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寒山落木 巻一(かんざんらくぼく まきいち)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-10-26 9:13:03  点击:  切换到繁體中文

寒山落木
明治十八年ヨリ同二十五年マデ


第一期


明治十八年 夏郷里松山ニ歸ル○嚴嶋ニ遊ビ祭禮ヲ觀ル○九月上京
仝 十九年 夏久松定靖公ニ扈從シテ日光伊香保ニ行ク○九月歸京
仝  廿年 春腸胃ヲ病ム上野ヲ散歩ス○夏歸省○九月上京
仝 廿一年 夏牛嶋月香樓ニ居ル○九月歸京常盤會寄宿舍ニ入ル
仝 廿二年 四月水戸ニ遊ブ徃復一週間○五月咯血 七月歸省九月上京不忍池畔ニ居ル後再ビ常盤會寄宿舍ニ入ル 十二月歸郷
仝 廿三年 一月上京七月歸郷 九月三井寺觀音堂前考槃亭ニ居ルコト七日直チニ上京
仝 廿四年 春房總行脚十日○六月木曾ヲ經テ歸郷 九月上京途中岡山寒懸ニ遊ブ○秋大宮ニ居ルコト十日 冬駒籠ニ居ヲ遷ス○川越地方ニ遊ブコト三日
明治廿五年 一月燈火十二ケ月ヲ作ル其後何々十二ケ月ト稱スル者ヲ作ルコト絶エズ 春根岸ニ遷ル 夏歸省ス 九月上京 十一月家族迎ヘノタメ神戸ニ行ク京都ヲ見物シテ上京○此年夏ヨリ日本紙上ニ投稿十二月ヨリ入社
[#改頁]


明治十八年


梅のさく門は茶屋なりよきやすみ
夕立やはちすを笠にかぶり行く
ねころんて書よむ人や春の草
小娘の團扇つかふや青すだれ
木をつみて夜の明やすき小窓かな
朝霧の中に九段のともし哉
初雪やかくれおほせぬ馬の糞
[#改頁]


明治十九年


一重づゝ一重つゝ散れ八重櫻
[#改頁]


明治二十年


ちる花にもつるゝ鳥の翼かな
春雨や柳の絲もまじるらん
散る花のうしろに動く風見哉
鶯や木魚にまじる寛永寺
胡蝶飛ぶ簾のうちの人もなし

【谷中にある清水うしの墓にもうでゝ】
一枝やたましひかへす梅の花

【同 學生よりあひて人の目的を投票にて定めける時】
それ/\に名のつく菊の芽生哉

【同 觀音堂】
むら鳥のさわぐ處や初櫻
散る梅は祗王櫻はほとけ哉

【上野】
花の雲かゝりにけりな人の山

【清水氏一周忌】
落花樹にかへれど人の行へ哉
ぬれ足で雀のあるく廊下かな
名月の出るやゆらめく花薄
けさりんと体のしまりや秋の立つ
茶の花や利休の像を床の上
甘干の枝村かけてつゞきけり
甘干にしたし浮世の人心
初汐やつなぐ處に迷ふ舟
夕立や一かたまりの雲の下
宵闇や薄に月のいづる音
親鳥のぬくめ心地や玉子酒
白梅にうすもの着せん煤拂
何もかもすみて巨燵に年暮るゝ
[#改頁]


明治二十一年


花に行く足に二日の灸かな
山燒くや胡蝶の羽のくすぶるか
見ればたゞ水の色なる小鮎哉
梅雨晴やところ/\に蟻の道
すつと出て莟見ゆるや杜若
萎みたる花に花さく杜若
底見えて小魚も住まぬ清水哉
木の枝に頭陀かけてそこに晝寐哉
蚊柱や蚊遣の烟のよけ具合
夕立の來て蚊柱を崩しけり
振袖をしぼりて洗ふ硯哉
女にも生れて見たき踊哉
萩ちるや檐に掛けたる青燈籠
西日さす地藏の笠に蜻蛉哉
鹿聞て出あるく人も歸りけり
一ひらの花にあつまる目高哉
海原や何の苦もなく上る月
くらがりの天地にひゞく花火哉
青/\と障子にうつるはせを哉
秋の蚊や疊にそふて低く飛ぶ
哀れにも來て秋の蚊の殺さるゝ
狼の聲も聞こゆる夜寒かな
不二こえたくたびれ※や隅田の雁
夕榮や雁一つらの西の空
片端は山にかゝるや天の川

