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南北の東海道四谷怪談(なんぼくのとうかいどうよつやかいだん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-26 15:05:18  点击:  切换到繁體中文


       一一

 伊右衛門は秋山長兵衛を伴につれて鷹狩に往っていた。二人は彼方此方あっちこっちと小鳥を追っているうちに、鷹がそれたので、それを追って往った。
 空には月が出てみちぶちには蛍が飛んでいた。其処に唐茄子とうなすを軒にわした家があって、栗丸太の枝折門しおりもんの口には七夕たなばたの短冊竹をたててあった。
 長兵衛がそれと見て中をのぞきに往った。中には縁側付のちん座敷があって、夏なりの振袖を※(「女+朱」、第3水準1-15-80)きれいな娘が傍においた明るい行燈の燈で糸車を廻していた。長兵衛は伊右衛門にそれを知らせた。
「美しい女が糸車を廻しております」
「なに美しい女」
「さようでござります」
「それでは其の方が案内して、鷹のことを問うてみぬか」
 そこで長兵衛が中へ入って往った。
「鷹がそれて行方が判らなくなったが、もしか此方こちらへ」
 鷹は行燈の上にとまっていた。娘はにっとして鷹を見た。
「此処におります」
 長兵衛は驚いた。
「いや、こいつは妙々みょうみょう
 伊右衛門は長兵衛の知せによって中へ入り、やがて腰の瓢箪ひょうたんの酒を出して飲みだした。伊右衛門は娘にきつけられた。
「そなたの名は」
 其の時一枚の短冊が風に吹かれてひらひらと飛んで来た。娘はそれをって、
「わたしの名はこれでござります」
 と云ってさしだした。それには、「瀬をはやみ岩にせかるる瀧川の」と百人一首の歌が書いてあった。伊右衛門はくびをかたむけた。
「これが其方そちの名とは」
「岩にせかるる其の岩が、私の名でござります」
 伊右衛門はやがて娘を自由にして帰ろうとした。と、娘がその袖を控えたがその娘の顔はお岩の顔であった。
「あ」
 伊右衛門は飛びあがった。同時に伊右衛門の手にしていた鷹が大きな鼠になって伊右衛門に飛びかかって来た。
「さてこそ執念」
 伊右衛門は刀を抜いた。そして、無茶苦茶になって其のあたりりはらっているうちに、の糸車が青い火の玉になってぐるぐると廻りだした。

       一二

「これこれ、またおこりましたか。みんながいますぞ、いますぞ」
 伊右衛門ははっと思って眼をあけた。伊右衛門はお岩の亡霊に悩まされるので、蛇山へびやま庵室あんしつこもって、浄念じょうねんと云う坊主に祈祷きとうしてもらっているところであった。
 外には雪が降っていた。伊右衛門は行燈に燈を入れ、それから門口の流れ灌頂かんじょうの傍へ往って手桶の水をかけた。
「産後に死んだ女房子の、せめて未来を」
 するとかけた水が心火しんかになって燃え、其の中からお岩の嬰児あかんぼを抱いた姿があらわれた。
 伊右衛門は驚いて庵室の内に入った。中にはさっき狂乱して引きちぎった紙帳しちょうがばらばらになっていた。お岩の亡霊もいて入って来た。伊右衛門はふるえあがった。
「お岩、もういいかげんに成仏じょうぶつしてくれ」
 と、お岩がゆらゆらと寄って来て、抱いていた嬰児を伊右衛門の前へさし出した。
「死んだと思ったら、それでは其方そちが育てていたのか」
 伊右衛門はうれしそうにその嬰児をお岩の手から執った。同時にたくさんの鼠が出た。伊右衛門は驚いたひょうしに抱いていた嬰児を執り落した。嬰児は畳の上にずしりと云う音をたてた。それは石地蔵であった。其の時傍にいた母のおくまがきゃっと云ってのけぞった。お熊の咽喉ぶえにお岩が口をやっているところであった。
「おのれ」
 伊右衛門は刀を抜いて其のあたりを狂い廻ったが、気がいた時には、じぶんを捕えに来ている大勢の捕手を一人残らず斬り伏せていた。伊右衛門は其のまま其処そこを走り出た。と、其の眼の前へ、
「伊右衛門待て」
 と云って駈け出して来た者があった。それは与茂七であった。
「其の方は与茂七か」
 伊右衛門はきっとなって身がまえした。与茂七は刀を脱いた。
「お袖のためには義理の姉、お岩のかたきじゃ、覚悟せよ」
「なにを」
 伊右衛門は与茂七を斬り伏せようとした。と、何処からともなく又数多たくさんの鼠が出て、伊右衛門のふるっている刀にからみついた。其のひょうしに伊右衛門は刀をり落した。其処を与茂七が、
「おのれ」
 と云って肩からはすに斬りおろした。伊右衛門の体はあけに染まって雪の上へ倒れた。





底本:「怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集」春陽文庫、春陽堂書店
   1999(平成11)年12月20日第1刷発行
底本の親本:「新怪談集 物語篇」改造社
   1938(昭和13)年
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:Hiroshi_O
校正:noriko saito
2004年9月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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