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ウィリアム・ウィルスン(ウィリアム・ウィルスン)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-7 6:37:56  点击:  切换到繁體中文


 その瞬間、誰かが扉の挿錠さしじょうをがちゃがちゃさせた。私は急いで誰でも外から入って来られないようにして、それからまたすぐその瀕死ひんしの敵手のところへとひき返した。しかし、そのとき眼前にあらわれた光景を見たとき自分をおそったあの驚愕きょうがくあの恐怖を、どんな人間の言葉が十分にあらわすことができようか? 私がを離していたそのちょっとのまに、へや上手かみての、つまり遠いほうの端の配置に、見たところ、重大な変化が起きていたのだ。大きな鏡が――自分の心が混乱していたので私には最初はそう思われたのだが――いまや前になにもなかったところに立っていたのだ。そして、私が極度の恐怖を感じながらそれに近づいてゆくと、私自身の姿が、だがさおな、血にまみれた顔をして、力のないよろよろした足どりで私の方へすすんで来た。
 そんなふうに見えた。が、そうではなかった。それは私の敵手であった、――それは断末魔の苦悶くもんをしながらそのとき私の前に立ったウィルスンであった。彼の仮面と外套とは床の上に、彼の投げてたところに、落ちていた。彼の衣服中の糸一本も――彼の顔のあらゆる特徴のある奇妙な容貌ようぼうのなかの線一つも、まったくそのままそっくり、私自身のものでないものはなかった!
 それはウィルスンであった。けれども彼はもうささやきでしゃべりはしなかった。そして私は、彼が次のように言っているあいだ、自分がしゃべっているのだと思うことができたくらいであった。――
お前は勝ったのだ己は降参するだがこれからさきはお前も死んだのだ、――この世にたいして天国にたいしてまた希望にたいして死んだんだぞ! 己のなかにお前は生きていたのだ。――そして己の死でお前がどんなにまったく自分を殺してしまったかということをお前自身のものであるこの姿でよく見ろ


(1)William Chamberlayne(一六一九-七九)――イギリスの詩人、劇作家。
(2)Elah-Gabalus(二〇五-二二二)――本名 Varius Avitus Bassianus. ローマの皇帝。その放埒ほうらつな乱行をもって知られている。
(3)the dim valley――旧約聖書詩篇第二十三篇第四節に出ている「死のかげの谷」のこと。
(4)leading-strings――歩き初めの子供につかまらせて歩き慣らせるひも
(5)ferule――学校で、懲罰として児童を、とくにそのてのひらを、打つためにつくられた木のへら
(6)「強い厳しい刑罰」という意味のフランス語であるが、昔、普通の審問に答弁しない罪人に科したものであって、罪人を俯伏うつぶせにさせてその上に重いものを載せ、白状しなければ死ぬまでそうしておいたという残酷な刑罰である。
(7)ポーの生年月日は今日では一八〇九年一月十九日であることが確かめられているが、作者自身は自己の誕生日を一八一一年とした手記をグリズウォルドに与え、のちにさらに一八一三年としたのである。なお、この物語の初めの追憶的の部分が作者の幼時に学んだイギリスのストーク・ニューイントンのブランスビイ博士の学校のことなどを描いたものであることは有名であるが、全編を「半自伝的」の作と考えるのは当を得たものではない。
(8)これはもちろん、ブランスビイ博士の学校寝室などと違って、学生の寄宿舎は学校の本館とは別の棟になっていて、一つ一つのへやに小さな玄関の間がついているからである。
(9)Herodes Atticus(一〇四ころ-一八〇ころ)――本名 Tiberius Claudius. ギリシャのアテネの市民であった富豪。修辞学者であったが、その著作は今日残っていない。彼の祖父の領地は反逆のために没収されたが、その後彼の父の家で莫大ばくだいな額の金が発見され、それを所有することを時の皇帝に許されてたちまちにして大財産家となり、彼の結婚によってもますますその富が増したという。彼はその私財をもって方々に劇場や音楽堂を建てたり、競技場や競走路をつくったり水道や温浴場をこさえたり、ギリシャ各地の滅びた都市を復旧再興させたり、実にさまざまの驚くべき大規模な公益事業をしているが、もってその富のいかに巨大であったかが察せられる。
10※(アキュートアクセント付きE小文字)cart※(アキュートアクセント付きE小文字)――三十二枚の札で二人だけでやる骨牌戯かるたあそび
11)arrond※(アキュートアクセント付きE小文字)es――正しくはフランス語で arrondies と書き(もっとも英語化されて arondie, arondy などとも書かれるようである)、「円くされた」、「円い」という意味(邦語では「マル札」とでも訳すべきか)。すぐあとに本文で説明されているように、札の縁が少し円味を帯びているからである。






底本:「黒猫・黄金虫」新潮文庫、新潮社
   1951(昭和26)年8月15日発行
   1995(平成7)年10月15日89刷改版
   2004(平成16)年2月5日100刷
※(1)~(11)は訳注番号です。底本では、直前の文字の右横に、ルビのように小書きされています。また数字は縦中横になっています。
入力:kompass
校正:土屋隆
2005年11月1日作成
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