【いとけなき頃よりはぐゝまれし嫗のみまかり給ひしと聞くに力を失ひて】
添竹も折れて地に伏す瓜の花
聲立てぬ別れやあはれ暖鳥
一夜妻ならであはれや暖鳥
雪よりも時雨にもろし冬牡丹
白露のおきあまりてはこぼれけり

【根津のあとにて】
明家やところ/\に猫の戀
[#改頁]


寒山枯木 明治己丑廿二年


高砂の松の二タ子が門の松
我庭に一本さきしすみれ哉
山の花下より見れば花の山
鳥なくや獨りたゝすむ花の奧
つくねんと大佛たつや五月雨
五月雨の晴間や屋根を直す音
つきあたる※一いきに燕哉

【村園門巷多相似】
燕や間違へさうな家の向き
白砂のきら/\とする熱さ哉
蓮の葉にうまくのつたる蛙哉
屋根葺の草履であがる熱哉
燕の飛ぶや町家の藏がまへ
七夕に團扇をかさん殘暑哉
秋風はまだこえかねつ雲の峰
一日の旅おもしろや萩の原
白露や原一ぱいの星月夜
茸狩や友呼ぶこゑも秋の風
おのが荷に追はれて淋し芒賣

【琴平】
木の緑したゝる奧の宮居哉
水鳥や蘆うら枯れて夕日影
澁※や行來のしげき道の端
※の實やうれしさうにもなく烏
澁※のとり殘されてあはれ也

【内藤先生等と言志會を結びし時】
澁※もまじりてともに盆の中

【鬼女腕を奪ひ去る圖に】
凩に舞ひあがりたる落葉哉
雪の跡さては酒屋か豆腐屋か

【傾城戀飛脚〔三句〕
  芒尾花はなけれとも世を忍ふ身の】
招く手はなけれど淋し枯薄

【こゝらあたりに見なれぬ女中】
いぶかしや賤が伏家の冬牡丹

【ものいはず顏見ずと手さきへなとさはつたら】
闇の夜は鼻で探るや梅の花

【袋井】
冬枯の中に家居や村一つ

【垂井】
雪のある山も見えけり上り阪

【京都】
祗園清水冬枯もなし東山
[#改頁]


明治二十三年(紀元二千五百五十年)


元日や一輪開く福壽艸
盆栽に梅の花あり冬こもり
白雪をつんで小舟の流れけり
胡蝶飛び風吹き胡蝶又來る
蝶ふたつ風にもつれて水の上
蝶飛ぶや山は霞に遠くなる
櫻から人にうつるや山の風
若草や草履の裏に塵もなし
垣ごしに丁子の花の匂ひかな
一枝の花おもさうや酒の醉
傘に落つる櫻の雫かな
朧とは櫻の中の柳かな
人黒し朧月夜の花あかり
月落ちて鴉鳴く也花明り
牛飼も牛も眠るや桃の花 ノ句 繋がれて牛も眠るやもゝの花
[#「ノ句 繋がれて牛も眠るやもゝの花」は「牛飼も牛も眠るや桃の花」の下にポイントを下げて2行で]
あたゝかな雨がふるなり枯葎
春の月一重の雲にかくれけり
夕月や簾に動く花の影
家根舟の提灯多し朧月

【向嶋】
土手三里花をはなれぬ月夜哉
菜の花やはつとあかるき町はつれ
家の上に雲雀鳴きけり町はづれ
半日は空にあそぶや舞雲雀
みなし子のひとりで遊ぶ雛哉
駒の尾に春の風吹く牧場哉
落したか落ちたか路の椿かな
海棠や檐に鸚鵡の宙がへり
一輪の牡丹咲きたる小庭哉
桃さくや三寸程の上り鮎

【梅見の記の後に題す】
鶯やとなりつたひに梅の花
紫の水も蜘手に杜若
瓜小屋にひとり肌ぬぐ月夜哉
稻妻にひらりと桐の一葉哉
散りやすきものから吹くや秋の風
稻妻にうち消されけり三日の月
朝顏にわれ恙なきあした哉
ほの/″\に朝顏見るや※一重
朝顏や我筆先に花も咲け
夕暮に朝顏の葉のならびけり
朝顏や氣儘に咲いておもしろき
朝顏や夢裡の美人は消えて行く
その鐘をわれに撞かせよ秋の暮
遊ぶ子のひとり歸るや秋のくれ
魂祭ふわ/\と來る秋の蝶
水流れ芒招くやされかうべ
月落ちて灯のあるかたや小夜砧
名月や角田川原に吾一人
名月や美人の顏の片あかり
名月やともし火白く犬黒し
湖やともし火消えて月一ツ
明月は瀬田から膳所へ流れけり

