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中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)05酉陽雑爼(唐)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-8-27 17:44:10  点击:  切换到繁體中文


   駅舎の一夜

 孟不疑もうふぎという挙人きょじん進士しんしの試験に応ずる資格のある者)があった。昭義しょうぎの地方に旅寝して、ある夜ある駅に泊まって、まさに足をすすごうとしているところへ、※(「さんずい+「緇」のつくり」、第3水準1-86-81)しせいちょうという役人が数十人の供を連れて、おなじ旅舎へ乗り込んで来た。相手が高官とみて、孟は挨拶に出たが、張は酒を飲んでいて顧りみないので、孟はその倨傲きょごうを憤りながら、自分は西の部屋へ退いた。
 張は酔った勢いで、しきりに威張り散らしていた。大きい声で駅の役人を呼び付けて、焼餅しょうべいを持って来いと呶鳴った。どうも横暴な奴だと、孟はいよいよ不快を感じながら、ひそかにその様子をうかがっていると、暫くして注文の焼餅を運んで来たので、孟はまた覗いてみると、その焼餅を盛ったばんにしたがって、一つの黒い物が入り込んで来た。それはししのようなものであるらしく、燈火あかりの下へ来てその影は消えた。張は勿論、ほかの者もそれに気がかなかったらしいが、孟は俄かに恐怖をおぼえた。
「あれは何だろう」
 孤駅のゆうべにこの怪を見て、孟はどうしても眠ることが出来なかったが、張は酔って高いびきで寝てしまった。供の者は遠い部屋に退いて、張の寝間は彼ひとりであった。その夜も三更さんこう(午後十一時―午前一時)に及ぶころおいに、孟もさすがに疲れてうとうとと眠ったかと思うと、唯ならぬ物音にたちまち驚き醒めた。一人の黒いきものを着た男が張と取っ組み合っているのである。やがて組んだままで東の部屋へ転げ込んで、たがいになぐり合うこぶしの音がきねのようにきこえた。孟は息を殺してその成り行きをうかがっていると、暫くして張は散らし髪の両肌ぬぎで出て来て、そのまま自分の寝床にあがって、さも疲れたように再び高鼾で寝てしまった。
 五更ごこう(午前三時―五時)に至って、張はまた起きた。しもべを呼んで燈火をつけさせ、髪をくしけずり、衣服をととのえて、改めて同宿の孟に挨拶した。
「昨夜は酔っていたので、あなたのことをちっとも知らず、甚だ失礼をいたしました」
 それから食事を言い付けて、孟と一緒に仲よく箸をとった。そのあいだに、彼は小声で言った。
「いや、まだほかにもお詫びを致すことがある。昨夜は甚だお恥かしいところを御覧ごらんに入れました。どうぞ幾重にも御内分にねがいます」
 相手があやまるように頼むので、孟はその上に押して聞くのを遠慮して、ただ、はいはいとうなずいていると、張は自分も早く出発する筈であるが、あなたもお構いなくお先へお発ち下さいと言った。別れるときに、張は靴の中から金一※(「金+廷」、第3水準1-93-17)ていを探り出して孟に贈って、ゆうべのことは必ず他言して下さるなと念を押した。
 何がなんだか判らないが、孟は張に別れて早々にここを出発した。まだ明け切らない路を急いで、およそ五、六里も行ったかと思うと、人殺しの賊を捕えるといって、役人どもが立ち騒いでいるのを見た。その子細しさいを聞きただすと、※(「さんずい+「緇」のつくり」、第3水準1-86-81)青の評事の役を勤める張という人が殺されたというのである。孟はおどろいて更に詳しく聞き合わせると、賊に殺されたと言っているけれども、張が実際の死にざまは頗る奇怪なものであった。
 孟がひと足さきに出たあとで、張の供の者どもは、出発の用意を整えて、主人と共に駅舎を出た。あかつきはまだ暗い。途中で気がついてみると、馬上の主人はいつか行くえ不明になって、馬ばかり残っているのである。さあ大騒ぎになって、再び駅舎へ引っ返して詮議すると、西の部屋に白骨が見いだされた。肉もない、血も流れていない。ただそのそばに残っていた靴の一足によって、それが張の遺骨であることを知り得たに過ぎなかった。
 こうしてみると、それが普通の賊の仕業しわざでないことは判り切っていた。駅の役人も役目の表として賊を捕えるなどと騒ぎ立てているものの、孟にむかってひそかにこんなことを洩らした。
「この駅の宿舎には昔からわるいことがしばしばあるのですが、その妖怪の正体は今にわかりません」

