您现在的位置: 贯通日本 >> 作家 >> 国枝 史郎 >> 正文

怪しの者(あやしのもの)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-2 6:13:11  点击:  切换到繁體中文


      六

「駆け落ちの日にちと刻限とに、間違いがあっちゃア大変だが」
「今日から五日後のの刻さ。たしかめておいたから大丈夫だよ」
「おめえいて行くんだったな」
「そうさ途中までお見送りするのさ。お嬢様は可愛らしいよ、何から何まで、わたしにだけはお明かしなさるのだから」
「そこがこっちのつけめなのだが……それにしても鶴吉というあの男、お小夜坊ばかりを連れ出して、それで満足するような、優しい玉とは思われないが」
「これまでにお嬢様の手を通して、いろいろの物を引きだしたらしいよ」
「証拠になるような品をだろう」
「ああそうさ、証拠になるような品さ」
「ところで職場の仕事だが、どうだな、はかどっているようかな」
「それだけは妾にもわからないのさ。こしらえたはしから化け物屋敷の方へ、こっそり運んで行くのだからねえ」
「そういうことは鶴吉って男も、とうに知っているだろうに、化け物屋敷を調べないとは、どうにも俺にはにおちないよ」
「これから調べるのかもしれないじゃアないか」
「そうよなア、そうかもしれない……駆け落ちの前にか、駆け落ちの夜にかな」
 私は背後うしろ地袋じぶくろを開け、木箱を取り出し、その中から太い竹の筒を取り出しました。
「こいつ湿らせちゃア大変だ」
「変な物だねえ、何なのさ?」
「いってみりゃア地雷火さ。普通にゃ落火らっかというが」
「地雷火? まア、気味の悪い……どうしてお前さんそんなものを?」
「お殿様から下げ渡されたのさ」
「お殿様って? どこのお殿様?」
「殿様に二人あるものか。俺等おいらのご主君は犬山の御前さ」
「それじゃア成瀬様なるせさまから。……でも、成瀬様がそんな恐ろしいものを……」
「いよいよの場合には火をかけろってね、俺等前もって言いつけられているのさ」
 この時露路のあちこちで、犬がえ出しましてございます。私は竹筒を木箱の中へ納め、また地袋の中へ押し入れて、犬の吠え声に耳をかしげましたが、「あらかた話は済んだらしいな。それじゃア……」
「何がさ」
「隣の部屋に紅裏もみうらの布団が敷いてあるってことさ」
「ばからしい、……わたしゃア小母様が病気だから、ちょっと見舞いに行って来るといって、お暇をいただいて来たんだよ」
「ありもしない小母様に病気をさせて、情夫おとこに逢いに来るなんて、隅に置けない歌舞伎者かぶきものさ」
「その歌舞伎者で心配になったよ。行き倒れ者に自分を仕組んで、持田様へかかえ込まれ、ずるずるべったりに居ついてしまって、お嬢様をたらしたあの鶴吉、わたしの居ない間に、二番狂言でも仕組んで、わたしたちを出し抜きゃアしないかとねえ」
「それじゃアすぐに帰る気か」
「どうしよう」
「じらすのか。……それともじれているのか……」
「あれ、痛いよ」
 見る眼に痛い絵模様となりましたので……。

