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藤村詩抄(とうそんししょう)

作者:未知  来源:青空文库   更新:2006-9-11 9:02:10  点击:  切换到繁體中文


 めぐり逢ふ君やいくたび


めぐり逢ふ君やいくたび
あぢきなき夜を日にかへす
吾命やみの谷間も
君あれば戀のあけぼの

樹の枝に琴は懸けねど
朝風の來てくごとく
面影に君はうつりて
吾胸を靜かに渡る

雲迷ふ身のわづらひも
紅の色に微笑ほゝゑ
流れつゝゆる涙も
いと熱き思を宿す

知らざりし道の開けて
大空は今光なり
もろともにしばしたゝずみ
新しき眺めに入らむ
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 あゝさなり君のごとくに


あゝさなり君のごとくに
何かまた優しかるべき
歸り來てこがれ侘ぶなり
ねがはくは開けこの戸を

ひとたびは君を見棄てて
世に迷ふ羊なりきよ
あぢきなき石を枕に
思ひ知る君が牧場まきば

樂しきはうらぶれ暮し
泉なき砂に伏す時
青草の追懷おもひでばかり
悲しき日樂しきはなし

悲しきはふたゝび歸り
緑なす野邊を見る時
飄泊さまよひ追懷おもひでばかり
樂しき日悲しきはなし

その笛を今は頼まむ
その胸にわれはいこはむ
君ならで誰か飼ふべき
天地あめつちに迷ふ羊を
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 思より思をたどり


思より思をたどり
樹下こしたより樹下こしたをつたひ
獨りして遲く歩めば
今夜こよひ幽かに照らす

おぼつかな春のかすみに
うちけぶる夜の靜けさ
仄白き空の鏡は
俤の心地こそすれ

物皆はさやかならねど
鬼の住む暗にもあらず
おのづから光は落ちて
吾顏にるぞうれしき

其光こゝに映りて
日は見えず八重やへの雲路に
其影はこゝに宿りて
君見えず遠の山川

おもひやるおぼろおぼろの
天の戸は雲かあらぬか
草も木も眠れるなかに
仰ぎ視て涕を流す
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 吾戀は河邊に生ひて


吾戀は河邊に生ひて
根をひたす柳の樹なり
枝延びて緑なすまで
生命いのちをぞ君にふなる

北のかた水去り歸り
晝も夜も南を知らず
あゝわれも君にむかひて
草を藉き思を送る
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 吾胸の底のこゝには


吾胸の底のこゝには
言ひがたき祕密ひめごと住めり
身をあげてけるにへとは
君ならで誰かしらまし

もしやわれ鳥にありせば
君の住む※(「窗/心」、第3水準1-89-54)に飛びかひ
羽を振りて晝は終日ひねもす
深き音に鳴かましものを

もしやわれをさにありせば
君が手の白きにひかれ
春の日の長き思を
その絲に織らましものを

もしやわれ草にありせば
野邊にえ君に踏まれて
かつ靡きかつは微笑ほゝゑ
その足に觸れましものを

わがなげき衾に溢れ
わがうれひ枕を浸す
朝鳥に目さめぬるより
はや床は濡れてたゞよふ

口脣くちびるに言葉ありとも
このこゝろ何か寫さむ
たゞ熱き胸より胸の
琴にこそ傳ふべきなれ
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 君こそは遠音に響く


君こそは遠音に響く
入相の鐘にありけれ
幽かなる聲を辿りて
われは行く盲目めしひのごとし

君ゆゑにわれは休まず
君ゆゑにわれは仆れず
嗚呼われは君に引かれて
暗き世をわづかに搜る

たゞ知るは沈む春日の
目にうつるそらのひらめき
なつかしき聲するかたに
花深き夕を思ふ

吾足は傷つき痛み
吾胸は溢れ亂れぬ
君なくば人の命に
われのみやひとりならまし

あなかなし戀の暗には
君もまた同じ盲目めしひ
手引せよ盲目めしひの身には
盲目めしひこそうれしかりけれ
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 こゝろをつなぐしろかねの


こゝろをつなぐしろかね
鎖も今はたえにけり
こひもまこともあすよりは
つめたき砂にそゝがまし

顏もうるほひ手もふるひ
逢うてわかれををしむより
人目の關はへだつとも
あかぬむかしぞしたはしき

形となりて添はずとも
せめては影と添はましを
たがひにおもふこゝろすら
裂きて捨つべきこの世かな

おもかげの草かゝるとも
りてやぶるゝ壁のごと
君し住まねば吾胸は
つひにくだけて荒れぬべし

一歩に涙五歩に血や
すがたかたちも空の虹
おなじ照る日にたがらへて
永き別れ路見るよしもなし
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 罪なれば物のあはれを


