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浅草公園(あさくさこうえん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-12 7:14:07  点击:  切换到繁體中文

底本: 芥川龍之介全集6
出版社: ちくま文庫、筑摩書房
初版発行日: 1987(昭和62)年3月24日
入力に使用: 1993(平成5)年2月25日第6刷


底本の親本: 筑摩全集類聚版芥川龍之介全集
出版社: 筑摩書房
初版発行日: 1971(昭和46)年3月~1971(昭和46)年11月

 

        1

 浅草あさくさ仁王門におうもんの中にった、火のともらない大提灯おおじょうちん。提灯は次第に上へあがり、雑沓ざっとうした仲店なかみせを見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは消え失せない。門の前に飛びかう無数のはと

          2

 雷門かみなりもんから縦に見た仲店。正面にはるかに仁王門が見える。樹木は皆枯れ木ばかり。

          3

 仲店の片側かたがわ外套がいとうを着た男が一人ひとり、十二三歳の少年と一しょにぶらぶら仲店を歩いている。少年は父親の手を離れ、時々玩具屋おもちゃやの前に立ち止まったりする。父親は勿論こう云う少年を時々叱ったりしないことはない。が、まれには彼自身も少年のいることを忘れたように帽子屋ぼうしやの飾り窓などを眺めている。

          4

 こう云う親子の上半身じょうはんしん。父親はいかにも田舎者いなかものらしい、無精髭ぶしょうひげを伸ばした男。少年は可愛かわいいと云うよりもむしろ可憐な顔をしている。彼等のうしろには雑沓した仲店。彼等はこちらへ歩いて来る。

          5

 斜めに見たある玩具屋おもちゃやの店。少年はこの店の前にたたずんだまま、綱をのぼったりりたりする玩具の猿を眺めている。玩具屋の店の中には誰も見えない。少年の姿は膝の上まで。

          6

 綱を上ったり下りたりしている猿。猿は燕尾服えんびふくの尾を垂れた上、シルク・ハットを仰向あおむけにかぶっている。この綱や猿の後ろは深い暗のあるばかり。

          7

 この玩具屋のある仲店の片側。猿を見ていた少年は急に父親のいないことに気がつき、きょろきょろあたりを見まわしはじめる。それから向うに何か見つけ、その方へ一散いっさんに走ってく。

          8

 父親らしい男の後ろ姿。ただしこれも膝の上まで。少年はこの男に追いすがり、しっかりと外套の袖をとらえる。驚いてふり返った男の顔は生憎あいにく田舎者いなかものらしい父親ではない。綺麗きれい口髭くちひげの手入れをした、都会人らしい紳士である。少年の顔に往来する失望や当惑に満ちた表情。紳士は少年を残したまま、さっさと向うへ行ってしまう。少年は遠い雷門かみなりもんを後ろにぼんやり一人佇んでいる。

          9

 もう一度父親らしい後ろ姿。ただし今度は上半身じょうはんしん。少年はこの男に追いついて恐る恐るその顔を見上げる。彼等の向うには仁王門におうもん

          10[#「10」は縦中横]

 この男の前を向いた顔。彼は、マスクに口をおおった、人間よりも、動物に近い顔をしている。何か悪意の感ぜられる微笑びしょう

          11[#「11」は縦中横]

 仲店の片側。少年はこの男を見送ったまま、途方とほうに暮れたように佇んでいる。父親の姿はどちらを眺めても、生憎あいにく目にははいらないらしい。少年はちょっと考えたのちあてどもなしに歩きはじめる。いずれも洋装をした少女が二人、彼をふり返ったのも知らないように。

          12[#「12」は縦中横]

 目金めがね屋の店の飾り窓。近眼鏡きんがんきょう遠眼鏡えんがんきょう双眼鏡そうがんきょう廓大鏡かくだいきょう顕微鏡けんびきょう塵除ちりよ目金めがねなどの並んだ中に西洋人の人形にんぎょうの首が一つ、目金をかけて頬笑ほほえんでいる。その窓の前にたたずんだ少年の後姿うしろすがた。ただしななめに後ろから見た上半身。人形の首はおのずから人間の首に変ってしまう。のみならずこう少年に話しかける。――

          13[#「13」は縦中横]

「目金を買っておかけなさい。お父さんを見付みつけるには目金をかけるのに限りますからね。」
「僕の目は病気ではないよ。」

          14[#「14」は縦中横]

 斜めに見た造花屋ぞうかやの飾り窓。造花は皆竹籠だの、瀬戸物の鉢だのの中に開いている。中でも一番大きいのは左にある鬼百合おにゆりの花。飾り窓の板硝子ガラスは少年の上半身を映しはじめる。何か幽霊のようにぼんやりと。

          15[#「15」は縦中横]

 飾り窓の板硝子越しに造花を隔てた少年の上半身。少年は板硝子に手を当てている。そのうちに息の当るせいか、顔だけぼんやりと曇ってしまう。

          16[#「16」は縦中横]

 飾り窓の中の鬼百合の花。ただし後ろは暗である。鬼百合の花の下に垂れているつぼみもいつか次第に開きはじめる。

          17[#「17」は縦中横]

「わたしの美しさを御覧なさい。」
「だってお前は造花じゃないか?」

          18[#「18」は縦中横]

 かどから見た煙草屋の飾り窓。巻煙草のかん、葉巻の箱、パイプなどの並んだ中に斜めにふだが一枚懸っている。この札に書いてあるのは、――「煙草の煙は天国の門です。」おもむろにパイプから立ちのぼる煙。

          19[#「19」は縦中横]

 煙の満ち充ちた飾り窓の正面しょうめん。少年はこの右にたたずんでいる。ただしこれも膝の上まで。煙の中にはぼんやりと城が三つ浮かびはじめる。城は Three Castles の商標を立体にしたものに近い。

          20[#「20」は縦中横]

 それ等の城の一つ。この城の門には兵卒が一人銃を持って佇んでいる。そのまた鉄格子てつごうしの門の向うには棕櫚しゅろが何本もそよいでいる。

          21[#「21」は縦中横]

 この城の門の上。そこには横にいつのにかこう云う文句が浮かび始める。――
「この門に入るものは英雄となるべし。」

          22[#「22」は縦中横]

 こちらへ歩いて来る少年の姿。前の煙草屋の飾り窓は斜めに少年の後ろに立っている。少年はちょっとふり返って見たのち、さっさとまた歩いて行ってしまう。

          23[#「23」は縦中横]

 がねだけ見える鐘楼しゅろうの内部。撞木しゅもくは誰かの手に綱を引かれ、おもむろに鐘を鳴らしはじめる。一度、二度、三度、――鐘楼の外は松の木ばかり。

          24[#「24」は縦中横]

 斜めに見た射撃屋しゃげきやの店。まとは後ろに巻煙草の箱を積み、前に博多人形はかたにんぎょうを並べている。手前に並んだ空気銃の一列。人形の一つはドレッスをつけ、扇を持った西洋人の女である。少年はずこの店にはいり、空気銃を一つとり上げて全然無分別むふんべつまとねらう。射撃屋の店には誰もいない。少年の姿は膝の上まで。

          25[#「25」は縦中横]

 西洋人の女の人形。人形は静かに扇をひろげ、すっかり顔を隠してしまう。それからこの人形にあたるコルクの弾丸たま。人形は勿論仰向あおむけに倒れる。人形の後ろにも暗のあるばかり。

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