      七

 相変らず菰をかむり、竹の杖をつき、面桶めんつうかかえた、乞食のわたしが、庄内川の方へ辿って行きましたのは、それから五日後の夜のことでした。
 化け物屋敷の前まで来ました。
 一町四方ちょうしほうもある、宏大なお屋敷は、樹木と土塀とで、厳重にかこまれておりまして、外から見ますると、内部なか建物たてものは、家根さえ見えないほどなのでございます。
 しばらくわたしは土塀について、お屋敷の周囲をまわりました。と、東側の小門こもんから小半町こはんちょうほど距たった辺に、こんもりした林がありました。それをわたしは眺めやりましたが(あれかせて置けば大丈夫さ)と、こう心中で思いまして、そのまま先へ進んで行きました。足場のよいところまでやって来ました。そこでわたしは木立へ登り、そこから土塀のいただきへ登り、お屋敷の構内へ飛び下りました。構内の土塀近くに茂っているのは、松やかえでまきや桜の、植え込みでございました。
(塀外の木立ちと高い厚い土塀と、そうして内側のこの植え込みとで、こう厳重によろわれたんでは、屋敷内で何を企てようと、外からは見えもしなければ聞こえもしない。ましてその上に化け物屋敷などという、気味の悪い噂を立てておいたら、近寄ろうとする人はないだろう。)[#「近寄ろうとする人はないだろう。)」は底本では「近寄ろうとする人はないだろう。」]
 そんなことをわたしは思いながら、植え込みをわけて進んで行きました。と行く手から大勢の人声や、物を打つ音や物を切る音やが、潮の遠鳴りのように聞こえ、の光なども見えて来ました。不意にその時人声が、此方こなたへ近づいて参りましたので、わたしはやぶ蔭へ身をかくしました。
「見慣れない奴でありましたよ」
「外から忍び込んだ人間らしい」
「どうあろうとさがし出して捕えねば……」
 それは二人のお侍さんでした。
「居た!」
 とその中の一人が、わたしを目付けて叫び、手取りにしようとしてか組みついて来ました。(やむを得ない)と思って、わたしは竹の杖を突き出しました。もちろん急所へあてたんで。かすかに呻き声をあげたばかりで、そのお侍さんは倒れてしまいました。
曲者くせもの!」
 この人は斬り込んで来ました。
 でもその人も倒れてしまいました。
 わたしの突き出した竹の杖が、うまく鳩尾みぞおちはまったからで。
(ナーニ半刻はんときのご辛棒で。自然と息を吹き返しまさあ)
 わたしは先へ進んで行きました。
 でもわたしは気が気ではありませんでした。あの鶴吉という男が、わたしのように土塀を乗り越えて、屋敷内にはいり込んだということは、わたしにはわかっておりましたが、愚図愚図しているうちに目的を遂げて、この屋敷から脱け出されたら、一大事と思ったからです。
 わたしは先へ進んで行きました。
 すると「誰だ!」という声が起こり、つづいて「わッ」という悲鳴が起こり、すぐに「曲者!」とわめく声が聞こえ、つづいて「わッ」という悲鳴が聞こえ、さらに逃げてでも行くらしい、けたたましい足音が聞こえましたが、またもや「わッ」という悲鳴が聞こえ、その後は寂然しんとなってしまいました。
すごいな。三人った! 彼奴きゃつだ!)
 とわたしは走って行きました。
 そうしてもなくわたしは、厳重な旅の仕度をし、黒い頭巾で顔をつつんだ、鶴吉と呼ぶ例の男と、木立ちの中で刀を構えていました。そうですわたしも竹杖たけづえ仕込みの刀を、ひっこ抜いて構えたのです。
 わたしたちの足許にころがっているのは、三人の武士の死骸しがいでした。みんな一太刀で仕止められていました。
(凄い剣技てなみだ、油断するとあぶない)
 わたしは必死に構えました。
 と、鶴吉は月の光で、わたしの姿を認めたらしく、
「なんだ、貴様、乞食ではないか。……しかし、……本当の乞食ではないな。……なのれ、身分を!」
「そういう貴様こそ身分を宣れ! 庄内川からこの屋敷へ、大水たいすいを取り入れるために作り設けた、取入口を探ったり、行き倒れ者に身を※(「にんべん+悄のつくり」、第4水準2-1-52)やつして、船大工の棟領持田の家へはいり込み、娘をたぶらかして秘密を探ったり、最後にはこの屋敷へ忍び入り、現場を見届けようとしたり……」
「黙れ! 此奴こやつ、それにしてもそこまで俺の素性を知るとは?……さては、おのれは、……もしや汝は※(疑問符感嘆符、1-8-77)
「…………」
隠密おんみつではないかな? どこぞの国の?」
「…………」
「ものは相談じゃ、いや頼みじゃ、同じ身分のものと見かけ、頼む見遁みのがしてくれ」

上一页  [1] [2] [3] [4] [5] [6] 下一页  尾页


 

作家录入:贯通日本语    责任编辑:贯通日本语 

  • 上一篇作家:

  • 下一篇作家:
  •  
     
     
    网友评论:(只显示最新10条。评论内容只代表网友观点,与本站立场无关!)
     

    没有任何图片作家

    广告

    广告