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右門捕物帖(うもんとりものちょう)17 へび使い小町

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-7 9:25:04  点击:  切换到繁體中文


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 かくして、そのあくる朝です。
 ふたりの配下がけんめいに町名主どもへ伝達したとみえまして、申し渡した四ツ少しまえあたりから、いずれもなんのお呼び出しであろうといぶかりながら、遠くは乗り物、近くはおひろいで、それぞれ父親同道のもとに江戸美人たちが、ぞろぞろと名人係り吟味のお白州へ出頭いたしました。かりにこれが尋常普通のあまりおきれいでない女性であったにしても、三人五人と目の前へつぼみの花がけんを競ってむらがりたかってまいりましたら、よほど肝のすわっている者であっても、ぽうッといくらか気が遠くなるだろうと思われるのに、次から次へと姿を見せる者は、まこと三十二相兼ね備わった粒よりの逸品ばかりでしたので、生来肝のすわっていない伝六がことごとくもう精神に異状を呈して、さすがに小声でしたが、場所がらもわきまえず、たちまちうるさくお株を始めたのはいうまでもないことでした。
「ねえ、だんな! どうです。すっかり世間がほがらかになっちまうじゃござんせんか。これだから、お番所勤めはいくらどじだの、おしゃべり屋だのとしかられましても、なかなかどうして百や二百の目くされ金じゃこのお株は売れねえんですよ。ね、ほらほら、また途方もねえ上玉がご入来あそばしましたぜ。――でも、それにしちゃ、あのおやじめはちっとじじむさすぎるじゃござんせんか。もしかするてえと、もらい子じゃねえのかな。だとすると、これで広い世間にゃ、もらい合わせて跡めを譲ろうってえいうようなもののわかったやつがいねえわけでもねえんだからね、年もころあい、性はこのとおりの毒気なし、ちっと口やかましいのが玉に傷だが、そこをなんとか丸くおさめて、あっしが半口乗るわけにゃめえりますまいかね」
「…………」
「ちょッ、いやんなっちまうな。どういうお気持ちで狩り出したかしらねえが、だんなが発頭でお呼びなすったんじゃござんせんか。九人も十人もの小町娘をいっぺんに見られるなんてことあ、一度あって二度とねえながめなんですよ。やけにおちついていらっしゃらねえで、きょうばかりは近所づきあいに、もっとうれしくなっておくんなせえよ。な、辰ッ。おい、お公卿さまッ」
「…………」
「ちぇッ、のどかなくせに、きどっていやがらあ。寸は足りねえったって、耳は人並みについているじゃねえか。なんとか返事をしろよ」
「だって、このついたてが高すぎて、よく向こうが見えねえんだよ」
「ほい、そうか。高すぎるんじゃねえ、おめえがちっとこまかすぎるからな。じゃ、おれがふたり分堪能たんのうしてやるから、気を悪くすんなよ。――ねえ、だんな、ないしょにちょっと申しますが、ついでだからころあいなのをひとり見当つけておいたらどうですかい。あっしゃそればっかりが気になって、毎晩夢にまでも見るんですよ。似合いの小町とこうむつまじくお差し向かいで、堅すぎず、柔らかすぎず、ごいっしょに涼んでいらっしゃるところをでも拝見できたら、どんなにかあっしも涼しくなるだろうと思いましてね。――よッ。いううちに、今はいってきたべっぴん、だんなのほうをながめて、まっかになりましたぜ。助からねえな。おれなんかのほうは、半分だっても見当つけてくださる小町ゃねえんだからね」
 それがまた小声だけに、うるさいことは並みたいていでないので。しかし、名人はただ黙々。集まってきた小町美人のほうへはまったく目もくれないで、何を待つのか、しきりと出入り口にばかり烱々けいけいと注意を放っていたようでしたが、と――そのとき、おどおどとしながらうろたえ顔でお白州に姿を見せた者は、裕福らしい町家のおやじふたりです。と見ると、じつに右門流の中の右門流でした。
「よしッ。いま来たふたりのおやじがたいせつなお客だ。あとの者たちは、もう目ざわりだから、引きさがるように申し伝えろッ」
