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地底戦車の怪人(ちていせんしゃのかいじん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 6:44:02  点击:  切换到繁體中文



   うごかぬはず


 黄いろい幽霊が手にもっていた機銃で、操縦席の前にさがっている南極の地図を指したために、そばにいたパイ軍曹は、黄いろい幽霊のゆだんを見すまして、機銃をぐっとつかんだのである。力くらべならば、彼はすこぶる自信があった。
「おい、ピート一等兵。早く、力を貸せ。その幽霊の足を、横に払え!」
 だが、ピート一等兵は、へびににらまれたかえるのように、すくんでしまっている。
「ぐ、軍曹どの。じ、自分は、もういけません。……」
「こら、上官を見殺しにする気か。よおしこの機銃を、こっちへうばいとったら、第一番にこの幽霊をたおし、その次には、き、貴様きさまの胸もとに、銃弾で貴様の頭文字をかいてやるぞ! うーん」
 パイ軍曹は、顔をまっ赤にして、うんうんうなりながら、機銃をうばいとろうと一生けんめいである。
 ところが、黄いろい幽霊はさっきから、一語も発しない。そしてパイ軍曹をしかりつけるまでもなく、軍曹のしたいままに、放ってあるのだ。一ちょうの機関銃は、二人の手につかまれたまま、じっとうごかない。
「こら、幽霊。そこをはなせ。はなさないと、き、貴様を……」
「ほッほッほッほッ。パイ軍曹、君の腕の力は、たったそれだけか」
「な、なにを。うーん」
 じつは、パイ軍曹は、さっきからまるで万力まんりきにはさんだようにうごかない機銃について、少々こまっていたところであった。
「さあ、パイ軍曹。君に、これがとれるものなら、もっと倍くらいの力を出したまえ」
「な、なにを。うーん」
 パイ軍曹は、うんとがんばって、死にものぐるいの力を出して、機銃を前にひっぱったが、機銃はあいかわらず、いわおのようにびくともしない。軍曹のひたいからは、ぼたぼたと、大粒の油あせが、たれる。
「力自慢で、わしが負けるなんて、そ、そんなはずはないのだが……」
 幽霊は、わざとらしい咳払せきばらいをして、
「戦車の中には、食料品が不足だというのに、無駄に、力を出していいのかね」
「えっ」
 この戦車の中には、食料品のたくわえがないことは、はじめからしっていた軍曹だった。だから、黄いろい幽霊のことばは、パイ軍曹の腹へ、大砲のごとく、こたえた。彼はとたんに機銃から、ぱっと手をはなした。
「それで、もともとだ」
 と、黄いろい幽霊は、いった。
 パイ軍曹は、なんだか急に、眼の前がくらくなったように感じた。それは、空腹のところへあまり力を出しすぎたためだ。
「君でなくとも、だれがやってみても、この機銃を人力で取りはずすことはできないよ。このとおり、大きな金具で、はさまれているのだからなあ。ほッほッほッ」
 黄いろい幽霊は、おかしさにたえられないという風に、大笑いをしたが、軍曹が、うしろをふりかえってみると、機銃のお尻のところが、掩蓋えんがい固定の締め金具の間に、うまくはさまれていたのである。それでは、軍曹は、堅い鋼鉄と相撲をとるような、とても勝つ見込みのない力くらべを、していたことになる。
「ああッ」
 パイ軍曹は、あきれかえって、自分がいやになった。とたんに、からだが綿のように、ふにゃふにゃになったように感じた。
「ほッほッほッ。戦車隊員ともあろうものが、そんな不注意で、御用がつとまるとおもうか」
 黄いろい幽霊は、一本するどく、軍曹をきめつけたが、そのときどうしたわけか、地底戦車は、急にかたむきはじめたとおもう間もなく、あっといううちに、大きくでんぐりかえりをうち、とたんに車内の電灯が、すーっと消えてしまった。三人は、それぞれ、南瓜かぼちゃのかごをひっくりかえしたように、ごろごろと投げだされた。さあ、一体、何事が起ったのであろう。


   三つの場合


 海底は、まっくらであった。
 だから、なにごとが起っても、皆目みえなかった。
 みえなかったから、よかったものの、もし海底に、だれかすんでいる者があって、いま地底戦車が、断崖だんがいから、まっさかさまになって、墜落したそのものすごい光景をみていたとしたら、その人は、きっときもをつぶしたにちがいない。地底戦車は、石塊せっかいのように、ころげおちたのであった。あの高い断崖から下へおちて、戦車がこわれなかったことが、じつにふしぎというほかない。
 それもそのはず、ドイツとともに、世界に一、二を争う工業国アメリカが、そのすぐれた技術でつくりあげた極秘の地底戦車であった。その丈夫なことといったら、おそろしいほどだ。
 それはいいが、地底戦車の中の三人は、一体、どうなったであろうか。
 戦車の中は、電灯が消えて、それこそ、真の闇であった。
 なんの音も、きこえない。
 三人とも、あたまを、どこかかたいかべか、器械にぶっつけ、脳みそを出して、死んでしまったのであろうか。
 いや、そうでもなかった。三人の心臓は、いずれもかすかではあるが、それぞれうごいていたのである。が、三人とも、死骸のようになって、うごかない。自分がいま、どこにいるか、それさえ分らない。三人とも、気がとおくなってしまったのだ。
 だが、これっきり、三人とも、死んでしまうではなさそうだ。今に、一人一人、われにかえって、起きあがるだろう。しかし、それから先、どうして生きられるか、そいつは分らない。
 だれが、先に、気がつくか。――これは、たいへん重要な問題だった。
 もし、黄いろい幽霊が先に息をふきかえして気がつけば――幽霊が、息をふきかえすというのも、へんであるが――すべて、戦車が墜落する前のとおりであろう。すなわち彼は、とにかくパイ軍曹とピート一等兵をたすけおこして、それから後は、また機関銃をひねくりまわして、彼の好む方角へ前進するであろう。
 だが、これと反対に、パイ軍曹が、先に気がつけば、彼は、ピート一等兵を靴の先でけとばして、眼をさまさせ、そして二人で力をあわせて、黄いろい幽霊をしばりあげ、ひどいしっぺいがえしをするだろう。幽霊をはだかにして、天井からり下げることぐらいは、命令しそうなパイ軍曹だった。これは、さっきまで勝者であった黄いろい幽霊にとって、まことに気の毒な場合であった。
 もう一つの場合が、残っている。それは、ピート一等兵が、まっ先にわれにかえる場合である。大きなからだとは反対に、たいへん気のよわい彼は、一体どうするであろうか。この場合ばかりは、全く見当がつかない。
 幸か不幸か、事実は、最後にのべた場合をとったのである。ピート一等兵が、うーんとうなって手足をのばし、われにかえったのであった。さあ、どんなことになるやら?

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