そのとき西のぎらぎらのちぢれた雲のあいだから、
そこらがまだまるっきり、
あるとき嘉十は、
天気のいい日に、嘉十も出かけて行きました。
いくつもの小流れや石原を
嘉十は
ところがあんまり一生けん命あるいたあとは、どうもなんだかお
「こいづば
ところが少し行ったとき、嘉十はさっきのやすんだところに、
けれども嘉十はぴたりとたちどまってしまいました。
それはたしかに鹿のけはいがしたのです。
鹿が少くても五六
嘉十はすすきに
たしかに鹿はさっきの栃の団子にやってきたのでした。
「はあ、
一むらのすすきの
太陽が、ちょうど一本のはんのきの
嘉十はよろこんで、そっと片膝をついてそれに見とれました。
鹿は大きな環をつくって、ぐるくるぐるくる廻っていましたが、よく見るとどの鹿も環のまんなかの方に気がとられているようでした。その
もちろん、その環のまんなかには、さっきの嘉十の栃の団子がひとかけ置いてあったのでしたが、鹿どものしきりに気にかけているのは決して団子ではなくて、そのとなりの草の上にくの字になって落ちている、嘉十の白い手拭らしいのでした。嘉十は痛い足をそっと手で曲げて、苔の上にきちんと
鹿のめぐりはだんだんゆるやかになり、みんなは
嘉十はにわかに耳がきいんと鳴りました。そしてがたがたふるえました。鹿どもの風にゆれる
嘉十はほんとうにじぶんの耳を疑いました。それは鹿のことばがきこえてきたからです。
「じゃ、おれ行って見で
「うんにゃ、危ないじゃ。も少し見でべ。」
こんなことばもきこえました。
「
「そだそだ、全ぐだ。」
こんなことばも聞きました。
「生ぎものだがも知れないじゃい。」
「うん。生ぎものらしどごもあるな。」
こんなことばも聞えました。そのうちにとうとう一疋が、いかにも決心したらしく、せなかをまっすぐにして環からはなれて、まんなかの方に進み出ました。
みんなは
進んで行った
「なじょだた。なにだた、あの白い長いやづあ。」
「縦に
「そだら生ぎものだないがべ、やっぱり
「うんにゃ。きのごだない。やっぱり生ぎものらし。」
「そうが。生きもので皺うんと寄ってらば、
「うん年老りの番兵だ。ううはははは。」
「ふふふ青白の番兵だ。」
「ううははは、青じろ番兵だ。」
「こんどおれ行って見べが。」
「行ってみろ、
「
「うんにゃ、大丈夫だ。」
そこでまた一疋が、そろりそろりと進んで行きました。五疋はこちらで、ことりことりとあたまを
進んで行った一疋は、たびたびもうこわくて、たまらないというように、四本の脚を集めてせなかを
そしてとうとう手拭のひと足こっちまで行って、あらんかぎり首を延ばしてふんふん
「なじょだた、なして逃げで来た。」
「
「ぜんたいなにだけあ。」
「わがらないな。とにかぐ白どそれがら青ど、両方のぶぢだ。」
「
「柳の葉みだいな匂だな。」
「はでな、
「さあ、そでば、気付けないがた。」
「こんどあ、おれあ行って見べが。」
「行ってみろ」
三番目の
こっちでは五疋がみんなことりことりとお
「
「
「
「さあ、
「あだまあるが。」
「あだまもゆぐわがらないがったな。」
「そだらこんだおれ行って見べが。」
四番目の鹿が出て行きました。これもやっぱりびくびくものです。それでもすっかり手拭の前まで行って、いかにも思い切ったらしく、ちょっと鼻を手拭に
鹿踊りのはじまり(ししおどりのはじまり)
作家录入:贯通日本语 责任编辑:贯通日本语
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