「…………」
「何をパチクリやってるんだ。幾人来たか数えてもみないが、あとの小町娘たちにはもうご用済みだからと申し伝えて、引きさがるように手配しろよ」
「…………」
「…………※(疑問符感嘆符、1-8-77)
「血のめぐりのわりいやつだな。いつまでパチクリやってぽかんとしているんだ。きさまは河童権があんどんへ残していった文句覚えてねえのか。江戸の小町娘は気をつけろ、比丘尼小町に食われちまうぞと、気味のわるい文句があったじゃねえか」
「ちぇッ、そうですかい。じゃ、あんな文句が残っているからにゃ、どこかほかでもう比丘尼小町とやらにやられた娘があるだろうと眼がついたんで、わざわざ小町改めをしたんですかい」
「決まってらあ。いま来たあのおやじどもを見ろ。なにか思いもよらねえいわくがあるとみえて、おどおどうろたえているじゃねえか。だから、もう小町娘を無事に連れてきた親どもにゃ用はねえんだ。早く引きさがるよう申し伝えろッ」
「これだからな。化かされまい、化かされまいと思っていても、じつにだんなときちゃあざやかだからな、せっかく堪能できると油が乗り出してきたのに、しかたがねえや。じゃ、辰ッ、遠慮しねえでついたての陰から首を出しなよ」
「まてまてッ」
「えッ?」
「ここに十金あるから、帰りの乗り物代に分けてつかわせ。暑いさなかをご苦労だった、このうえとも娘どもはたいせつにしろと、ねんごろにいたわってやれよ」
「いちいちとやることにそつがねえや。おい、辰ッ。背のちっちぇえのが恥ずかしかったら、せいぜい伸び上がってついてきなよ」
 伝六、辰の配下たちが、そのまま帰してしまうのを惜しそうにひとりひとり手配したのを見すましてから、やおら名人はひざを進めると、いわくありげなふたりの町人に呼びかけました。
「遠慮はいらぬ。心配ごとがあらば、早く申し立てろ」
「へえい……」
「たぶん、両名とも娘たちの身の上に、何か異変があっての心配顔と察するが、どうじゃ、違うか」
「お察しのとおりなんでございまするが、でも、ちっと話がこみ入っているんでございますよ。じつは、ゆうべおそくに町名主がおみえなさいまして、この町内で小町娘と評判されているのはおまえのところのお千恵だけじゃ、しかじかかくかくでお番所から不意にお呼び出しがかかってきたから、四ツまでに出頭しろと、このように申されましたんで、なんのことやら、では参りましょうと、さっそくただいま、預けておいたところへ娘を連れに参りましたら、どうしたのでござりましょう、その娘がふいっと行くえ知れずになったのでござりますよ」
「なに! 預けておいたとな! 聞き捨てならぬことばじゃ。いつ、どうして、どこへ預けておいたか!」
「それがどうも、ちっと気味のわるい話なんでございますよ。聞けば、こちらの綿半さんも同じようなめにお会いなすったそうでございますが、ちょうど三日まえのことでございます。てまえは神田の連雀町れんじゃくちょうで畳表屋を営みおりまする久助と申す者でございますが、雨がしょぼしょぼ降っていました晩がた、おかしな比丘尼の女行者がひょっくりとやって参りましてな――」
「なにッ、女行者とな! 美人だったか!」
「へえい。目のさめるほど美しい比丘尼の行者でございましたが、ひょっくり、やって参りまして、いま通りかかりに見たのじゃが、おまえの家の屋のむね妖気ようきがたちのぼっているゆえ、ほっておいたら恐ろしい災難がかかってくるぞ、とやにわにこのようなことを申しましたのでな、家内もてまえもそういうことは特別かつぎ屋でございますゆえ、何がそんなあだをするのでございましょうと尋ねましたら、気味のわるいこともあればあるものではござりませぬか。この屋敷には五代まえから白へびが主となって住んでいるはずじゃが、今まで一度も供養をせずにほっておいたゆえ、それがお怒りなすったのじゃ、とこんなことを申すんですよ。でも、そんなへびは祖先代々お目にかかったという話さえも承ったことがございませんゆえ、半信半疑に聞いておりましたところ、疑うならばお呼び申してしんぜようと申しまして、なにやら呪文じゅもんのようなことを二言三言おっしゃいましたら、二尺ばかりのまっしろいへびが、ほんとうに縁側からにょろにょろとはいってきたんでございますよ!」
