とが一生懸命で闘っていますが、その女の人は見る見る蜘蛛から糸で巻きつけられてしまっているのが、窓からさし込んだ月の光りでよく見えます。
「おッ。あれは私の母の妃です。おのれ蜘蛛の奴」
 と云ううちに、王子は矢のように梯子段を駈け降りて行きました。
 オシャベリ姫はどうなることかと見ておりますと、梯子段を降りた王子は懐中から短刀を抜き出すや否や、たった一撃ひとうちに蜘蛛の眼と眼の間へ突込んで殺してしまいますと、つづいて同じ短刀でお妃に巻きついた糸をズタズタに切り破ってお妃を助け出しました。
 オシャベリ姫はほっと安心しながら、なおもようすを見ていますと、お妃は嬉しさのあまり王子をしっかりと抱き締められましたが、やがてその手をゆるめて、手真似でどこかへ逃げるように王子に教えておられるようです。
 王子は地びたへ両手をついてお礼を云いました。
 そのうちに、お妃は涙を流しながら王子と別れて、表の方へ出て行かれました。
 それを見ていたオシャベリ姫は、急いで梯子段を降りて、王子の傍に行こうとしましたが、その時は何だかお城の中が急に騒々しくなったようで、風の音のきれ目きれ目に沢山の人の足音がするようですから、姫は外をのぞいて見ますと、大変です。
 沢山の兵隊が手に手に短刀を持って、この塔の方へ押しかけて来るようです。
 これを見た姫は思わず上から叫びました。
「王子様、大変ですよ。大勢の兵隊が攻めて来ますよ」
 王子はこれをきくと、すぐに表に走り出て見ましたが、たちまち塔の中に駈けもどって、右に左に折れまがった梯子段を、一つのぼっては引きはずして投げおろし、二つのぼってはつき落して、塔の上まで昇ってくるうちに、階段が一つも無いように下の方へ落してしまいました。
 そこへ大勢の兵隊が攻めかけて来ましたが、梯子段が落ちているので登ることが出来ません。しかたなしに八方から鉄の塔を取り巻いて、ヒューヒューと矢を射かけましたが、あまり塔が高いのでみんな途中まで来て落ちてしまいました。
 王子はそれを見ながら、あまりの恐ろしさにワナワナふるえている姫にこう云いました。
「この兵隊どもはみんな、この国の風下の町々から来た兵隊です。さっきから私たちがお話した声が風下の町や村へすっかりきこえたそうで、この塔の上に魔物がいるというので、父の王に早く退治るように云って来たのです。父の王も母の妃も、そのお話をしたものがあなたと私で、魔物でも何でもないことはよく知っていたのですが、昔からこの国ではオシャベリをしたものは殺すことになっているのですから、殺さないわけに行きません。すぐにお城の中でも兵隊を繰出すように云いつけましたので、母の妃は心配して、早く逃げるように知らせに来たのです。けれども悲しいことに口を利くことが出来ないので、しかたなしに中に這入ろうとしたために蜘蛛の巣に引っかかってあんな目に合ったのです」
「まあ、ほんとに御親切なお母様ですこと」
 とオシャベリ姫は涙を流しました。
「けれどももう遅う御座いました。この塔はもう八方から兵隊に取巻かれて逃げることは出来ません。只逃げる道が一つあるきりです」
「えっ、まだ逃げる道があるのですか」
「ありますとも。あなたはさっき崖から飛び降りる時に持っておられた落下傘パラシュートを持っておいででしょう」
「あっ。持っています、持っています」
「それを持って飛げるのです」
 と云いながら、王子は鉄の塔の絶頂の窓のところからお城の方を向いてこう叫びました。
「お父様、お母様、私がわるう御座いました。よけいなことをオシャベリして大層御心配をかけました。私はこれから姫と一所によその国へ行きます。けれどもこれから決してオシャベリはしません。本当に見たりきいたりしたことでも、よけいなことはお話しをしないようにいたしますから、どうぞ御安心下さいますように。さようなら、御機嫌よう」
 こう云ううちに王子は、塔の床の上に手を突いて、涙を流しながらお暇乞いとまごいをしました。
 オシャベリ姫もだまって涙をこぼしながら、手を突いてお暇乞いをしました。
 そうして二人は落下傘パラシュートの紐をしっかりと掴んで、塔の上から下を目がけて飛び降りました。
 二人の身体からだはやがて落下傘パラシュートのおかげでフンワリと空中に浮かみました。それと一所に烈しく吹く風につれて、大空高く高く高く舞い上りましたが、そのうちに雨がバラバラと降り出しました。
 そうすると又大変です。落下傘パラシュートは紙で作ってあった物とみえまして、見る見るうちにバラバラに破れてしまいましたからたまりません。
 二人は抱き合ったまま流星のように早く、下界したの方へ落ちて行きました。
「アレッ。助けて」