   小人

 唐の太和たいわの末年である。松滋しょうじ県の南にひとりの士があって、親戚の別荘を借りて住んでいた。初めてそこへ着いた晩に、彼は士人の常として、夜の二更(午後九時―十一時)に及ぶ頃まで燈火ともしびのもとに書を読んでいると、たちまち一人の小さい人間が門から進み入って来た。
 人間といっても、かれは極めて小さく、身のたけわずかに半寸に過ぎないのである。それでもくずきものを着て、杖を持って、悠然とはいり込んで来て、大きいはえの鳴くような声で言った。
「きょう来たばかりで、ここには主人もなく、あなた一人でお寂しいであろうな」
 こんな不思議な人間が眼の前にあらわれて来ても、その士は頗る胆力があるので、素知らぬ顔をして書物を読みつづけていると、かの人間は機嫌を損じた。
「お前はなんだ。主人と客の礼儀をわきまえないのか」
 士はやはり相手にならないので、かれは机の上に登って来て、士の読んでいる書物を覗いたりして、しきりに何か悪口を言った。それでも士は冷然と構えているので、かれもれてきたとみえて、だんだんに乱暴をはじめて、そこにあるすずりを書物の上に引っくり返した。士もさすがにうるさくなったので、太い筆をとってなぐり付けると、彼は地にちてふた声三声叫んだかと思うと、たちまちにその姿は消えた。
 暫くして、さらに四、五人の女があらわれた。老いたのもあれば、若いのもあり、皆そのたけは一寸ぐらいであったが、柄にも似合わない大きい声をふり立てて、士に迫って来た。
「あなたが独りで勉強しているのを見て、殿さまが若殿をよこして、学問の奥義おうぎを講釈させて上げようと思ったのです。それが判らないで、あなたは乱暴なことをして、若殿にお怪我をさせるとは何のことです。今にそのおとがめをこうむるから、覚えておいでなさい」
 言うかと思う間もなく、大勢おおぜいの小さい人間がありのように群集してきて、机に登り、床にのぼって、滅茶苦茶に彼をなぐった。士もなんだか夢のような心持になって、かれらを追いはらうすべもなく、手足をなぐられるやら、噛まれるやら、さんざんの目に逢わされた。
「さあ、早く行け。さもないと貴様の眼をつぶすぞ」と、四、五人は彼のかおにのぼって来たので、士はいよいよ閉口した。
 もうこうなれば、かれらの命令に従うのほかはないので、士はかれらに導かれて門を出ると、堂の東に節使衙門せつしがもんのような小さい門がみえた。
「この化け物め。なんで人間にむかって無礼を働くのだ」と、士は勇気を回復して叫んだが、やはり多勢たぜいにはかなわない。又もやかれらに噛まれて撲られて、士は再びぼんやりしているうちに、いつか其の小さい門の内へ追いこまれてしまった。
 見れば、正面に壮大な宮殿のようなものがあって、殿上には衣冠の人が坐っている。階下には侍衛らしい者が、数千人も控えている。いずれも一寸あまりの小さい人間ばかりである。衣冠の人は士を叱った。
「おれは貴様が独りでいるのを憐れんで、話し相手に子供を出してやると、飛んでもない怪我をさせた。重々じゅうじゅう不埒ふらちな奴だ。その罪をただして胴斬りにするから覚悟しろ」
 指図にしたがって、数十人がやいばをぬき連れてむかって来たので、士は大いにおそれた。彼は低頭して自分の罪を謝すと、相手の顔色も少しくやわらいだ。
「ほんとうに後悔したのならば、今度だけは特別をもってゆるしてやる。以後つつしめ」
 士もほっとして送りだされると、いつか元の門外に立っていた。時はすでに五更で、部屋に戻ると、机の上には読書のともしびがまだ消え残っていた。
 あくる日、かの怪しい奴らの来たらしい跡をさがしてみると、東の古い階段の下に、粟粒あわつぶほどの小さい穴があって、その穴から守宮やもりが出這入りしているのを発見した。士はすぐに幾人の人夫を雇って、その穴をほり返すと、深さ数丈のところにたくさんの守宮が棲んでいて、その大きいものは色赤くして長さ一尺に達していた。それが恐らくかれらの王であるらしい。あたりの土は盛り上がって、さながら宮殿のように見えた。
「こいつらの仕業だな」
 士はことごとくかれらをき殺した。その以来、別になんの怪しみもなかった。

