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業平文治漂流奇談(なりひらぶんじひょうりゅうきだん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-7 10:54:35  点击:  切换到繁體中文

 

  九

 文治は突然(いきなり)おあさの髻(たぶさ)を取って二畳の座敷へ引摺り込み、此の口で不孝を哮(ほざ)いたか、と云いながら口を引裂(ひっさ)き肋骨(あばらぼね)を打折(ぶちお)り酷(ひど)い事をしました。暫(しばら)くすると障子を開け、顔色を変えて出て参り、老母の前に手をついて、
 文「お母(っか)さま、あなたの禍(わざわい)は文治郎が只今断ちました、喜代之助殿お帰りがあったら、文治郎が参って御家内を手込みに殺しましたと左様お仰(っし)ゃって下さい、嘸(さぞ)貴方(あなた)は御残念でございましたろう、早く御全快になって些(ち)とお遊びに入っしゃい、左様なら」
 と云って帰ったから、母親は驚いている処へ藤原喜代之助が帰って参り、右の次第を聞き、怒(おこ)ったの怒らないのと云うのではありません。予(かね)て文治と云う奴は、腕を突張(つッぱっ)て喧嘩の中や白刃(はくじん)の中へ飛込むと云う事は聞いて居(お)ったが、仮令(たとえ)何(ど)のような儀があっても人の女房を手ごめに殺すとは捨置きにならん、拙者も元は右京の家来、二百六十石を取った藤原喜代之助、此の儘捨置きにはならん、と云って大小を取出し、黒ペラの怪しい羽織を着、顔色変えて文治郎方の玄関へ係り、
 喜「頼む/\」
 森「お出でなせい、何(なん)でげす」
 と藤原の顔を見ると様子が違っているから、少し薄気味が悪くなり、後(あと)に下って、
 森「あの/\生憎(あいにく)旦那はお留守でござえやすが、何(なん)の御用ですか」
 喜「御不在とあらば止(や)むを得ん、御老母様にお目に懸りたい、藤原喜代之助でござる、御免を蒙(こうむ)る」
 と云いながら提(ひっさ)げ刀(がたな)でズーッと通りましたから、森松は文(ふみ)の取次をした事が露顕したか、立花屋で御馳走になって二分貰った事が顕(あら)われやしないかと思って気を揉(も)んでいると、喜代之助は老母の前へピタリッと坐ったが、老母には様子が分りませんから、
 母「おや/\これは好(よ)くいらっしゃいました、生憎文治郎は不在でございますが、何御用でございますか、私(わたくし)迄御用向を仰しゃり聞けを願います、お母様(かゝさま)も御不快の御様子でございまして、一寸(ちょっと)伺いたく思いましたが、私(わたくし)も寄る年で出無性(でぶしょう)になりまして、つい/\伺いませんがお加減は如何(いかゞ)でございます」
 喜「はい、御老母様のお耳に入れるのも些(ち)とお気の毒だが、今日(こんにち)手前家内あさが母に対して不孝を致したでござる、然(しか)るところ文治郎殿がおいでになって、不孝な奴だと云って口を引裂(ひっさ)き、肋骨を打折(ぶちお)り、打殺(うちころ)してお帰りになったが怪(け)しからぬ訳じゃアございませんか」
 母「はい、それはまア飛んだ訳で、何(なん)とも申そう様(よう)がございません」
 喜「手前も驚きました、なにそれは殺しても宜しい、はい殺しても宜しい訳があればこそ殺したろう、文治郎殿も気狂(きちが)いでないから主意があって殺したろうから、主意が立てば宜しいが、主意が立たんければ手前も武士でござる、文治郎殿の首を申受ける心得で参った、はい」
 母「誠に何(なん)とも申そう様もございません、嘸(さぞ)御立腹でございましょう、彼(あ)の通りの者で、やゝも致しますると人様に手出しを致す事がございまして、若年(じゃくねん)の折柄(おりから)確(しか)と意見を致したことはございましたが、此の度(たび)の事には実に呆(あき)れ果てまして何(なん)ともお詫のしようがございません、彼(あ)の様な乱暴な子を持った母は嘸心配であろうと私(わたくし)の心を御不愍(ごふびん)に思召(おぼしめ)して、御内聞のお話にして下されば多分の貯(たくわ)えもございませんが、所持して居ります金子は何程でもあなた様へ」
 喜「いえ/\お黙りなさい、お前さんも武士の家にお生れなすった方ではないか、金を貰って内済に出来ますか、只主意が立てば宜しい、はい主意が立たんければ家内あさの命と文治郎殿の命と取換(とりかえ)るばかりで、はい」
