「ふんふん。よし、よし。さあ、みんな
そこでみんなは
次の朝またお日さまがおのぼりになりますと、とのさまがえるは云いました。
「おい、みんな。集れ。今日もどこからも仕事をたのみに来ない。いいか、今日はな、あちこち花畑へ出て行って花の種をひろって来るんだ。一人が百つぶずつ、いや百つぶではすくない。千つぶずつ、いや、千つぶもこんな日の長い時にあんまり少い。万
あまがえるどもはみんな、お日さまにまっさおにすきとおりながら、花畑の方へ参りました。ところが丁度
「おい、ビチュコ。一万つぶひろえそうかい。」
「いそがないとだめそうだよ、まだ三百つぶにしかならないんだもの。」
「さっき団長が百粒ってはじめに云ったねい。百つぶならよかったねい。」
「うん。その次に千つぶって云ったねい。千つぶでもよかったねい。」
「ほんとうにねい。おいら、お酒をなぜあんなにのんだろうなあ。」
「おいらもそいつを考えているんだよ。どうも一ぱい目と二杯目、二杯目と三杯目、みんな順ぐりに糸か何かついていたよ。三百五十杯つながって居たとおいら今考えてるんだ。」
「全くだよ。おっと、急がないと大へんだ。」
「そうそう。」
さて、みんなはひろってひろってひろって、夕方までにやっと一万つぶずつあつめて、カイロ団長のところへ帰って来ました。
するととのさまがえるのカイロ団長はよろこんで、
「うん。よし。さあ、みんな舶来ウェスキーを一杯ずつのんで
あまがえるどもも大よろこびでみんな
次の朝あまがえるどもは
「とにかく大いに
「全くだよ。どうだろう、一人前九十円ずつということにしたら。」
「うん。それ位ならまあよかろうかな。」
「よかろうよ。おや、みんな起きたね、今日は何の仕事をさせようかな。どうも毎日仕事がなくて困るんだよ。」
「うん。それは大いに同情するね。」
「今日は石を運ばせてやろうか。おい。みんな今日は石を一人で九十
「うん。九百貫という方が口調がいいね。」
「そうだ、そうだ。どれだけいいか知れないね。おい、みんな。今日は石を一人につき九百貫ずつ運んで来い。もし来なかったら早速警察へ貴様らを引き渡すぞ。ここには裁判の方のお方もお
あまがえるはみなすきとおってまっ青になってしまいました。それはその
とのさまがえるは早速例の鉄の棒を持ち出してあまがえるの頭をコツンコツンと
みんなは石のある所に来ました。そしててんでに百匁ばかりの石につなをつけて、エンヤラヤア、ホイ、エンヤラヤアホイ。とひっぱりはじめました。みんなあんまり一生けん命だったので、
カイロ団長は丁度この時うちの中でいびきをかいて寝て
「何だ。のろまども。今までかかってたったこれだけしか運ばないのか。何という貴様らは
「とても私らにはできません。私らはもう死にそうなんです。」
「えい、意気地なしめ。早く運べ。晩までに出来なかったら、みんな警察へやってしまうぞ。警察ではシュッポンと首を切るぞ。ばかめ。」
あまがえるはみんなやけ
「どうか早く警察へやって下さい。シュッポン、シュッポンと聞いていると何だか
カイロ団長は怒って叫び出しました。
「えい、馬鹿者め意気地なしめ。
えい、ガーアアアアアアアアア。」カイロ団長は何だか変な顔をして口をパタンと閉じました。ところが「ガーアアアアアアア」と云う音はまだつづいています。それは全くカイロ団長の
「そら、あたらしいご命令だ。」と、あまがえるもとのさまがえるも、急いでしゃんと立ちました。かたつむりの吹くメガホーンの声はいともほがらかにひびきわたりました。
「王さまの新らしいご命令。王さまの新らしいご命令。一個条。ひとに物を云いつける方法。ひとに物を云いつける方法。第一、ひとにものを云いつけるときはそのいいつけられるものの目方で自分のからだの目方を割って答を見つける。第二、云いつける仕事にその答をかける。第三、その仕事を一ぺん自分で二日間やって見る。以上。その通りやらないものは鳥の国へ引き渡す。」
さああまがえるどもはよろこんだのなんのって、チェッコという算術のうまいかえるなどは、もうすぐ暗算をはじめました。云いつけられるわれわれの目方は
「九千貫だよ。おい。みんな。」
「団長さん。さあこれから晩までに四千五百貫目、石をひっぱって下さい。」
「さあ王様の命令です。引っぱって下さい。」
今度は、とのさまがえるは、だんだん色がさめて、
あまがえるはみんなでとのさまがえるを囲んで、石のある
「さあ、これを晩までに四千五百運べばいいのです。」と云いながらカイロ団長の肩に綱のさきを引っかけてやりました。団長もやっと
「ヨウイト、ヨウイト、ヨウイト、ヨウイトショ。」
カイロ団長は、はやしにつりこまれて、五へんばかり足をテクテクふんばってつなを引っ張りましたが、石はびくとも動きません。
とのさまがえるはチクチク汗を流して、口をあらんかぎりあけて、フウフウといきをしました。全くあたりがみんなくらくらして、茶色に見えてしまったのです。
「ヨウイト、ヨウイト、ヨウイト、ヨウイトショ。」
とのさまがえるは又四へんばかり足をふんばりましたが、おしまいの時は足がキクッと鳴ってくにゃりと曲ってしまいました。あまがえるは思わずどっと笑い出しました。がどう云うわけかそれから急にしいんとなってしまいました。それはそれはしいんとしてしまいました。みなさん、この時のさびしいことと云ったら私はとても口で云えません。みなさんはおわかりですか。ドッと
ところが丁度その時、又もや青ぞら高く、かたつむりのメガホーンの声がひびきわたりました。
「王様の新らしいご命令。王様の新らしいご命令。すべてあらゆるいきものはみんな気のいい、かあいそうなものである。けっして
そこであまがえるは、みんな走り寄って、とのさまがえるに水をやったり、曲った足をなおしてやったり、とんとんせなかをたたいたりいたしました。
とのさまがえるはホロホロ
「ああ、みなさん、私がわるかったのです。私はもうあなた方の団長でもなんでもありません。私はやっぱりただの
あまがえるは、みんなよろこんで、手をパチパチたたきました。
次の日から、あまがえるはもとのように
みなさん。あまあがりや、風の次の日、そうでなくてもお天気のいい日に、畑の中や
「おい。ベッコ。そこん
底本:「新編 銀河鉄道の夜」新潮文庫、新潮社
1989(平成元)年6月15日発行
1994(平成6)年6月5日13刷
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2005年5月8日作成
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