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松山鏡(まつやまかがみ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-2 5:57:16  点击:  切换到繁體中文

底本: 日本の諸国物語
出版社: 講談社学術文庫、講談社
初版発行日: 1983(昭和58)年4月10日
入力に使用: 1983(昭和58)年4月10日第1刷
校正に使用: 1983(昭和58)年4月10日第1刷

 

  一

 むかし越後国えちごのくにまつ山家やまが片田舎かたいなかに、おとうさんとおかあさんとむすめと、おやこ三にんんでいるうちがありました。
 あるときおとうさんは、よんどころない用事ようじ出来できて、京都きょうとのぼることになりました。むかしのことで、越後えちごからみやこのぼるといえば、幾日いくにちも、幾日いくにちたびかさねて、いくつとなく山坂やまさかえてかなければなりません。ですからって行くおとうさんも、あとにのこるおかあさんも心配しんぱいでなりません。それで支度したく出来できて、これからとうというとき、おとうさんはおかあさんに、
「しっかり留守るすたのむよ。それから子供こどもをつけてね。」
 といいました。おかあさんも、
大丈夫だいじょうぶ、しっかりお留守居るすいをいたしますから、をつけて、ぶじにはやくおかえりなさいまし。」
 といいました。
 その中でむすめはまだ子供こどもでしたから、ついそこらへ出かけて、じきにおとうさんがかえってるもののようにおもって、かなしそうなかおもしずに、
「おとうさん、おとなしくお留守番るすばんをしますから、おみやげをってきてくださいな。」
 といいました。おとうさんはわらいながら、
「よしよし。そのわり、おとなしく、おかあさんのいうことをくのだよ。」
 といいました。
 おとうさんがってってしまうと、うちの中はきゅうさびしくなりました。はじめの一にち二日ふつかは、むすめもおかあさんのお仕事しごとをしているそばでおとなしくあそんでおりましたが、三日みっか四日よっかとなると、そろそろおとうさんがこいしくなりました。
「おとうさん、いつおかえりになるのでしょうね。」
「まだ、たんとなければおかえりにはなりませんよ。」
「おかあさん、京都きょうとってそんなにとおところなの。」
「ええ、ええ、もうこれから百もあって、くだけに十日とおかあまりかかって、かえりにもやはりそれだけかかるのですからね。」
「まあ、ずいぶんちどおしいのね。おとうさん、どんなおみやげをっていらっしゃるでしょう。」
「それはきっといいものですよ。たのしみにしてっておいでなさい。」
 そんなことをいいいい、毎日まいにちらしているうちに、十日とおかたち、二十日はつかたち、もうかれこれ一月ひとつきあまりの月日つきひがたちました。
「もうたんと、ずいぶんきるほどたのに、まだおとうさんはおかえりにならないの。」
 と、むすめれなくなって、かなしそうにいいました。
 おかあさんはゆびって日をかぞえながら、
「ああ、もうそろそろおかえりになる時分じぶんですよ。いつおかえりになるかれないから、いまのうちにおへやのおそうじをして、そこらをきれいにしておきましょう。」
 こういってらかったおへやの中をかたづけはじめますと、むすめも小さなほうきをって、おにわをはいたりしました。
 するとその日の夕方ゆうがた、おとうさんは荷物にもつをしょって、
「ああ、つかれた、つかれた。」
 といいながら、かえってました。そのこえくと、むすめはあわててとびしてて、
「おとうさん、おかえりなさい。」
 といいました。おかあさんもうれしそうに、
「まあ、おはやいおかえりでしたね。」
 といいながら、背中せなか荷物にもつ手伝てつだってろしました。むすめはきっとこの中にいいおみやげがはいっているのだろうとおもって、にこにこしながら、おかあさんのお手伝てつだいをして、荷物にもつおくまではこんで行きました。そのあとから、おとうさんは脚絆きゃはんのほこりをはたきながら、
「ずいぶんさびしかったろう。べつにわったことはなかったか。」
 といいいいおくとおりました。
 おとうさんはやっとすわって、おちゃを一ぱいのむひまもないうちに、つつみの中から細長ほそながはこして、にこにこしながら、
「さあ、お約束やくそくのおみやげだよ。」
 といって、むすめわたしました。むすめきゅうにとろけそうなかおになって、
「おとうさん、ありがとう。」
 といいながら、はこをあけますと、中からかわいらしいお人形にんぎょうさんやおもちゃが、たんと出てきました。むすめはだいじそうにそれをかかえて、
「うれしい、うれしい。」
 といって、はねまわっていました。するとおとうさんは、また一つひらたいはこして、
「これはおまえのおみやげだ。」
 といって、おかあさんにわたしました。おかあさんも、
「おや、それはどうも。」
 といいながら、けてみますと、中にはかねでこしらえた、まるいひらたいものがはいっていました。
 おかあさんはそれがなんにするものだかからないので、うらをかえしたり、おもてをたり、ふしぎそうなかおばかりしていますので、おとうさんはわらして、
「おまえ、それはかがみといって、みやこへ行かなければいものだよ。ほら、こうしててごらん、かおがうつるから。」
 といって、かがみのおもてをおかあさんのかおにさしけました。おかあさんはそのときかがみの上にうつった自分じぶんかおをしげしげとながめて、
「まあ、まあ。」
 といっていました。

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