罪なれば物のあはれを
こゝろなき身にも知るなり
罪なれば酒をふくみて
夢に醉ひ夢に泣くなり

罪なれば親をも捨てて
世の鞭を忍び負ふなり
罪なれば宿を逐はれて
花園に別れ行くなり

罪なれば刃に伏して
紅き血に流れ去るなり
罪なれば手に手をとりて
死の門にかけり入るなり

罪なれば滅び碎けて
常闇とこやみの地獄のなやみ
嗚呼二人ふたりいだきこがれつ
戀の火にもゆるたましひ
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 風よ靜かにかの岸へ


風よ靜かにの岸へ
こひしき人を吹き送れ
海を越え行く旅人の
むれにぞ君はまじりたる

八重の汐路をかき分けて
行くは僅に舟一葉
白波しらなみの上なれば
君安かれと祈るかな

海とはいへどひねもすは
皐月さつきの野邊と眺め見よ
波とはいへど夜もすがら
緑の草と思ひ寢よ

もし海怒り狂ひなば
われ是岸このきしに仆れ伏し
いといと深き歎息ためいき
其嵐をぞなだむべき

樂しきはじめおもふ毎
かなしきをはり堪へがたし
ふたゝびみたびめぐり逢ふ
あまつ惠みはありやなしや

あゝ緑葉のなげきをぞ
今は海にも思ひ知る
破れて胸は紅き血の
流るゝがごと滴るがごと
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 椰子の實


名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の實一つ

故郷ふるさとの岸を離れて
なれはそも波に幾月いくつき

もとの樹は生ひや茂れる
枝はなほ影をやなせる

われもまた渚を枕
孤身ひとりみの浮寢の旅ぞ

實をとりて胸にあつれば
あらたなり流離のうれひ

海の日の沈むを見れば
たぎり落つ異郷の涙

思ひやる八重の汐々しほ/″\
いづれの日にか國へ歸らむ
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 浦島


浦島の子とぞいふなる
遊ぶべく海邊に出でて
釣すべく岩に上りて
長き日を絲垂れ暮す

流れ藻の青き葉蔭に
隱れ寄る魚かとばかり
手を延べて水を出でたる
うらわかき處女をとめのひとり

名のれ名のれしき處女をとめ
わだつみに住める處女をとめ
思ひきや水の中にも
黒髮の魚のありとは

かの處女をとめ嘆きて言へる
われはこれうしほの兒なり
わだつみの神のむすめの
乙姫といふはわれなり

たつの宮荒れなば荒れね
捨てて來し海へは入らじ
あゝ君の胸にのみこそ
けふよりは住むべかりけれ
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 舟路


海にして響く艫の聲
水を撃つ音のよきかな
大空に雲はたゞよ
潮分けて舟は行くなり

靜なる空に透かして
青波の深きを見れば
水底みなそこやはてもしられず
流れ藻の浮きつ沈みつ

緑なす草のかげより
湧き出づる泉ならねど
おのづから滿ち來る汐は
海原のうちに溢れぬ

さながらに遠き白帆は
群をなす牧場まきばの羊
吹き送る風に飼はれて
わだつみの野邊を行くらむ

雲行けば舟も隨ひ
舟行けば雲もまた追ふ
空と水相合ふかなた
諸共にけふのとまり
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 鳥なき里


鳥なき里の蝙蝠や
宗助そうすけ鍬をかたにかけ
幸助かうすけ網を手にもちて
山へ宗助海へ幸助

黄瓜花さき夕影に
蝉鳴くかなた桑の葉の
露にすゞしき山道を
海にうらやむ幸助のゆめ

磯菜遠近をちこち砂の上に
舟干すかなた夏潮の
鰺藻に響く海の音を
山にうらやむ宗助のゆめ

かくもかはれば變る世や
幸助鍬をかたにかけ
宗助網を手にもちて
山へ宗助海へ幸助

霞にうつり霜に暮れ
たちまち過ぎぬ春と秋
のぞみは草の花のごと
砂に埋れて見るよしもなし

さながらそれも一時ひととき
胸の青雲いづこぞや
かへりみすれば跡もなき
宗助のゆめ幸助のゆめ

ふたゝび百合はさきかへり
ふたゝび梅は青みけり
深き緑の樹の蔭を
迷うて歸る宗助幸助
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 藪入


