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地底戦車の怪人(ちていせんしゃのかいじん)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-25 6:44:02  点击:  切换到繁體中文



   早業はやわざ


 パイ軍曹が、林檎と幽霊の関係について、おもいわずらっている間にピート一等兵は、早いところ、その林檎をしっけいして、皮もたねも、みんな自分の胃袋へおくりこんでしまったのだった。
 すばらしい味だった。彼は、生れてこの方、こんなうまいものを、たべたことがないと思った。胃袋が、いつまでも、生き物のように、うごめいているのが、はっきりわかった。
 おかげで、ピート一等兵は、たいへん元気づいた。もう、幽霊もなんにも、なかった。
 ピート一等兵の元気にひきかえ、パイ軍曹の方は、とつぜん姿を消した林檎の幽霊のことで二重の恐ろしさを、ひしひしと感じ、ますます青くなって、ちぢかんだ。南極の凍りついた海底ふかくおちこんだうえに、人間の幽霊のほかに、林檎の幽霊にまで、くるしめられるとは、なんという情けないことだろう。軍曹は、しゃがんだまま、頭を抱えて、考えこんだ。
 それを見ると、ピート一等兵は、ちょっと気の毒やら、おかしいやらであった。だが、笑うわけにも、いかなかった。
 そこで、彼は、軍曹にこえをかけた。
「軍曹どの、このままで、じっとしていては、われわれは、死ぬよりほかありません。ですから、思い切って、この地底戦車をうごかして、ニューヨークまで、かえっては、どうでありますか」
 パイ軍曹は、顔をあげた。そして、あきれがおで、
「ばか。ニューヨークまで、こんな地底戦車にのってかえれるものか」
「しかし、軍曹どの。われわれ軍人は、常にそれくらいの元気は、もっていなければならぬと思うのであります」
「それは、わかっとる。しかし、ニューヨークまでかえるには、何ヶ月かかるかわからない。その間重油をどうするんだ。また、われわれは、なにを食べて、その何ヶ月かを生きていればいいんだ」
 パイ軍曹は、こうなると、ますますひかんしていった。
「なァに、軍曹どの、なにか考えれば、どうにかなりますよ」
 と、ピート一等兵は、ますます元気なこえでいった。くいかけの林檎一個が、たいへんな力を、彼にあたえたのだ。
「どうかなると、口でいうだけでは、どうもならん」
「だめです。軍曹どのは、やってみないうちから、もういけないとおもっていられるから、だめなんです。どうせ、死ぬときは死ぬのですから、じっとしていて死ぬよりも、軍人らしく、この地底戦車で突進しながら、たおれた方が、軍人らしい最期さいごではありませんか」
「なるほど、なあ」
 パイ軍曹は、大きくうなずきながら、立ち上った。
「お前みたいな臆病者に、こっちが、はげまされようとは考えなかった。お前は、ほんとは、臆病者じゃなかったのかなあ」
 パイ軍曹は、感心していった。そして、さっと、しせいを正しくすると、
「集まれ!」
 と、号令をかけた。
 ピート一等兵は、とつぜん、集まれをかけられて、びっくりしたが、すぐさま、かけ足をして、パイ軍曹の前に、不動のしせいをとった。
「番号!」
 パイ軍曹は、大まじ目でいった。
「一チ!」
 ピート一等兵は、きまりがわるくなった。二イ三ンとひとりで、もっとさきをいいたいくらいであった。
「異状ないか」
「はい、全員異状、ありません」
 全員といっても、たった一人である。隊長をあわせても、たった二人だ。
「命令。地底戦車兵第……ええと、第百一連隊第二大隊第三中隊第四小隊のパイ分隊は、只今より出動する」
 と、べらぼうに大きな数をいって、
「戦車長は、パイ軍曹。操縦員は、ピート一等兵。第一番砲手はピート一等兵。第二番砲手はパイ軍曹。通信兵はパイ軍曹。機関員はパイ軍曹……」
 どこまでいっても、要するに、たった二人であった。たいへん手がりないが、どうも仕方がない。
「全員部署につけ!」
 そこでパイ軍曹は、一番高い戦車長席につき、ピート一等兵は、前の方の、操縦席についた。
「部署につきました」
「よし。では、出動! 針路しんろ、真南! 傾斜をなおしつつ、前進」


