私の町の博物館の、大きなガラスの
生きてたときはミィミィとなき
小さいときのことですが、ある朝早く、私は学校に行く前にこっそり
「お早う。ペムペルという子はほんとうにいい子だったのにかあいそうなことをした。」
その時窓にはまだ厚い茶いろのカーテンが引いてありましたので
「お早う。蜂雀。ペムペルという人がどうしたっての。」
蜂雀がガラスの向うで
「ええお早うよ。妹のネリという子もほんとうにかあいらしいいい子だったのにかあいそうだなあ。」
「どうしたていうの話しておくれ。」
すると蜂雀はちょっと口あいてわらうようにしてまた云いました。
「話してあげるからおまえは
私は本の入ったかばんの上に座るのは一寸困りましたけれどもどうしてもそのお話を聞きたかったのでとうとうその通りしました。
すると蜂雀は話しました。
「ペムペルとネリは毎日お父さんやお母さんたちの働くそばで遊んでいたよ〔以下原稿一枚?なし〕
その時
『さようなら。さようなら。』と云ってペムペルのうちのきれいな木や花の間からまっすぐにおうちにかえった。
それから
二人で小麦を粉にするときは僕はいつでも見に行った。小麦を粉にする日ならペムペルはちぢれた
そのときぼくはネリちゃん。あなたはむぐらはすきですかとからかったりして飛んだのだ。それからもちろんキャベジも植えた。
二人がキャベジを
ペムペルがキャベジの太い根を
そして二人はたった二人だけずいぶんたのしくくらしていた。」
「おとなはそこらに居なかったの。」わたしはふと思い付いてそうたずねました。
「おとなはすこしもそこらあたりに居なかった。なぜならペムペルとネリの
けれどほんとうにかあいそうだ。
ペムペルという子は全くいい子だったのにかあいそうなことをした。
ネリという子は全くかあいらしい女の子だったのにかあいそうなことをした。」
蜂雀は
私はもう全く気が気でありませんでした。
蜂雀はいよいよだまってガラスの向うでしんとしています。
私もしばらくは
「ね、蜂雀、そのペムペルとネリちゃんとがそれから一体どうなったの、どうしたって云うの、ね、蜂雀、話してお
けれども蜂雀はやっぱりじっとその細いくちばしを
「ね、蜂雀、
ね。談してお呉れ。そら、さっきの続きをさ。どうして話して呉れないの。」
ガラスは私の息ですっかり
四羽の美しい蜂雀さえまるでぼんやり見えたのです。私はとうとう泣きだしました。
なぜって第一あの美しい蜂雀がたった今まできれいな銀の糸のような声で私と話をしていたのに俄かに
すると俄かに私の右の
「どうしてそんなに泣いて居るの。おなかでも痛いのかい。朝早くから鳥のガラスの前に来てそんなにひどく泣くもんでない。」
けれども私はどうしてもまだ泣きやむことができませんでした。おじいさんは又云いました。
「そんなに高く泣いちゃいけない。
まだ入口を開けるに一時間半も間があるのにおまえだけそっと入れてやったのだ。
それにそんなに高く泣いて表の方へ聞えたらみんな私に故障を云って来るんでないか。そんなに泣いていけないよ。どうしてそんなに泣いてんだ。」
私はやっと云いました。
「だって蜂雀がもう私に話さないんだもの。」
するとじいさんは高く笑いました。
「ああ、蜂雀が又おまえに何か話したね。そして俄かに
番人のおじいさんはガラスの前に進みました。
「おい。蜂雀。今日で何度目だと思う。手帳へつけるよ。つけるよ。あんまりいけなけあ仕方ないから館長様へ申し上げてアイスランドへ送っちまうよ。
ええおい。さあ
お話がすんだら早く学校へ入らっしゃい。
あんまり長くなって
番人のおじいさんは私の涙を
おじいさんのあし音がそのうすくらい茶色の
私はどきっとしたのです。
蜂雀は細い細いハアモニカの様な声でそっと私にはなしかけました。
「さっきはごめんなさい。僕すっかり
私もやさしく言いました。
「蜂雀。僕ちっとも
蜂雀は語りはじめました。
「ペムペルとネリとはそれはほんとうにかあいいんだ。二人が青ガラスのうちの中に居て窓をすっかりしめてると二人は海の底に居るように見えた。そして二人の声は僕には聞えやしないね。
それは非常に厚いガラスなんだから。
けれども二人が一つの大きな帳面をのぞきこんで一所に同じように口をあいたり少し閉じたりしているのを見るとあれは
ネリも全くかあいらしい女の子だったのにかあいそうなことをした。」
「だからどうしたって云うの。」
「だからね、二人はほんとうにおもしろくくらしていたのだから、それだけならばよかったんだ。ところが二人は、はたけにトマトを十本植えていた。そのうち五本がポンデローザでね、五本がレッドチェリイだよ。ポンデローザにはまっ赤な大きな実がつくし、レッドチェリーにはさくらんぼほどの赤い実がまるでたくさんできる。ぼくはトマトは食べないけれど、ポンデローザを見ることならもうほんとうにすきなんだ。ある年やっぱり
そしてまもなく実がついた。
ところが五本のチェリーの中で、一本だけは
『にいさま、あのトマトどうしてあんなに光るんでしょうね。』
ペムペルは
『
『まあ、あれ黄金なの。』ネリがすこしびっくりしたように云った。
『立派だねえ。』
『ええ立派だわ。』
そして二人はもちろん、その黄いろなトマトをとりもしなけぁ、
そしたらほんとうにかあいそうなことをしたねえ。」
「だからどうしたって云うの。」
「だからね、二人はこんなに楽しくくらしていたんだからそれだけならばよかったんだよ。ところがある夕方二人が
『ね、行って見ようよ、あんなにいい音がするんだもの。』
ネリは
『行きましょう、兄さま、すぐ行きましょう。』
『うん、すぐ行こう。
そこで二人は手をつないで果樹園を出てどんどんそっちへ走って行った。