などと顔色を変えている処へ文治郎が帰って参りました。
 森「旦那、うっかり入(へい)っちゃアいけませんよ」
 文「何を」
 森「お前さんは大変な事をやって、驚きましたねえ、私(わっちゃ)アまご/\しているんだ、お前さんは藤原のお内儀(かみ)さんの口を引裂(ひッつァ)いて殺しましたかえ」
 文「うん、先程(さきほど)殺した」
 森「そんな手軽く云っちゃア困りやすねえ、藤原さんが顔色を変えて来て、どう云う訳で殺した、お前も武士、己(おれ)も武士だ、己の女房を殺されて此の儘じゃア帰(けえ)られねえ、男が立たねえから文治郎の命と取換(とりけ)えるぶんだ、仕事は早いのがいゝって奥へ坐り込んで動かねえから、お母(っか)さんが金を出して内済(ねいせい)にしようというと、士(さむらい)に内済はねえって、取っても付けねえ処だから、今お前さんが顔を出すと直(すぐ)に斬り掛けるに違(ちげ)えねえ、斬り掛られ黙って引込(ひっこ)んでる人じゃアねえからちゃん/\斬合(きりあい)を初めるでしょう、そうしてお母(っか)さんの身体へ疵(きず)でも付けると大変だから、お前さんは二三日(ち)身を隠して下せえ」
 文「身を隠す訳にはいかん」
 森「そうして気の落著(おちつ)いた時分、どうせ仕舞(しめえ)は内済(ないせい)だから人を頼んで訳を付けやしょう」
 文「そんな事は出来ん、お母(っか)さんをこれへお呼び申せ」
 森「お母さん/\」
 文「もっと大きな声をして」
 森「お母さん/\これが帰りました」
 と親指を出して招くから、母は文治郎が帰ったなと思ってそれへまいり、
 母「能くのめ/\と私の前へ来た、只今帰ったと云います」
 文「飛んだ事がお耳に入って文治郎も申し訳がございません、藤原親子の為を思いまして、お母(っか)さまには不孝でございますが、文治郎命を捨てゝ悪婦の命を断ちました、決して逃げ隠れは致しません、一言(いちごん)藤原に申し聞けたい事があります、あなたがこれにお在(いで)になると御心配になりますから、おかやを連れて婆(ばあ)やの所へでもおいでなすって」
 母「いや参りません、人を殺して云訳(いいわけ)が立ちますか、なぜ悪い事があれば喜代之助殿に届けて事をせん、それでは云訳は立ちません、はい先方(むこう)様が捨て置かんで、私も武士だと云って抜いて斬り付ければお前も引抜いて立合うだろう、お前が斬り殺されるのは自業自得だが、又先方様を殺せば二人の人殺しだから手前の命はあるまい、手前は匹夫(ひっぷ)の勇を奮(ふる)って命を亡(な)くしても仕方がないが、跡はどうする」
 文「重々相済みません、一応申聞(もうしき)けた上で存分になる心得でございます、御立腹ではございましょうが少々の間彼方(あちら)へ、森松やお母様(っかさま)をお連れ申せ」
 森「お母さん、旦那だって馬鹿でも気狂いでもねえから無闇に人を殺す気遣いはねえ、何か云訳があるんでしょうから鳥渡(ちょっと)此方(こっち)へおいでなせえ」
 と無理無体に森松とおかやが手を把(と)って次の間へ連れて参ります。文治は左の手にあった小脇差を右の手に持替えて奥座敷へ入りますから、
 森「旦那え/\」
 文「なんだ、騒々しい」
 森「癇癪(かんしゃく)を起しちゃアいけませんよ、彼奴(あいつ)が抜いたらホカと逃げてお仕舞いなせえ、何(なん)でも逃げるが勝だ、然(そ)うして向(むこう)の気が落著(おちつ)いた処で人を以(もっ)て話をすりゃア、とゞの詰りは金だ/\」
 文「宜しい、黙っていろ」
 と少しも騒がず藤原の前へ出まして、
 文「嘸(さぞ)お待兼ね、只今逐一母から承りました処、重々の御立腹、なれども人様の御家内を手込みに殺すには段々の訳があっての事、貴方に於(おい)ても左様思召すでござろうが、たった一人の御老母とあなたの為に文治郎命を捨てゝ致しました、あなたは毎日田原町へお内職においでになって御存じあるまいが、あなたのお留守中に御家内が御老母を打ち打擲するのみならず、此の程は食(しょく)を上げないことを御承知はあるまいがな」
 喜「黙れ、仮令(たとえ)何様(なによう)なる事があろうとお前方の指図は受けん、悪い事があれば私(わし)の家内だから私(わし)が手打に致そうと捻(ねじ)り首にしようと私(わし)がする、何(なん)で私(わし)に断らんでなすった」
