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幽霊船の秘密(ゆうれいせんのひみつ)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-26 6:41:56  点击:  切换到繁體中文


   解けた怪異かいい


 幽霊船の中に潜んでいた謎は、一体なんであったろうか。船艙のくらがりの中から聞えるごとごとという怪音、それにつづいてキラキラと光った物!
 銃をもった貝谷は、隊長古谷局長の腕をとらえ、
「局長、あれをごらんなさい。光る物は二つならんでいます。あれは動物の眼ですよ」
「どこだい。よく見えないが……」
 といっているとき、うおーっといううなりごえ。
「局長、一発撃たせてください。そうしないと、こっちがやられてしまいます」
「じゃあ、……」
 局長の言葉半ばにして、だーんと銃声がひびいた。貝谷がとうとう狙いをさだめて撃ったのである。闇の中に、たしかに手応てごたえがあった。それっきりうなり声はしなくなった。
「どうしたんだろうなあ、貝谷」
「局長。うまく仕とめたんです。そばへいってみましょう」
 局長と貝谷とは残りすくない貴重なマッチをすって、そばに近づいた。そこには大きな愕きが、二人を待っていた。
「あっ、ひょうだ! 黒豹が死んでいる!」
 船艙の隅に、小牛ほどもあろうという大きな黒豹が、見事に額を撃ちぬかれて、ぐたりと長くのびていた。
「ああ、もうすこしで、こいつに喰われてしまうところだった」
「貝谷。お前の腕前には、感心したよ。いや、感心したばかりではない。危いところで生命を助けてもらったことを感謝するぞ。だが――」
 と、いって、局長は大きな呼吸をして、
「おい貝谷。これで幽霊船の秘密が解けたではないか」
「えっ、幽霊船の秘密だといいますと……」
「ほら、甲板だの船橋ブリッジだのに、人骨がちらばっていたことさ。つまりこの幽霊船には、おりを破った猛獣が暴れていたんだ。そして船員を片っ端から喰いあらしていたのにちがいない」
「ああ、なるほど。猛獣だから、人間の肉をすっかり綺麗に喰べつくし、骨だけ残していたというわけですか。そうかもしれませんねえ」
 といったが、雨の甲板や船橋のうえについていた大きな丸味のある血痕けっこんは、この黒豹の足跡だったと、今にして二人は思いあたったことである。全く恐ろしいことだ。航海中の汽船の中に、猛獣が暴れだして、船員を喰べた。大海に漂う船の中だから、逃げだすこともどうすることもできなかったのであろう。
「ねえ局長。船内をあらしまわって人間を喰った黒豹というのは、いま撃ちとめたこの一頭だけでしょうか」
「さあ、どうだか」と局長はいったが、「どうも一頭だけとは考えられないね。なにしろ、あのとおり人骨が散らばっているところをみても、この一頭だけの仕業だとは考えられないよ」
「じゃあ、外の奴を警戒しなければなりませんね」
「そうだ、どっかその辺に潜んでいる奴があるかもしれない」
 そういっているとき、甲板の方とおもわれる見当で、とつぜん、うわーっと誰かの悲鳴!
「あっ、誰かが……」
「うむ、猛獣が出たのかもしれない。すぐいってやろう。貝谷、続け!」
 古谷局長は、短剣を手に、船艙から甲板へ通じる階段をまっしぐらに駈けあがる。


   心細い弾丸たま


 甲板へ出てみると、そこには想像した以上の、たいへんな光景が展開していた。古谷局長のつれてきた二号艇の連中が、マストの上に鈴なりになって、しきりに下を向いてわめいている。
「あっ、局長。いますいます、猛獣が五六頭います」
「えっ、どこにいる?」
 と、いっているところへ、うおーっと一声呻り声をあげて近づいてきた一頭のライオン。
「あっ、危い!」という間もなく、ライオンは局長と貝谷の上をとびこえて、檣の下へ――。
 そこには、さっきから五六頭のライオンが入りみだれて、檣にのぼっている和島丸の船員をしきりに狙っている。
「うーむ、これは困った。銃一挺では、どうすることもできない」
 と、古谷局長は嘆声たんせいを発した。
「でも局長。あと弾丸は五発ありますから、弾丸のあるだけ撃ってみましょう」
 貝谷は、もう覚悟をきめていた。
「待て! 五発の弾丸を撃ったあとを考えると、そう簡単に撃つわけにいかないぞ。弾丸がなくなれば、われわれもまた、この汽船の乗組員と同じ運命におちいって、猛獣に喰われて白骨になるではないか。撃つのはしばらく待て!」
 猛獣は、ものすごい声をあげて咆哮ほうこうする。どれもこれも、腹がへっているらしい。この咆哮につれて、檣の下には刻々と猛獣の数がえてゆく。(ふーん、一体この船には何十頭の猛獣がいるのかしら)と貝谷が、溜息とともに呟いた。檣の下には、今や少くとも九頭か十頭のライオンとひょうが集っている。和島丸の船員たちは、檣の上にしがみついたまま生きた色もない。
 貝谷は、積みあげたロップの蔭から、猛獣の動静をじっと見守っている。
 その後で、古谷局長は、しきりに智慧をしぼっていたようであったが、「そうだ、いいことがある!」と叫んで、貝谷の肩を叩いた。
「とにかく、このままでは、猛獣の餌食えじきになるばかりだ。おい、貝谷。おれはこれから、船内へ入って、銃かピストルかをさがしてくるから、お前はここで頑張っていてくれ」
「なんですって、局長。あなたひとりで船内へ入っては危い!」
「だが、こうなっては、自分の身の危険など考えてはいられない。隊員全体の生命が危いのだから……。後を頼むぞ」というや、局長は走り去った。
 それからのち、僅か二十分ぐらいの間のことだったが、貝谷は、二日三日もたったように思った。ところが、正味二十分たって、局長は息せききって、貝谷の待っているところへかえってきた。
「あっ、局長。どうでした」貝谷は、あいかわらず、猛獣への監視をおこたらず、その方へ顔をむけたままの姿勢でたずねた。
「うむ、あったぞ。このとおりだ」局長は、うれしそうに、貝谷の鼻のさきへ、三挺のピストルと二挺の銃とをさしだした。
「まだ銃はある。弾丸もうんとある。さあこれで、あの猛獣どもを追っ払うのだ」
 局長は、さっきとは別人のように元気になっていた。
 そこで局長と貝谷とは、一、二、三の号令とともに、積みあげたロップに銃をのせて、勢いよく撃ちだした。だだーん、どどーん。ものすごい銃声だ。そしてたいへんいい当りだ。そうでもあろう。相手は大勢、当らないのがおかしいくらいだ。

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