   地中前進


 ピート一等兵が、エンジンをかけた。車内は、たちまち、轟々ごうごうたる音響にとざされた。レバーをたおすと、地底戦車は、ごとんごとんと、前進をはじめたのであった。
 パイ軍曹は、配電盤をにらんだり、戦車のゆく方を考えたり、なかなかいそがしかった。
「おい、ピート。エンジンの調子は、わるくないようだな」
 軍曹は、送話器をひきよせて、いった。ピート一等兵の耳にくくりつけた高音受話器が、軍曹のこえのとおりに鳴った。
「エンジンの調子は、異状ありません」
 ピート一等兵は、なかなか操縦上手じょうずだった。戦車は、はじめ、ひどく傾いていたが、まもなく、ちゃんと水平になおって、気もちがよくなった。
 ぎーン、ぴし、ぴし、ぴしッ。
 地底戦車の前にとりつけてある硬い廻転螺旋刃らせんじんが、きりきりとまわり、土か氷か岩石かはしらぬが、どんどんくだいて、戦車を前進させているようであった。
 距離積算計というメーターが、だんだんと大きな数字を、あらわしていった。たしかに前進しているのであった。
 こうやって、気もちよく前進していくと、戦車は地上を走っているように思われるのであった。たいへん具合がよろしい。
め!」
 パイ軍曹が、号令を下した。
 ピート一等兵は、あわてて、レバーをひいて、ギアをはずした。そして、足踏み式の、給油バルブを閉めつけた。地底戦車は、ぎぎーッと、とまった。
「どうしたのでありますか、軍曹どの」
「うん、ちょっと、外をのぞいてみようと思うのだ」
「ああ、そうですか。多分、海底の氷のかたまりの中でしょう」
「そうかもしれないなあ」
 パイ軍曹は、展望鏡を、戦車の上から出すために、ハンドルをまわした。
 ハンドルは、なかなかまわらなかった。
「硬いものが、おさえつけているらしい」
 それでも、展望鏡は、頭だけを少し出しているようであった。軍曹は、そこで、車外に、赤外線灯をとぼした。そして、展望鏡でのぞいてみた。赤外線をあてて、展望鏡をちょっとかえると、まっくらなところでも、はっきり見えるのだった。地底戦車には、なくてはならない展望鏡だった。
「おや、これは、土の中だ」
 と、パイ軍曹は、叫んだ。展望鏡の中にうつったものは、たしかに、小さい石をまじえた水成岩とも土ともつかないあつい層であった。
「えっ。土の中ですか」
「そうだ。われわれは、もうすでに、陸にぶつかっているのだ。これをどんどん進んでいくとうまくいけば、やがて、わが南極派遣隊の駐屯ちゅうとんしているところへ出られるかもしれないぞ」
「そうですか。そいつはいい。うまくいくと、これは、たすかりますね」
「うん、とにかく、もっと前進をしてみよう、前進!」
 パイ軍曹のかおにも、生色せいしょくが、よみがえってきた。地底戦車は、ふたたび、轟々と音をたてて、前進をはじめた。
「針路、真南!」
 キーン、ぴし、ぴし、ぴしッ。
 地底戦車は、ときどきからまわりをしながら、それでも、だんだん前進していった。
「よし、この分では、相当見込みがあるぞ」
 パイ軍曹は、にんまりと笑った。
 下をみると、ピート一等兵が、汗ばみながら、しきりにハンドルをとっている。電熱器のおかげか、それとも地底深いせいか、車内は、かなりに温い。そのとき、パイ軍曹の眼は、とつぜん、あやしいものの姿を、とらえた。
「おや、林檎だ。さっきの林檎が、あんなところに落ちていた」
 林檎は、ごろごろと転げながら、軍曹の席に近づいた。軍曹は、身をおどらせて、下に下りると、その林檎を手にとった。たしかにほんとの林檎だ。すてきな香りがする。てのひらの中に、ひんやりとした感じがつたわる。そのとき、林檎を手にとってみていたパイ軍曹は、
「おや、これはへんだよ。歯型がない!」
 と、小首をかしげた。なぜ、こうして、いくつも、林檎が、ころころ転げだしてくるのだろうか。

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