  上
朝淺草を立ちいでて
かの深川を望むかな
片影すゞしわれは今
こひしき家に歸るなり

籠の雀のけふ一日ひとひ
いとまたまはる藪入や
思ふまゝなる吾身こそ
空飛ぶ鳥に似たりけれ

大川端を來て見れば
帶は淺黄の染模樣
うしろ姿の小走りも
うれしきわれに同じ身か

柳の並樹暗くして
墨田の岸のふかみどり
すなどり舟の艫の音は
靜かに波にひゞくかな

白帆をわたる風は來て
鬢の井筒ゐづゝの香を拂ひ
花あつまれる浮草は
われに添ひつゝ流れけり

潮わきかへる品川の
沖のかなたに行く水や
思ひは同じかはしもの
わがなつかしの深川の宿

  下
その名ばかりの鮨つけて
やがて一日ひとひは暮れにけり
いとまごひして見かへれば
蚊遣かやりに薄き母の影

あゆみは重し愁ひつゝ
岸邊を行きて吾宿の
今のありさま忍ぶにも
忍ぶにあまる宿世すぐせかな

家をこゝろに浮ぶれば
夢も冷たき古簀子ふるすのこ
西日悲しき土壁つちかべ
まばら朽ちたる裏住居

南のひさし傾きて
垣に短かき草箒
れし戸に倚る夏菊の
人に昔を語り顏

風吹くあした雨の夜半よは
すこしは世をも知りそめて
むかしのまゝの身ならねど
かゝる思ひは今ぞ知る

身を世を思ひなげきつゝ
流れに添うてあゆめばや
今の心のさみしさに
似るものもなき眺めかな

夕日さながら畫のごとく
岸の柳にうつろひて
汐みちくれば水禽の
影ほのかなり隅田川

茶舟を下す舟人の
遠近をちこちに聞えけり
水をながめてたゝずめば
深川あたり迷ふ夕雲
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 惡夢


少年の昔よりかりそめに相知れるなにがし、獄に繋がるゝことこゝに三とせあまりなりしが、はからざりき飛報かれの凶音を傳へぬ。今春獄吏に導かれて、かれを巣鴨の病床に訪ひしは、舊知相見るの最後にてありき、かれ學あり、才あり、西の國の言葉にも通じ、宗教の旨をも味はひ知り、おほかたの藝能にもつたなからず、人にも侮られまじき程の品かたちは持てりしに、其半生を思ひやれば實に慘苦と落魄との連鎖とも言ふべかりき。かれは春の日の長閑に暖かなる家庭に生ひたちて、希望と幸福とを一身に荷ひたりしかど、やがて獄窓に呻吟せしの日は人生流離の極みを盡したる後なりき。あはれむべし、死と狂と罪とを除きて他にかれの行くべき道とてはあらざりしなり。われは今、かれが惡夢を憐むの餘り、一篇の蕪辭囚人の愁ひをとりて、みだりに花鳥の韻事を穢す、罪の受くべきはもとよりわが期する所なり。