 文「まア/\、それは至極御尤(ごもっと)もの話で、文治郎も気狂いでないから貴方に断らんでする訳はないが、此の程は御老母にとんと食(しょく)を与えぬので、御老母は餓死なさるより外(ほか)に仕方がない、貴方がお宅へ帰って見れば御老母が食べ過ぎて困ると云って親子の間中(あいなか)を裂くようにするから、御老母は堪えかねて、喜代之助はそれ程ではないが、倶(とも)に私(わし)を酷(ひど)く扱い折檻するゆえ、此の上は死ぬより外はないと仰しゃるのを聞いて、長家中の者がお気の毒に思い、折々(おり/\)食物(たべもの)を進ぜました、今日(こんにち)も納豆売の彦六爺(おやじ)が握飯(むすび)を御老母に上げて居(お)る処へ、おあさ殿が帰って来て、其の握飯を御老母に投付け、彦六爺に悪口(あっこう)を云い、遂に御老母に皿を投付け、おつむりに疵が出来ました、未(ま)だそれにても飽き足らず御老母を足蹴(あしげ)に致すのを文治郎見ました故に、あゝ怪(け)しからん不孝非道な女と赫(かっ)と致して飛込み、殺す気はなかったが、怒りに乗じ思わず殺す気になったのは私(わし)が殺したのではなく全く天が彼(か)の悪婦の行いを赦(ゆる)さず、文治郎の手を借りて殺させたので、天の然(しか)らしむる事かと存じます」
 喜「黙れ、天が殺したとは何(なん)だ、左様な云いわけで済むか、若(も)し左様な事があったら何ゆえ私(わし)に其の事を忠告致さん、私(わし)も浪人しても大小は挟(たばさ)んで居(お)る、お前の手は借らん」
 文「いや/\あなたには殺せない、何故殺せんと云うに、あなたが殺すなれば三年連添(つれそ)って居(お)るから疾(とっく)に殺さなければならんに、貴方は欺(だま)されて居(お)るから、私(わし)が其の事を忠告して家(うち)へ帰れば、おあさどのが又毎(いつ)もの口前(くちまえ)で、それは斯(こ)う云う訳で彼(あ)れは斯う云う訳で文治郎が聞違えたのだ、私はお母(っか)さまに孝行を尽していると旨く云いくるめると、あなたは毎もの如くあゝ左様かと又欺されて殺すことは出来ない、そうすると御老母は餓死致され、仮令(たとえ)手を下さなくも貴方が御老母を殺したと同じことになるから、右京様のお屋敷に聞えても能くない、浪人者の文治郎が身を捨てゝも藤原母子(おやこ)を助けたいと思って斯様(かよう)に致しました、元より人を殺せば命のないのは承知して居ります、就(つい)ては老体の母を遺(のこ)して死にますから何卒(どうぞ)不愍(ふびん)と思召して目を掛けて下さい、おあさどのゝ悪い事は未だそればかりではない、私に附け文(ぶみ)をした事は貴方は知りますまい、いやさ艶書(えんしょ)を送った事は知りますまいがな」
 喜「何(なん)と仰しゃる」
 文「森松、此の間の文(ふみ)を持って来い」
 森「はい、お前さんの所の御新造を悪く云うのじゃアねえが、私(わっち)に手拭や何かくれて此の間立花屋へ連れて行って、お前さんと別れて寡婦(やもめ)暮しになったら文治郎さんを連れて来てくれと云って文(ふみ)を頼まれたから、旦那の所へ持って来るとポカ/\と二つ殴られました」
 文「喋(しゃべ)るな…此の文(ふみ)は開封致さずに置きましたから御覧下さい」
 と云われ藤原は手に取って見ると、文治郎さま参るあさより、とずう/\しく名宛(なあて)が書いてあり、以前は勤めをしたあけびしのおあさですから手は能(よく)はありませんが、書馴れて居りますから色気があって綺麗に書いてあります。其の文(ふみ)に此方(こちら)へ越して来た時からお前さんを見染めて忘れる暇はないゆえ、藤原と別れて独りものになりましたらば、切(せ)めてお盃の一つも戴きたい、亭主のある身の上で斯様(かよう)な事を申すのは浮気な女と思召しもありましょうが、喜代之助は真実(ほんとう)の亭主ではない、只今まで藤原母子(おやこ)の者は私(わたくし)から貢いで居りました、藤原の不実はこれ/\お母(ふくろ)の心の悪い事はこれ/\で、一体喜代之助が屋敷を逐出(おいだ)されたのは私(わたくし)故ではなく、全体了簡がけちんぼで、意地が悪くって、野呂間(のろま)だからとか何(なん)とか悉(こと/″\)く書いてあるから、藤原は文(ふみ)を読下(よみくだ)して膝へついた手がぶる/\と慄(ふる)えて居りました。

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