「それで、いかがいたした。災難のがれに、娘を供養にあげろと申しおったか!」
「へえい。供養金を百両と、娘の千恵めを五日間お比丘尼さまのご祈祷所きとうじょにおこもりさせたら、へび静めができると、このようなことを申しましたゆえ、どんな災難がござりまするか、つまらぬあだをされてはと震え上がりまして、おっしゃるとおりにしましたところ、奇態ではござりませぬか、お祈祷所はそのままでございましたが、ただいま行ってみますると、娘もお比丘尼さまもどこへ行ったものやら、かいもくあとかたも見えないのでござります」
「綿半とやら、そちも同様だったか」
「へえい。一日だけてまえのほうが早いだけのことで、何から何までそっくりでござりました。ほかのものならそれほどもぎょうてんいたしませぬが、見たばかりでも気味のわるい白へびがにょろにょろ庭先へはい出してまいりましたゆえ、てまえも、家内も、娘のお美代もすっかりおじけたちまして、いうとおり百両さしあげ、やっぱりおこもりにつかわしましたのでござります」
「その間に祈祷所とやらへ、様子見に参ったことはなかったか」
「おきれいなお比丘尼さまでござりましたゆえ、安心しながらきょうまでお預け放しにしておいたのでござります」
 奇怪も奇怪! ぶきみもぶきみ! 事実はがぜんここにいたって妖々ようようと、さらにいっそうの怪奇ななぞと疑雲に包まれ終わったかと思われましたが、しかし、両名の陳述を聴取するや同時、さえざえとさえまさったことばが、ずばりと名人の口から言い放たれました。
「おろか至極な親どもだな! へび使いの比丘尼小町に、たいせつな娘をしてやられたぞッ」
「えッ! では、では、娘をかたり取るために、そんな気味のわるい長虫を使ったのじゃとおっしゃるのでござりまするか」
「決まってらあ。小へびのうちから米のとぎじるで飼い育てたら、どんなへびでも白うなるわ!」
「でも、呪文じゅもんを唱えましたら、それを、合い図ににょろにょろとはい出したのが、奇態ではござりませぬか!」
「だから、愚かな者どもじゃと申しているんだッ。前もって縁の下にでも放しておいて、使い慣らした白へびを呼び出したんだッ」
「ならば、娘の身にもなんぞ異変が起きているのでござりましょうか! かたりかどわかしたうえで、どこぞ遠いところの色里へでも売り飛ばしたのでござりましょうか!」
「相手はへびと一つ家に寝起きしている比丘尼行者だ。もっとむごたらしいめに会っているかもしれんぞッ。祈祷所とか申したところは、遠いか、近いか!」
「湯、湯島の天神下でござります」
「じゃ、伝六ッ」
「…………」
「伝六ッといっているのに、聞こえねえか!」
「き、聞こえますよ、聞こえますよ。ちゃんと聞こえているんですが、どうせのことなら、ゆうべの式部小町を先にかぎ出しておくんなせえな、生得あっしにゃ、長虫ってえやつがあんまりうれしくねえんでね。話きいただけでも、目先にちらついてならねえんですよ」
「忙しいやさきに、よくもたびたび手数のかかるこというやつだな! その式部小町もいっしょにしてやられているから、急いで駕籠呼んでこいといってるんだッ」
「えッ。じゃなんですかい! 河童権に一服盛りやがったのも、おんなじ比丘尼小町のへび使いのその女行者だというんですかい!」
「決まってらあ! 捨てておいたら、三人の小町娘が生き血を吸いとられてしまうかもしれねえんだから、早いところしたくをしたらいいじゃねえか! へびがこわかったら、よろいでもかぶとでもかぶってこい!」
 いっているまに、まめやかなお公卿さまがまめまめしい働きでした。
「駕籠なら三丁表につれてめえりましたよ」
「そうかみろ! のどかなあにいに、ヒリリと一本、小粒の辛いところを先回りされたじゃねえか! じゃ、そっちの町人衆! 青ざめていねえで、早く乗りなよ」
 きくだに妖艶ようえん、その面影もさながらに彷彿ほうふつできるへび使いの美人行者、そもなんの目的をもって三人の小町娘をさらい去ったか、疑問はただその一点! 日は旱天かんてん、駕籠は韋駄天いだてんほりばた沿いをただ一路湯島に駆け向かいました。


 

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