【三井寺】
我宿にはいりさう也昇る月
凩や迷ひ子探す鉦の音
[#改頁]


明治廿四年辛卯年(紀元二千五百五十一年)


〔廿四年 春〕

うそ/\と蝨はひけり菴の春
元朝や虚空暗く只不二許り
のら者もあつてめでたし御代の春
猫の顏もみがきあげたり玉の春
初空や烏は黒く富士白し
紅梅は娘たのんで折らせけり
紅梅や翠簾のすき影衣の音
紅梅や垣をへだてゝ娘同士
梅さくや藁屋四五軒犬の聲
紅梅はまばら也けり窓の影
水鳥のつゝき出したる根芹哉
制札にちりかゝりけり山櫻

【植半】
八重櫻咲きけり芋に蜆汁
蓮花草我も一度は小供なり
草籠をおいて人なし春の山
兩側の竹藪長し赤椿
馬の背に手を出して見る椿哉
一むねは花にうもるや赤椿
女にも生れて見たし花菫

【行脚の笠に題す】
道づれは胡蝶をたのむ旅路哉

【回文】
松の戸や春を薫るは宿の妻
白魚や氷の中に生れけむ
神代より誰か教へて猫の戀
哥よまばやさしかるべきに猫の戀
戀猫はあらきこゑさへあはれなり
内でなけば外でもなくやうかれ猫

【古白よりある人の聟養子に行きたることをいひおこせし返しに】

【小糠三合あれはとは昔語りに殘りたれとこれは又打て變つて聟殿の權柄】
淺ましやもらふた日より猫の戀
あとさきもしらぬ心や花に鳥
二三日はちりさかりけり山さくら
花ちるや寂然として石佛
あくびした口に花ちる日永哉
ならんたる鳥居の赤し山櫻

【品川】
上總までかちわたりせん汐干潟

【市川】
落ち行けば隣のくにや揚雲雀
うつ杖のはづれて嬉しとぶ胡蝶
鶯の聲の細さよ岨五丈
うくひすや落花紛々たり手水鉢
わらじの緒結ぶや笠にとぶ胡蝶
馬ほく/\吹くともなしの春の風
陽炎や南無とかいたる笠の上
菜の花の中に道あり一軒家
鶯や山をいづれば誕生寺
七浦や安房を動かす波の音
七情の外の姿や涅槃像
[#改頁]

廿四年 夏

【田舍】
屋のむねのあやめゆるくや石の臼
水汲んだあとの濁りや杜若
花ひとつ折れて流るゝ菖蒲かな
杜若畫をうつしたる溝のさび
やさしくもあやめ咲きけり木曾の山
一日の旅路しるきや蝸牛

【蝸牛 結字 水】
雨水のしのぶつたふやかたつぶり
やすんたる日より大工の衣かへ
うたゝねの本落しけり時鳥
郭公のきの雫のほつり/\
目にちらり木曾の谷間(ハザマ)の子規
ほとゝきす木曾はこの頃山つゝじ

【輕井澤】
山々は萌黄淺黄やほとゝきす
折りもをり岐岨の旅路を五月雨

【祈晴】
はれよ/\五月もすぎて何の雨
こと/″\く團扇破れし熱さ哉

【都の人を伴ふて郊外に行く】
春 君が代の苗代見せう都人[#「春」は上部に出ている]
ふきかへす簾の下やはすの花

【ある人のみまかりしをいたみて】
此上にすわり給へとはすの花
のびたらで花にみじかきあふひ哉
屏の上へさきのほりけり花葵
手水鉢横にころけて苔の花

【少年の寫眞に題す】
竹の子のきほひや日々に二三寸

【蟠松子の村莊をいづる時】
門さきにうつむきあふや百合の花
眞帆片帆どこまで行くぞ青嵐
紫陽花や壁のくづれをしぶく雨
何代の燈籠の苔か雪の下

【信州山中】
鶯や野を見下せは早苗とり
鰻まつ間をいく崩れ雲の峯
藻の花や鶺鴒の尾のすれ/\に
岩々のわれめ/\や山つゝじ

【舟下岐蘇川】
下り舟岩に松ありつゝじあり

【蝉 文字結 頭】
腦病の頭にひゞくせみの聲
せみのなく木かげや馬頭觀世音
涼しさや行燈消えて水の音
涼しさや葉から葉へ散る蓮の露
夕立や松とりまいて五六人
思ひよらぬ木末の聲やくらべ馬
夕顏の露に裸の男かな
雨乞の中の一人やわたし守