   怪物の口

 臨湍寺りんたんじの僧智通ちつうは常に法華経ほけきょうをたずさえていた。彼は人跡じんせきれなる寒林に小院をかまえて、一心に経文読誦どくじゅを怠らなかった。
 ある年、夜半にその院をめぐって、彼の名を呼ぶ者があった。
「智通、智通」
 内ではなんの返事もしないと、外では夜のあけるまで呼びつづけていた。こういうことが三晩もやまないばかりか、その声が院内までひびき渡るので、智通も堪えられなくなって答えた。
「どうも騒々しいな。用があるなら遠慮なしにはいってくれ」
 やがてはいって来た物がある。身のたけ六尺ばかりで、黒いきものをきて、青いかおをしていた。かれは大きい目をみはって、大きい息をついている。要するに、一種の怪物である。しかもかれは僧にむかってまず尋常に合掌した。
「おまえは寒いか」と、智通は訊いた。「寒ければ、この火にあたれ」
 怪物は無言で火にあたっていた。智通はそのままにして、法華経を読みつづけていると、夜も五更に至る頃、怪物は火に酔ったとみえて、大きい目を閉じ、大きい口をあいて、りかかって高いびきで寝入ってしまった。智通はそれを観て、香をすくうさじをとって、炉の火と灰を怪物の口へさらい込むと、かれは驚き叫んで飛び起きて、門の外へ駈け出したが、物につまずき倒れるような音がきこえて、それぎり鎮まった。
 夜があけてから、智通が表へ出てみると、かれがゆうべ倒れたらしい所に一片の木の皮が落ちていた。寺のうしろは山であるので、彼はその山へ登ってゆくと、数里(六丁一里)の奥に大きな青桐の木があった。こずえはすでに枯れかかって、その根のくぼみに新しく欠けたらしい所があるので、試みにかの木の皮をあててみると、あたかも貼り付けたように合った。又その根の半分枯れたところにうつろがあって、深さ六、七寸、それが怪物の口であろう。ゆうべの灰と火がまだ消えもせずに残っていた。
 智通はその木をいてしまった。

   一つの杏

 長白山ちょうはくざんの西に夫人の墓というのがある。なんびとの墓であるかわからない。
 孝昭帝こうしょうていのときに、令してひろく天下の才俊をすということになった。清河の崔羅什さいらじゅうという青年はまだ弱冠じゃっかんながらもかねて才名があったので、これも徴されてゆく途中、日が暮れてこの墓のほとりを過ぎると、たちまちに朱門粉壁しゅもんふんぺきの楼台が眼のまえに現われた。一人の侍女らしい女が出て来て、お嬢さまがあなたにお目にかかりたいと言う。崔は馬を下りて付いてゆくと、二重の門を通りぬけたところに、また一人の女が控えていて、彼を案内した。
「何分にも旅姿をしているので、この上に奥深く通るのは余りに失礼でございます」と、崔は一応辞退した。
「お嬢さまは侍中じちゅう呉質ごしつというかたの娘御むすめごで、平陵へいりょう劉府君りゅうふくんの奥様ですが、府君はさきにおなくなりになったので、唯今さびしく暮らしておいでになります。決して御遠慮のないように」と、女はしいて崔を誘い入れた。
 誘われて通ると、あるじの女は部屋の戸口に立って迎えた。更にふたりの侍女がしょくをとっていた。崔はもちろん歓待されて、かの女と膝をまじえて語ると、女はすこぶる才藻さいそうに富んでいて、風雅の談の尽くるを知らずという有様である。こんな所にこんな人が住んでいる筈はない、おそらく唯の人間ではあるまいと、崔は内心疑いながらも、その話がおもしろいのに心をかされて、さらに漢魏時代の歴史談に移ると、女の言うことは一々史実に符合しているので、崔はいよいよ驚かされた。
「あなたの御主人が劉氏と仰しゃることは先刻うかがいましたが、失礼ながらお名前はなんと申されました」と、崔は訊いた。
「わたくしの夫は、劉孔才こうさいの次男で、名はようあざな仲璋ちゅうしょうと申しました」と、女は答えた。「さきごろ罪があって遠方へ流されまして、それぎり戻って参りません」
 それから又しばらく話した後に、崔はいとまを告げて出ると、あるじの女は慇懃いんぎんに送って来た。
「これから十年の後にまたお目にかかります」
 崔は形見として、玳瑁たいまいのかんざしを女に贈った。女は玉の指輪を男に贈った。門を出て、ふたたび馬にのってゆくこと数十歩、見かえればかの楼台は跡なく消えて、そこには大きい塚が横たわっているのであった。こんなことになるかも知れないと、うすうす予期していたのではあるが、崔は今さら心持がよくないので、後に僧をたのんで供養をして貰って、かの指輪を布施物ふせもつにささげた。
 その後に変ったこともなく、崔は郡の役人として評判がよかった。天統てんとうの末年に、彼は官命によって、河の堤を築くことになったが、その工事中、幕下ばっかのものに昔話をして、彼は涙をながした。
「ことしは約束の十年目に相当する。どうしたらよかろうか」
 聴く者も答うるところを知らなかった。工事がとどこおりなく終って、ある日、崔は自分の園中であんずの実を食っている時、俄かに思い出したように言った。
「奥さん。もし私を嘘つきだと思わないならば、この杏を食わせないで下さい」
 彼は一つの杏を食い尽くさないうちに、たちまち倒れて死んだ。


 

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