其耳はいづこにありや
其胸はいづこにありや
たぎり落つ愁の思
この心誰に告ぐべき

秋蠅の窓に殘りて
日の影に飛びかふごとく
あぢきなき牢獄ひとやのなかに
伏して寢ねまたも目さめぬ

な/\のふすまは濡れて
吾床は乾く間も無し
黒髮は霜に衰へ
若き身は歎きに老いぬ

春やなき無間の谷間
潮やなき紅蓮の岸邊
憔悴うらがれの死灰の身には
熱き火の燃ゆる罪のみ

しろかねうてなも碎け
戀の矢も朽ちて行く世に
いつまでか骨に刻みて
時しらずくる罪かも

空の鷲われに來よとや
なにかせむ自在なき身は
天の馬われに來よとや
なにかせむ鐵鎖くさりある身は

いかづちの火を吹くごとく
この痛み胸に踊れり
なかなかに罪の住家すみか
濃き陰の暗にこそあれ

いとほしむ人なき我ぞ
隱れむにものなき我ぞ
血に泣きて聲は呑むとも
寂寞さびしさの裾こそよけれ

世を知らぬをさなき昔
香ににほふいもを抱きて
すゝりなく恨みの日より
吾蟲はたかぶるばかり

わがいのちたはれうてな
その惡を舞ふにやあらむ
わがこゝろ悲しき鏡
その夢を見るにやあらむ

人の世に羽を撃つ風雨あらし
天地あめつちは捨小舟
今更に我をうみてし
亡き母も恨めしきかな

父いかにもとの山河
妻いかにとほの村里
この道を忘れたまふや
この空を忘れたまふや

いかなれば歎きをすらむ
その父はわれを捨つるに
いかなれば忍びつ居らむ
その妻はわれを捨つるに

くろがねの窓に縋りて
故郷ふるさとの空を望めば
浮雲や遠く懸りて
履みなれし丘にさながら

さびしさの訪ひくる外に
おとなひも絶えてなかりし
吾窓に鳴く音を聽けば
人知れず涙し流る

ひよどりよ翅を振りて
黄葉もみぢばの陰に歌ふか
幽囚とらはれしもとの責や
人の身は鳥にもしかじ

あゝ一葉ひとは枝に離れて
いづくにか漂ふやらむ
照れる日の光はあれど
わがたましひは暗くさまよふ
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 響りん/\音りん/\


響りん/\音りん/\
うちふりうちふる鈴高く
馬は蹄をふみしめて
故郷の山を出づるとき
その黒毛なすたてがみ
すゞしき風に吹き亂れ
その紫の兩眼は
青雲遠く望むかな
枝の緑に袖觸れつ
あやしき鞍に跨りて
馬上に歌ふ一ふしは
げにや遊子の旅の情

あゝをさなくて國を出で
東の磯邊西の濱
さても繋がぬ舟のごと
夢長きこと二十年
たま/\ことし歸りきて
昔懷へばふるさとや
蔭を岡邊に尋ぬれば
松柏しようはくすでに折れ碎け
みちを川邊にもとむれば
野草は深く荒れにけり
菊は心を驚かし
蘭は思を傷ましむ
高きに登り草を藉き
惆悵として眺むれば
檜原ひばらに迷ふ雲落ちて
涙流れてかぎりなし

ね/\かゝる古里ふるさと
ふたゝび言ふに足らじかし
あゝよしさらばけふよりは
日行き風吹き彩雲あやぐも
あやにたなびくかなたをも
白波高く八百潮の
湧き立ちさわぐかなたをも
かしこの岡もこの山も
いづれ心の宿とせば
しげれる谷の野葡萄に
秋のみのりはとるがまゝ
深き林の黄葉もみぢば
秋の光はむがまゝ

響りん/\音りん/\
うちふりうちふる鈴高く
馬はかうべをめぐらして
雲に嘶きいさむとき
かへりみすれば古里ふるさと
檜原ひばらは目にも見えにけるかな
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 翼なければ


羽翼つばさなければ繋がれて
朽ちはつべしとかねてしる
光なければ埋もれて
老いゆくべしとかねてしる

知る人もなき山蔭に
朽ちゆくことを厭はねば
牛飼ふ野邊の寂しさを
かくれがとこそ頼むなれ

もるゝ花もありやとて
獨り戸に倚り眺むれば
ゆふべむなしく日は暮れて
牧場の草に春雨はるさめのふる
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 罪人と名にも呼ばれむ


罪人つみびとと名にも呼ばれむ
罪人つみびとと名にも呼ばれむ
歸らじとかねて思へば
嗚呼涙さらば故郷ふるさと

駒とめて路の樹蔭に
あまたたびかへりみすれば
輝きて立てる白壁
さやかにも見えにけるかな

たてがみは風に吹かれて
吾駒の歩みも遲し
愁ひつゝ蹄をあげて
雲遠き都にむかふ

戰ひの世にしあなれば
野の草の露と知れれど
吾父の射る矢に立ちて
消えむとは思ひかけずよ

捨てよとや紙にもあらず
吾心燒くよしもなし
捨てよとや筆にもあらず
吾心折るよしもなし

そのねがひ親やりたる
このおもひ子や新しき
つくづくと父を思へば
吾袖は紅き血となる

靜息やすみなくたぎつ胸には
しがらみもなにかとゞめむ
洪水おほみづの溢るゝごとく
海にまで入らではやまじ

はらからやさらば故郷ふるさと
ねよねよねよ吾駒
諸共もろともに暗く寂しく
むかしの園を捨てて行かまし
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