【梦中清水といふ題を得て】
夕立の過ぎて跡なき清水哉
ラムネの栓天井をついて時鳥
[#改頁]

明治廿四年 秋
時候 人事 天文 地理

ふつくりと七面鳥のたつや秋
鷄のゆかへ上りぬ秋のくれ
床の間の達磨にらむや秋のくれ

【達磨圖】
何と見たぬしの心ぞあきのくれ
草も木も竹も動くやけさの秋

【あるおそろしき女を】
稻妻のかほをはしるや※のくれ
案山子ものいはゞ猶さびしいそ秋の暮
をかしうに出來てかゞしの哀也
汝かゞしそもさんか秋の第一義
送火や朦朧として佛だち
送火や灰空に舞ふ秋の風
秋もはや七日の月のたのもしき
さる程に秋とはなりぬ風の音
高黍や百姓涼む門の月
並松はまばら/\や三日の月

【三津いけすにて】
初汐や帆柱ならぶ垣の外
蒔繪なんぞ小窓の月に雁薄

【畑中村老松】
順禮の夢をひやすや松の露

【川の内近藤氏に宿りて】
山もとのともし火動く夜寒哉
君が代や調子のそろふ落水
婆々いはく梟なけば秋の雨
名月や松に音ある一軒家

【留別】
これ見たか秋に追はるゝうしろ影

【音頭瀬戸】
秋風や伊豫へ流るゝ汐の音

【嚴嶋】
ゆら/\と廻廊浮くや秋の汐

【松山城】
松山や秋より高き天主閣

【小豆嶋寒懸】
頭上の岩をめぐるや秋の雲

【當年二十五歳】
痩せたりや二十五年の秋の風

【待戀】
待つ夜半や月は障子の三段目

【十五夜百花園をおとづれしに戸を閉ぢたれば】
名月や叩かば散らん萩の門

【龜戸天神】
秋風やはりこの龜のぶらん/\
秋に形あらば糸瓜に似たるべし
行燈のとゞかぬ松や三日の月
觀念の耳の底なり秋の聲
夕月のやゝふくれけり七八日
薄より萱より細し二日月
旅寐九年故郷の月ぞあり難き

【大宮驛の醫師がり行きて】
大宮に秋さびけらし醫者の顏
秋の風捨子の聲に似たる哉
日は西におしこまれけりけふの月
山の秋の雲徃來す不動尊
原中や野菊に暮れて天の川
順禮は花のうてなと歌ひけり秋の暮
児二人並んで寐たる夜寒哉
二軒家は二軒とも打つ砧哉
月の秋菊の秋それらも過ぎて暮の秋
神さびて秋さびて上野さびにけり
一つ家に泣聲まじる砧哉
狼の人くひに出る夜寒哉

【岡山後樂園 三句】
鶴一つ立つたる秋の姿哉
はつきりと垣根に近し秋の山
秋さびた石なら木なら二百年

【豐橋客舍】
次の間に唄ひ女の泣く夜長哉

【歸京】
都には何事もなし秋の風

【犬骨を得たり】
風を秋と聞く時ありて犬の骨

【常盤會寄宿舍二號室にて】
火ちら/\足もとはしる秋の風

【川越客舍】
砧うつ隣に寒きたひね哉
猿曳は妻も子もなし秋のくれ
猿ひきを猿のなぶるや秋のくれ
秋のくれ壁見るのでもなかりけり

【贈高濱虚子】
三日月はたゞ明月のつぼみ哉
稻妻に行きあたりたる闇夜哉
どこで引くとしらで廣がる鳴子哉

廿四年 秋 動物

秋の蚊や親にもらふた血をわけん
横窓は嵯峨の月夜や蟲の聲
浮樽や小嶋ものせて鰯引
辻君のたもとに秋の螢かな
小男鹿の通ひ路狹し萩の風
落鮎や小石/\に行きあたり
秋のくれ鱸を釣れば面白し
あぜ道や稻をおこせば螽飛ぶ
秋の蚊を追へどたわいもなかりけり
日にさらす人の背中や秋の蠅
鈴蟲や露をのむこと日に五升
忘れたる笠の上なり石たゝき
蜩や椎の實ひろふ日は長き
蜻蛉やりゝととまつてついと行
わびしげに臑をねぶるや秋の蠅
追ひつめた鶺鴒見えず溪の景