 と姫は思わず大きな声で叫びましたが、その自分の声に驚いて眼をさましますと、どうでしょう。今までのはスッカリ夢で、姫はやっぱり自分のお城の石の牢屋の中に寝ているのでした。
 姫はどちらが夢だかわからなくなってしまいました。
 あんまりの不思議さに、立ち上って石の牢屋の四方を撫でまわしてみましたが、四方はつめたい石で穴も何もありません。上の方へ手をやってみますと、天井もすぐ手のとどくところにありましたが、そこにも抜け出られるようなところが一つもありません。
 あんまりの奇妙さに、姫はボンヤリして、石の床の上に坐わっていました。
 すると間もなく向うにあかりがさして、お父様の王様と二人の兵隊が見えまして、牢屋の入り口を外から開かれました。
 お父様は思いがけなくニコニコしながら、こう云われました。
「これ、オシャベリ姫。お前の夢は本当になったぞ。今までお前があんまりオシャベリなために誰も婿に来る人が無かったのに、きょう不意に隣の国の第三番目のムクチ王子様が、お前の婿になりたいと云ってお出でになった。今からお引き合わせをするのじゃから早く来い」
 と云ううちに、姫を牢屋から引き出して、お城へ帰られるとすぐに、二人のお付の女中に姫を立派にお化粧させるように申しつけられました。
 二人の女中は姫の無事な姿を見ると、嬉し涙をこぼしながらお化粧のお手伝いをしました。そうして両方から姫の手を引きながら御両親の王様とお妃様の前に連れて行きました。
 姫は狐につままれたようになって手を引かれて来ましたが、父の王と母の妃の前にいるムクチ王子の姿を見ると思わず、
「アレッ。あなたはあの王子様」
 と叫びました。ムクチ王子の姿はもうすこし前夢に見た、あのクチナシ国の王子にすこしも違わなかったのです。
 ムクチ王子も姫を見るとニッコリと笑われました。そうしてこう云われました。
「ビックリなすったでしょう。私も本当は不思議に思っているのです。私は昨夜不思議な夢を見ました。その夢の中で私はクチナシ国王の一人子と生れましたが、生れた時から口があるためにいろいろ両親に心配をかけましたあげく、オシャベリ姫と一所に鉄の塔から逃げ出しました。その時に姫からきいた話によりますと、姫は蜘蛛と短刀の夢を見たとお父様とお母様に云ったのを、お付の女中が嘘だと云ったために、石の牢屋に入れられたということでした。それから眼がさめて考えてみますと、オシャベリ姫というお名前はあなたの外にありませんから、心配になりまして、すぐに馬に乗ってこのお城へ駈けつけてみますと、私の夢は本当で、あなたは石の牢屋に入れられておいでになることをあなたの御両親からききました。それであなたの夢が嘘でないことを申し上げてお許しを願ったのです」
 このお話をきいていた姫は、夢が本当なのか本当が夢なのかわからなくなってしまいました。その時にお父様の王様はこう云われました。
「姫よ。おまえがあんまりオシャベリをするから本当の話でも嘘と思われるのだ。これからお前はオトナシ姫と名をえろ。そうして決していらぬことをオシャベリするな」
 こう云われますと、姫は真赤になって恥かしがりながら、
「私がわるう御座いました。これからは決しておしゃべりいたしません」
 とお詫びをしました。
 王はそれから二人の女中にこう云われました。
「お前たちは姫から短刀と蜘蛛の話をきいたのだろう」
 二人の女中は顔を見あわせて真赤になりましたが、やがてこうお答えしました。
「ハイ。たしかにそのお話をききました」
「それに何だってきかないなぞと嘘をついたのだ」
 こう尋ねられますと、二人の女中はなおなお恥かしそうにしながらこう答えました。
「ハイ。蜘蛛と短刀の夢を見ると、きっといいお婿様がお出でになる。けれどもそのことが相手のお婿様のお耳に入るとダメになる、と昔から申し伝えてあります。それで私共は、お姫様によいお婿さまがお出でになるように、わざと嘘だと申しましたのです」
 王様もお妃様もムクチ王子もオシャベリ姫のオトナシ姫も、二人の女中の忠義心に感心をしておしまいになりました。
 ムクチ王子がオシャベリ姫のオトナシ姫のお婿さんとなって華々しい御婚礼があったのは、それから間もないことでした。
 そのときに二人の女中は王様から沢山の御褒美をいただきました。
 そうして死ぬまで忠義にムクチ王子とオトナシ姫に仕えました。





底本:「夢野久作全集1」ちくま文庫、筑摩書房
   1992(平成4)年5月22日第1刷発行
※底本の解題によれば、初出時の署名は「かぐつちみどり」です。
入力:柴田卓治
校正:江村秀之
2000年5月17日公開
2006年5月3日修正
青空文庫作成ファイル:
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