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豆潜水艇の行方(まめせんすいていのゆくえ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-26 6:32:48  点击:  切换到繁體中文


   かたむき直し


右舷うげんメインタンク、排水用意!」
「用意よろしい」
「ほんとかね。弁は開いてあるかね」
「大丈夫ですよ、青木さん。もっとしっかり号令をかけてよ」
「よし。それじゃ、やるよ。……圧搾あっさく空気送り方、用意。用意、よろしい。圧搾空気送り方、はじめ! はじめ! 傾度けいど四十五……」
 豆潜水艇の中で、青木学士はひとりでさけんでいます。自分で号令をかけて、自分で仕事をやっているのです。なにしろ、この艇の中には乗組員はたった二人しかいないのですから、いそがしいことといったら、たいへんです。
 かん、かん、かん、かん。
 金具がすれるような音がきこえています。それとともに、今までたいへん右舷へかたむいていた豆潜水艇が、すこしずつかたむきをなおしてくるのがわかりました。
「青木さん。うまくなおってきましたね」
「ああ、この分なら、あと十六七分のうちに、ちゃんとなるだろう」
 エンジンとポンプとが、あらい息をはいて、力一ぱいうごいています。
「どうして、左舷のメインタンクが開かなかったんだろうなあ」
「だって、いきなり艇が海の中へおちたから、故障がおきたのでしょう」
「さあ、どうかね。とにかくそんなことはないようにつくったつもりだったがねえ」
 青木さんは、ふしぎそうにそういいました。
 青木さんは、艇が海のなかにおちたと知ると、すぐにエンジンをかけ、メインタンクを開いたのです。そうすると、水がはいってきますから、潜水艇はしずみます。
 そうしないと、艇はおちたいきおいで一たんしずみ、しばらくすると、また海面にうきあがるから、それでは悪人どもにまたつかまると思ったので、すぐタンクをひらいて、艇が海底におりたまま、うきあがらないようにしたのです。しかしそのとき、右舷のタンクはひらいたが、左舷のメインタンクがひらかなかったので、左舷タンクには水が入ってきませんでした。そこで、艇はひどくかたむいていたのです。
 エンジンは、しきりにまわっています。
「防毒面はもうしばらくがまんしてかぶっているのだよ。今、艇内の毒ガスをおいだすと、そばにいる例の怪しい船にしれるからね」
 青木さんが、ふと気がついたようすで、いいました。
「いつまでも、がまんできますよ」
「しかし、あのときは、あぶなかったねえ。悪い奴が、毒ガス弾をなげこんだとき、あわてないで、すぐ用意の防毒面をかぶったからよかったが、うっかりしていれば、今ごろは冷たくなって死んでいるよ」
「それよりも、ぼくは、青木さんが、艇内に防毒面をそなえておいた、その用意のよいのに、かんしんするなあ」
「そんなことは、べつにかんしんすることはないさ。コレラのはやる土地へいくには、かならず、水を水筒すいとうに入れてもっていくのと同じことだ。これからは、防毒面なしでは、外があるけないよ」


   忘れもの


 豆潜水艇のかたむきは、すっかりなおりました。艇は今、海のそこから五メートルほど上に、うきあがっています。
 艇長さんの青木学士は、こんどはかじをうごかす舵輪だりんにとりついて、かおを赤くしています。
「よし、このくらいで、ここをさよならしよう」
「青木さん、これからどっちの方へいくのですか」
「これから、ずっと沖の方へ出てみよう。その方が安全だし、ちょうど試運転にもいいからねえ」
「じゃあ、このまま外洋に出るのですね。ゆかいだなあ。青木さん、艇には、いる品ものはみんなそろっているのですか」
 春夫は、しんぱいになって、たずねました。
「うん、ちょっと入れのこした品ものがあるんだ。しかし今さら、とりにかえるのも、めんどうなのでね」
「そのりない品ものというのは、一たいなんですか。たべものとか、水とかが足りないのではないのですか」
「あははは。君はくいしんぼうなんだね。だから、たべものだの、水だののことを、しんぱいするんだね。安心したまえ。その方はじゅうぶんとはいかないが、せつやくすれば、二人で三十日ぐらいくらしていけるだけはある」
「へえ、そんなにあるのですか」
 春夫は、三十日分もあるときいて、目をまるくし、つばをのみこみました。
「それで、なにが足りないのですか、青木さん」
「その足りない品ものというのはね、当局からもらった機関銃きかんじゅうだよ」
「へえ、機関銃ですって? そんなものを、どうしてもらったのですか」
「だって、太平洋は、いま武装しないでは、あぶなくて航海できないじゃないか。おねがいしてやっともらったんだけれど、大切なものだから、一番あとでのせるつもりでいたから、つめなかったんだよ」
 なるほど、いま太平洋はいつ敵国の軍艦や飛行機から攻撃こうげきをうけるか、たいへんあぶない時期にはいっていた。そういう場合に日本男子は、おめおめ敵のためにしずめられたり、とりこになったりしてはいけない。むかってくる敵にたいしては、あくまでたたかうのが日本男子である。もうこうなれば、兵隊であろうが、なかろうが、かくごはおなじことである。
 そういう時期にはいっているのに、青木学士は、身をまもる機関銃を忘れたといって、あんがいへいきでいるのである。
 春夫は、あきれた。
「そんなものをわすれてきては、こまりますね。ほかに、武器はあるんですか」
「かくべつ武器と名のつくものはないよ。しかし、敵が向ってきても、またなんとかうまくあしらってやるよ」
「銃も刀ももたないで、敵に向うなんて、らんぼうじゃありませんか」
「そうだ。ちょっとらんぼうらしいね。あははは」
 青木学士は、べつにおどろいた風でもなく、なぜか、からからとわらいました。
 豆潜水艇は、どこへいく?
 次ぎの日に、海上において、おどろくべき事件がおころうとは、春夫はもちろん、青木学士さえも、しらなかったのでありました。

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