廿四年 秋 植物

これ程の秋を薄のおさえけり
三日月の重みをしなふすゝきかな
石上の梦をたゝくや桐一葉
見てをればつひに落ちけり桐一葉

【山姥の圖】
奧山や秋はと問へばすゝきかな
朝※のひるまでさいて秋の行
折れもせで凋む木槿の哀れなり
    繩
馬つなぐ綱にこかるゝ木槿かな
[#「繩」は「綱」の右側に注記するような形で]
そよ/\とすゝき動くや晴るゝ霧
蜑か家のかこひもなしに蘆の花

【菊慈童圖】
九日も知らぬ野菊のさかり哉
城あとや石すえわれて蓼の花
はちわれて實をこぼしたる柘榴哉
氣車路や百里餘りを稻の花
奧山やうねりならはぬ萩のはな
萩薄秋を行脚のいのちにて
    さいてや赤しイ
葉も花になつてしまうか※珠沙花
[#「さいてや赤しイ」は「なつてしまうか」の右側に注記するような形で]
一、二を生し二、三を生す我亦香

【大宮氷川公園】
ふみこんで歸る道なし萩の原
葛花や何を尋ねてはひまわる
行く秋のふらさかりけり烏瓜
石女の鬼燈ちぎる哀れ也(嵐雪の句に 石女の雛かしつくそ哀也)
[#「(嵐雪の句に 石女の雛かしつくそ哀也)」は「石女の鬼燈ちぎる哀れ也」の下にポイントを下げて2行で、カッコはその2行を括る形で]

【氷川公園万松樓】
ぬれて戻る犬の背にもこぼれ萩
一句なかるべからずさりとてはこの萩の原
何の思ひ内にあればや蕃椒
まいた餌に※もどる菊畠
武藏野に月あり芒八百里
夕日さす紅葉の中に小村哉
痩村と思ひの外の紅葉哉

【十月廿四日平塚より子安に至る道に日暮て】
稻の香や闇に一すぢ野の小道

【翌廿五日大山に上りて】
野菊折る手元に低し伊豆の嶋
一枝は荷にさしはさむ菊の花
隣からそれて落ちけり桐一葉
落葉かく子に茸の名を尋けり
順禮の木にかけて行く落穗哉
[#改頁]

明治廿四年 冬

鐘つきはさびしがらせたあとさびし

【人之性善】
濁り井の氷に泥はなかりけり
木枯や木はみな落ちて壁の骨
小烏の鳶なぶりゐる小春哉

【(はせを忌)】
頭巾きて老とよばれん初しくれ
三日月を相手にあるく枯野哉
秋ちらほら野菊にのこる枯野哉
冬かれや田舍娘のうつくしき
夕日負ふ六部背高き枯野哉
埋火や隣の咄聞てゐる
雲助の睾丸黒き榾火哉
小春日や淺間の煙ゆれ上る
木枯やあら緒くひこむ菅の笠
順禮の笠を霰のはしりかな

【松山百穴】
神の代はかくやありけん冬籠
笹の葉のみだれ具合や雪模樣
しばらくは笹も動かず雪模樣
[#「笹の葉の」と「しばらくは」の句の上には、この二つの句を括る波括弧あり]

冬 動物

水鳥の四五羽は出たり枯尾花
枯あしの折れこむ舟や石たゝき
鴨ねるや舟に折れこむ枯尾花
[#「枯あしの」と「鴨ねるや」の句の上には、この二つの句を括る波括弧あり]
千鳥なく灘は百里の吹雪哉
水鳥のすこしひろがる日なみ哉
枯あしの雪をこほすやをしのはね
鷹狩や陣笠白き人五人
耳つくや下より上へさす夕日
賈島痩せ孟郊寒し雪の梅
枯あしや名もなき川の面白き
馬の尾に折られ/\て枯尾花

【田舍】
わらんべの酒買ひに行く落葉哉
順禮一人風の落葉に追はれけり
笘の霜夜の間にちりし紅葉哉
[#改頁]


明治廿五年


(廿五年)新年

【御題 旭出山】
不盡赤し筑波を見れは初日の出

【元日戀 課題】
初日の出隣のむすめお白粉未だつけず
死ぬものと誰も思はず花の春
御降の氷の上にたまりけり

【簔一枚笠一個簔は房州の雨にそほち笠は川越の風にされたるを床の間にうや/\しく飾りて】
簔笠を蓬莱にして草の庵
小松曳袴の泥も畫にかゝん

【義農神社】
初※も知るや義農の米の恩
元朝や皆見覺えの紋處

【乞食】
元朝や米くれさうな家はどこ
若水や瓶の底なる去年の水
烏帽子着て幣ふる猿や花の春
遣羽子をつき/\よける車哉
一羽來て屋根にもなくや初烏
蓬莱の山を崩すや嫁が君
蓬莱の松にさしけり初日の出
年玉に上の字を書く試筆哉
うつかりと元日の朝の長寢哉
元日と知らぬ鼾の高さかな
君が春箒に掃ふ塵もなし
袴着て火ともす庵や花の春
烏帽子着る世ともならばや花の春
[#改頁]

春 時候 人事

涅槃會や蚯蚓ちきれし鍬の先
かゝり凧奴は骨となつてけり
鶯の目を細うする餘寒かな
虻の影障子にうなる日永かな
鶯の根岸はなるゝ日永かな

【追善】
鳴さして鶯むせふ餘寒哉

織女(アヤハトリ)圖】
さゝかにの糸ひきのはす日永哉
行く春や大根の花も菜の花も
やす/\と青葉になりて夏近
行春や柳の糸も地について
涅槃會や何見て歸る子供達
烏帽子きた殿居姿の朧なり

【画賛】
面※の聲朧也春の陣
朧夜はお齒黒どぶの匂ひ哉
菎蒻ののびさうになる日永哉
長閑さや障子の穴に海見えて
猿曳も猿も見とれて傀儡師
人の世の工夫ではなし削り掛
ひよ/\と遠矢のゆるむ日永哉
うたゝねを針にさゝれる日永哉
永き日や菜種つたひの七曲り
駒鳥鳴くや唐人町の春の暮
死はいやぞ其きさらぎの二日灸
つく鐘を唖の見て居る彼岸哉
涅槃像胡蝶の梦もなかりけり
名をつけて鴇母にするや崩れ雛
此頃やまだのどかさもあそここゝ
此頃の夜の朧さや白き花
出代やまだ初戀のきのふけふ
水尾谷がしころちぎれし雛かな
ある時はすねて落ちけり凧
涅槃會の一夜は闇もなかりけり
涅槃像寫眞なき世こそたふとけれ
白き山青き山皆おぼろなり
出代りの英語をつかふ別れ哉
朧夜にくづれかゝるや浪かしら
のどかさや松にすわりし眞帆片帆
氣の輕き拍子也けり茶摘歌

春 天文

うぐひすの茶の木くゝるや春の雨
生壁に花ふきつける春の風
競吟 春風や井戸へはひりしつはくらめ[#「競吟」は上部に出ている]
春雨やよその燕のぬれてくる
馬子哥の鈴鹿上るや春の雨
青柳にふりけされけり春の雪

【神田大火】
陽炎や三千軒の家のあと
須磨を出て赤石は見えず春の月
初雷や蚊帳は未だ櫃の底
牛部屋に牛のうなりや朧月

【道後】
陽炎や苔にもならぬ玉の石
春雨に白木よごるゝ宮ゐかな
陽炎や草くふ馬の鼻の穴

春 地理

【虚子去年の草稿を棄きすてたりと聞て】
春の山燒いたあとから笑ひけり
競吟 ほく/\とつくしのならふ燒野哉[#「競吟」は上部に出ている]
 〃 さゝ波をおさへて春の氷哉[#「〃」は上部に出ている]
春の山やくやそこらに人もなし
たんほゝをちらしに青む春野哉
江戸人は上野をさして春の山
万歳の渡りしあとや水温む
一休に歌よませばや汐干狩
内海の幅狹くなる汐干哉
燒野から燒野へわたる小橋哉
海人か家の若水猶も汐はゆし

【沙嶋】
貝とりの沙嶋へつゞく汐干哉
氷解けぬ鯉の吹き出すさゝれ波
春の野に女見返る女かな
三つまたにわれて音なし春の水

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